新たなる精霊王達 3
たくさん力を使ったからだろうか。ルーベルトさんの疲弊は激しかったが、その後、ストップの魔法を解除してからその場に座り込んでしまった。
「大丈夫か?ルーベルト。」
「ん?力を付加して貰って直ぐに無茶したからね。ちょっとだけ反動食らったみたいだよ。父さん。でもまあ、僕の初仕事はまぁまぁだったんじゃないかな?」
「そなた、やれば出来る子だったな。」
「当たり前な事言わせないでくださいよ。エド。エドだって言ってたじゃないですか。いざという時はちゃんと正しい判断が出来るのに不安そうな顔をするから部下が付いて来ないと。流石に僕の友達だと思ったよ。まだちょっとの時間しか過ごしてないのに信じられる人が側にいるってのは悪くないな。なぁ。エド、悪いんだけどちょっとだけ肩貸してよ。物凄く眠たいんだ。ジーク様。」
「良い良い。そなたの力量はちゃんと分かったよ。そなたを導師に任じる。もし、次世代の導師候補が現れたら試練を与えて見極めよ。そなたになら出来るであろう。」
「ありがとうございます。一足先にお別れです。ジーク様。今度は違う形で色々お話ししたいです。おやすみなさい。エド。ローグフェルグに戻ったら起こして。僕、馬車馬の様に働くから。」
「分かったよ。全く。とんだ甘えん坊さんだ。でも、こう言うのも悪くはないな。お疲れ様。ルー。今はゆっくり休め。」
「はい…………」
ルーベルトさんは敬称を付けて貰ったのが余程嬉しかったのか。満面の笑みを浮かべて眠りについた。
「すいません、うちの息子が在ろう事かイギリスの王族である殿下にこの様な事をしでかして。」
「いや、気にする事は無い。そもそも、僕とルーとバイソンさんは夜を徹して捜索活動に当たっていた故。こうなるとは思っていたのだ。僕も仔犬の様な貴殿のご子息が部下になってくれて嬉しいんだ。もし、オーストラリア空軍を辞める事になったら是非、僕のところに来てくれると良いなと思ってる位でね。命だって助けて貰ったんだ。だけど申し訳無いが、僕も限界が来たみたいだ。ジーク様。お名残惜しいですが。」
「もちろん、分かっておる。貴殿も王族の義務を果たさねばならない身だからのぉ。近くの建物にあるベットを遠慮なく使うが良い。今日はわざわざ来て頂いてありがとう。人とエルフの生の時間は大きく違う故に友情を育む時間は少ないが、その後、エルフとして転生の後にルーベルトのお眼鏡に叶ってちゃんと導かれるから今の生も次の生も楽しんで生きなさい。」
「それ、本当ですか?だとしたら僕は嬉しいなぁ。僕はルーだけは失いたく無いと思ってたから。それでは、失礼致します。せっかくの家族の時間にお邪魔して申し訳なかった。」
「良い良い。」
エドは一礼してから先に眠ったルーベルトさんを抱え上げた。少し驚いている。多分、抱えたのがエルフなので背の高さに明らかに比例してない軽さに驚いたのだろう事は想像がついた。力を使ったせいで少し成長した秋の精霊王が両手が塞がっているエドの代わりにドアを開けて室内に誘った。ドアが閉められて鍵がかかる音がした。
「さて、他に休まなければならぬ者はいるか?」
「ワシ達なら問題はないわい!」
「話を続けてくれ。爺さん。」
「……………そうか。残りの3精霊王の紹介は後にしよう。バイソン、幸太郎。」
「まぁ、分かっていたぞ。お前、どうしてもミサトちゃんの助けになる為にこんな事したんだろう?」
「本当に呆れた奴だ。」
「迷惑かけて悪かったよ。二人とも。でも、そなた達二人はどうしてもこの旅に参加せねばならなかったんだ。天変地異が起きて神が一部を除いて死に絶え続けておる。今は物珍しさもあって魔法の力の方が強い。だが、ミサトが寿命を終える頃には魔法は回復魔法と妖精魔法以外は死に絶える。この世界は科学が著しく発展している故、天変地異以後、環境破壊が進んだのじゃ。原発や火力発電は自然に淘汰されたが、それでもこの世界の破壊は加速していくであろう。何故ならば、この世界から神の祝福が消えつつある。元々ある文明が神々の命を脅かしている。人族の神は間もなく消滅するであろう。ドワーフの神もバイソンに合わせるかの様に消える定めじゃ。そなた達二人は新しく出来たこの世界の消滅を防ぐ為に新たなる神々の一人として立ち、アメリア殿の手を取るであろう。」
「じゃあ、俺は死ぬのか。」
「幸太郎…………」
「…父さん。」
「…………」
「……………今回は死なぬ。そなたは子供達と約束したのであろう。今回は前線に立たぬと。だが、そなたが自分の信念を曲げる事は無い。人族が争いを辞めぬ限り、そなたの命は脅かされ続けるであろう。命の終わりは突然だ。天寿で人生を全うしたいのであれば、そなたの子供達、孫達とちゃんと話し合うのだ。我も幸太郎に関してはお願いに近い。婿殿が嘆き悲しむ姿を見るのは我で最後にしたいが故。」
「自分はいけしゃあしゃあと死んでおいて良くそんな事が言えるもんだ!こいつらが、今どんな気持ちでいるか。イヴァンなんか特にだ!家族だったんだろう?何故、ちゃんと相談しなかったんだ!こいつに!」
幸太郎さんは、俯いているイヴァンの肩を抱いて猛抗議していた。だけど。
「もういい。幸太郎。ミサトを託された時に多分、こういう日がいつか来るんじゃないかと俺、覚悟していたんだ。だから、大丈夫。ありがとう、幸太郎。俺の為に怒ってくれて。」
「…いや、お前がそう言うなら俺は精々大人しくしていよう。」
「…………」
「バイソン。そなたとは天変地異以前からの付き合いであったな。そなたの作る武具は鍛治神のお眼鏡に叶っておる。この旅の後にそなたはまた放浪の旅に出るであろう。その先で同族の伴侶と出会い、多くの弟子達を得て天寿を全うするであろう。その後、神への道へと至り、ドワーフ達に敬愛される。残された弟子達は細々と技術を守り、ドワーフは種として存続し続けるであろう。」
「そうか。俺の技術は後世にちゃんと残るんだな。子供も授かるのか?」
「ああ、ちゃんと授かるぞ。後に神となったそなたへ帰依し、神官として鍛治神様の教えを説くであろう。それ故に、そなたのルートで回復魔法が過去の遺産にならずに済むであろう。」
「そうか。回復魔法が辛うじて残るか。」
「リンちゃん。そなたは実に面倒見が良いからこの旅が終わったらミサトの良き相談相手となって天寿を全うするであろう。ただ、後悔したくないのであればなるべく早いうちに願いを叶えて貰うと良いであろう。幸太郎は鳥の様に自由故、幸太郎の羽を休ませる為にそなたは知恵を働かせねばならない。もし、そなたが伴侶を得れば喜んで幸太郎は危険な事から足を洗うであろう。その者はまだ此処にはいないが近い内に。思いもかけない場所から現れるであろう。自分磨きを怠るでないぞ。」
「はい。肝に命じます。」
「アメリア殿。お初にお目にかかる。そなたはこの旅で唯一命を落とすであろう。そなたの真の使命はこの現世には無く、失われし神々と新たな神々との間との縁を取り持つ事になるからだ。だが、旅に出たいのであれば貴方が心を寄せる人物が必ず障壁になるだろう。まずはその者を納得させよ。」
「…ルーベルトさんが?」
「左様。あの者は先程も見せた通り、自分の考えを通す為ならそなたを遥かに上回る知識でそなたに有無を言わせないであろう。それ故に目が見えずとも人に頼らない様にせねばならない。今後一切甘えを捨てなければあの者は納得しない。説得に失敗したとしても知恵を絞るのだ。幸い、ルーベルトは眠りについている。此処にいる者達の力を借りればルーベルトも諦めがつく。ヴァルキリーは人と時を同じくする上に女児しか生まれぬ。そなたはが役目を果たす為に神の身許に行けば、既に産まれているヴァルキリーを全員神の元に連れて行くであろう。ヴァルキリーは人から産まれなくなり、ローグフェルグは人々から忘れ去られるであろう。それ故に、回復魔法の魔道書は必ず残さなければならない。知識が失われるのは文明の大いなる損失に他ならない。ドワーフの神官達に掘り起こされるまで長い時間がかかるであろう。それ故に、この袋に全ての蔵書を中に入れ、厳重に保管せよ。」
「承知致しました。必ずや、御忠言に従い回復魔法の全ての蔵書を保管致しましょう。」
祖父は、アメリアさんに特製のアイテムバックを渡していた。時間経過しない物だろう。祖父謹製のアイテムバックの容量は無限大だ。きっと、回復魔法の原本は守られていくだろう。
「この場にいないが、ナスターシャの一族は一時の快楽の内に突如滅ぶ定めじゃ。そなた達の悪戯の度が過ぎてナスターシャは月から動けなくなるだろう。だが、そもそも月には酸素というものが無いという事実をナスターシャは知らぬ。そなた達の良心が痛むなら現地にエンジニアを派遣してやると良いのだが、婿殿にした無体の所為で誰一人として助けようとせず、彼女達の為に涙を流す者は誰一人としていないであろう。機械はいずれ必ず壊れる。婿殿の描いたシナリオ通りに事が運んでしまうであろう。」
「機械が壊れるってありますが、不死族に機械に精通している者は一人もいないのですか?お祖父様。」
「快楽を至上命題としてる彼らにそもそも働くと言う概念は無いであろう。危機感を持つ者も一人はいるであろうが、知識を得る速度よりも滅ぶ速度の方が圧倒的に早いから間に合わないのじゃ。」
「ナスターシャ達が月に残る理由は何でしょうか?」
「表向きは亡くなられた先人の墓守という理由じゃが、彼等は人々の監視が無い事を良い事に好き勝手するから放置しても問題はない。この戦いが終われば、知識を有する人は全員地球に帰還するであろう。月の民は再び地球の民となるのじゃ。なれど、良心が痛むなら機械を多く配置すると良いだろう。彼等が滅んだ後、機械達は忠実に墓守をするであろう。じゃが、所縁のある者の墓はこの地に移すべきであろう。勿論、そなたの友人達の遺骸もじゃ。月は科学の力でなければ行く事も叶わぬ地。魔力で出入り出来るのもミサトと導師として大成したルーベルトのみじゃ。機械が壊れてなければ出入りは可能だが、不死族が消えた後は月への出入りは一切罷りならぬ。月にある機械達は戦乱が多かったが故、既に限界を迎えておる。いつ壊れてもおかしくは無いのだ。婿殿の持つAIがあるから生きる分には問題ないという程度に過ぎぬ事を忘れてはならない。そのAIも機械故にメンテナンスが現地で出来なくなると自然と壊れるのだ。人が生みし科学の力には自ずと限界が付き纏う。人々が考える事。学ぶ事を辞めれば人族は機械達の奴隷として生かされる定め。我らエルフとドワーフはその愚かな生き方を反面教師にする故にいずれ、多くの人々から距離を置く事になるであろう。」
「…………」
祖父の最期の預言に戦慄を覚えた。なんて恐ろしいのか。科学に頼り切った人々の末路だ。今後は文明と適度に距離を置いて付き合えという事なんだろうと私はそう思った。




