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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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夜を徹して。

 38年振りの再会に喜んでるイヴァン博士達は積もる話しもあるだろうからとこの日の晩はファルメリア宮殿に博士達を送り届けてから僕と大佐とバイソンさんは夜を徹して救援活動を続行していた。勿論、アメリア様も助かる人がいるかもしれないと言う事で待機していらっしゃる。時間が経てば経つ程に生存率が下がるから、時間との勝負だ。大佐はイギリスから来た救援部隊と合流して陣頭指揮に当たっていらっしゃる。バイソンさんは身元が判明した遺体にネームプレートを簡単に作って入れていってた。どうも、材料は大破した飛行機の部品を沢山提供されたので材料は少しで済むし、問題無いみたいなんだ。僕は、アメリアさんの魔力供与のお陰様で何時もなら枯渇する筈の魔力の心配をしなくて済んでいて。なので、亡くなられた方々をアイスコフィンに入れてプレートを固定する作業をしていた。アメリアさんは魔力供与の影響で僕の位置が分かる様で、目が隠れているから分かりにくいが何だか嬉しそうなのは伝わった。怪我人は続々と運び込まれ、同様に亡くなられた方々も隊員の方々の手で次々運び込まれていた。今回、災害派遣されて来たのは何れも軍隊だ。だが、天変地異以後に生まれた子供達の中から魔法に秀でた子も生まれる様になったから、最近はこう言った災害派遣には魔法使いが多く同行するんだ。かく言う僕もそれだからね。


 ライトの魔法で照らされた景色は凄く幻想的なのに、突きつけられた目の前の現実は僕の心を暗くした。


 そんな中、流石にこの様な作業に慣れていないアメリアさんは軽い目眩を起こしたみたいで。回復魔法をかけるべく立ち上がった瞬間にふら〜っとなったから僕は慌てて受け止めた。腕の中の尊き人は想像以上に華奢だ。


「大丈夫ですか?アメリアさん。」

「……………はい。大丈夫です。」

「いや、大丈夫じゃないでしょう?本当は。責任感じて頑張っているだけなんでしょう?僕は軍人なんで、命令さえあればどんな役目にも耐えられる様訓練を積んでますが、あなたはそうじゃ無いでしょう?ただの民間人だ。幸いなことにここは回復魔法使いの聖地だから、あなたの代わりはいくらでもいますし、僕たち軍隊からも回復魔法使いも妖精魔法使いも派兵されてます。救援活動は最後の一人が助け出されるまで続けられます。明日以降も続くんです。ですから、今日の所はもう休んでください。」

「いえ…いいえ。その様な訳には…………」

「じゃあ、こう言えばあなたは休んでくれますか?現場の指揮官として僕はあなたに休養を命じます。従わない場合は強制的に連行しますから!」


 僕は、ひょいっとアメリアさんをお姫様抱っこした。フルプレート着てる筈なのに、想像以上に華奢で軽かったのに驚いた。アメリアさんは必死になって下ろしてください!と抗議の声を上げるが、そんなものは無視だ。近くの民家の扉をノックして僕は事情を話してアメリアさんの為にベッドを使わせてくれないかとお願いしたら快く承諾してくれたが、いつまでも聞き分けのないアメリアさんに家の方は魔法をかけた。


 急に意識を手放したので、僕は恐る恐る家の方にどの魔法をかけたのか聞いた所。


「神聖魔法をかけました。スリープという魔法です。いつもならこの様なわがままを言うお方では無いのですが、姫さまがご迷惑をおかけした様で申し訳ありません。」

「いえ、僕が強引に連れて来ましたから。」


 僕は家の方の案内を受けて一番奥にある寝室に案内され、眠りについたアメリアさんを寝かせてから僕は後の事を任せてから家を出ようとして僕が対象にリンクされているのを思い出した。流石に不味いと思って。


「あの、僕、リンクって魔法かけられてるんですが、解除方法ご存じないでしょうか?」


 すると、此処でもバイソンさんがした様な反応が返って来たが、幸いな事に術者が眠ってるのでご自分で解除を宣言すれば大丈夫ですよ。って事だったので解除を宣言して、魔法陣が壊れたのを確認してから僕は現場に戻る事にした。



 へえ。僕は驚いたね。あの温厚を絵に描いたような男が心配の余り、人目も憚らずアメリア姫を怒鳴るなんて誰が想像したであろうか。指揮官を名乗ってたが、彼が所属するオーストラリア軍から災害派遣はなされていない事からも、無理矢理アメリア姫を休ませる為に使った方便なのは明らかだ。彼女はどうもルーベルトに想いを寄せ始めている様だが。アメリア姫は神様候補生。従って、恋愛したとしても結婚なんて御法度って立場だった筈だ。その辺はキリスト教の神父達と考えが似てるかもしれない。要は、神に生涯を捧げ生涯独身と貞操を維持する事を求められると言った塩梅だ。ルーベルトが想いを寄せている相手はエルフの女王ミサトに他ならぬ。まぁ、もう少し出会いが早ければ良かったがミサトを取られたく無い一心でイヴァン博士が手を出して妻にしてしまった後だからどうしようも無かっただろう。責めて、イヴァン博士に出会う前だったら性格的には草食系男子だし温厚だし、いざと言う時には頼りになりそうな男だっただけにまだ勝算があっただろうに。イギリス空軍に研修に来てた時に読んだ報告書を見る限りではミサト程では無いが、彼がアルビノだったから随分気味が悪かったのか、虐めを受けて育ったと言う。軍に所属する様になれば魔法も使えると言う事もあってか頭角を表すのに時間はかからなかったそうだ。日焼けとの戦いは容易では無かっただろうに。オーストラリア空軍復帰前に何名かのパイロットと一緒にいたのは遠目から見た事がある。あいつ、羽あるし白いから目立つしな。元から飛べる種族だったから簡単な操作方法を教わっただけであっという間に乗りこなせる様になり、スペースシャトルのパイロット試験に多くのベテラン勢を押し退けて受かってしまった程だ。油断したら僕が落ちて参加出来ないってオチすらあったのだ。


 どうやら噂の主が羽で飛びながら大急ぎで現場に戻ってきた。エルフだから真夜中に光を纏って飛ぶ姿は本当に美しい。男子にあるまじき誉め言葉だが、話せば仔犬。歳は僕より10歳年上なのに物凄く騙されやすい。そして何よりも洞察力があって賢い。お陰で僕のお気に入りになってしまったよ。彼は現場を飛び回りながら用事伺いをしている様で、どうやら僕を呼びに行く様申しつかったみたいだ。短い休憩だったなぁと苦笑いしながら僕はルーベルトが来るのを待つ事にした。


「大佐っ!」


 そう言いながら空の上から降りて来た。


「どうした?ルーベルト。」

「どうしたじゃありません!撤去してた筈の岩が振動で崩れて救援部隊に怪我人出てるから大佐呼んできてって頼まれたんです!もう、面倒だから空から行きますよ!」


 そう言って、座ってた僕を立たせて片手で僕を小脇に抱えてあっという間に上空に飛び上がった。眼下に広がる被災地は魔法の光に照らされてまるで天の川だ。不謹慎だが。


「綺麗だなぁ。」


 そう僕は呟いていた。だけど、何時ものルーベルトとは少し違う辛辣な言葉が返って来たから驚いた。


「僕には、命が消え行く光にしか見えません。」

「…ルーベルト?お前…………」

「…………」

「…不謹慎だったな。」

「いえ、良いんです。僕が、ただ無力なだけですから。」

「何を馬鹿な事を言ってるのだ?そなたが無力なら僕はただ王族に生まれただけの。命令する事しか出来ぬ愚か者に過ぎない。…何を思ってそう言いだしたのかは知らぬが、先程の事を悔いていると言うのであれば、ルーベルトは間違った事など何一つしていないと僕はそう思うよ。」

「……………ご覧になってたんですか?」

「ご覧も何も。あれだけ大声で怒ってたらそれは悪目立ちはするであろうな。」

「…………」


 ルーベルトはやはりルーベルトだったみたいだ。偉くらしく無い事をしているなぁと思ったら、どうもあれで良かったのかどうか判断しかねたのだろう。


「そなたはいざと言う時にはちゃんと正しい判断が出来ると言うのに、今みたいに自信なさげにしてると部下が大丈夫だろうかと不安になってしまうぞ。そなたはまだまだ成長するのであろう?ならば、指揮官の心得は是非僕が教えなければならないな。」

「大佐っ…………」

「ああ、でも条件はあるな?僕は、友達になりたいから名前で呼んで欲しいんだってお願いした筈だが?」

「えっ、僕は。普段から階級で呼ばないとですね。お偉いさんの前でやらかしそうで怖いから勘弁して下さい。ってお願いしましたよね?」

「知らぬな。間違えたらその時はその時であろう?」

「それはエドが王子様だから言えるんであって、一般庶民の僕がやったら首が飛びます!首がっ!……………ってあああああっ!」

「……………くくっ!最早手遅れであろう。やはり、そなたと一緒だと僕も楽しくてな。職権濫用してでも今後は名前を呼んでもらうとしよう。そもそもな、大佐だ王子だと言われるのは僕は嫌いなんだ。一人の人として見られてない気がするからな。僕は立場あるから今までは諦めていたが、そなたの口から名前を呼ばれぬのはもう我慢がならぬ。」


 ルーベルトは我儘な奴がここにもいたよ。と言いたげに僕を掴んでた手を放して頭を抱えたが、そうなると僕は言わなくても分かるな?普通に地上までダイブだよっ!!!


「うわああああっ!」

「しまった!エドっ!!」


 必死になってルーベルトは僕を追いかけたが、落下速度の方が速く。ああ、逝ったな。っと思った瞬間。僕の落下は突如止まり、ルーベルトが追いつき、僕は空中で抱きしめられた。


「……………良かった。無事で。」

「いや、ちょっと待ってくれ。ルーベルト。僕は空を飛べない種族なのに何故、自力で浮いているんだ?」

「あっ…………」


 ルーベルトが指差した先にいたのは他でもないミサトだった。美しい羽を出して、シーツを羽織っただけの。その姿はまるで現世に降り立った妖精女王だ。その顔は慈悲深く。神々しい。僕たちを見て心底安心したんだろう。何も言わず頷いた後に突如消えた。


「今の、一体何だったんだろうか?」

「うーん。まさかとは思うんだけど、僕たちは陛下の覚醒の原因を作ってしまったかもしれない。」


 その後、僕は地上に降りて陣頭指揮を取って速やかに事態の収束を図った。僕の隣にはちょっと落ち込み気味のルーベルトがいて。だけど、ルーベルトにも異変が起こってる様で本人だけでなく僕も困惑を抱えたまま捜索活動を続けてそのまま朝になり、改めてみんなと合流する事になった。

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