僕たちの華燭の宴。2
と言う訳で、バトン渡されちゃったから僕、モハメドが話進めるんだけど。
僕たち別々の部屋に通されたんだ。僕の見てくれはそのまんま女性だったからまぁ、用意されてる代物も白無垢だったんだ。ウエディングドレスだったら卒倒しそうだったけどね。竹田教授がチョイスしたんだろうって事は想像出来た。僕は翼を出す為に背中開けてるけど、僕が恥ずかしがって長い髪で隠してるの知ってるんだ。竹田教授でさえ。
「お前さ、本当に男か?声も変わってない、骨格も男性のそれとは明らかに違う。髭すらなくて線も細いんだ。ウエストだって60cmもないだろ?嘗てのルーベルト中将みたいなケースなんじゃないのか?」
「いや。流石にそれはないと僕は思ってるんですが…………」
って返答でごまかしたんだ。だけどね、僕は今日のこの良き日に衝撃の事実を知る事になったんだ。
事の発端は僕が風呂から上がった後にね。千里眼を持つルーベルトさんにこんな事を言われたのが発端だったんだ。
「モハメド君、君、『擬態』取れかかってるよ。」
「擬態?何ですか?それは。」
「…知らないのも無理じゃない。擬態をかけたのは他ならぬ君のお母さんだからね。君、実は女の子で産まれてる。でも、ハーレムで女の子ってバレたら何をされたか分かったものじゃ無い。だから男の子と偽って、数日後に産まれたピール君の身体を擬態の能力使ってコピーしてそのまま男の子として育ったんだ。ザイード様の目に留まれば手出しされる事も詮索される事も無かったからね。お母さんはその後追放されてるけどね。ザイード様のお手つきにされそうになって逃げてるんだ。でも、君とピール君は竜族の女性に育てられた子供達。君たちが晴れて夫婦になったと知ればお母さんは必ず君に会いに来るだろう。君のお母さんは御存命だ。だけどね、覚悟しないといけない事がある。ピール君は君を守る為だったら人族である事さえ捨てるだろうね。大事な人を守る為に。人族の力で竜族に立ち向かうのは事実上不可能だから。」
「…………」
それを聞いて僕はとてもじゃないけど白無垢に袖を通す気にはなれなかったんだ。エドも。
「今、それを言う事じゃないだろう!」
って注意してくれたんだけどね。だけどね。
「心して聞いて欲しいんだ。竜族の女性は君を含めて3人しかいないんだ。この先、結婚しててもその他の竜族の男性をピール君が撃退出来ないと賢者の石の力で婚姻結んでても奪いに来た他の竜族の男性に奪われるんだ。竜族の掟は弱肉強食。ピール君の事が大事なんだろう?だから、この先ピール君をどうしたいのか。今一度考えてご覧。僕も色々あったから教えるのが今になってしまって申し訳ないんだけど。」
「いや、良いんです。知らないで巻き込むよりか知った上で自らの意思で決めたのなら僕もまだ納得出来るから。他に僕が知らないといけない事はありませんか?」
すると無いって返答だったからバスローブ着たまま。髪も乾かす事なくひたすら考えたんだ。冷たい滴が垂れてたけど構う事なくね。途中、エドが出入りしてたのは知ってたんだ。
「少し時間がかかりそうだから子供達をピール君の所で遊ばせてくるよ。」
そう言って、エドは子供達連れてピールのいる控え室に行ったから。僕は悶々と一人で悩み続けたが、直接本人に聞いた方が良いなって考えに至ってね。僕はスマホでピール呼び出して、僕をシェアハウスに招き入れてってお願いしたんだ。僕の身体はあっという間に魔法陣が描かれて次の瞬間、ピールの魔法の世界にお邪魔してたんだ。浅黒い肌に紋付袴。凄く良く似合ってた。ピールは僕が風呂から出たまんまって状態に、何かあったと思ったんだろう。
「何か言われたのか?ちゃんと話。してくれるよな?」
「うん、実は…………」
僕はピールにだけは隠し事をしたくなくてルーベルトさんに言われた事全て話したんだ。そしたら、僕はあっという間に抱き寄せられてさ。ある部分に指が入った感触がしたんだ。ピールはね。
「僕は最初から知ってたんだ。一体、何年。僕が抱いてきたと思うんだい?ただ、この部分だけはちゃんとモハメドの口から本当の事を聞いてからにしようってずっと思ってたんだ。婚姻の前にそう言う話が出たのにもちゃんと意味があるんだ。恐らく、結婚後に僕は本当に竜になってしまうんだろうね。だけどね、僕はこの腕の中の人を手放すなんて選択肢。微塵も無いんだ。モハメドは僕を危険な目に遭わせたくないって思ってる事位、僕も承知してるんだ。でもね、君が思っている以上に僕はこの腕の中の人の幸せを守りたいと切実に思ってる。僕は君を守る為だったらどんな運命にも抗うつもりだ。だから、安心して僕のお嫁さんになってくれるかい?但し、一つだけ約束して欲しいんだ。」
「何かな?」
「君が狙われやすいのは知ってるから今後も擬態して良いんだ。だけどね、僕が二人きりになるこの空間の中でだけはありのままの姿でいて欲しいんだ。約束してくれる?」
「うん、約束するよ。」
僕が煮えきらないばっかりに凄く迷惑かけてるって理解はしてるんだけどね。でもね、ピールはきっと安心させたかったんだろうね。しっかり抱きしめてさ。ちゃんと指抜いてくれて、ただ慈しんでくれたんだ。最初から僕の認識を正すだけだった様でね。僕は腕の中でホッとする事が出来たんだ。そしたら、僕。知らない間に見た事も無い様な体つきになってた。僕はただただ呆然とするしか無かったんだけど。
「まぁ、あんまり人を待たせるのもどうかと思うから、この続きはこの陰謀が終わってからだね。擬態のやり方は分かるのか?」
「ごめん。僕はさっぱり…………」
「今一度、私が呪詛を教えよう。」
「何か言った?ピール。」
「何も言ってないよ。モハメド。てか、僕の魔法に介入したあなたは誰!何となく、気配が懐かしいからモハメドのお母さんだと推測してるけどさ!」
「ほぉ、私が分かるか。ピール様。やはり、竜神様のお告げに間違いは無かったか。だが、まだ今はその時では無い。モハメドが困っている故、今回介入した事は許して欲しい。」
「許すも許さないも。僕はあなたの事を責めるつもりは毛頭無い。ただ、僕たちの結婚許して欲しいんだ。」
「ピール様、命を賭けてこの子を守る覚悟があると。そう言うのですね。」
「はい!」
僕を抱きしめる力が不意に強くなって痛い位だったんだ。いつの間に、こんなに頼もしいお方になったんだろう。僕はピールを見つめたんだ。ただ、声がする方を一点だけ見つめて挑む様な。そんな目だった。僕が見つめてるのに気がついて、
「心配いらない。僕を信じてくれ。」
そう言って燃え上がる様な濃厚なキスしたんだ。僕は委ねたんだ。全てを。心からお慕い続けていたから。幼少の禁じられた頃から、今もってなお。僕は全てをピールに捧げてきたんだ。ただ、ピールは僕が正直になるのを待っててくれてたんだ。いつの間にか僕は快楽に溺れそうになった所でストップかけられたんだ。ピールには少々不満が残る状態だったけどね。僕の様子を見てお母さんは判断したかったみたいでね。
「二人とも分かったから、楽しみは後に取っておきなさい。モハメド、嘘を教えたまま立ち去ってごめんなさい。ですが…………」
「……………勿論、陰謀渦巻くハーレムに置いてきてるんだ。母さんの判断は間違ってないと僕はそう思ってるよ。ただ、少々無責任じゃないか?大事な事を教えないまま僕を置いて居なくなるなんてね。僕とピールはずっとこうやって生きてきてる。ただ、急に言われても、僕だってどうすれば良いか困るんだ。とりあえず、擬態の方法を教えてよ。僕のせいで何か押してるみたいだしさ。僕の仲間達も心配するから!」
「…分かりました。擬態の呪詛。教えます。」
そうして、僕は擬態の方法教えて貰って。ピールはメモ帳にサラサラと聞き取って記入してたんだ。凄くつまみ食いしたかった。って、顔に書いてたけどね。僕は知らない振りしたんだ。僕も、ああだこうだやってる内に段々気持ちが固まって来たんだ。最後にお母さん。顕現したんだ。僕たちの前に。ピールの少々乱れた着付け。簡単に直してくれてね。ピールは説得してくれたんだ。責めて、モハメドの晴れ姿。見て行って貰えませんか?って。お母さんも躊躇してたんだけど結局、お母さん。折れてくれたんだ。僕は一足先に準備があるからピールが僕がいた部屋まで魔法で送ってくれたんだ。みんな随分心配してくれたみたいで方々探し回ってくれてたんだ。僕は申し訳ない気持ちで一杯だったけど、ピールに話を聞いて貰ってた。って言ったらルーベルトさんの警告の件みんな知ってたから納得してくれてね。大急ぎで支度するから手伝ってってお願いしたら大慌てでメイクやら何やら手伝ってくれてね。僕は擬態やり直してたのにルーベルトさんにあっさり魔法解除されてね。まだバスローブだったから少々恥ずかしい。
「ちゃんと本当の姿でお嫁さんになって頂戴。偽りの姿で嫁がれてもきっとピール君、嬉しくないと思うよ。」
って感じでね。しょうがないから今日だけは自分を偽るの。辞めたんだ。着物着てね。着付け済んで、髪が長いから地毛で結って貰ってね。メイクして頭に白いの被せたら、そこにいたのは余りにも別人な僕だったんだ。支度出来てね。履き慣れない靴履いてしずしず歩いてたら入り口の所でみんな待っててくれたんだ。
「モハメドお兄ちゃん綺麗だね!」
「あ、ありがとう…………」
もう、そのやり取りだけで僕の顔は真っ赤になっちゃって。竹田教授もお父さんの遺影持って満足そうにうんうん言ってるんだ。ピールもね、僕の姿見て嬉しそうにしててさ。この後、みんな用意された式場に入ってね。挙式したんだ。みんなが見ている前で。神前挙式ってやつだったかな。神様いない日本でどうするのかと思ったらやはり黒幕他でもないイヴァン父さんだったんだ。ああ、2日前からこれ企んでたかと僕たち二人は頭抱えてね。ピールが姉上様と慕うお方にお神酒を注いで貰って僕たちは改めて夫婦になる事を誓ったんだ。




