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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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新たなる精霊王達 2

「嘘だろう…………」

「もしかして、間に合わなかったのか!」


 眼下に広がるのは失われた筈のセレネティア大陸。私達はスペースシャトルが墜落した地点に降り立った。

 私はイヴァンの手を取って走り出した。それに続く様に一人、また一人と続いた。嫌だ!嫌だ!私の心は激しく乱れて悲しみの余りどうにかなってしまいそうだ。私は急いだ。嘗て行くのさえ、守るのさえ不愉快に感じていた故郷の村に。目の見えないアメリアさんはルーベルトがおぶさってた。長い迷いの森を抜けて村の中に入った。そして、一番大きい家の前で大好きな祖父がアイスコフィンの横で待ってくれていた。


「お祖父様っ!!!」


 私は祖父に抱きつこうとした。だが、必死に手を差し出したがその手は無情にも身体を突き抜けた。


「ミサト。もうそなたを抱く事は叶わぬ。今の我はただの思念体に過ぎぬ。」

「っ!」

「やはり早まってしまったのだな!何故だ!ジークがしている事は、ミサト様だけでなく此処にいるみんなを全員傷つける行為だって分かってやってるんなら僕は許さないよ!」

「やはり、そなたも来てしまったか。アル。」

「当たり前だ!此処にはバイソンだって幸太郎だっているんだ!ちゃんと説明するんだろうな!自分の都合で散々周り巻き込んで置いて自分はさっさと退場かよ!」

「…正直、皆には済まないと思っていたよ。だが、綾女の最期の願いを聞いてな。これ以上、苦しみたく無いの。そう言われてしまっては死を受け入れるしかなかった。」

「…………」


 祖父ならそうするだろうなぁって思った。大事な人で、本当に愛するが故の苦渋の決断。だけど、何故、残される人の事を考えて下さらなかったのか。私は溢れる涙を袖で拭いた。


「お祖父様、お伺いしたい事があります。お祖母様の病気の件は分かっております。ですが、お祖父様にしては余りにも短慮すぎるのです。お祖父様は単にお祖母様を追いかけたのでは無い。何か他に事情があったのではありませんか?」

「それはの、ミサト。自分の妖精達を呼べば分かるのではないか?」


 私はいつもの通りに妖精達を呼んだ。何時もの通り8精霊達はいるんだが、後一人。妖精王がいない。エロじじいだけど妖精の長たる人はそう言われてみたら今朝から見てない事に気がついた。


「まさかとは思うのですが…………」

「そうじゃ、本来なら天変地異の時に死すべき定めだったのじゃ。精霊王は。じゃが、それを我の魔力で生かしていたに過ぎぬ。彼奴が死ねば他の妖精達が死に絶える故。それ故に妖精王は猶予を求めた。新たなる世界でも妖精達を絶やさぬ為に。妖精魔法使いが困らぬ様にとの配慮じゃ。」

「……………じゃあ、精霊王が居なくなったのも。」

「我が魔法を使ったが故に精霊王も同時に崩御なされたのじゃ。精霊王は亡くなる前にミサトに全ての力を託しておる。妖精王は生まれた土地で眠りたいと願った。それ故に、我は願いを叶えたのじゃ。婿殿には感謝している。よくぞあのエロじじいから孫を守ってくれた。もう、この様な魔法は必要ない。婿殿の妖精避けは晴れて解除となったであろう。」


 イヴァンにかけられていた魔法陣がパリン!と割れた。


「そしてな。婿殿の妖精避けが消滅した時点でそなた達は知るであろう。この世界の為に生まれた新しい精霊王達の存在に。」


 私達はみんな目を丸くした。私の目の前には4柱の新しい精霊王達が居た。みんな生まれたばかりの赤ん坊だけど、私はその中に祖父と祖母がいるのに気がついた。


「お祖父様もお祖母様もいる…かわいい。」

「何か見た事あると思ったらショーンとネイサンだ。これ。見てみろよ。アーク。」

「……………こんな事ってあるのか?俺、ひょっとしてとんでもない奇跡を目の当たりにしてるんじゃないのか?」

「…………」

「そうか。そなたにも分かったのか。綾女の願いが。真の友達達の願いが。みな、亡くなる直前に願ったのはそなた達の力になりたいと願ったのだ。そして、我も願った。2つの世界が混ざってしまった結果、神々が消えて恩恵が消えてしまいつつある世界で少しでもミサト達の力になりたいと。ただ、誰にも相談せずに我は魔法を行使してしまった為に我は現場で働いてる妖精魔法使い達に随分と迷惑をかけてしまった様じゃ。救援活動中だったのに誠に申し訳なかった。」

「いえ、すぐ側にルーベルトが居てくれたのでルーベルトが略式で祝福を与えたら直ぐに力を取り戻して作業が再開出来た事で事なきを得てますが。教えて頂けないだろうか?何故、僕がミサトの力で助けられ、ルーベルトの力に異変が起きた訳を。」

「貴殿がエドワード殿か。評判は以前から予々聞いておった。ルーベルトに異変が起きた訳じゃな。それはミサトの力が覚醒したからに他ならない。我が時間逆行魔法を行使した瞬間、力に目覚めたが故に無意識の状態でもこの後起こる混乱が分かった様なのじゃ。まぁ、無意識で無ければ今頃この場にエドワード殿はいらっしゃらない筈であった。落下速度にルーベルトが追いついてなかったからのぉ。そして、ミサトはルーベルトに精霊王の亡骸を託す事で事で事態を一時的に終息する様にお願いしたのではないか?」

「じゃあ、僕が何も教わってないのに祝福を与える事が出来たのも…………」

「それは、ルーベルトが妖精魔法使いの長たる『導師』の資格を持っていたからなのじゃ。」

「ジーク、うちの子を卑下する様であれなんだが。天変地異以後『導師』なんて一人として生まれてなかったじゃないか?それに、妖精魔法の勉強なんて殆どせずに飛行機に憧れて軍隊に入る様なエルフにあるまじき軍事オタクだぞ?そんな奴が何で導師になれたりするんだよ!」

「それはのぉ、生まれ持っての天賦の才をアルビノだったが故に見ようとしなかった我々大人の責任である。オーストラリアでミサト達が遭難した件を覚えておるか?妖精の庇護を頼りにミサト達を探し当てたのは後にも先にもルーベルトのみじゃ。ミサト達の捜索の為に投入された妖精魔法使いはルーベルトだけではなかった筈じゃ。他の仲間たちも妖精と友達になれさえすれば妖精の庇護は得られるが、誰一人としてたどり着いてないのじゃ。今後は、この4柱のうちの1柱がルーベルトと終生一緒に付き従い、代々導師になる者達が継承していく事になるだろう。さぁ、ルーベルトよ。その赤子達に手を差し伸べよ。」

「…既に僕のパートナーは決まってるんですよね?」

「如何にも。」

「…我の願いに応じ、導師たる僕の手を取るが良い!新たなる精霊王よ!」


 ルーベルトさんは術式を唱えると、1柱の赤ちゃん精霊王がその手を取って話し始めた。


『はじめまして。導師ルーベルト。俺の名前は雪月風花を司る四精霊王が一人。秋の精霊王ショーンさ。精霊になったらすっかり思考が快楽的になっちゃったけど、宜しく!」

「…口調が生前のまんまってのがのがまた。」

「…んだな。有り難みもへったくれもないのがまた。」

「本当に再会した途端、失礼極まりないな!イヴァン、アーク!」

「まぁまぁ、落ち着いてよ。ショーン。僕たちがまずやらないといけないのは嘗ての精霊王の契約を一度破棄して新たな術式を構築し直さなければ全ての妖精魔法使いが困る事になるんだよ。今、ローグフェルグでは救援活動の真っ最中なんだ。だから、昨晩の様な事態になるのだけは避けなければならないんだ。もし、僕が陛下と何ら遜色ない力を得る事が出来たと仮定したならこういう芸当も行ける筈。効果範囲の指定はセレネティア大陸を除く全域。時間を止めるよ!ストップ!」


 私達は空を見上げた。雲の流れが止まっていた。一瞬、魔力の枯渇が起きたのかルーベルトさんはその場で少しふらついた。アメリアさんが慌てて魔力供与しようとしたが。


「悪いが、君が魔力供与した位では到底賄える魔力の量じゃないんだ。君が倒れちゃ困るから気持ちだけ受け取っておくよ。」

「…………」


 アメリアさんが大人しく引き下がったのを確認してルーベルトさんは地面に魔法陣を描き始めた。白いチョークを何本も取り出しながら描いていった。随分と手慣れた様子だ。かなり勉強したんだろう。祖父は余りに正確に術式移行の魔法陣を描くものだから。


「大人達は全然妖精魔法を教えていなかったと聞いたが?」

「はい。僕は軍隊に入ってから妖精魔法を習いました。エルフなのに妖精との契約の仕方さえ知らなかったので教官からも同期からも随分と白い目で見られたものです。まぁ、高校卒業してから軍隊に入ったから他の人は成人してたかもしれませんが、僕はエルフで未成年だったので柔らか頭だったのが功を奏したと言いますか。」

「随分と苦労をしているのだな?」

「まぁ、それなりにですが。普通に軍事訓練をするだけでも僕には火傷が付きまといましたから。日焼け止め塗っても焼けて一時期包帯塗れだったから何度も母さんからは辞めるように言われたんだけど、この苦労があったからこそ今の僕がありますし。」

「その術式。見た所、2回分書いてあるが。」

「ええ。僕はナスターシャさん関連も必要だと思ってます。イヴァン博士相手に心理戦で勝つ女なんで自重はしません。精々、地獄を見て頂きましょう。対価で支払った以上のエルフを求められても困るし、僕にも色目使う様な奴ですから。」

「まぁ、お手並み拝見といこう。」


 そう言って、ナスターシャさんにかけたと思われる術式を書いた用紙を祖父から貰ったルーベルトさんはそれを1枚の紙に新たに書き起こした。イヴァンはルーベルトさんに何やら色々囁いた。


「ナスターシャの弱点リサーチしてるのか?」

「もちろん。」

「んじゃ、……………して……………して……………な感じな?出来そうか?」

「もちろん可能ですけど、……………した方が面白くないですか?」

「おお、面白い事になりそうだなぁ。今から東京に着くのが楽しみだな。」


 そう言いながら、イヴァンもルーベルトさんも顔が実に邪悪だ。ルークさんが思わず。


「絶対アイツら碌な事考えてねぇぞ。」


 ってぼやいた。先ずは、精霊王の亡骸から契約関連を全て新たな精霊王に引継いだ。これによって、私達以外の妖精使いの契約先は秋の精霊王が契約を起こして今日以降も普通に妖精魔法を使える様に改変した。そして遺体は祖父に引き取られてその場で世界樹に生まれ変わってた。次にナスターシャさんにかけられた魔法関連をルーベルトさんは引継いだ。何やらオマケが付加された様だがみんな一様に顔を顰めてしまったので私は知らない方が得策だと思って聞かない事にした。

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