僕たちの華燭の宴。3
一連の挙式終わったらね。会場移して二次会。既に準備されてたんだ。
その前に記念写真って言われたんで最初は僕とモハメドだけで。後は、勇者パーティーの面々と家族が集まっての賑やかな写真撮影になったんだ。遺影を持つ人もいてね。竹田教授は戦場で散った宮様の遺影。姉上様は現在進行形で神となっても愛を育んでらっしゃる父さんの遺影。そして、幸太郎さんは父さんを庇って殉職した息子の遺影。それぞれ持ってたんだ。アメリアさんが何とも微妙なお顔をなさっているのがまた。
まぁ、筋骨隆々の乙女時代。忘れたいんでしょう。今のリンちゃん凄く生き生きしてるしね。
2次会は警護の関係で迎賓館の中にある駄々っ広い大広間でね。どうして、僕たちの為にこんな大事になってるのか聞いたらさ。
「そりゃあ、日本政府も必死でご機嫌取っておかないとって思うだろう?北海道の例があるからなぁ。」
って竹田教授はそう言うんだよ。此処10年でAIが媚を売る事を覚えたかと衝撃を覚えたよ。まぁ、技術は日々進歩してるよ。間違いなく。ただ、機械の思考が人間のそれに近づいていると言う事実にある意味、危険なものを僕は感じたんだ。僕は此処1年位。悪意ある月のAIが放ったウイルスに感染しているAIを排除してないんだ。もし、その悪意が人間に忠実だった筈のAIにたどり着き人知れず人間を洗脳していけば間違いなく預言の通りに淘汰されるのは人間の方じゃないかと思ったんだ。
2次会ともなると、学生達が中心になってお祝いしてくれたんだ。だけど中にいたんだ。AIを伴侶に選んだ人がちらほらと。僕はお祝いムードに水を差したく無かったから黙ってたけど、僕は何だか来たるべき未来に不安を覚えたんだ。
「よっ!せっかくの晴れの日に何葬式みたいな顔をしてるんだ!まぁ、飲め飲め!」
ってこれでもかって位、飲ませるんだ。竹田教授。僕、お酒は強い方でね。但し、父さんみたいにアルコール度数が発火レベルのウォッカをぱかぱか飲む様な事はしないんだ。まぁ、飲んでせいぜい笑いが止まらない程度の可愛らしい酒乱だ。お陰様でね。心は憂いているのに笑いが全然止まらないんだよ。モハメドも凄い心配してくれるんだけど、新郎酔い潰せって勢い止まらなくてね。しかも美味しいんだ。この日本酒。何でもね、これ竹田教授のお父様が作られた最後のお酒だったそうなんだ。実際に飲んだ事のある幸太郎さんは懐かしい味に出会えたって泣いてた位なんだ。現在、お酒はご長男さんが作られてるそうなんだが、嘗ての勇者パーティーの皆さんで飲んで戴けるなら父上も喜ぶでしょうって話で。本当に貴重なお酒を持って来て頂いたんだけどね。さっきから飲ませすぎだっての。
案の定というか。やっぱりと言うか。僕の意識が所々飛び出して。気がついたら僕。ベッドに寝かされてたんだ。いつもの白い服着せられてね。何でも耐えきれずに寝落ちしちゃったみたいでね。側にはモハメドとモハメドのお母さんがいらっしゃってたんだ。僕は慌てて起きるつもりだったんだけどね。僕はモハメドからヒールウォーターをコップで頂戴してね。お母さんには無理せず横になりなさいって言われたんだ。お母さんね。
「良い式だったわね。急に参加したにも関わらず皆さんには本当に良くして頂いたわ。誘ってくれてありがとう御座いました。ピール様。お陰様で、娘と良い思い出。作る事が出来ました。」
「いえ、とんでもない。すみません、お見苦しい所をお見せしてしまって。」
「とんでもない。少し起きられるかしら?先程、ドワーフのバイソンさんって方から手渡されたの。とても素敵な賢者の石ね。魔人族と言う新種族かしら。その方々にちゃんとお礼は言いましたか?」
「はい。それはもう。剣聖アークとその一族の方々ですが、普段から色々お世話になってましたから。」
「そうなのね。でもね、賢者の石と言う貴重な石だったものがこんなに容易く手に入る様になったとあればあらゆる所から食指が伸びましょう。今の所、幻の大地に封じ事無きを得てますが、あなた達がこれを持ち歩けば当然、何処から手に入れたと言う話になります。なので、これはあなた達以外には見えない様に細工を施しましょう。出来る事なら、あなた達には神に上がるその日までバレない様出来ると良いですが、先程、あなたが解いた擬態にしてもそう。私がどんなに呪力を込めても時が経てば効果が薄れて来るのです。そして、もう一つ。お話しなければならない事があります。」
「……………それは、何?」
「それは、私が無事この世界での使命を終え、神の座に登る様に命ぜられました。あなた方には見える筈ですね。彼女が。」
僕たちは1年振りに見たんだ。ヴァルキリーのアメリアさんだ。横には父さんと姉上様もいらっしゃったんだ。姉上様もローグフェルグの統治を今後はエドに任せるらしいから神界できっと僕たちの歩みを見守って下さるのだろう。
「お迎えにあがりました。竜神ミネルヴァ様。あなた様は嘗ての竜神様から与えられた使命を果たし神の住む世界に生きたまま招かれました。彼女に与えられた使命はアルジャジーラで生まれるであろう神の子に自らの子を捧げてその幸せを見届けよ。そう言われたのです。自分よりも遥かに弱い筈の人族の手に落ちるなど竜族のプライドを考えればあり得ない事でした。ですが彼女はその使命をちゃんと果たしたのです。新たな命を産んで神の子ピールの乳母になり、竜族の力を分け与えたのです。」
「…………」
「…じゃあ、僕が人外の力を持つのは全て予定調和だったのか。」
「はい。ですが、あなた達は此処にいる賢神イヴァンの子供達。大いなる力が立ちはだかっても持ち前の叡智で信仰を守り育んでいくでしょう。ピール様が幼竜となられても変わらず、あなた方の使命が終わって迎えに行くその日まであなた方二人は人として使命を全うするでしょう。何故ならばあなた方にはこのお三方の他に天寿を全うされた幸太郎さんまでがあなた方を守り支えるからです。」
僕たち、生まれる前からこうなる運命って聞いて愕然としたんだ。モハメドでさえも言葉を失ってた。僕が神の子って言われたのにも驚いたけど、陰ながら見守ってたなんてそんな事あるのか。って思って考えた時にね。父さんにしてもアーリアさんにしても幸太郎さんにしても。悉く良縁に恵まれている事実に気がついてね。
「モハメド、おいで。」
「?一体、どうしたの?ピール。」
「僕はね、今、とっても果報者だった事に気がついてね。小さい頃には母上直ぐに亡くなられたのにも関わらず、養母に恵まれてさ。旅に出れば仲間に恵まれてさ。その幸運を君が運んで来てくれたのかと思うとね。感謝しかないんだ。君と一緒なら、僕はどんな災厄が来ても乗り越えられそうで。凄く不思議な気分なんだ。」
「きっと、酔いから覚めてないからそんな事が言えるんだ。ピール。僕はピールにそんな運命強いてる事に怒りさえ覚えてっ…」
僕はきっと酔っ払って気が大きくなっちゃってたんだ。神々が見てる前でもモハメドに執拗に手が出せる程に。ベッドに押し倒してね。怒りを口にするモハメドに蓋をしてね。
「僕自身がそれを望んだって言ったでしょ。だから、それ以上は言っちゃダメだよ。さぁ、僕たち見送らないとね。」
「…………」
モハメドのお母さん。嬉しそうだった。僕たちにネックレス。それぞれかけてくれたんだ。みんなが呪詛を唱えると僕たちの身体に賢者の石が埋め込まれてね。何があっても外れなくなったんだ。魔法陣が描かれてね。誓約の腕輪の効果が付加されたんだ。魔力の暴走始まって二人して上半身の服破けたんだ。異変に戸惑ってモハメド抱き寄せば、モハメドは呆然としてるんだ。僕たち二人とも背中に竜の翼が生えてたんだ。モハメドは緑の翼。僕は鏡でチラ見した限りでは黒色だったよ。僕もモハメド同様、頭に角が二つ生えてた、耳もモハメドが持ってるそれで、僕にも長い尻尾が現れたんだ。お母さんは僕たちの尻尾を両手に持って、尻尾の先に美しい飾りを精製してくれたんだ。それにも賢者の石が使われたんだ。何個か石。分けてもらってたみたい。最後にダメ出しと言わんばかりに父さんと姉上様が祝福与えてやっと力の暴走が治まったんだ。僕たち二人して裸に近い格好になってしまったけれど、真先にアイテムバックからシーツ取り出してモハメド包んだんだ。モハメドは申し訳なさに下向いてたけどね。
「無事、二人は晴れて結ばれた。尻尾の飾りが夫婦である証だ。ネックレスの効果は誓約の腕輪竜神バージョンと言った所だ。どんな姿であっても二人を離す事は無いが、竜に変化しその賢者の石が砕かれればピール様もモハメドもその命尽き果てるから気をつけなければならない。元々、賢者の石の力は人の力では耐えられない。生まれて直ぐ力を与えた故、耐えられたのだ。今からなら人の消えた月にさえ転移し、ひっそりと二人で住む事も可能になるだろう。」
「そんな竜族のつがいとなったお前達には以下の効果が付いたんだ。俺が生活魔法で与えたシェアハウスとコントロールあるだろう?モハメドが一緒にいる場合に限って性能アップが図られた。シェアハウスにはお前たちのいる部屋に限っては時間操作が可能だ。以前の俺たちと一緒で内の時間と外の時間。設定可能だ。しかも、竜族に探知されないからここぞと言う時に使うと良いだろう。そして、コントロールはピール、お前に限っては操るものに制限がかからない。但し、モハメドがいない時は相変わらず物だけに限られる。コントロールの性能は元から悪用される危険がある魔法。結婚特典ってバレない様にだけ気をつけてな。」
「はい、それは良いんですが。僕ばっかりですか?」
「流石にそれでは可哀想なので夫婦分業にしたから安心するが良い。モハメド。そなたは回復魔法を覚えた。全てな。いざと言う時に蘇生魔法が使えず、ピールを亡くすとなればそなたが一番悔いるであろう。それ故に回復魔法に限っては3割増しとなったのだ。妖精魔法もこれまでと同様。その上にフラウディアの効果まで乗るのだ。」
「ええと、強すぎませんか?」
「そなた達が相手にするのが人族ならやり過ぎだが、竜族ならば話は別だ。これでもまだ足りないのだ。竜族は数こそ少ないが同時に神すらもこの地球さえも滅ぼす力がある、そなた達はこれからその者達を制御せねばならないのだ。智慧を絞って頑張るが良い。」
「「ェェェェェ」」
二人してね。恐ろしい事を神様達に丸投げされた気がしたんだ。とりあえず、見送ったけどね。ひょっとしてとんでもない事を引き受けたのかと。何か訴えていそうなモハメドに笑って誤魔化すしかなかったんだ。




