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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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新たなる精霊王達 5

「…………」


 イヴァンは押し黙ったまま聞いていたと思う。祖父は続けた。


「婿殿がこの試練を乗り越えてさえくれれば、ミサトが泣かされる様な事はしないであろう。我と違い、預言の力は自分達の為にだけしか使わぬ。束縛を嫌う故に、ミサトの学校が終わるのを待ってミサトと共に雲隠れをするであろう。それに付き従う者達もいるだろう。世界を旅し、騒動を巻き起こしながら賑やかに過ごすが、AIがおかしくなっていく事に強い危機感を抱いて残された人類を束ね、再び友と共に立ち上がるであろう。ミサトもルーベルトもそれに追随するであろう。失うものも大きいが、機械がいなくなればそなた達はこの星を再生する為に沢山の妖精達で星を満たし、地上の楽園を作りし後に仲間達と共に神となるであろう。そなたは学問の神と謳われ、賢神となろう。ミサトは全知全能の神として立った後は婿殿との間に神々が生まれ、世界は再び安定するのだ。ルーベルトも妻と共に神となる。エルフの神となるのだ。そなた達4人は同じ道を行く。家族を巻き込みながら。助け合いながら生きていくであろう。アークの為の精霊王は雪月風花の四精霊王が一人。夏の精霊王ネイサン。ミサトの為の精霊王は雪月風花の四精霊王が一人。春の精霊王フラウディアと言う。ネイサンはアークにとって良き相談相手になるであろう。フラウディアは元が綾女だからのぉ。無口で大人しいが花の様に麗しい。四精霊王の中で唯一の女性じゃが、同時に精霊達の母である。」

「では、私達には子供は…………」

「人として生きている間は精霊を生み、神になってから神々を生むのじゃ。真っ先にリンちゃんを懐かしみ、本来の性別で産み出すであろう。ミサトに対する慈しみは人の頃でも神になってからも揺らぐ事は無いが今が精神的に一番きついからこそ目を離してはならぬぞ。婿殿は優しすぎるのじゃ。みんなで痛みを分け合えば乗り越えられる様な事でも何でも一人で背負ってしまう。今まで死にきれずにズルズルと生きてしまった負い目があるのじゃ。親友達を人質に取られて従わざるを得なかった。自分は無力だと。ミサトが側にいればその様な発想をする事自体無いが、一人で作業していれば色々考えてしまうのであろう。機械との戦いでも人族を見殺しにする決断を下すのは婿殿じゃ。本当は一人でも多くの人を助けたいと思っているにもかかわらず、剣聖殿が育てた兵士達、エルフ族、保護した人族、ドワーフ族を慮って敢えて非情な決断を下すのじゃ。その時も今ほど酷くは無いが良心の呵責に苛まれるであろう。そしてミサトに救いを見出すのじゃ。婿殿。婿殿には確かにいざという時にはミサトでも出来ぬ決断をそなたは出来てしまうが、何も一人で抱え込む必要は無いのじゃ。今も。未来も。そこにいる仲間達に心を開き、病みつつある心を解きほぐして貰うのじゃ。」


 祖父は祝詞を唱えながら、結婚の契約を施していった。私達二人を包む様に描かれた魔法陣に今まで呆けていたイヴァンが我に返った。


「ミサト、今の…………」


 私はただ頷いた。アークさんに施されてたのを思い出したのか。


「爺さん。」

「そうじゃ。結婚の契約を執り行うのには自分の位よりも上の役の役割を持つ人間が受け持つのが習い。従って、結婚に関する本契約は我しか出来ぬと言う事じゃ。それで前に出て来て貰ったのじゃ。そなたの薬に関するデメリットはこちらで消させて貰ったよ。致死量クラスの薬の量を飲んで風邪を治すなど。あり得ぬわ。まぁ、そのお陰で婿殿の命があるのは重々承知をしているから、悪意を持って婿殿の命を脅かした場合は従来通り致死量を持ってしても死なぬ様にはしておいた。この旅で真っ先に狙われるのは平和の旗印である婿殿じゃ。後はの、そなた達には二人しか入れぬ時間操作が出来る小部屋なる物が出来ておる。流石に神々になる資格の持ち主と言う所か。外の時間と中の時間を自由に変えられる様じゃ。但し、外の時間の取り扱いには気をつけなければなるまい。うっかり300年後に設定なんてした日には、本当に300年後まで開けられる事はなく、訂正も出来ず、時間を巻き戻す事が出来ないからの。それと、妖精王を有する二人はそなた達の場所を特定できると言うのも付け加えておこう。目印がその二人には見えるのじゃ。後は誓約の腕輪があるじゃろう?あれが無くてもそなた達は相手を想うだけでその者の所に行ける様になった。ただ、先程も言った通り、婿殿は自殺を試みようとする故に、誓約の腕輪の効果をアップグレードしようと思う。二人とも左手を差し出すが良い。」

「「はい。」」


 私達は揃って左手を差し出した。魔法陣が現れて指輪と腕輪がチェーンで繋がっていた物が、宝玉が現れてより精巧な意匠が施された物になった。片手だけだと不安だったんだろう。イヴァンの右手にも同じ物が施されていく。


「誓約の腕輪 神様バージョンって所じゃのう。そなた達の手を取れば、最低一人は連れて行けるから工夫してみるが良い。」

「ありがとうございます。」

「…………」

「そろそろ、時間じゃ。」

「!?」


 一瞬、風が吹いた。祖父は名残惜しそうに一つのアイスコフィンを取り出した。そこには、祖父と祖母が一緒に眠っていた。凄く幸せそうに眠っていた。


「アルに後始末を任せる。但し、この大陸が元通りに復元された事だけは伏せてくれないだろうか?我の力で雲の上まで上げ大陸を隠すつもりじゃ。ここはいつも妖精達が戯れる迷いの森のある地だから結界が無くても普通の人だと侵入すら難しいが、上空は別じゃ。結界を張り、ここにいる者達が連れて来る人以外は入れぬ様にしたいのじゃ。安らぎの地はこの者達が一番必要としておる。建物は自由に作っても構わぬが、自然を破壊しない程度で頼むぞ。」

「分かりました。遺命承ります。」


 祖父の魔法陣が大陸全体を包み、少しずつ持ち上がった。空気が澄んでヒヤリとしたが、夏の精霊王であるネイサンが空気を温め常春の様相を呈した。私は新たに何重にも結界を張り、イヴァンの中に冬の精霊王を抱えた祖父が入っていった。イヴァンは目を丸くした。イヴァンの身体を幾重にも魔法陣が取り囲む。イヴァンは空を仰ぎ見て。


「ああ、爺さんが預言した未来が流れてくる。過去の世界の歴史も。体感した痛みも。多くの民を守りきれなかった後悔も。爺さん、知らなかったよ。あなたは、俺以上に長い時を。壮絶な思いを抱えながら生きて来たんだな。俺は爺さんみたく強くは無いが、俺は爺さんの様になれるんだろうか。」

「…………」


 イヴァンの目から涙が一筋こぼれ落ちた。私もイヴァンの横で泣いた。気がつけば、みんな泣いていた。



 僕は大陸が持ち上がる振動で目を覚ました。しばらくして魂が震える様な慟哭が聴こえて、巨星が堕ちた事を悟らざるを得なかった。ジークフリート・セレネティア。様々な魔法を使いこなして地上の民と異世界の民を救いし英雄で預言者でもあった。僕の母国であるイギリス、オーストラリア、日本を無理矢理空中に浮かして民を救うと言う荒技をやってのけ、日本で力尽きた所を避難中だった学生。望月幸太郎が発見し消防士に救助を依頼して命拾いし、日本に定住後は妻を娶って子を成して自分の故郷を治める傍ら月での停戦調停を始め数多くの事を手がけた方であった。火傷の跡が残った顔だというのに流石エルフで、顔立ちが整っていて美しい。見識も高く、世界政府も一目を置く人物だった。眠気が限界に達してなければもっと話しを聞いていたかった。其れ位、感じの良い方だった。寿命が確かに近いとは聞いていただけに、せっかくの機会が永遠に失われる事になって残念に感じた。


 すぐ隣で寝ている人は流石にエルフといった所か。結構揺れた筈なのに何事も無かったかの様な顔をして幸せそうな顔をして寝ているのだ。美しい羽すら仕舞うのが面倒だったのか。出しっ放しで淡い光が全身を纏っていて。アルビノの白い肌を一層際立たせた。極め付けは顔だ。男性だと認識してはいるが、モデルかよ!って突っ込み入れたくなる様な。抜きん出た美しさだ。髪の毛もアルビノの影響で白い。髪の毛も柔らかく触り心地が良い。エルフだけあって僕より背が高い。正直、ベッドが1つしか無いから一緒に寝たが。でも、軽く理性が吹っ飛ぶ位、美しいのだ。何もかもが。僕は考えた。おかしいなぁと。何だこれは。僕は無防備に寝てる男を見て苦笑を禁じ得ない。男性に欲情するなんて、今まででは考えられなかった。妻もいるし、子供も居るんだが、妻とは見合いだったし結婚も王族の義務かと大して考えもせずした位だったから、恋愛感情なんてのが自分にある事に驚いた。しかし、これどうしよう。一人では非常に外に出にくい。そうだ。こういう時は巻き込むのが常套手段だと思った時、僕はきっと何かがおかしくなったんだと思った。


 僕は襲う事にした。反抗したとしても従わせるまで。ねっとりする程キスしてみた。以前からこいつ髭ないからあれぇ?とは思ってたが唇の柔らかさは完全に女性だ。突然襲われた息苦しさにルーの意識が浮上して来た様で抵抗を始めたが、それでも種族的にも僕の方が力は上らしく。上にのしかかる僕を押しのける事すら出来ない様だ。ボタンを外して胸を撫でると間違いなく小さいものの女性だと感じさせる様な胸があった。どういう事だろう?そう思ってたら抵抗が無駄だと悟ったのか。力が抜けた。僕は口を塞ぐのを辞めた。これは是非とも真相を聞かなければ。ルーは顔を赤くした。二人して息が荒い。


「おはよう。ルー。部屋が同室だからこれだけはハッキリさせておきたい。ルーは男なのか?女なのか?」

「…はぁ…はぁ…全く、今まで誰にもバレた事無かったのに。戸籍上は僕は男性って事になってる。だけど、僕は奇形で生まれてるんだ。両性具有って言えば分かる?知っているのは両親だけだよ。僕からは子供も生まれない事が分かってるんだ。」

「誠か?」


 ルーは小さく頷いた。承諾を得て確認させてもらった。ルーは嘘をついてなかった。出会った頃から女性以上に美しいとは前々から思っていたけど、これはひょっとしたらとんでもない幸運に巡り会えたのかもしれない。僕は思わず笑いだした。


「ちょっとエド。何で笑うのさ。」

「ルーの事で笑ったんじゃないんだ。まぁ、聞いてくれるか?ルーの秘密を暴いたのに僕が秘密を話さないのはフェアじゃないからね。僕には妻と二人の娘がいるんだが、親の紹介で見合い結婚して結ばれてみたらさ。これが、僕が公務に精を出している間に愛人と寝てる様な女でね。まぁ、僕もそれなりにお勤めはしてたから最初の子供は妻には似たから僕たちの子供だと思ってたんだけどね。二人目がね。僕にも妻にも似ていないから誰の子だって絶賛叩かれ中でね。良い機会だから清算する事にしたよ。僕に好きな人出来たから別れるって切り出すんだ。浮気の証拠なら既に確保済みだし、娘達のDNA検査も既に終えてる。両方とも僕の子種じゃないのがハッキリしてるんだよ。なので、僕の留守中に廃妃にしてしまおうと思ってね。まぁ、ゴシップネタには昔から事欠かなかったからね。あの女の正体をバラせると思うとつい笑いが止まらなくなったんだ。」

「本当に困った人だ。で、好きな人を僕って言い張る訳だ。」

「そうそう。相手が固まる姿を想像したらさ。可笑しくてさ。しかもだ。自分よりも数段美しいエルフに王子が恋してるとなる。相手は旅先で出会った男性ってなるとね。あの真面目な王子がショックの余り女性嫌いになったって言われる事請け合いでね。僕としても欲深い女よりもルーの様な仔犬の様な可愛い性格で尚且つ頭が回る方が好きなんだ。なので、泥沼のイギリス王室に謹んでご招待申し上げるよ。」

「ちょっと待ってよ。僕そんな所にお呼ばれなんてしたくないんですけど。詠唱省略、セレネティア大陸限定ストップ!」

「やはりそなたは賢いな。僕はジーク殿の遺言の通りに僕は人生を楽しむ事にしたよ。何でも今の生も来世でもルーと一緒に生きていくって言われたから、今からそなたに僕という人間を忘れない様に教えるのが今から楽しみだよ。大人しく僕の手中に堕ちてくれるか? エルフだから僕は死ぬまで美しいそなたを堪能出来る。まぁ、断ろうとしても僕は権力を行使してどんな手を使ってもそなたを手放す気はない。」


 ルーは思いっきり頭を抱えていた。だけど、諦めの表情で。


「分かりました。僕の事はエドの好きになさって下さい。だけど、今日だけは勘弁してくれないでしょうか?僕にとってもジーク様は尊敬すべきお方だったんだ。そのお方の眠る側で不敬は働きたくないんだ。エドが起こしたのって、一人で外に出づらい状況だったからでしょう?僕も行きますから、今日は大人しくして下さいね!」


 そんな訳で、ルーが魔法を解除したのを確認してから外に出てみんなと合流した。何食わぬ顔でみんなを慰めて、色々埋葬とか手伝った。英雄達も此処に丁重に葬られた。

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