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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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2人だけの世界。

 久しぶりにイヴァンに抱かれたら手加減なんて物体無かったよ。

 獰猛な狼さんは私以上に飢えてらっしゃった様だ。

 横で寝ているイヴァンは幸せそうに眠っている。陽の光が、イヴァンの癖のある銀髪を優しく照らしていた。子供の様に無邪気な表情だ。こんな顔を見せるのは私の前でだけだ。


 ふと、ベットの上に縫い付けられてイヴァンが私の上になる。


「おはよう、ミサト。」

「おはよう、イヴァン…………」


 息さえ止まる様なキスから朝は始まる。挨拶にしては物凄く長いのだが、今日はこの先も離される予定は無い。どうやら昨日から何か企んでいらっしゃる様だ。私は大人しくそれに従う。朝にするそれ。実は精霊王に与える餌の味付けみたいなものだ。精霊王が求める「極上の魔力」と言うのが、私が発情した後に頂く魔力だと言う事にここ1カ月のあれやこれやで気がついた様で。


「真面目な精霊達には悪いが、たまにはミサトの体目当てのエロ爺いにも働いて貰おうぜ?」


 そんな理由もあって制御はPC なのに仕組みは原始的なエンジンって実に滑稽な物を作ったそうだ。何でも


「油燃やして走るよりか地球に配慮した優しい設計だから!」


 まぁ、博士号を持つイヴァンがそう言うならそこの部分は本当だと思うけど本当は航行してても二人だけの世界に浸りたいだけなんじゃと思わず疑わずにはいられない。


 服を着て、デッキに出た私たちが見たのは、酒盛りが楽しすぎて眠ってしまったであろう。バイソンさんとリンちゃんだ。私は側に行こうとしてイヴァンに止められた。


「こいつらに寄るなよ。せっかく苦心して作った時間が台無しになる。」


 イヴァンは私が誤ってウォッカを飲んでとんでもないレベルの醜態を晒した唯一の目撃者だ。なので、大人しくそれに従う。手持ち無沙汰に外を見ている間に先ずは2人を船内のベットに寝かせ、水と簡単なご飯を全員分用意してバイソンさんとリンちゃんの部屋に置いてきてから自分たちの分を手に持って現れ、


「俺たちも中で食べよう?」


 そう言って指で指し示したのはPCと操縦席のあるメインブリッジだ。2人が寝ている以上、先に進めるのは私達がしないといけない。私は、イヴァンと一緒にメインブリッジに入り、まず、精霊達に指示を出す。朧月夜を手にして私は指示を出した。水と氷の精霊はタンクで水と氷を補給。氷は小さめのロックアイスをお願いした。草の精霊には大量に出た割り箸とか使用済み爪楊枝を1本ずつ薪に再生するよう。火の精霊はボイラーの管理。残りの精霊達には薪の補給をお願いした。妖精王の加護は最大3柱までなので、今回は水、火、草にお願いをした。


 ご飯を食べて歯を磨いて、落ち着いてから。また、何時ものが始まるのかと思ったら。


「この一件が終わって落ち着いたら何かやりたい事あるか?」


 そんな唐突な質問をされた。


「うーん、漠然と考えているのは、この地球を旅してみたいかな?私が知ってるのは無くなった故郷と、日本位だから。どんな人達が住んでいるのか。どんな素敵な場所があるのか。見て回りたいなって思ってる。イヴァンは?」

「そうだなぁ、俺、宇宙工学学んだのは元々、他の星に冒険に行きたかったからなんだよなぁ。でも、月でも50年で限界が来たからなぁ。食料とか、水とか自給自足出来る条件がクリア出来ないと夢のまた夢の様な気がしているんだ。」


 まぁ、何でも作ってしまうイヴァンらしいなって思う。


「それに……………いや、何でもない。」

「ひょっとして、イヴァン。自分の事責めてるの?」

「…………」


 どうやら、図星の様である。私は、イヴァンの頭を抱き締めて、気持ち良さそうな銀髪を撫でた。


「イヴァン、私には辛かったら泣いて良いって言うのに自分の心が辛いからって言わずに自分で抱え込むなんておかしいよ。私は、イヴァンが思っている程弱くは無いつもりだよ?」

「…………」

「私は誰が何と言おうとも、イヴァンだけの味方でいるよ。約束。」


 イヴァンは顔を上げた。凄いキラキラした宝物を見つけた様な優しい目で私を見上げた。


「俺の為に泣いているのか?」

「誰かさんが泣かないから、代わりに泣いているだけだよ。」


 イヴァンだっていつも気を張ってて、辛くても口には出さないんだもの。口にこそ出さないけれど、自分のせいで亡くなってしまった人の事を考えてしまって「自分は幸せになっちゃいけないんだ。」って思ってる気がした。そんな事は無いんだよ。って伝わると良い。どうか伝わります様に。これ以上、イヴァンが苦しまない様に。私は願いを込めた。目を閉じて、イヴァンの額に口づけした。

 目を開ければ、二人して見つめ合った。ただ、抱きしめているだけなのに、酷く心地が良い。

 イヴァンの心が癒えます様に。私はエルフの神にそう願いを込めた。




 そんな中、コソコソしてる影が2つ。


「ご飯のお礼を言おうと思ったんだが…………」

「いや、今はぁ〜いって出て行ったら野暮以外の何者でも無いでしょ。せっかく良い雰囲気なんだから、今日はそっとしておきましょう。」

「それもそうだな、今晩も野営あるから黙って寝ておくか。」

「そうしましょう。」


 実に気が利く仲間達である。そんな事とはつゆ知らず、いつの間にか二人して目を閉じて飽きもせずに濃厚なキスをしていた。


「お前が可愛すぎてもう、無理。」

「…………」


 二人だけの世界はまだまだ終わらなかった。イヴァンの感情の赴くままだ。流されるままに愛される。だけど、流石に昼からがっつき過ぎだと自覚があったようで。


「悪ぃ、ちょっと自重しないと。動力源のお前を危うく寝かせてしまうとこだった。」

「……………馬鹿。」


 額を合わせて二人とも笑った。イヴァンが幸せそうに笑うのを見て私も釣られてはにかんだ。



 進路は自動航行なので、イヴァンが特段触る事は無いらしい。精霊達も問題無いようだ。

 そんな中、二人で寄り添いながら。


「このまま時間が止まってしまえばいいのに。」


 と、ボソッとイヴァンは呟く。

 二人でいられる時間を大事にしてくれているんだなって思った。私の黒髪を何度も撫でる。今まで蔑みの対象だったのに、綺麗な黒髪だと褒めてくれる。今まで嫌いだった黒髪も何だか好きになりそうな勢いだ。ただ慈しむだけの時間が酷く心地よい。


「イヴァンの銀髪だってキラキラ光って綺麗だよ?」

「これか?こんなくせっ毛の一体何処が良いんだよ。」

「光に照らされると凄く神々しいの。」

「神々しいって。そんな事言うの、お前ぐらいだぞ?」

「そうかなぁ?」


 そう言って二人でくすりと笑いあう。他愛ない話だ。黙っていても心が通い合うのだ。人を愛する経験は一生無縁だと思ってた。だけど、一人だけのモノもなるのは悪くない。思いは黙っていても募るし、色んな事をしていても募るのだ。隣にいる人が、言葉で。態度で雄弁に語る。それだけで満たされる。私はイヴァンの上に座ってた。重くないのかと聞くと、全然軽いと返答が来る。掌で踊らされれば、吐息が漏れた。二人して寄り添って。ただ、それだけだ。そんな暖かい時間が私たちを包んでくれた。二人だけの時間が終わるのが何だか名残惜しい。夕方になり、停泊地に止まった。システムに異常が無いのを確認すると、私を連れだって自分達の部屋に戻った。部屋のドアにメモが挟まってて


「朝はご馳走さん。美味しかった。警備は任せてゆっくり寝ろよ。」


 そう書かれていた。達筆なバイソンさんの日本語だ。私達は二人で簡単な賄いを用意して、二人の分を台所に置き、自分達の部屋に戻って鍵を掛けた。イヴァンは両親が既に他界されてて、一人暮らしが長い為、家事の類は得意としていたが、私はそう言った点で恵まれ過ぎていたので家事は一切出来ない。不甲斐ない自分が恨めしい。野菜とかは包丁で切ったが、イヴァン曰く危なっかしいらしい。料理も少しずつで良いから覚えてくれると嬉しいって言う。まぁ、イヴァンの作る料理もロシアの家庭料理に限られるので、もし日本に行ったら日本料理のレシピも欲しいと仰る。明らかに女性として劣っているんじゃないかと落ち込んでたら


「今まで姫さま扱いされてて家事する事無かったんだから、一緒に覚えていけば良いんじゃないか?亡くなった母さんのレシピも残ってはいるんだが、ロシア語だから翻訳してからじゃないと渡せないし。」


 そう言って笑う。いつか、俺の為だけに料理して欲しいとあっては頑張らないといけない。ご飯を食べて。歯を磨いて落ち着いて。二人してシャワーを浴びて。欲張りな私達は互いが互いを欲しがって収拾つかなくなっていた。明日に不安しかないのもあって、その気になったら止まる事を知らなかった。生まれたままの姿で明日に思いを馳せる。


「明日、いよいよ魔族領だよなぁ。」

「うん、魔王様に力を借りたい場合はね、対価を求められるんだ。」

「対価?そりゃまた何で?」

「魔族は基本、評価は全てにおいて強いか、弱いかの非常にシンプルなものなの。だから、己の強さを認められないと手を貸す事自体がないの。」

「俺、ミサトが対価とか言われたらキレる自信しかないぞ?」

「うふふ。奇遇ね。私もイヴァンが対価なんて耐えられない。」

「「…………」」


 二人して黙り込む。


「俺、ちょっと心当たりある。」

「私も。」


 そう言って、二人して自分のアイテムバックを探す。この際、自分達の格好よりも何でも良いから二人を引き離さない何かが欲しかったのかもしれない。そうして、探し出したのはイヴァンの方はご両親が遺品として残してくれた結婚指輪で、私の方は誓約の腕輪という2個1セットのマジックアイテムだ。このアイテムはどんなに遠くに離れても相手の所に移動すると言う転移魔法が施されてるんだとイヴァンに伝えたら喜んでつけてくれた。私ももう結婚しているような者だからと言う事で左手薬指に指輪を嵌めてくれた。魔法を唱えると、2本の細いチェーンが現れて取れない様な処置が施された。イヴァンにも同様の事をして取れない加工をした。改めて、抱きしめられた。


「俺、お前を知れば知るほど深みにはまってどうしようもなくなるんだ。愛してる。もう、お前がいない世界なんて考えられないんだ。散々抱いておいて何を今更って思うかもしれないけど。お前だけは無くしたくない。籍はまだ入れられないし、世間一般ではまだ嫁さんじゃないかもしれないが、もう俺たち夫婦でいるつもりだから。幸せになろう。ミサト。愛してるよ。」

「うん、私もイヴァンの事愛してるよ。もっともっとあなたを教えて?」


 私とイヴァンはこの後、色んな事を教えあった。決して気持ちの良い話ばかりじゃ無かったけれど、お互いの情報を共有する。ただそれだけの事なのに愛おしさは止まらず、かけがえのない尊い夜が更けた。

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