騒動の後。
僕たちは一度、母国に無事と父さんの1周忌に結果的に欠礼した事をお詫びしてから日本に向かう事にしたんだ。ムーンフロンティアまでは派遣されてた軍と一緒だったんだ。戦艦は日本国軍から購入したんだ。沢山の食料と引き換えらしくてね。日本で作れなくなった調味料の類いも作ってるそうで、AI搭載型が手に入れやすいそうでね、でも、月での黒幕の事。覚えてない国民っていなくてね。父さんの教えに反するからって理由で今後はイギリス型に変更かけようかって言ってた矢先の騒動だったみたい。
まぁ、殺し合いにまで至らなかったのは幸いだったんだ。亡くなったのもエドを乗っ取ろうとした不死族の青年一人だけって分かってるからね。
なもんで、僕たちの帰りは完全に遠足か修学旅行のノリだったんだ。
ただね、道中に気になるニュースがあったんだ。エドワード王。不死族に乗っ取られそうになった事がイギリス政府から明らかにされたんだ。ずっとルシール王妃様がDV加えられて無理矢理したくも無い事をさせられてたにも関わらず政府は黙認して誹謗中傷を受けるがままになってた事実に本物のエドが激怒してね。
「そなた達は僕が同じ様な目にあってもルーの様に見て見ない振りをして晒し者にするんだな!そなた達の考えが良く分かった。僕は、全ての職を返上させて頂く。そなた達の王になどなりたくも無い。本来の姿に戻るだけだ。本当なら11年前にイギリス王室は滅ぶ運命だった。陛下のご慈悲で臣下として側で仕える事を許された事で断り切れず皇太子になったが、今回の様な事が罷り通る王室など滅んで仕舞えば良い!未練も欠片も無い。」
そう言って、本当に素早い手続きでさ。世界政府のトップ。さっさと降りて。イギリスから受け取ってた税金と住まい。全部返納しちゃってね。ウインザー城からローグフェルグに友好の証として贈られた城に逃げ込んだんだ。イギリス政府も驚いてさ。姉上様が仰った通りにルシール王妃様の名誉回復を図ろうとしても既にどうにもならない状況でさ。イギリス政府から電話で。
「すいませんが、ルシール王妃様の名誉回復の為にネット関係の事でご相談が…………」
って連絡来たので。エド夫婦の今後を思うとね。世俗から離れた世界で生きた方がなんぼかマシなもので。
「非常に申し上げにくい事ですが、一旦、ネットに流出してしまったものに関しては昔も今も完全に削除するのは事実上不可能です。幾らハッカーと言えども、女性の裸の為にやらなくても良い犯罪して捕まる馬鹿は居ません。諜報部がどこまで事の深刻さを理解しているかにもよりますが、個人的に所有してたら一巻の終わりです。それもこれも初動で放置してたあなた方の責任だ。あなた方が親身になってルシール王妃様を御守りしてたなら回避する事が出来た事案です。ローグフェルグ皇帝陛下もご心痛の余り、心から案じておいでだ。僕は、あなた方が無くしたものの大きさに気がつく日が1日でも早く来る日を願ってます。」
そう言ってお断りさせて頂いた。勿論、本物のエドにはこんな依頼あったんですけど。って報告だけはさせて頂いた。連絡先なら場所が分かればどうにかなったのもあった。姉上様が持たせたタブレットで連絡だけは取れたからだ。それで、心配になったから今後どうするのか聞いたら。
「ローグフェルグの統治を任せたいとミサト様からのお達しあってね。この後、ファルメリア宮殿へ家族全員引っ越す予定だ。あそこなら、子供達の成長に合わせた学校がある。エルフ達が作った学校がね。ローグフェルグは世俗から隔絶された地と言うのは昔から変わらない。自力でパパラッチ達が来られず、定期便も無く、エルフ達もとんだ愚行のお陰でイギリスにはエルフも居なくなってる。イギリスで作った大使館併設の城も既にこの後閉鎖する故、日本に続いて窓口無くなったよ。全世界に向けて僕の奥さんの一件で皇帝陛下は直々に警告を出されたから僕に待ってるのは難民受け入れと言う仕事が待ってるんだ。本当にお陰様と言うしか無い。」
既にあそこ相当数のエルフ達が住んでるが、どうするのかと思いきや、ファルメリア宮殿のすぐ側にいつの間にか父さん。セレネティア大陸置いて尚且つ、高度上げて全ての大地に夏の精霊王ネイサンの恩恵が来る様に配置し直してたんだ。無人の浮遊大陸を幾つか持ってきて繋げ合わせてもう一つ。大きな新大陸作ったんだ。父さん、それをエルフの神様に捧げたんだ。この思わぬプレゼントにエルフの神様は凄く喜ばれたんだ。何もない大地に自然が溢れた。エルフの神様はその新たな大陸に「イヴァルティカ」って命名された。エルフの神様の彫像の隣に僕の父さんの彫像が置かれてね。
「この素晴らしい土地は賢神イヴァンから賜りし大地。私の庇護の元、守られし大地。」
ってエルフ語で書かれた碑文。あるんだそうだ。セレネティア大陸を中心に浮遊大陸群を形成したローグフェルグ皇国。多分、これから多くのエルフが人族の街を離れる事を想定してたから予め土地を確保した様だ。ただね、少し気になったんだ。こんな大きな大陸群あると地上日が当たらないよね。って。一体、地球のどの辺に大陸群移動させたんだろう。非常に気にはなるんだが、それは帰ってからの楽しみって言われてしまったよ。
全ての大地に結界張っていてね。この後、ルーベルトさんが大陸の一つ一つに温度調節の魔法を書き加えないといけないって父さんが話してるヒントを元に推測するなら北極圏か南極圏かって感じだと僕は推測したが、果たして、何処に行ったやら。
母国に戻って神殿に戻ったらね。父さんが顕現してね。みんなが平伏す中、父さんの遺体が無事返還されたんだ。本当に良かったと思ってるんだ。僕たちの信仰の大元にあるものだから。僕は人が触れない場所に安置したんだ。父さんの遺体。アイスコフィンで遺体と再会すれば既に霜が張ってて殆ど真っ白だったけどね。モハメドが溶けかかってる部分の修復して、フラウディアの力で呪詛を書き足して遺体のある場所には誰も入れない様に封印を施したんだ。
その日の晩、急にも関わらず僕の帰りを聞いた多くの民衆が押し寄せてね。帰依をする人だったり教えを乞う方々でごった返しだったんだ。僕は父さんの教えを説いたんだ。この対応を一人一人丁寧にやっても人々が途切れる事はなく、不眠不休で2徹する羽目になっちゃったんだ。まぁ、仕方ないんじゃないかな。今の現状、母国にいるよりも日本にいた方が長いからね。3徹目に入ろうとした所でモハメドがストップかけたんだ。
「大司教様、お休み下さい。今のまま飲まず食わず。不眠不休で応対なさってはお身体に触りましょう。信者の方々もお気持ちは凄く良く分かるが、一旦帰って頂けると助かります。どうか、この通りです。数時間で構わないのでよろしくお願いします。」
それ以降、僕の身体が持たないって理由で僕への面会時間。ちゃんと設けてくれたんだ。朝6時から夜6時の礼拝終了時迄って。特に聖書みたいな本も無いから教えを乞う人が後を絶たない。って事も分かったので、父さんの教えを説いた紙を置いて信者達に配布する様に言ったんだ。宗教として成立して1年経って以降でこれを準備するって遅すぎる位だったけどね。お陰様でそれが済めば大分落ち着いたんだ。現地で司教クラスの僧侶達が何人か育ってくれてたのもあって、僕は彼等にムーンフロンティアの土地全てを周り父さんの教えを伝える様に命じてから再び日本に飛んだんだ。そこまでで既に衝突があってから10日が過ぎてたんだ。それだけ、僕の身を民衆が心から案じてくれていたんだと思うと感謝の念しか思い浮かばなかったんだ。
4月になって父さんの喪が明けたんで僕たち二人だけで夫婦になる事にしたんだ。魔法の書類を書いて父さんに提出したんだけどね。僕たちは既に日本に滞在していたし、福井大学で作った空気清浄機に不具合出たんでそれの修正作業中でね。竹田教授に絶賛こき使われ中だったから式は落ち着いてからって父さんに話したんだ。父さんは残念そうな顔をしたんだけどね。不意にニヤリって笑ったんだ。僕は何かあると思ったんだけどね。父さんはぐらかすんだ。
そしたらさ。その2日後だったんだ。大将の車でいつも通り福井大学に着いてね。竹田教授のゼミの子達がさ。目隠ししてって言うんだよ。モハメドだけにさ。まぁ、僕に関しては姉上様から賜った目の関係があるから難しいのは知ってるけど、彼女達は知らない筈だし、サプライズなら僕にもするよなぁ。普通。って思ったんだ。モハメドも困惑しつつ僕の腕に手を絡ませたんだ。リムジンに乗る様に言われてさ。そこから視界僕もシャットダウンだったんだ。運転席からも僕たちのいる座席からも一切が見えない。そんな状態だからさ。モハメドも不安だったみたいで僕から離れないんだ。目隠し外して僕たちキスして抱き合ってね。
「大丈夫だよ。モハメド。乗ってる時間が長いから多分、高速使って移動してるんだろう。」
って言ってたんだけどね。どうも車ごと飛行機に乗せられてさ。浮遊感に襲われると僕まで不安が移っちゃってね。
「一体、これ何処に向かってるんだろうね。モハメド。」
「さっきまで大丈夫だよって言ってたのに舌先が乾かない内に不安を訴えるんだね。ピール。」
そう言って僕たち笑い合ったんだ。誰もいない事を良い事に少しだけ快楽に逃げてさ。本当に色っぽくてね。毎日四六時中側に置いてるのに。毎日隣で寝て貰ってるのに。止まらないんだよなぁ。色んな欲望の類い。勿論、人前で抱く様な事は一切してないし、大事にしているつもりだけど、不測の事態に陥ると欲望の類い。顕著に効果を発揮するんだなって思ったんだ。
ちゃんと服整えてさ。暫くしたら誰か運転席に乗り込んだ気配したんだ。2時間位飛んでたか。乗せられたのはプロペラの音から推測するに軍の輸送機って推測までは出来てたんだ。異臭の類は無くて、地下都市に降りてから30分程で僕たちは降りる様に言われたんだ。
僕たちが招かれたのは日本が内外に誇る大都市東京の地下都市内にある迎賓館だったんだ。僕たち、余りにも場違いな場所に招かれてしまったので二人して後ずさって。逃げ出そうとしてさ。竹田教授の満面の笑みで二人して首根っこ掴まれてさ。嬉々とした教授に引きずり込まれてしまったんだ。




