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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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イギリスは燃えているか。 1

  僕は父上からの電話を一方的に切った。ルーが持ってたICレコーダーの録音ボタンを止めた。そして、怒りの余り僕はスマホを投げつけようとして僕以上に大柄なイヴァン博士と剣聖殿に止められた。


「僕が王子でいる意味は一体なんだったんだ!僕は、ただ一人の大事なお方すら守れないのか!ルーの事は僕が責任持って墓場に持って行くつもりだったのにそれさえも許されないと言うのか!」

「エド!落ち着け、エドっ!」

「ダメだ。コイツ、完全に血が上ってる!」


 僕はもみくちゃになりながら暴れ回った。今の今までこんな事になった試しが無かった。感情がぐちゃぐちゃだ。ドス黒い感情に支配されそうだ。破壊的な衝動が収まりそうにもない。僕は、勢いをつけてスマホをぶん投げた。何かがガシャン!って割れる音がして初めて僕は我に返った。


 よく見れば、僕が投げたイヴァン博士のスマホは液晶テレビに派手に突き刺さった状態で割れてしまっていた。液晶も全体にヒビが入っていて使い物にならなくなっていた。


「……………」

「……………すまない。僕が…………」

「気にしなくて良いよ。エド。僕は気にしていないから。それよりも、みんな。僕はみんなに隠し事をしてました。本当にすみませんでした。」


 ルーは頭を下げた後、みんなに話し始めた。


「僕はアルビノだけじゃなかったんだ。奇形児で生まれてるんだ。理由なんて分からないけど、僕には2つ性器があるんだ。『両性具有』って言ってね。戸籍上は僕は男なんだ。だけど、軍隊に入って最初の内はまだ良かったんだ。だけど、大人になるに連れて僕の体はどんどん女性のそれになってしまったんだ。」


 そう言って、左手をパチンと鳴らすと魔法陣がルーを取り囲んで本来の姿に戻した。みんなはルーに釘つけだ。ルーはまだ話そうとしていた。しかし、それをミサトが抱きしめて止めてくれた。


「もう、苦しまなくて良いよ。ルー。どんな姿でも、あなたがあなたでいる事に変わりはないでしょう?」

「…陛下…………はい。僕は、僕です。」

「そして、そんなあなたをエドはありのまま受け入れてくれたんだね。本当に素敵なお方に見初められたね。」

「…はい。僕にはもったいないくらいです。僕の秘密を墓場まで持って行ってくれるってはっきりと言ってくれて嬉しかったよ。」

「…ルー、そなた…………」

「ううん。もう、良いんだ。エドは僕を守るために今まで大事にしてきた筈の国を捨てるとまで言ってくれたんだ。だから、僕は今まで誰にも話さなかった事を公にする事で僕はエドが自由を掴む為の足がかりになるよ。」

「…何を言い出すんだ、ルー!そんな事をしたらそなたは…………」

「もちろん、分かっているよ。今まで以上に奇異な目に晒される事ぐらい、承知しているよ。でもね、エド。君は今、眠れぬ程に悩んでる。王位継承権を返上するのに僕が秘密を公表した方が国民が納得するって分かっているから悩んでるんだ。僕に反論できるか?エド。」

「…………」

「だからこそ僕は立ち上がる事にしたんだ。大丈夫だよ。慈悲深い女王陛下が背中を押してくれたから大丈夫。一緒に運命に立ち向かおう。エド。」


 こうして、僕の会見には結局僕たちとイヴァン博士夫妻が出る事になった。幸太郎さんが、その方がルーの一件で脅迫の材料になり得ないというメッセージを送る事が出来るからという事だった。僕はアドバイスを採用する事にしたんだ。最初の方は色々世間を騒がせた事。僕が倒れた事でご心配をおかけした事を詫びる所から始まった。前半は持ち出していた資料を提示しながら経緯説明した。ルーの魔法で再現した通りの調査内容だった事に驚きの声が文字として起こされた。で、後半はルーとの馴れ初めから話して正直に思ってる事を話した。ルーも勇気を出して話してくれた。先程の一連のやり取りも公表すれば僕たちに対する同情の声と王位継承権返還に納得する声が多く寄せられた。ただ、最後になって今まで黙っていたミサトが口に出した一言で僕は確信した。この騒動がまだまだ終わらない事を。


「私はイギリス滞在中に我が夫やエドワード王子が狙われた事に強い憤りを覚えています。私は今回の件でも到底許せそうもありません。ですので、私はこの二人が幸せになる為に私も力を貸す事にします。実に簡単な事です。先日、祖父が亡くなりました。その時に祖父にかけられた魔法は既に消滅しています。私たちが異世界からこちらに来た時に乗って来た大陸には元々魔法石が入っているので地球の重力の影響を受けずに浮いていられます。ですが、問題は祖父が強引に浮かせた島々という事になります。先日、日本には救援部隊を送り届けた時に術式を更新しました。今日、オーストラリアにいますので、ここで術式を更新してからローグフェルグに戻るつもりです。みなさんもう、お分かりかと存じますが、この二人に二度と手を出さないと誓約しない限り、イギリスでの術式を更新致しません。ルーの魔法での一件でお分かりかと思いますが、我々は虚言や妄言の類いは一切信用致しません。本心で接せねば我々はそれを見抜いてしまうでしょう。ねぇ、イヴァン?イギリスが地上に墜落するのって後どれ位かかるのかしら?」

「そうだな、爺さんの魔法が無くなる速度が早ければ早いほど落下速度が上がるから残り時間は3日って所だな。外周から地面が削り取られるのが早いか。民衆が立ち上がるのが先かって言った所だ。墜落した日には、イギリスの国土はガラスの様に砕けるし、その影響で津波が起きるから地上にも被害が及ぶだろうな。」

「…………」

「そう言う訳で、我々は心からの謝罪とルーに対して行った非礼の数々をイギリス政府が正式に声明で表明せぬ限り我々はイギリスを守る事はありません。声明はどなたが出して下さっても構いません。私が人質にしたのはイギリスの国土と国民そのもの。その意味をよくお考えになる事です。」


 僕は、エルフの女王陛下を敵にする事が如何に愚かな行為なのか思い知らされた。僕が苦心して守って来たものもこの人達にかかれば造作もなく滅ぼせるんだ。そんな背筋の凍る思いだ。彼女の力は既に証明済みだ。魔族領を一瞬で滅ぼした事からも見て取れる。僕たちは今まで、エルフ達を馬鹿にして軽んじた。そのツケがこんな形で回って来てしまっただけである事を肝に銘じなければと僕はそう思った。ただ、それがあの方々が分かっているのかは激しく謎だ。ネットに生配信だったから文字がイギリス滅亡のお知らせって勝手に踊りまくって流れては消えてった。自己保身の塊の様な方々に一体何が出来るのであろうか。



 ミサトがルーの自宅のベランダからジークさんの施した術式を更新してから僕たちを残してみんなはローグフェルグに帰って行った。僕たちは居残りだ。僕の顔色が余りにも優れないから心労を慮っての事だ。本来、緩やかに眠くなりやすくなる程度のハーブティーで即落ちする程疲弊してるんなら2、3日ゆっくりして来いよ。そう言われてお言葉に甘える事にしたんだ。ルーは僕が無茶しないか監視の為に置かれた格好だったが、そんなものは僕がさっさと放棄させた。みんなが居なくなった事を良い事に僕はルーを抱いた。僕は嬉しかったのかもしれない。生まれて初めて安らぎを得た事が。僕は心から安心しきっていた。このお方は今までの女みたいに命を狙ってくる危険がない。24時間365日常に気を張り続けるのが常態化してしまっていたから大事なお方の側で僕はただただ癒しを求め続けてた。不思議な事に睡魔はちゃんとやって来て、僕はルーの腕の中いつの間にか眠りについていた。


 気がつけば翌朝だった。一体何時間寝たんだろうか。随分長い間寝ている気がする。キッチンから包丁がトントンと言う音と、何やら焼いているのかじゅうううって音が聴こえて目が覚めた。僕は服を着て、リビングに行き、美味しそうなご飯の匂いに包まれたルーに声をかけた。


「おはよう。ルー。」

「おはよう。エド。」


 二人して唇を重ねて抱き合った。深追いが止まりそうもない。エルフと恋に落ちると手放せなくなるんだろうなぁ。止まらなくなると分かってか、ルーは魔法でIHの電源を落としてそのまま僕たちは求めあった。すっかり僕色に染まったルーがおねだりし始めると時間を忘れて溺れまくった。ルーが呆れた声で。


「僕、エドに喜んで貰おうと思ってご飯作ってたのに…………」

「ごめん。僕、こう言うの初めてだったから凄く気持ちが嬉しくなってしまって。つい…………」


 そう言って二人して笑いあった。少々冷えたパンやスープを温め直して遅い朝食を食べた。まるで軍隊での仲間内で食べてるみたいで気構える必要が無かった。ルーが作ったごく普通の朝食は本当に美味しかった。いつもなら液晶テレビが映し出すニュースを見ながらまったりするのがルーの休日の過ごし方なんだそうだが、僕が昨日それを壊してしまったので朝食を食べて食器を片付けした後に。


「じゃ、ノートパソコン開いて寝室に篭ろうか。どうせ離す気ないだろう?」

「そうだな。僕は普通にある幸せを今は噛み締めていたい。旅に戻ればしばらくそなたを抱けなくなるだろう。例の魔法を悪用せぬ限りはな?」

「世界レベルで時間止めるのきついので、別の手段でお願いします。エド。」

「では、どうすれば良いであろう?僕はそなたを他の人の目に触れさせたくないぞ。絶対に。」

「そうですね、流石にそれは。まぁ他に方法が無いか僕の方で考えてみるよ。ああ、ニュースサイト繋がりましたよ。ご覧になりますか?」

「ああ。多分、何も…………」


 って呟いた所で僕が目にしたのは街が炎に包まれた映像だった。民衆が一斉に蜂起して暴徒化していた。民衆の怒りが一斉にバッキンガム宮殿に押し寄せていた。信じられなかった。


「僕の祖国が燃えている。イギリスが……………燃えているんだ…………」

「イギリスに帰りたいんじゃないのか?エド。」

「…良いや、僕は帰らない。僕は民衆達の良識を信じる事にするよ。ただ、結末がどうなるか。何処に落ち着くかちゃんと見定めようとは思ってるんだ。悪いけど、パソコンスクリーンセーバーを使用しない状態で開きっぱなしにしておいて貰えないであろうか?」

「うん、分かったよ。エド。」

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