表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
14/595

それぞれの思惑。

「そうか。エステルを発ったか。」

「はい、ジーク様。」


 我は世界政府のエージェント、カイヤの報告を受けていた。後の連絡はリンちゃんに任せ、バイソンは引率じゃなと。


「ちなみに、あのガラクタで何を作ったのかの。スペースデブリから例のシャトルを作ったそうだが、相変わらず婿殿は面白いと言うか何と言うか。」

「写真を見ますか?」

「拝見しよう。」


 見たら実に見事な空飛ぶ帆船だった。最早、婿殿に作れない物が無いのではなかろうか。


「これは実に見事じゃ。で、スペースシャトルは回収したかの?」

「はい。こちらに持って来てますが。出しましょうか?」

「いや、出さずとも良い。あんな大きい物を出したら住民が困るじゃろうて。」


 そう言って笑う。今、我は余命短い綾女の願いを聞き届け、岡山にある蒜山高原に自宅を購入し移り住んでおる。最初に此処に来た時、東京とは違い、自然が豊かなのが嬉しかった。医者とか看護師とかを現地でお願いした。急変時にはドクターヘリが来る事になっておる。ただ、ミサト達はこの場所を知らぬ。だから転移魔法を会得したとしても此処には来られないじゃろう。それだけが我の心を暗くした。


「それじゃ、スペースシャトルを種子島宇宙センターに持って行って、来るべき時に備えて修繕作業を急いでくれ。」

「かしこまりました。」


 カイヤが退出したのを見届けて我は綾女の介護へと向かった。自然があるのが幸いして精霊達も元気になっておる。綾女の命が残り少ないなんてそんな事実無くなれば良いのにと我は思った。



 俺の作った船は暗い夜を蒸気を吹かせながら処女航海をしていた。この船自体はコンピューター制御だが、エンジンの構造上は非常に原始的だ。俺がノープランで即興で作ってしまった為航路は世界を旅するバイソンの仕事、定期的に水を補給するのはミサトの仕事、薪をくべるのはリンちゃんの仕事。コンピューター制御は俺の仕事な訳で、なんだ、この船誰も休めないじゃ無いかと出発してから気がついた。流石に寝ないと死ぬので以前、作ったアプリを即興で入れ、ボイラーの一括管理をしつつ2時間は寝かせてもらったが、流石にみんなを寝かせないと。と思って、近くに停泊できる場所はないかと地図とにらめっこしていた。航路設定を終わらせて操縦席からバイソンが降りて来た。


「なんじゃ、お主。地図と睨めっこしてどうしたんじゃ?」

「ええと、魔王城までどの位かかるんでしたっけ?」

「3日じゃ。」

「3日…………」


 微妙な空気が流れた。


「3日も貫徹無理でしょ?」

「そうじゃのう。鍛治職人のワシ、エンジニアのイヴァン、スパイ活動もお手の物の忍者のリンちゃんは問題ないじゃろうな。ただ、一番の要を担当しておるミサトちゃんがなぁ。定期的に水を入れるだけの簡単なお仕事だがそれが無くなると即墜落じゃからのぉ。」


 そう言って2人して渋い顔だ。


「それでどこか休める場所を探してたんですが、どこか心当たりありませんか?」

「そうか、イヴァンは月の民だから此方の地理に疎いのは至極当然じゃ。少し、時間がかかるようになるが、ミサトちゃん負担を強いる訳にはいかないなぁ。んじゃ、小さな小島が2ヶ所あるから。場所は此処と此処な。」


 そう言って、バイソンはピュリナワン島とロイ島を指し示した。2つ共超小型浮遊大陸だ。聞けばバイソンもこういう小型浮遊大陸を利用しながら世界を旅しているんだそうだ。自由って羨ましいなぁ。って俺は思った。俺とミサトが自由になる。現状ではまずあり得ないなと自嘲の笑みが零れた。



 私の担当は水をタンクに入れるお仕事だ。ボイラーで水が温められるので、水が減って来たら追加で入れる作業だ。なので、水が満タンになってて目を離しても大丈夫になったら細切れだが、睡眠を取る様にしていた。精霊達は良く頑張ってくれている。タンクの水が半分切ったら水の精霊にお願いして水を満タンにするのだ。凄く単調な仕事なので、凄く考え事が捗る。イヴァンと出会ってから、世界が変わった。私には無縁だとばかり思っていた人並みの幸せを此処1カ月感じていた。下卑た奴らが襲って来た時には遠慮なく打ち据えていたと言うのに、イヴァンに抱かれた時は何も怖くなかった。あれ以降、責任が義務がと尽くしたのにみんなに嫌われた日々は一体何だったのかと思わずにはいられない。イヴァンは甘えたって良いんだよ。と言ってくれた。泣きたい時には泣いて良いんだよと言ってくれた。そしてある時気がついた。


 もうイヴァン無しでは生きてはいけないと。女王とか言われるよりも奥さんって言われる事が嬉しい事に。そして、この船を作るのに貫徹してたから1週間イヴァンに抱かれてない事を寂しく思う自分がいる事に愕然とする。


 私はそんなに欲深かったのかと悪い自分を見つけて落ち込む。


 ハイエルフの混血、エルフの村落はこの地球上に何ヶ所か点在する。理由は祖父が祖母を見初めて妻として再婚したから。その考えに追随する多くのハイエルフがいたのが始まりだ。でも、中には保守的な考えの純血種がいた。それが、私が守っていた故郷の人間という事だ。ただでさえ、種族としての命運は尽きていた。ならば、地球の民として多くの血を残そう。そう考えた人がいる中で、もっと悲惨な運命に見舞われた方々がいた事を忘れてはならない。そう、今向かっているエベレスト山の麓周辺で起こった事だ。

 魔族領のある大陸は実はそこそこ大きかったそうだ。だが、世界が衝突する中で大地は砕かれ魔王も一族を守る為に粉々になった大陸と一緒に消えてしまったそうだ。そこで魔王に守られた魔族の生き残り達は飛べる種族の助けを借りながら地上に降り立ち、そこに住んでいた人族を蹂躙し尽くしたと祖父から聞いた事がある。当時は魔王が逝去して混乱が収まらなかった地上は正にこの世の生き地獄で、当時の祖父も大怪我で止めれず、大掛かりに魔族を討伐しようという話だったが、それを力づくで止めた魔王候補がいたそうだ。


「あたしが止めるから。もし、それで一族の蹂躙が止められないのならその時は遠慮なくあたし毎葬り去って頂戴!」


 と。彼女の名はナスターシャ・エレノア・アレフガルド8世。不老不死と謳われる一族の長だったが、当時はまだ200歳手前だったそうだ。だが、彼女が全ての魔族を蹂躙して強さを示した事で混乱は収束し、現地の人族はやっと保護されたのだそうだ。そこで世界政府はやっと魔族領を認めた上で現在に至るのだそうだ。現時点の魔王は間違いなく彼女だ。彼女の力を借りるには対価が必要だ。差し出しても惜しくない何かだ。だけど、もしイヴァンだったら……………


 腕が伸び、背後から抱きしめて唇を塞がれた。吐息が漏れた。暗闇の中、夜目が利くから最愛の人が欲望に塗れていたのが分かる。


「イヴァン?」

「3日徹夜は厳しいからバイソンに考えを伝えて停泊して貰ったんだ。夜の見張りはリンちゃんが名乗り出てくれたから俺たちは中で休むぞ。」

「はいっ!」


 ああ、この人も私と考えが一緒だったんだと思うと嬉しくてたまらない。イヴァンが対価にされるのだけは嫌だとそう思わずにはいられなかった。



 アタシの護衛対象は見えない所で愛を育んでいる。素敵じゃないかとアタシは思う。

 最初こそ吊り橋効果の恩恵で燃え上がったのだろうけど、四六時中側にいても飽きないカップルなんているんだと思った。イヴァン博士がミサト様と一緒にキャッキャウフフをしたいが為に、


「悪いが、お前は外で警戒な?」


 って言った時、本当に心からリア充めと恨めしかったが、イヴァン博士は軍部からの軟禁生活が長く、ミサト様は一族から受け入れられなかったという過去をお持ちだ。使命を帯びた旅にも関わらず、悲壮感のかけらも無いのは相思相愛が成せる技なんだろうなと言っても過言じゃ無い。バイソンさんが酒とグラス持ってワタシのいるデッキまで持ってきてくれた。


「リンちゃん、仕事中だけど呑むか?やってられんだろ?あの2人に当てられちゃ。」


 本当に良く分かっていらっしゃる。流石、いぶし銀の男は違うわぁ!っと思った。


「有り難く頂戴するわね。」

「おう!呑め呑め!」


 そう言って、グラスに蜂蜜色の液体を入れてくれた。一口呑むとかあああっと熱くなった。少し強烈な印象だが口当たりは非常に良い。


「悪いな、イヴァンに1日で2瓶開けられてなぁ。あんまり無くて申し訳ないが。」

「いえいえ、とても美味しいお酒ですよ〜」


 こんなキッツいお酒飲んでて翌朝ケロリとしてたんだそうだ。ロシア系には酒豪が多い。評判通りだな。ワタシは、オフならおかわりするかなって程度だ。ちびちび飲みながらバイソンさんは話し出す。」


「なぁ、次の魔族領でさ。魔王の力を借りられると思うか?」

「どうでしょうね。平定後に魔王が城を開ける様な事は無かったわね。」

「何故じゃ。」

「魔王領は力のある者だけが生き残る事の条件だからじゃない?だからおいそれと空けられないと魔王がかんがえていてもおかしく無いわ。」

「ふむ。ワシはな、別の理由を考えておる。彼奴ら確実に心臓を狙うか頭を狙うかしかしないと先ずは死なないんじゃ。再生しちまうんじゃ。だから、単に外に出なくても楽しい事をしてたんじゃ無いかとワシは思うんじゃ。」

「道楽に耽ってたって事?」

「そう言う事になるのう。ワシもな、この世界に来た時には色々驚いた事があるぞ。ここの世界は沢山の娯楽に溢れておるからのぅ。スマホアプリとか言う代物にゲーム系が多かったり、テレビを見れば情報が見れて動画サイトを見れば色々なドラマを見られる。この様な娯楽に溢れた世界。ワシ以上に長い時を生きる不死族が見逃すはずなどまずあり得ん。」

「バイソンの話を聞いてると、そっちじゃ無いかって気になるわね。何があっても死なないってどんな感覚なんでしょうね。」

「そうだな。我らドワーフでも寿命は300年あるからなぁ。お前さん方の実に3倍じゃな。でも、長ければ良いってものじゃ無いんじゃ。寿命ってのは。長ければ長い程、生きる意味を失う。長ければ良いって代物では無いのだけは確かじゃ。」

「…………」


 生きる意味かぁ。ワタシも常に思う事がある。平均寿命100歳の私たちでさえも見失う事がある位だ。

 不老不死なんて羨ましいなぁと思うのは辞める事にしてバイソンさんとの楽しい酒盛りは朝まで続いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ