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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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疑惑発覚。

 その夜。私たちは食事を戴きながらイヴァンがやらかした事の詳細をニュースで知らされた。

 イヴァンが月の全施設の生命維持装置を最新鋭AI『エロ』を使って掌握した事が地球政府から発表されたのだ。これによって、これ以上の戦闘行為を止める狙いがあるとのコメントだ。当然ながら月政府はこれに反発したものの、パルスレーザー砲はラスターシャの魔法で完膚無きまでに破壊。その上、イヴァンの手により主要軍事施設を悉く破壊されたニュースが流れると、これ以上の継戦は困難との論調だった。イヴァンを見やるが、イヴァンに何時もの笑顔は無い。ただ、私が心配そうに見つめると嬉しそうに目を細めながら、


「俺なら大丈夫さ!」


 とまぁ、空元気も良いところだった。そんな状態を男衆はきっと心配したのかもしれない。バイソンさんの発案で飲みに行こうぜってなり、それにアークさん達が追随。同席してた殿下やルーベルトまで行こうかって話になったから驚きだ。殿下はこう仰っていた。


「今回はね、あの平和主義者のイヴァン博士が自分の主張を封印してまで当たったんだよ。何でもね、自分からやるって言ったそうだ。ただね、リンちゃんがね。月からの生還者3人の内に軍事政権の内通者がいる事を示唆したからじゃあ、一計を案じようって段取りになったそうだよ。たまたま連絡を取り合ってるのをアークが目撃してリンちゃんに話したそうだ。なので、サイバーテロを知ってるのは僕が聞いた話だとイヴァン博士とリンちゃん。エージェントのカイヤさんって人だけだったらしいんだ。後からその事をアークに聞いたら心当たりなら大ありだからワザとイヴァン博士を遠ざける為に怪力で右肩を砕いて病院にとんぼ返りさせたそうだ。みんなでイヴァン博士を茶化している時に何であんなに力一杯イヴァン博士を痛めつけてるのか気になったんだが、流石に戦時下で生き残ったペアだ。イヴァン博士も何か悟ったみたいでね。でも、本人は「言わんとする事は分かるけどさぁ。だからってわざわざ骨砕く事なく無いか?あれ、絶対今の俺が羨ましいからやったんだ!」だって。面白いよね。あの人達。」

「ハハッ。」


 もうね、乾いた笑いしかない。ただ、そうなると気になる事が。


「それじゃ、誰が内通者かアークさんは知ってるって事ですか?」

「ああ。リンちゃんには教えたそうだが僕は教えて貰えなかった。真実を知りたいから傷心のルーベルトとつるんで行くことにしたんだ。」

「ルーベルトさんが傷つくって何があったんですか?」

「ああ、それなんだけどね。知り合って僅か数秒で振られたらしいからね。可哀想だから聞かないであげて欲しいな。」

「はぁ。」


 まぁ、どっちにしても呼気だけで酔う立場の人間なんで今回は殿下達に任せる事にした。朝帰りした後また酔わされるのかとも思ったけれど、今晩はひとまず自主練しないとだ。明日は難しそうだし。



「「「「「「乾杯!」」」」」」


 の音頭でとあるホテルのバーを借りきり、俺たちは祝宴と洒落込んだ。ぶっちゃけ、そんな気分じゃなかったが今日、もう一つやらないといけない事がある。まぁ、そうなんだろうなとは思っていたが、俺とアークを除いたどちらかが軍事政権側の内通者という事が分かったんだ。分かったのはリンちゃんからの報告だ。たまたま通信してたのをアークが目撃してリンちゃんに教えて発覚した。


「俺は何となくそいつにくっついていたから助かった様なものだからなぁ。だけど、今此処で叩いておかないと俺たちの位置が分かるのはマズイからな。縁切るつもりでやるからイヴァンも覚悟を決めてくれ。」


 そう言われれば嫌とは言えなかった。他ならぬミサトに危害が加わるかもしれないんだ。俺も覚悟を決める事にした。今日はみんなが飲んでいるのは超高そうなブランデーだ。いやはや。これが美味いのなんのって。さすが殿下。出して下さる酒が芳醇でめっちゃ美味い!


「殿下!ご馳走になります!いやぁ、美味しいブランデーですね、銘柄何なんです?」

「ああ、それね。Hardy Perfection 140 years cognac って言う希少価値が高いブランデーで1本軽く200万行くんじゃないかな?」


 それで全員固まった。流石に王族。出すお酒のレベルが違う。


「ええと、殿下?俺たちそんなに持ってませんが……………」


 そりゃそうだ。地球にいた俺たち面々はお陰様でお金には苦労してないが、月から来た奴は無一文だ。アークも流石にそう聞いてきたが。


「ああ、これは僕の奢りだよ。遠慮なく飲んでくれ!」

「ありがとうございます!」

「ゴチになります!」


 人数が人数だから既に頭数で空にしきった瓶をふりふりして殿下が請け負ってくれた。

 でもまぁ、流石に高すぎるのでウォッカのスミルノフを注文した。ショットグラスを持って来てくれて、同じ酒好きのバイソンさんもこれに漏れなく追従だ!二人して酒飲みだからまぁ、酒が進む事進む事。まぁ、リンちゃんが酒を飲まずに見張ってくれているから出来る事だ。リンちゃんには感謝しかない。他の人はそれぞれウイスキーとか飲んでいた。今日、ミサトに恋心抱いて数秒で振られた事が発覚したルーベルトはお酒飲んで酔っ払って殿下の介抱を受けている。アルビノだからお酒含んだだけで既に全身が赤い。無駄に綺麗なお兄ちゃんは馬鹿高いお酒飲んで早々に潰れていた。まぁ、ルーベルトの為に開けてくれたんだなって言うのは明らかで。高級なブランデーを飲んで終わった殿下は


「イエローテイルあるかな?」


 そう言いながら俺の隣に座ってきた。殿下の前に赤ワインが注がれた。あんまり高くないそうだが、ルーベルトの住んでいるオーストラリア産ワインだそうだ。バイソンさんが小声で話してくる。


「それにしても、今日狙ってくるのかのぉ。」

「まぁ、あれだけ完膚無きまでに叩き潰せばね。」

「エロは?」

「俺のカバンの中。」

「それにしても、危ない橋ばかり渡るのぉ、イヴァンよ。大丈夫なのか?」

「あんまり大丈夫じゃ…………」

「まぁ、流石に裏切者がいるとなると僕としても安心出来ませんからね。安心して下さい。僕も守ります。」

「ありがとうございます。殿下もバイソンさんも。」

「いや、気にしないでくれ。」

「アークにしてやられた右肩はまだ痛むか?」

「そうですね、まだ痛いですね。全く、あの野郎。絶対自分に女居ないからさ。腹いせにやったに決まってますって。」


 そう言いながらもクイっと煽ってお代わりを頂戴する。


「まぁまぁ。それでもアークは嬉しかったって言ってたからそこの部分は本心じゃないかな?」

「そうなんかなぁ〜」

「そりゃ、ワシが同じ立場でもそう言うじゃろうのう。ワシの友人の大半は天変地異でもう、戻らんが。それでもたまに思い出す事があるのじゃ。ワシらドワーフは酒をこよなく愛しておる。色んな酒を飲みながら、ああ、あいつの好みじゃなぁと思い出す事があるわい。」

「そうなんですね。バイソンさんらしいと言うか。」

「まぁの。じゃからと言って、到底、イヴァンの気が晴れる代物じゃないがのぉ。」


 3人して想いを馳せながらどんどん酒瓶を開けていったが。上からアークがひょいって覗く様に入って来たと思えば。


「二人に動きがあった。今、リンちゃんが追いかけている。残念ながら、一人はルーベルトのお守りだ。あいつを盾に取られるわけにはいかないからな。」

「じゃあ、ワシが残ろう。安心するが良い。ホテルに掛け合って部屋は確保しているんじゃろ?」

「そりゃあもう。既に手を回してます。バイソンさん、鍵これです。直ぐ真下のスイートの隣部屋を確保してしています。申し訳ありませんが、宜しくお願いします。」


 殿下はお酒の飲めないエルフの事情を考慮に入れたのか。スイートの隣部屋を既に用意してくれていた。俺たちが尋問に使うのはスイートルームなんで、部屋を分けただけだがルーベルトの安全は確保出来そうだ。


「おう!ルーベルトの事は気にせんで良い。イヴァンよ。辛いじゃろうが何とか解決すると良いの。」

「はい。行ってきます。バイソンさん。」


 俺たちはアークの案内でリンちゃん達を追いかける事にした。俺はびっくりした。アークが実は素面だった事に。着いたのは何と男子トイレ。入り口には既にリンちゃんが入り口で待機中だ。ウインクしてるからどうしたのかと思い、中を覗けば恐らくリンちゃんがしたんだろう。鎖で二人ともぐるぐる巻きにされ、二人とも気絶していた。


「驚かないで頂戴ね。アークからはどちらかが内通者と聞いてたけど、正しくは二人共内通者だと発覚したわ。」

「……………嘘だろう。おい…………」

「証拠はこれよ。」


 そう言って録画した内容を再生してくれた。


「悪いな、ドナルド。俺はもうお前に従う訳にはいかねぇ。お前のご両親の命がかかってるって言うから俺は1回だけ仕方なく情報提供したよなぁ?その結果どうなったと思うか?俺たちは一斉に捕らえられて危うく殺されかけたんだ!いつでも死ねる場所でな!そんな奴がお前のご両親を生かしてるなんて思う方が馬鹿げている!今からでも遅くない!イヴァン暗殺なんて馬鹿な真似は辞めるんだ!」

「誰が辞めるか!アークとお前は引取先がお金だけ奪って棄てて行ってストリートチルドレンになって生き延びたから分からないだろうが、俺は人質になってる両親のお陰でここまでやって来れたんだ!俺が軽はずみな事をしたせいで死ぬかもしれないのに辞められるわけ無いだろう!俺はやる!小さい頃から世話になったイヴァンには悪いが、俺はやらなきゃいけないんだ!どけ!リュウ!」


 ぶちっと言う音の後に録画は止まった。


「俺、全然知らなかった。まさか、アークとリュウがストリートチルドレンになってたなんて…そんな事になってると分かれば、幸太郎助けてくれただろう?連絡取れなかったのか?」

「ああ、名刺なら義両親がお金せびる為に持って行ってしまってな。んで、助けてもらおうとお前の学校行ったらさ。その場に同じ目にあったリュウがいてさ。んで取り次いで貰おうとしたけどお前が行ったの金持ちが行く寄宿舎の学校だっただろう。門前払いを食らったんだ。俺たち孤児院が同じだって言っても信用して貰えなかったんだ。試験を受けたあの時、なんでもっと頑張らなかったんだろうなって後悔したさ。ま、後の祭りなんだけどなぁ。」

「…………」


 俺は、本当に運命は残酷だなぁって思った。俺たち、幼馴染同士で殺し合いをしていた事実にもう、どうすれば良いのか。正直言って分からなくなっていた。

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