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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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とんでも爺さんの切なる願い

今日2本目です。視点は一時的にイヴァンさんになります。

 俺は、最長老様の指示で姫様を誘い出すのにまんまと成功した。

 とりあえず、ミッションコンプリートと言った所か。

 耳元で大丈夫だからと囁いて彼女を落ち着かせる事に専念した。

 じゃないと、此処から落ちたら間違いなく逝けるだろうからな。

 星空は美しく俺は初めて空から月を見た。生まれ故郷の月は紅く妖しく光っていた。

 まるで、血に飢えているかの様だ。


 だが、この後あの月から殺人ビームが飛んで来る。


 全く、大した爺さんだ。ハイエルフと言う種族は不老長寿で見た目は20代で最長老様はとても見目麗しい。顔に火傷の痕はあるがそれでも女性だったらどんなに良かったかとさえ思う程だ。だが、やってる事は本当に只者ではない。姫様には内緒で既に隠れ里に住む住民達の避難は終了している。人がいる風に見えたのは爺さんの魔法でのカモフラージュと言う事らしい。色々思惑がある様だが、実は今日消える大陸よりも大事なものがあの爺さんにはあるんだそうだ。


 一言言って良いか?リア充爆ぜろ!って突っ込みたくなる理由がそこにはあった。


 爺さんの長年連れ添った奥さんの病気が芳しくないんだそうだ。姫様には伝えてなかったが、余命宣告を先日受けたのだそうだ。娘さんもいるんだそうだが、再婚した先がとある中東系の王族らしく余り無理は言えないのだそうだ。


「恐らく、ミサトが使命を終えて帰る頃にはその命は尽き果てておるだろう。」


 助けたいのに助けられない悔しさが爺さんから滲み出ていた。爺さんにとってはかけがえのない最愛の人なんだろう。だから、その命尽きるまで彼女の側にいたいんだそうだ。俺が失った無二の親友の事を思い出して何故、一人で地球に行かなかったのかと後悔ばかりが頭をよぎった。。あの二人は幼馴染でいつも一緒だった。その悲しみが計り知れないからか、爺さんの気持ちは凄く良く分かる気がした。爺さんも今頃最愛の人の所に戻っている事だろう。残り少ない彼女との時間を大事にしたい。そんな尊い爺さんの願いが叶うといいなって正直思った。


 爺さんは本当に色々なものをアイテムバックに用意してくれた。沢山の工作道具、部品やら魔石と呼ばれるアイテムとかノートパソコンが数台。しかも日本製のAI が搭載されてる最新型も含まれている。育てれば管制業務ぐらいはいけそうだ。そして着のみ着のままになってしまったので衣類が沢山。ただ、タキシードなんて代物が入っていたり、スーツが数点入っているのか迄は聞く気がしなかった。何故なら。


 爺さんは俺の事をいきなり「婿殿!」って呼び出し姫様を押し付ける気満々だったからだ。


「なぁ、最長老様。お言葉ですが何で俺なんだ?あんな可愛い子男が放っておく訳ないだろう?」


 これは本心からだ。然も、今の彼女の年齢は15歳。年の差30歳って男の浪漫が…げふんげふん。

敬語が吹っ飛んでるのは突拍子も無い事を言われて頭がフリーズしてるからだ。


「確かにいるにはいたぞ。ミサトに性的暴行を加えようとした輩がごまんと。大概、ミサトが返り討ちにしておったわい。」

「………。」


 これには返す言葉がなかった。自衛してただけで「黒髪の悪魔」と蔑まれてきたのだ。

 混血児であるにも関わらず王として生まれたのを快く思わない全員が彼女を迫害していたというのだ。俺を見る目に戸惑いが見え隠れしていたのはそれかと思った。家族以外の第三者からの好意を受けた事が無かったからこその振る舞いだったと。凛とした切れ長の目に美しい翡翠の様な黄金の輝きを放つ目に美しく整えられた黒髪。出る所は出て締まる所は締まっている何とも悩ましいプロポーションだ。思いっきり好みにどストライクだから。

 だけど、親子程歳離れているんだよなぁ。

 爺さんは、彼女は日本と隠れ里以外の世界を知らず、箱入り娘だからどうか貴殿が生涯守っては貰えないだろうか?とお願いしてきた。寿命が違いすぎるんで。と言えば、その辺はどうにかなると。何でも、姫様の力は爺さんの力を遥かに凌ぐそうで、今はまだ覚醒していないが力に目覚め尚且つ彼女が側にいたいと願えばエルフの神が願いを聞き届けてしまうであろうってこった。それだけではない。


「婿殿には話しておかないと後々困る事態になるであろうから話すのだが、ミサトが生まれた時に精霊王が我と家族の目の前で堂々と手を出しますって宣言しておっての。」

「はぁ。何でまた。精霊ってそもそも実体無いんだから単なる言葉のあやって可能性もあるんじゃないですか?俺、幽霊の類は信じてませんから何とも言えないんですが。」

「そうじゃと良かったんじゃがなぁ。婿殿を見て我は確証を得てしまったのじゃ。婿殿、昔から悪霊に取り憑かれやすいと言われた事は無いかのぉ?」

「いやぁ。俺は生まれも育ちも月なんで霊など非科学的なものを言われましても。」

「ふむ、ならば実際に体験せねば分からないかも知れぬな。婿殿は精霊王に目をつけられておる。精霊王がそなたを媒介にして襲えばどうなるか想像してみれば分かるのではないだろうか?然も、ミサトはそなたに好意を寄せているようじゃし。」


 正直言って、悪い冗談だ。俺が手を出したら安易に身体を許してしまうかもって事なのか?

 いやいやいやいや。それって完全に犯罪じゃないだろうか?そりゃ、彼女も歳を取らないらしいから手を出すのに速さなんて関係ないかもしれないが。然も重ねて言うが、俺、タイプだし。

 目が覚めた時、天女かと思った。爺さんの命で彼女が部屋から出る時まで無意識に手を繋いでいたくらいだ。一目惚れしてたよ。否定しないさ。だけど、俺は清廉君子じゃない。給料の使い道無かったからたまに女性を買ってたぐらいだ。人並みに欲もある。だが、要は俺が知らない間に彼女に手を出す事が爺さんにはわかってるんだろうな。じゃなければ、婿なんて呼ばないか。


「どうにかならないんでしょうか?俺、彼女を傷つけたく無いんですけど。」

「我とて止められるものなら止めたかったぞ。じゃが、こればかりはどうしようもないのじゃ。今までのミサトだったら武力にものを言わせて自らを守っていたが、婿殿にだけは嫌われたくないのじゃろう。婿殿を守る為に刀を振るう事はあっても婿殿に刀を一切向けはせぬ。そこを精霊王につけ込まれてしまうのじゃ。ミサトが羽化した事で精霊王は我の元を離れ、ミサトの元に既に赴きさりげなく契約を結んでおる。邪なセクハラ爺ィからミサトを守る為には貴殿の力がどうしても必要じゃ。どうか、死にゆくこの老いぼれの最後の頼みどうか聞き届けては貰えないだろうか!後生じゃっ!」


 俺は余りに必死な様子につい首を縦に振ってしまい……

 んで今に至るんだが、保護者になる自信なんて皆無だ。狼になら幾らでもなれるがな!


 俺が頂いたアイテムバックにはまだ色々な物が入っていた。自衛するには必要な代物だ。どうも月よりも軍事系は遅れているようで、携帯銃と弾が1000発程だ。月では20歳から5年間徴兵の義務があったので銃の取り扱いは問題ないが、俗に言うレーザーライフルなので弾を補充すると言う工程がない。これは改良の余地がありそうだ。ナイフや携帯食の類もあった。後、旅にかかる資金とかも入ってるが、見たことの無い通貨だ。月の貨幣と価値が違うかもしれないから、その辺は姫様に確認しないといけない。最後に見たのは友の亡骸が眠るアイスコフィンが2箱。


「それぞれ御家族がいたのであろう。手間を取らせるが、御家族の元に返して差し上げて欲しい。」


 とお願いされた代物だ。氷で囲まれているから腐食する事は無い。俺は両親を早くに亡くしたから天涯孤独だが、親友達には家族がいた。身元がバレていれば無事で済むはずがない。逃げられない以上殺されているかもしれない。


「着きましたよ?」


 と声を掛けられて慌てて彼女を解放した。いつのまにか居心地が良くなってしまったようだ。


「済まない。だが、これはどう言うことなんだ。見た所、まるっきり新品なんだが。」

「…………」


 爺さん、あんた本当に凄すぎるよ。確か、あの様な機械は我の管轄外って言ってたよなぁ?

 横を見ると、姫様には心当たりがある様だ。


「最長老様が何をしたのか分かったのか?」

「はい。恐らくですが、スペースシャトルが壊れる前に時間を巻き戻したんだと思います。物体の時間だけを操作するのは非常に難しい魔法の筈なのですが。お祖父様は森を蘇生させたのではなく、何故、この機械を直したんでしょう?何かお祖父様から聞いてないのですか?」

「ええっと何か言ってたかな?」


 取り敢えず、考えをまとめるフリをしてこの後に言われた指示を思い出した。

 推理は見事に当たっていた。


「ミサトは方向音痴ゆえミサトにナビは先ず無理じゃ。なので、婿殿でなければ行動に移せないであろう。元々、二人で操作していたものを先ずは一人で操作する必要があるんじゃが、そこで登場するのがAI 搭載の最新型のノートパソコンじゃ。我は機械には疎いゆえ、どうすれば良いかは我よりも婿殿の方が良く分かっているであろう。じゃが、その機体は残念だが追跡されているからまずはここから北に向かうが良い。そこに無人の小さめの浮遊大陸があって、中はその機体がゆうに入る空洞があるのじゃ。そこで機体を解体して部品に戻し、追跡に利用されそうな物を棄ててから東に向かうがよい。そこから一番近いのはドワーフ達の住む浮遊大陸エステルじゃ。その大陸は全てミスリルで出来ている特殊な大陸で優秀な鍛治職人が多い。そこで武器を整えてから日本を目指すのじゃ。ミサトに氷の精霊を呼び出して貰い、吹雪を出して貰いカモフラージュするのが良かろう。元々最北端にある浮遊大陸だから年中雪は降るが、晴れないという保障は無いからの。滞在出来るのも空からの光が降ってから光が発射できるまでの僅かばかりだと言う事じゃ。旅の無事を祈っておる。二人とも息災でな。」


 本当に次から次に難題が降りかかるなぁと溜息を漏らしつつ姫様を船内に案内して俺が月から来る時に座っていた席に座ってもらった。作業しながらで良いかと聞けば承諾が得られたので、爺さんの指示を伝えた。但し、自分だけ知らなかったと知ったら怒るだろうか。悲しむだろうか。何れにしても良く無い事が起こりそうだったのでその辺は伏せておくことにした。

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