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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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懐かしい人。

 昼から日本とイギリスから救援物資と共に救助隊が駆けつけてくれたらしい。

 イギリスの第3王子のエドは駆けつけて来た隊員達を激励してから俺たちの所に戻って来ていた。俺たちは昼休憩の後に再び捜索に戻る事になったのだが、どうやら俺たちに来客がある様で。余分に作ったピロシキとスープをみんなに配布してご飯を美味しく食べてたら随分と見た事ある方が訪ねて来られた。随分と小さい印象があるが、あれ?誰だっただろう?

 その謎は簡単に解けた。リンちゃんが素っ頓狂な声をあげたからだ。


「何であなたが此処にいるのよ!父さん!!」

「楽しい旅をしている様だから、お邪魔させてもらう事にしたよ。麟太郎。」

「そのダサい名前、やめて下さらないかしら?父さん!」


 アークがなんか見覚えあるんだけど誰?って聞いて来たから多分、幸太郎じゃないかと言ったら驚いてた。かく言う俺も驚いた。小さい頃に見た精悍さはそのままにすっかりおじいちゃんになっていたから。カメラを持っていたずらっ子の様な風貌に懐かしさの余り、俺とアークは幸太郎の前に歩み寄って。


「「幸太郎っ!!」」


 って呼びかけていた。幸太郎は幼い頃の時の様にぎゅうっと抱きしめて。最後に別れたのは8歳の頃だからかれこれ37年振りの再会になる。


「心配していたよ。二人とも。すっかり大きくなって。ドナルドとリュウの件で精神的に参ってないか心配で。居てもたっても居られず。この老いぼれは来てしまったよ。俺がいればどんな事をしてでも説得したものを。辛かったね。我慢せずに泣きたいだけ泣くと良い。」

「「…………」」


 大の男が2人してみっともないと思ったけれど、久し振りに見た幸太郎は全然変わっていなかった。懐かしさを禁じ得ない。みんな空気を読んでくれたみたいで、黙って俺たちを見守ってくれていた。



 望月幸太郎。 戦場カメラマンでありながら数多くの人道支援をして来た事で知られる日本が誇る偉人だ。月の内戦時代に出版された本は世界を股にかけた大ベストセラーとなって、その売り上げと印税は全て未来ある子供達の為にと自分の懐に入れず。実に高潔な方だというのは聞いた事があった。イヴァン少年との出会いは有名な話で僕も読んだ事がある。最初は大人を全く信用していなかったイヴァン少年が停戦後に本を見つけて、何故、死ななければならなかったんだと最後の6人と共に泣き出してしまったエピソードは不覚ながら僕も泣いてしまった程だ。目の前にいる人は、本に出ていた人と同一人物であったという事実に改めて衝撃を覚えた。時と言うのは本当に残酷だ。平和の象徴であった筈の人は、自分の大事なものの為に今、命を賭けて戦い続けているのだから。

 どうやら、少し泣いたらスッキリした様だ。僕は、暫く空気になっておく事にした。



 俺とアークを除いた全員はいつの間にか作業に戻って行った様だ。俺たちの再会に水を差すのは憚られたんだろうな。とは言え、此処は邪魔になるって言うので、俺たちは小高い展望台まで足を運んでみた。空は澄んだ青空だが、眼下にはハリケーンの爪痕が生々しく残っている。今なお、多くの人が生死に喘いでいる時に俺たち遊んでて大丈夫なのかと心配になったが。


「日本の救助隊を多めに編成して貰ったので、お前達が抜けても問題ない様にお願いしたんだ。ジークにな。あいつ老けないから出会った頃とそのまんまなんだよ。だけど、そんなあいつも最近眠る時間が増えたとぼやいていたよ。綾女さんの看病大変なのになぁ。サポートの手を借りながら良く頑張っているよ。」

「そうなんだ。あれから幸太郎はどうしてたんだ?」

「ああ、赤ん坊連れて帰ったから案の定、揉めてな。親には、捨て猫拾う感覚で赤ん坊なんて連れて帰るなって怒られたけどさ。俺、イヴァンとの約束だけは破れねぇからって啖呵切ったら勘当されちまってな。でも、子供養わないといけないから色んな仕事請け負って育てきったぜ。赤ん坊連れて帰って来た翌年に幸いな事に事情を知った今の嫁さんに出会って結婚したんだよ。嫁さんの実家がたまたま忍者の末裔だったってだけでな。嫁さんとの間に子供3人出来たんだけど、最後の最後に生まれた男の子がまさかああなるとはなぁ。完全に上3人の娘の影響をもろ受けてたのに俺は取材で家を開ける事が多くてな。気づいた時には矯正?何それ美味しいの?って状態だったよ…………」

「「…………」」

「うーん、何って言って良いか分からんが。迷惑かけてごめんとしか…………」

「いやいや、気にするなって。あの赤ん坊凄い美人さんでな。俺がイヴァン達に会いに行くって言い出したから会いたそうにはしていたが、家庭があるんで連れて来ることは叶わなかったんだ。結婚した時の写真持って来たから見るか?」

「ああ。」


 俺たちは数年前に結婚したって言う写真を見せてもらった。栗色の髪の毛と目が印象的な美しい女性だった。


「へえ。この子が助けた赤ちゃんだったのかぁ。懐かしいなぁ。」

「そうだな。こいつさっさと捨てろってお前と良く喧嘩したよな。でも、絶対首を縦に振らなかったのだけは覚えているなぁ。ご飯無くてびいびい泣いてどうしようもなくても、見捨てなかった。お前が幸太郎と交渉したって聞いた時にはおいおいって思ったけど。幸せになって良かったよ。」

「…でさぁ、何で此処に来たんだ?俺に会いに来ただけじゃないよなぁ?」

「ああ、今回はカメラマンとして来たんじゃないんだ。誰かさんが死にたがるから、保護者として呼ばれちまったんだよ!全く。俺は保護者が必要な年齢じゃないだろうって言ったんだけどさ。お前の側にいる人にお前、散々心配かけたんだってな?イヴァン。聞いたぞ?」

「…………」


 今まで保護者なんて呼ばれる様な事はした覚えがない。幸太郎の名刺に誓って。だが、隣のアークはお腹を抱えて笑いだし。


「イヴァン、年貢の納め時が来たな。ククッ!」

「何だよそれ!俺はそんなに…そんなんじゃ。」

「んじゃ、この麟太郎の報告書。お前どう説明するつもりなんだ?」

「…………」


 愕然とした。報告書はオーストラリアで失語症を克服した直後に吐露した代物だ。誰も聞いてないから好き放題言ったが、よく考えればあの場に既にロシア人を母に持つルーベルトがいたじゃないか。


「確かに精神的に参ってたのは理解する。でもな、流石にこれは看過できないって事でルーベルトさんって人はお前の奥さんに死に直結する単語をお前が口走ったら絶対に目を離すなって言い渡してるらしいぞ。お前、そもそも女の気を引きたい為にこんな事口走る様な奴ではない。恐らく、月で軟禁されてる頃から自殺を何度も試みて死にきれずに今日まで来てるんじゃないかと俺は踏んだんだ。」

「…………」

「俺がお前の事を世界に紹介してなければ、戦争の道具を作る事も、政治の道具にされる事も、大事な友達を死なす事も無かったんじゃないか。今日はどうしてもそれを謝りたくてさ。申し訳なかった。イヴァン。」

「…頭を上げてよ。幸太郎。俺…俺…幸太郎がいなかったら今の俺は無かったんだ。そうだ、俺。此処でかけがえのない宝物見つけたんだ。後で俺の父さんって事で紹介したいんだ。良いだろ?幸太郎。」

「ああ。もちろん、誰かは知ってるよ。ジークの孫娘を射止めたんだってな。聞けば、聡明で可愛いお嬢さんなんだって?岡山まで出向いた時に自慢されたよ。ジークにも婿殿って言って可愛がって貰ってるそうじゃないか。」

「そうですね。色々ご迷惑ばかりおかけしてます。でも、お元気だと聞いて安心しました。」

「日本にはまだ来られそうも無いのか?」

「早く行きたいのはやまやまなんですが、何分にも人手不足で。俺が怪我したら忽ち旅が中断なんて事もザラなので。流石にそれじゃ困るので別の手段を考えてはいるんですが。まぁ、早々に手配出来るものでは無いらしいので。なので、実際問題、次の場所に行く手段。飛行機もハリケーンで大破しちゃって。」

「じゃあ、後、人員的に欲しいのはどんな感じなんだ?」

「複数名の機械弄れるエンジニアと回復要員とハッカーですね。欲しいのは。後はまぁまぁ人数集まってはいるんで。此処に来たのは俺がアークの奴に馬鹿力で右肩砕かれて治らないからって事情で此処に寄りましたし。」


 これには、流石の幸太郎も目の色を変えた。ザマァ。


「オィ、それ本当か?アーク!」

「えーと、そ、それは…………」

「お前、小さい頃に訳の分からない剣持ち出した時に俺は注意したよなぁ?何って言ったか覚えてるか?」

「ええと、無闇矢鱈と力を使って誇示するなと。でも!俺、イヴァンがこれ以上傷つくのも思い詰めるのも見たく無かったから!だから!」

「お前の気持ちは痛い程分かるよ。アーク。お前が反乱軍立ち上げたのもイヴァンを自由にしたかったからって理由らしいな?その気持ちは大事だ。俺は良くやったと褒めてやりたい位だが、自分の意思を押し通す為にイヴァンを傷つけたのは論外だ!世の中やって良い事と悪い事があるぞ!反省しろ!アーク!」

「ご、ごめんなさいっ!」


 ああ、この感覚実に懐かしい。だけど、俺は気になって聞いてみた。


「ねぇ、幸太郎。この後どうするんだ?」

「どうするもこうするも。俺は仕事で来てるんだから月まで行ってお前ら泣かした落とし前つけないと気が済まん!もちろん、戦闘は出来ないが、お前らの親としては到底許せるものじゃ無いからな!ダメって言われても付いて行くからな!」

「「…………」」


 ああ、やっぱりこうなるんじゃ無いかと思ったさ!リンちゃんとのバトルが怖ええ。って俺たち二人はそう思ってた。別な意味で時間が止まって欲しかったさ……………

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