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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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サイバー大戦

 私はナスターシャの指導の元、羽を維持しながら魔力操作する練習をしていた。食堂がここから見えるので何事かと思ったが、殿下やルーベルトまでパソコン片手にお邪魔している様でお祭り騒ぎの様相を呈していた。


「まぁ、旦那様が何してるか気になると思うけど。あなたは今できる事をしっかりやらないとね。」

「…………」


 まぁ、この指示は祖父から齎されたものだから練習だ。練習。



「邪魔するぞ。イヴァン博士。全く。面白い事を考える男だ。我々も生命維持系の保全と言う目的で参戦させていただくとしよう。」

「そいつは助かります。殿下。俺一人で心細かったんで。まぁ、他のシステムが軒並み使えないとなると此処を強制的に使って人命無視なんて事平気でやらかす奴らですんで、気をつけて下さい。」

「勿論、承知しておる。我が軍のサイバー部隊にも指示を出すとしよう。」


 そう言って、大佐は少し席を外して生命維持に関する保全に目的を変更すると指示を出されていた。僕も、イヴァン博士の隣に座って自前のパソコンを出したけどね。


「おい、ルーベルト。さっきエロにセキュリティチェック走らせたんだが、おまえ、ちょっと甘いぞ?あのままだと後が怖いんでバックアップ取ってからセキュリティ強化したんだ。ちょっとおまえのPC貸してみろ。」

「はい、どうぞ。」

「どれどれ…………」


 ええと、僕も学校でプログラミングは普通に必須科目になってたから、エルフでも普通にパソコンは使えるけどね。イヴァン博士の集中している状態って本当に凄い。手が二つしか無いのに仕事は4個5個同時ってザラだ。多分、簡単なアプリを入れて、簡単な指示を走らせているんだろう。システム開いて穴をざっと探した。次々とミスした箇所を書き換えた。そして5分後。


「ほら、出来たぞ。詰めが甘い所直しておいたから。」

「ありがとうございます!」


 僕は自分のパソコンを再起動して立ち上げ直した。すると、大佐が戻って来たタイミングで僕が思ってた事をパソコンが勝手に喋り出したから大変だ!


「何で陛下はあんな野獣みたいな男に引っかかったんかね!付け入る隙自体ないじゃないか!もっと早い段階で出会ってたら絶対僕逃さなかったのに!」


 これには僕も驚いた。大佐も一瞬目を丸くしたと思ったら全身をぷるぷる震わせて大笑いを始め出し、それに釣られる様にギャラリーが大笑いを始めたから僕はまるで茹で蛸になった様になってしまった。


「……………イヴァン博士、謀ったね?」

「…何の事だか。」

「今のは少尉の判断ミスであろう?この男がただの善意でパソコンをグレードアップを請け負うと思う方が愚かだ。ふふっ!あははは!」

「…………」


 悔しいかな、この目の前の人はサイバーテロ展開中の最中に軽いいたずらを仕掛ける程度に余裕があるという事なのだ。何だろう。この敗北感。


「ルーベルトの弱点な。セキュリティが甘いのさ。データーを上書きさえ出来ちゃえばあっと言う間に掌握出来てしまう程に脆い。AIもパソコンも優秀なのは分かるが、これはあくまで機械だ。機械の性能だけに頼れば痛い目見るぞ。あ、ちなみにエロのマスター権限。返して貰ったから。」

「ええええっ!もうですか?ちょっと早くないですか?」

「早いも遅いもあるか。人命に関わるエリアの防衛は俺たちとエロにかかってるんだ。俺たち攻略されたらエロに負担がかかる。そのエロが攻略されたら一巻の終わりだ。人命軽視を地でいくあのゲイルが戦争の駒にもならない様な奴を生かしておく筈が無いんだ。」

「ならば、イヴァン博士は次に最前線に投入される人間は病人、怪我人の類だと踏んでいるのか?」

「はい。俺はそう思ってます。」

「…………」


 大佐とのやり取りでそうだ、僕達は戦争をしているんだと思い直した。イヴァン博士の言う通りだ。目測を甘く見積もり過ぎると死ぬんだぞ。って言われた気がした。僕は自分のパソコンを開いたが。


「ルーベルト、今日はそいつ戦力外だからしまってくれ。その代わり、ルーベルトにはやって欲しい事があるんだ。」

「…何でしょうか?」

「今回、お祭りを企画したのには訳があるんだ。実は俺たちには欠かせない人員をスカウトしようと思ってるんだ。」

「スカウト。それはまたどう言う理由で?」

「まぁ、ここだけの話な?あのゲイルって男にはちょっとした噂があるんだ。殿下も興味があるんじゃないかと思ってな?」

「噂?一体どんな噂なんだ?」

「…こりゃ、俺が軟禁中に抜け出して個人的に調べてたんだけどさ。実は月に来た時点で70歳代だったって噂だ。まぁ、出生に関する資料なんて天変地異で全て海の藻屑と化してるからこれに関しては調べようがないと俺は思ったんだが、それにしては長生き過ぎないか?単純計算で120歳以上って事になるんだ。これ、人間としては明らかにおかしい。食糧事情だって悪かったんだ。そんなに長く生きられるとは思えないんだ。」

「まぁ、敵の正体を分析せねば倒しようが無いからなぁ。少尉はどの様に考えるか?」

「僕ですか?僕なら異世界から来た機械種を思い描くんですが、機械種の寿命は50年で、頭脳さえ入れ直せば長生き自体は可能ですよ。ただ、入れ替え手術は機械同士の相性が無ければ成立すらしないので、他の案を考えた方が良いかと。」

「イヴァン博士はどの様にお考えか?」

「うーん、今から突拍子も無い事言うんで笑わないで聞いて欲しいんですが。5年前のクーデターの時、マザーコンピュータを占拠され、民を人質に取られて議会政府が降伏するしか無かったんですよね。ゲイルは人前に出る事も少なかった事からマザーコンピュータと同化しているんじゃないかと疑ってはいます。ただこれ、明らかにSF小説読みすぎだろうって言われてもおかしくない見解なんで自信は無いですね。」

「そうか。僕の見解だとこうだ。少尉が機械種の事を話していたであろう?あれに近いんだが、実は天変地異以前からこの地球ではクローン技術が進んでいてな。」

「クローン技術。何ですか?それは。」

「人間から人間のコピーを作るって事さ。天変地異以前は倫理的観点から人間は禁止してたけど、それを秘密裏に再現したならば話は別だなぁって思ったんだ。」

「……………俺も話に聞いた事があったが、ああ、成る程。それならば可能なんですね。やはり、そうなってくるとどうしても欲しい人材いますね。非戦闘要員ではあるんですが。俺たち以上にパソコンに精通している人間が。天才ハッカー。何処かに転がってないかなぁ。」

「要は、このお祭りを最後まで生き残った人をスカウトするって事で間違い無いですか?」

「ああ、宜しくな!ルーベルト。」


 本当に、この人は凄い事を考える。


「エロ、検索かけてくれるか?クローン技術を秘密裏に行える施設があるか探せ!もしあるのなら今が好機だ。データー類は全部盗め!その後機械を暴走させて破壊するんだ!」

「了解です!検索開始…………………………1箇所ありました!システムにアクセス成功!データー転送開始します!」

「…………」

「殿下の説でビンゴでしたよ。あの狸じじい。目に物を見せてくれる!」


 僕たちが見ているのは魔王だと思ってた。だけど、この人魔王なんて生易しいものじゃない。強いて言うならロシアが生んだ邪神だよ。データーはイヴァン博士のパソコンに一斉にダウンロードされてセキュリティチェックを受けている。データー抽出が終わったらイヴァン博士はとんでもない事を言い出した。


「エロ!その施設の出入り口を全て封鎖して酸素を抜け!その後に爆破だ!一人も生かすな!」

「了解です!」

「イヴァン博士!それはやりす…………」

「少尉。冷静になるんだ。我々がしているのは戦争であってゲームなんかでは無いのだ。もし、仏心を出して研究員を生かしたとしたらどうなると思う?クローン技術で再生されていつまで経っても月の民は苦しみから抜け出せなくなるんだよ。それで良いのかな?」

「……………いいえ。すいませんでした。大佐。イヴァン博士。僕、余りにも認識が甘かったのを痛感しました。」

「いや、良いんだ。ただ、僕たちは今のイヴァン博士の姿を決して忘れちゃいけないんだよ。あれこそがリーダーたる姿だと僕は思うんだ。好き好んで同胞を殺したいなどと誰が思うであろうか。だけど悪用された人間の末路は悲惨だ。それ故に、非情な決断を下せたんだ。僕たちは平和な世界で今まで幸せな人生を謳歌してきたけどね。イヴァン博士は違う。死と隣り合わせで生きた経験があるからこそ何が最善かを選ぶ事が出来るんだよ。」


 僕はハッとした。イヴァン博士の手は一切休んでない。だけど、身体は震えていた。きっと、大佐が仰る事は真実であると言う証左だ。サイバーテロの始まりは月側からの無差別攻撃に対する報復の意味合いもあった。だけど、博士がしていたのは生命維持という保全業務に過ぎない。日本のAI軍団が防御を担当し、日本のサイバー部隊他多国籍のエンジニアが攻撃に加わってた。だから、サイバーテロを開始して既に5時間以上経過しているが、現場が混乱している。動きが多少ある程度で生命維持以外の部署以外一斉にシステムがダウンしていた。立ち上げる為にアクセスしようとしたらイヴァン博士が用意したウイルスに感染するのだ。イヴァン博士が用意したものは多岐に渡るのでワクチンを開発してもまた違った症状を発症するから多分完治に時間を取られる事が伺えた。しばらくして、病院内部からシステム復旧するべく動き出したパソコンを感知した。


「さて、いよいよ本丸のお出ましか。」


 イヴァン博士は不敵に笑う。そして、エロにこう命じた。


「エロ、病院全てのPCからの接続を全て遮断しろ!生命維持装置のシステムを全て切り離してエロが管理するんだ!」

「了解です!」

「「…………」」


 これによって、月側の人間全ての命というとんでもない人質を取る事に難なく成功してしまった僕たちは、最後の仲間を見つけるべく旅立つ準備に入る事になった。月側施設を悉く破壊し尽くしたイヴァン博士の顔に笑顔なんてものは無く、ああ、この人はまたとんでもない十字架を背負ってしまったのかと。そう思わざるを得なかった。

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