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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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さよなら、友よ。2

 翌朝、お陰様でヒールを何度かかけたら腫れと痛みが落ち着いてきた様で。

 イヴァンは服が着られる程度になった。ただ、それでも痛々しい状態なのは変わらないので今日は三角巾でちゃんと固定する事にした。それも、いざと言う時にアークさんを助けられる様にそこに実弾が入った拳銃を忍ばせている念の入り様だ。右肩を被弾して以降、アークさんの馬鹿力の所為で何故か回復しないと言う状態だったのでみんなかなり心配していて。だけど、責任を感じているイヴァンはこの現実と向き合うつもりでいるみたい。ただ、右手使えないのはかなり不便な様で、イヴァンの出したスーツを着つけるのを手伝った。濃紺の夏物スーツにストライプの柄のノーカラーのワイシャツを着て三角巾の固定後に上着を羽織った。


「悪いな。ミサト。」

「ううん。私、あなたの奥さんだもの。私も一緒に見届けるわ。」


 愛おしそうに目を細めた。見つめあって二人で笑ったが、誰かのノックの音でその雰囲気が一変した。


「どうぞ!」

「おう、入るぞ。」


 入ってきたのは他ならないアークさんだった。


「夫婦の楽しい時間に邪魔して悪いな。」

「いいえ、大丈夫かな?」

「……………なんか用事か?」

「ああ。とっても大事な用事さ。お前さ、小さい時に廃墟になった孤児院で本を探して貰った人の事覚えているか?」

「ああ、覚えている。幸太郎さんが『ジーク』って呼んだ…。ってあれ?最近どこかで聞いた気が。まぁ、良い。覚えているが、その方がどうしたんだ?」

「実はな、その日俺だけに『その日になったら開けなさい。』って言われてこれ渡されてな。俺はこの紙の通りにやってみる事にしたんだ。」


 イヴァンはアークさんから1枚の用紙を受け取った。これは、祖父が個人宛に出す専用の用紙で、その期日にならないと開く事さえ出来ないと言われている魔法の紙だ。


「これはお祖父様の個人宛の啓示の紙。」

「!? そう言えば、ジークフリートだったよなぁ。ミサトの爺さん。」

「ええ、そうよ。これ日本語だから読むの大変だったでしょう?」

「まぁ、その辺は翻訳出来る友達がイヴァン以外だったのが幸いしたんだよ。啓示の紙が開いたその場にたまたまネイサンが居たんだよ。」

「ネイサン?そう言えば、あいつも日本語の有用性に気がついて俺の後に勉強して理解出来る様になっていたっけか。俺が軟禁中の頃の話か。」

「そう。これ、ミサトちゃんでもイヴァンでも読めるんだろ?」

「ああ、読むぞ。『裏切りの足音が近づいている。この紙が開いた直後に啓示を読んだ者にそなたの一番大事な宝物を託せ。さすれば、真の友の所に導かれるだろう。』って事は……………えっ!俺がつまりはお前の大事な宝物を持ってるって事なのか!?」

「と言う訳でな、返してもらいに来た。決闘前に。お前が以前、記者会見で『ガンブレイド』って紹介した剣。」

「…………」




「異空間構築魔法!ザ・ワールド!」


 ナスターシャさんの魔法が宮殿の中に外から全く見えない世界を作り出した。直径1kmの半円形ドームを形成した。私達は中に入った。ただ、術者はそこから動けない制約が付きまとうので、ナスターシャさんは応接間で眠る事にした様だ。私達は中に入った。勿論、尋問と言う理由でドナルドさんも空軍基地から連行されていた。ドナルドさんは真っ先にイヴァンを殺す為に隠し持っていた武器を抜いて襲いかかろうとしたが、アークさんが首根っこ抑えてそれを止めた。


「俺は言ったよな?イヴァンを殺したいなら俺の屍を乗り越えてからだってな!」

「…………」


 ドナルドさんの目には最早、明確な殺意しか無かった。


「再会した最初の日の内に致死量以上の睡眠導入剤入れた筈なのにお前、生還したよな?何故だ?」

「それは私が話した方がいいわね。何故なら、祖父の預言がたった今『成就』したからよ。」

「預言……………」


 私は祖父から貰った個人宛の啓示の紙を2枚取り出した。


「正確には、今朝なんだけどね。内容を読ませて頂くわ。『そなたが故郷で介抱した者、その者そなたの終生に至るまでそなたに幸福と幸運を運び続ける事だろう。その者、数多の命を救うが故に友にさえも裏切られるであろう。それ故に、その者が本心を伝えた時点で眷属に入れなければならない。』これがイヴァンに関する預言なの。この預言は既に成就してるの。あなたは殺す気でお酒とお薬を併用した様だけど残念だったわね。私が眷属に指定し、我が夫にした時点で状態異常が10分の1にまで軽減されるのよ。だから、イヴァンは常識の範疇を超えた酒量と薬を以ってしても死ぬ事は無かったの。」

「じゃあ、イヴァン博士の怪我が治りにくいのは」

「そう。残念ながら眷属にした事で弊害が出たの。怪我を治す為に化膿止め服用してた筈なのに治るどころか化膿したでしょ?薬で抑えるのであれば、今後は普通の人の10倍服用しないといけなくなったって事なの。そして、今朝成就したばかりの預言。アークさんに関する預言。読むわね。『預言の紙を持って大事な宝物を引き取りに来る者あり。その者、終生に渡りつがいとなりしそなた達を守る剣となるであろう。その者に祝福を与え、騎士に任じよ。』そして、アークさん。私の前にいらっしゃい。我が眷属とし、騎士に叙任するから。」

「ミサトちゃん、あのさぁ、俺も薬が効きにくくなるとかあるのか?」

「それは無いわ。眷属に指定する時、今まで生きてきた人生が反映されるから個人差がどうしても出てしまうの。イヴァンの場合は自分の命を軽視する傾向が反映されてしまったってだけなのよ。」

「…………」


 イヴァンは顔に「バレてたのかよ!」って書いていた。私は愛しい人に笑顔を見せた。ルーベルトがつかさず。


「じゃあ、騎士じゃなくて親友って言ってくれたのは…………」

「そう、騎士と言うポジションは私の場合、指定席ってだけの話だったの。でも、あなたは私にとって初めて出来た同族の友達だったの。だから、これからもずっと親友で居てくれると嬉しいわ。」

「勿論!」


 ルーベルトさんが嬉しそうに笑った所で、アークさんが私の目の前に跪いた。ドナルドさんは事の顛末を見届けさせる為にアークさんから引き継いでリンちゃんが取り押さえていた。私は朧月夜を抜いてアークさんの肩に刃先を置いて宣言する!


「エルフの女王、ミサト・アカツキ・セレネティアの騎士として我が夫イヴァンの親友、アーク・アーカイルを騎士に叙任する事をここに宣言する!今後は我らの眷属として終生我らの剣として生きよ!」

「はっ!この命に代えましても陛下を守る事をここに誓います!」


 剣を通してアークさんの周囲に魔法陣が発現し、吸収された。アークさんは恐る恐る。


「あのさぁ、ミサトちゃん。打ち合わせ通りにしたけど、どんな効果ついたか分かったのか?」

「…ええ。勇敢なあなたには以下の効果がついたわ。私からの妖精魔法に限るけど、補助魔法及び回復魔法の威力が増えたわ。補助魔法に関しては効果時間が3倍増えて回復魔法は3割増し。つまり、私のヒールウォーターであなたは忽ち全快してしまうでしょうね。」

「「「すげええええ!」」」

「あのさぁ、ミサト。何でアークにそんなえげつない効果がついたのさ!」

「あら、イヴァン妬いてるの?それは日頃の行いの差って私言ったよね?」

「ぐぬぬぬ。」


 まぁ、決闘前だと言うのに何という平常運転。ドナルドさんも苛々していた。


「おい!お前ら俺の事無視して和んでるんじゃねぇ!剣を持たないアークなんぞ直ぐにでも殺してやらぁ!!」

「……………悪いな。剣なら持ってるんだよ。」

「!?」


 アークさんは、左手に付けたブレスレットに付いた宝玉からイヴァンから返して貰ったガンブレイドを出したのだが……………


「おい、いつまで拗ねてるんだよ!そろそろ機嫌直せよ!『シルフィード!』」

「シルフィードじゃと!?」


 バイソンさんが驚きの声を上げた!イヴァンがガンブレイドと紹介したそれはどうも魔剣が擬態した物だった様だ。本来の持ち主のアークさんの呼び掛けに応じて剣自体が白く光りを帯びた。形は大きな両手剣で。光りが収束しだしたら剣先から徐々に真の姿を現した。剣自体が両刃で白く光っていた。刃の中央に女性の彫塑がなされた。目を大きく見開かれた。恐らく、アークさんの手元に戻ったと確認出来るまで起きる気は無かったのだろう。バイソンさんはまるで、幻の一振りに敬意を表する様にシルフィードの説明を始めた。


「我々のかつての世界の至宝、意志を持つ魔剣・シルフィードにお目にかかれる日が来ようとは!魔剣・シルフィードは我々の世界の神がそのまま剣に封じられたと言い伝えられる伝説の魔剣じゃ。その姿は神々しい。恐らく、魔剣で会話するのは後にも先にもこの魔剣だけじゃ。じゃが、その神々しさと裏腹で、魂を喰らって主人を求めて放浪すると言い伝えられているのじゃ。天変地異以降消息を絶ってたが、まさか新たなる主人を得ていたとは!」

「あれ、アーク確か、小さい頃から持ってたよな?何でだ?」

「ああ、それならたまたまミイラが道端に転がっていたから拝借したんだよ!こいつが会話すんのはその時初めて知ったんだ。」

「…剣に選ばれたのじゃ。それは。」

『ああ、よく寝た!こんなに寝たのは少しぶりって感じ。ボクにさぁ、あーんなけったいな剣に化けろなんて最初、アーク頭おかしくなったかと思ったけど、久しぶりに見た顔見て納得したよ!キミと話すのはこれが初めてだけど、大きくなったね!イヴァン!』

「……………あ、ああ。」


 イヴァンは剣に声かけられて困惑していた。そりゃあそうだろう。私でも剣が喋ってるって事態がいまいちピンと来ないのだから。


「シルフィードの持ち主はな、我らが嘗ていた世界では『剣聖』と呼ばれておった。復活したんじゃ。ソードマスターが!」

「……………お前、そんなに偉かったんだな。シルフィード。」

『ボクが話しても全然信用しなかったのにさ!ドワーフのおじさんに言われた途端、信じるって一体なんなのさ!』

「まぁまぁ。仲間達の仇がさ。待ってるから。積もる話はまた後だ。2万近い同胞達の仇はこいつだよ。」

『ふーん。本当に殺されちゃったんだ。みんな…覚悟してよね!ドナルド。ボク、アークみたいに生易しくないから。父母に会えるなんて幻想は捨てた方が良い。ボクに食べられた魂は輪廻転生できなくなるからそのつもりでね!』

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