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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第二章 忠義神ピールと慈愛神シェリル
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神々が消えた日本の大地を征く。3

 二日酔いの頭で僕たち福井大学まで直接飛んだんだ。お祭り騒ぎの後で、僕とモハメド。げんなりしてたけどね。福井大学の方での不具合調整終わっててね。僕は外で作業する事になったんだ。


 インカム付けて外に出るとね。雪解け水が腐った自然にかかってさ。何とも言えない異臭が鼻についてね。スルーの魔法を唱えて無効化したんだ。次に、モハメドが県境に沿って結界魔法を施して、腐った自然が福井県側に侵食しない様に処置を施したんだ。そして満を辞して。


「コントロール!」


 って詠唱して、空気清浄機の改良後初の実験が始まったんだ。僕は神経を集中してね。毒素を抜いて腐食してしまった物を砂の粒子に変えたんだ。お陰様で北海道にいた時よりも魔力が潤沢にあるから僕一人だけで充分だったんだけど僕の方は問題無かったんだ。ただ、残念ながら空気清浄機の方の処理が追いつかない。

 だから。


「おい、モハメド!旦那に一番緩い威力で浄化しろって伝えてくれ!こっちの機械には問題無いが10台じゃ足りなかった様だ。急ぎ、同型の空気清浄機増設するからそれまで自重しろって伝えてくれ!」

「了解しました。ピール返答出来ないので代わりに返答しときます。」


 竜族の力を得たせいで、かえって力加減が難しくなってたんで、気を緩めるとつい力を込めすぎてしまい、先程のお叱りを受けると言う塩梅なんだよ。北海道どうしたかって思い出そうにも力の状態が比較にすらならない程度僕は強くなってしまってた。しかもこの数日。結婚してからね。結界張ってるから砂の粒子が他県に及ぶ事も無いんだけどね。空気清浄機に送る風も運ぶ砂も最大限、自重を強いられ続けたんだ。


「大丈夫?ピール。大将が作ってくれた一口おにぎりだよ。しっかりお食べ。」

「ああ、頂く。」


 こうして、作業は夜間休憩して昼間する事にして、空気清浄機はこれでもかって位不眠不休で回し続け、地下都市に新鮮な空気を送り続けたんだ。懸案だったフィルターもより細かい物になってたから順調に砂は粘土になっていったんだ。空気清浄機が圧倒的に少ないと分かって増産をかけたけど早々に機械が出来る訳もなくね。結局、最終的に最初10台だった空気清浄機は自然の浄化が終わる頃には59台にまで増えてた。福井県全域が浄化し終わるのに2ヵ月もかかったんだ。福井県全域には梅雨の時期を迎えてる事もあってか青々しい雑草が県内全域に芽生えてた。残念ながら他県から流れてくる腐臭迄はどうにもならなかったが。


「お前たちのいる地域で自然が蘇るって本当だったんだな。俺は、正直言って半信半疑だったが、この青々しい景色。何て懐かしいんだろうか。お疲れさん。二人共。この後、お前たちどうするんだ?」

「そうですね、要請のあった愛媛県まで歩いて行こうと思ってます。」

「ええっ、歩きか?」

「はい。僕たち、あくまでボランティアなんで無一文なんですよね。僕たちが望めばそりゃ、日本政府が動くでしょうけどね。そう言うのはちょっと違うと思うんです。だから、僕たち。もう行きますね。竹田教授も大将も色々お世話になりました。ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」


 僕もモハメドも頭を下げて名残を惜しんだんだ。大将は時間経過のしないアイテムバックにこれでもかって位おにぎり作って持たせてくれたんだ。涙が出そうな程嬉しくてさ。


「福井県を綺麗にしてくれてありがとう。二人とも。日本中巡ってひと段落着いたら是非こっちに立ち寄ってくれよ!」

「はい!それでは皆さん。お元気で!」


 僕たちは無事、福井県を浄化して終わったその日の内に旅立ったんだ。国道を南下してね。随分と雨脚が強いと感じたんだ。僕たちはカンドゥーラ着てたから足元がグジャグジャでね。全身雨でずぶ濡れだったけど人がいない事を良い事にね。翼を出して少し早めに京都に抜ける事にしたんだ。



 異変を察知したのは京都市内に入ってからだ。鴨川の水位が随分と高いと感じたんだ。現在位置を調べつつふと見ると逃げ遅れたと見られる親子が川で流されてるんだ。


「モハメド。悪いけど荷物預かって!」

「ええっ!?」


 モハメドが狼狽える側で僕は竜化をして濁流に飛び込んで、先に子供を。後でお母さんを助けたんだ。二人とも少々水を飲んでてケホケホと咳き込んでいたんだ。親子とも僕の姿に驚いてたんだけどね。場所的に言えば、鴨川と桂川が合流する付近だったんだ。どうにも静観出来なくてね。


「何処に連れて行けば良いかな?子供、このままにしておけないでしょう?」

「はい、助けて頂きありがとうございます。そっちの方角に病院があります。そこまでお願いしても良いでしょうか?」

「分かったよ。モハメドも乗って。」

「うん。大丈夫かい?ピール。」

「大丈夫さ。少し、急ごう。この様子だと他に取り残されてる人が居るかも知れない。」


 こうして、僕は低空飛行してそれ程かからない位置にある病院と思われる場所に向かったんだ。病院の入り口に着地してね。周りの人は騒然としてた。何故、黒竜がこんな場所にと思ったのかも知れない。が、


「この親子保護してくれ!桂川が決壊しそうな情報ぐらい把握してるでしょう!僕たちは逃げ遅れた人々を助けに行く。何処に連れて行けば良いかだけ教えてくれ!」


 するとね、病院の職員さんが簡単な地図と市役所の番地を書いた紙をくれたんだ。モハメドに方角と行き方教えてくれたんだ。僕たちは直ぐに飛び立ったんだ。


「あの黒竜は一体…………」

「でも、彼らピールとモハメドって呼び合ってたからイヴァン大統領の子供達なんじゃ…………」

「直ぐ、災害本部に連絡入れろ!日本国軍よりも早く神の使徒達が京都に来てるって!」



 まぁ、雨のせいでね。少々視界悪かったんだけどね。京都市内、軒並み水没してたんだ。自然消失以後、観光の名所って理由で真っ先に人力で腐った自然を取り払った場所だったから地上に人々いたのが仇になってね。みんな屋上に避難してるみたいなんだけどね。僕たちは水没しそうな家から順番に市役所の屋上に連れて行ってたんだ。屋上には職員さんが待機してて、救助した人々を順番に運んで行ったんだ。途中、流されてる人を見つけたらモハメドが今度は保護しに行ってた。その内、日本国軍の災害支援部隊も到着するとね。救助するスピードが増したんだ。流されてる車からも人々を助け出した。僕たちは一人でも多くの人たちを助けたくてとにかく必死だった。途中、少々頭が痛くなり出したが、救助活動は夜通し続いてね。雨が上がったのは陽が登ってから。山の上から腐臭漂う木の残骸が辿り着いててね。桂川と鴨川。危険水域越えて決壊して水没してたんだ。被害が明らかになるとね。目を覆う様な光景が広がってたんだけどね。瓦礫と土砂と濁流が残る京都市内に僕たちは呆然としたんだ。


「またしても愛媛県。遠のいちゃったね。」

「仕方ないよ。聖職者として見て見ぬ振り。出来なかったんだ。モハメド。」


 朝日が登る中でね。僕は意識、無くしてたんだ。何か、遠くでモハメドが泣いてる気がする。そんな記憶がうっすらとしか残らなかったんだ。



 もうね、本当にね。無茶やらかしてね。寝込んでたら世話ないと僕はそう思ったんだ。意識を無くした途端に竜化が解けてしまったピールを墜落直前に僕自身が竜化する事で受け止めたのは良かったんだけどね。


「どうしよう、ピールが。ピールが…………」


 僕もピール落とさない様に気をつけながら飛んだけどね。災害の起きてる現場でピールを助ける為にここで救助を依頼するのはちょっと違うと僕は思ったんだ。困りあぐねていた所、僕が目にしたのは保育園の屋上で救助を待ってる先生と子供達だったんだよね。僕たちに救助を求めてるのかと思って近寄ってみる事にしたんだ。ピールを早く助けたいと思っているけど、この状態でピールを優先してもピール喜ばないと思ったのもあるんだ。


「どうしましたか?」

「うわぁ、ドラゴンさんだ!黒いドラゴンさんじゃないけどドラゴンさんだ!」


 って非常にガクッとなるご返答を頂いた後に慌てて保育士さんが来られたんだ。僕は、改めて。


「どうしましたか?」

「すいません、子供達がお腹を空かせておりまして。食糧持ってれば分けて頂きたいんですが…………」

「…………」


 僕は正直言って出すべきかどうか迷ったよ。だけどね、こう言う時。ピールだったらどうするかなって思うと答え。見えてくるんだ。僕は大将から頂いた大量のおにぎり。差し出す事にしたんだ。


「福井で握っていただいたおにぎりで良ければ。後、少しで構わないので後ろに積んでるお方を休ませて頂けると助かります。」


 そう言うとね、保育士さん。ピールの額に手を当てて、余りの熱さに驚いたんだ。手に体温計持っててね。測ってくれたんだ。体温。ピコピコって音がして体温見て驚いた。40度越えてた。酷い高熱でね。保育士さんが僕に尋ねたんだ。


「ひょっとして、昨日から未明にかけて人命救助に当たってた黒竜ってこの方ですか?」

「はい。先程、意識を失ないました。僕はあなた方にご迷惑をお掛けする訳にはいかないので」

「何がご迷惑なのよ!こんな重篤患者連れてどうしようと言うの!ゆきはちゃん。みはるちゃん。先生方呼んできて。京都に現れた英雄が倒れたって。そう言えばきっと分かるから。」

「はーいっ!」


 子供達は急いで先生方呼びに行ってくれてね。僕がシーツ出したらちょっと恥ずかしそうな顔をしてピールくるんでくれたんだ。まぁ、仕方ないよね。竜化したら服破けちゃうからね。僕も屋上の影に隠れて竜化を解いて服着てね。先生方が服で簡易的なタンカー作ってピールを運んで下さったんだ。先生方は子供達が使う昼寝用の布団を3枚位敷いて災害用毛布を2枚重ねて。首とか脇に冷えピタ貼ってくれてね。僕はその間に魔法でピールの体を浮かせて腰巻き巻いてからシャツ着せてね。そのまま寝かせたんだ。シーツは手早く回収してね。また使うかも知れないしね。

 お陰様でおにぎりはみんな園児達の口に入ったんだ。大人たちは我慢を強いられる事になったが、ピールが一向に目を覚ます気配は見せず。この6時間後に日本国軍が救助に来てくれて。園児達も先生方も保護されて行ったんだ。僕たちは遠慮するつもりだったんだけど。保育士さんが報告したんだ。


「竜族と思われる男性2名が残っています。内一人は未明まで救助活動していたと思われる黒竜で、凄い高熱出してて。でも、私たちに先に行けと言って譲らなかったんです。」


 そんな訳で、僕たち迷惑かけるつもり毛頭無かったのに日本国軍の災害支援部隊に助け出されたんだ。

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