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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第二章 忠義神ピールと慈愛神シェリル
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王者の帰還。2

「ピールの言い分はこうだな。現在進行形でルシール王妃様の生死が脅かされてる状態で、本人が死を望んでいるが、王様と王子達はこれを阻止するべく魔法で蘇生を試みてると。説得するには本人に天皇陛下の検死結果が必要って訳なんだな?」

「はい。本当に申し訳ありませんでした。教授。」

「本当にな。全く人騒がせも大概と言いたいが、天皇家にしてみればルシール王妃様は殺人犯どころか大恩人なんでな。調べるまでもなく、俺自身がエドワード様に上奏したい。それで、シルフィードに魂が食べられないって納得しても説得にルシール王妃様が応じてくれるかどうかは俺にも分からん。ルシール王妃様の事は世界中の人が知ってる。エドワード王が所構わずやりまくるからな。まるで見せしめでな。本人が凄く嫌がってるのに断れば散々暴行を加えてな。痛めつけて反抗できなくしてしまってさ。完全にDVで支配してた。お前が言うには実はあれは別人でさ。本物のエドワード王は軟禁の上、不死族に乗っ取られる所だったんだろう?で、そいつは結局どうなったんだ?」

「師匠と子供達の手でもう既に息の根止めてますよ。」

「なら、心配いらないんだな?今は無駄話する暇無かったな。ルシール王妃様の誤解解かないと。スピーカー最大にしてみんなに聴こえる様にしてくれるか?併せて、俺が言った真相を日本政府の公式見解として打診する手続きも併せてしておく。ルシール王妃様の心の傷がそう簡単に癒えるとも思えないが、まぁ、ご清聴願うとしようか。」


 僕は今、竹田教授からスピーカーでお話ししたい事がある。ルシール王妃様が天皇陛下を殺したと思い込んでる件について話しがしたい。と伝えると。


「委細承知した。失礼だが、宮様には3人のお子がいらっしゃる。何方であろうか?」

「その様子だと偽物じゃないな。以前はその様な者は知らぬ!と言われたからもう一度それ言われたら俺にも説得は難しいと匙を投げつける所だったよ。憲仁だ。覚えてるでしょ。エド。」

「ああ、思い出した。真ん中の悪戯小僧か。そなたには散々してやられたな。僕が新兵の頃には鞄の取手に大きな蛇を仕込まれて腰が抜けたとか。やりたい放題やられた記憶しかない。年もそう大して変わらないのにな。」

「でだ。ルシール王妃様の件で揉めてるって話だから、俺の兄貴から聞いた話で良ければ聞いてくれないか?ルシール王妃様、あなたは殺人犯なんかじゃないんだ。夜中に転移魔法で飛んできた形跡あるからその辺の事はほぼ間違いない。だけどな、真相はこうだ。手を下すまでもなく既に事切れてるのを見て驚いたあなたは魔法で天皇陛下の蘇生の方をしてしまった。軽い心臓マッサージを施す程度の弱い雷魔法だ。勿論、異常を知らせるベルは陛下の手元に無く遠い所に置かれていたからベルを鳴らしてからルシール王妃様は立ち去られた。だけどな、その後の処置が不味かったんだ。ルシール王妃様の計らいがあったにも関わらず、担当の侍医も職員もみんな無視を決め込んだ。理由はな、日本から自然が消えた事への憤りからだ。ローグフェルグの若い肯定陛下を怒らせる様な事さえしなければ日本が滅亡の危機に瀕する事は無かったってな。ただ、事の詳細がビデオに録画されている事と真実を隠蔽する為にルシール王妃様を殺人犯に仕立て上げる様に仕向けたのは我々の方なんだ。そうでなければ、ルシール王妃様には虐待が待ってた。罪人にせねば彼女がどの様な仕打ちに合うのか分からなかった。って言うのが真相だ。エドワード様。幾ら彼女を守りたかったからと言って王族を罪人に貶める事はあってはならない事だ。伏してお詫び申し上げる。って、見えちゃいないだろうが。」

「……………貴重な証言ありがとう。憲仁殿。さて、ルー。これでそなたがシルフィードに食べられる資格すらないと判明したが、それでもそなたは僕の所からも子供達の所からも去ってしまうのかい?子供達にあんな過酷な試練を敷いて、心の傷作って、それを癒す事もなく、無責任に立ち去ると言うのかい?」

「…ですが、僕は殺人犯で無かったとしても僕は取り返しのつかない事をしています。お願いですから、もう楽に……………」

「大概にするが良い!ルー。僕は生憎、諦めが悪いんだ。僕が諦めてしまったら、子供達が一生笑わなくなる。そんな気さえしているんだ。何があっても離さぬ!そなたの魂は誰にも渡さぬ!」

「だけどな、ルー。お前がそうやって強情張ってると本当に蘇生難しくなるんだ。やっと心からお慕いする人に会えたんだろう?お前、諦めてしまうのか?ここにいる面々、誰一人として諦めちゃいないんだ。」


 いつの間にか、父さん。来てたんだ。モハメドに指示して時間逆行かけてたんだ。父さんが指示したのは竹田宮様が亡くなられる直前まで身体の状態を戻せって指示してた。そして、僕にね。パーフェクトヒールかける様に言えばたちまち全回復してたんだ。それでもルーベルトさん。最後まで煮え切らない態度で。


「無理っ無理っ!絶対無理だから!」


 って言い続けるからさ。仕舞いにはエド。切れたんだ。


「いい加減にせよ!そなたがいないとみんなが凄く困ると言ってるんだ。大人しく僕の所に戻って来い!そして、これ以降、家族を悲しませる様な事は一切せぬと約束せよ!コックピットで申し渡した事をもう忘れたとは言わせない!もう御託は沢山だ、これからは口ではなく態度で示して貰わねばな!そなた達も手伝うが良い。何時迄も聞き分けの無いルーにこの魂を無理やりにでも入れるから!」

「「分かった!」」

「ちょ、ちょっと、待って。僕、こんなの無理だって!」


 僕もこんなの初めて見るよ。蘇生此処まで嫌がるものなのか?的な何かだ。だけど、エド達親子は至って真剣で。結局、こんなに拗れた夫婦間でも家族のかたちってちゃんとあってさ。幸せの形もそれぞれの家庭にはっきりとした形であるんだろうなって僕はそう思ったんだ。僕が父さんと過ごした日々も家族のかたちだとするならエド達親子が妻であり母であり最愛のお方を必死になって取り戻そうとしてるのも僕はあるべき家族のかたち。僕はそう思ったんだ。だから、僕は引導を渡す事にしたんだ。


「ルーベルトさん、あなたはエド達と冒険してた時、将来を考えた時にどんな未来を思い描きましたか?今一度、思い出してみませんか?そうしたらね、何故、此処までこの人達がどんな手段を用いてでもあなたの手を離さない理由に、あなたなら辿り着ける筈ですよ。僕にも確固たる幸せの形。将来に渡って描きたいと思う確固たる未来があります。色々ありすぎて、心に余裕が無いから死に急ぐのかもしれませんが、事情はみんな知ってます。だから、もう一度だけで構わない。僕たちの想い。聞いてもらえないでしょうか?」

「…………」


 そしたらね、ルーベルトさんの方が力抜けてる事に気がついたエド達親子は3人で頷きあった後、一斉に魂を身体の中に押し込めたんだ。見事なまでの連携プレイでね。これが初対面とは思えない程だったんだ。僕もこの機会を逃す気無かったんだ。なので再度。


「リザレクション2!」


 って詠唱したんだ。そしたら今度はちゃんと成功したんだ。ルーベルトさん。目を覚ましたんだ。


「……………みんな、本当に困らせてごめんなさい。」


 本当に子犬の様なお人でね。くしゅんと項垂れて、大きな背を限りなく縮こませるんだ。横になったままね。僕にしてみれば、娼婦と現在進行形で陰口叩かれてる人には到底見えないんだ。


「どうやら、上手く事態収拾出来た様でとりあえず万々歳だな!」

「本当に大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

「いいや、お前ハッカーの世界から足洗ってるとは思えない程さっくり攻略するものだからAI達が慌てて連絡して来たんだ。俺も驚いたぞ。まさかほんの一瞬で日本のシステムから有益な情報にまっしぐらに向かうから慌てて止めろってお達し来るとはな。まぁ、今回の目的はあくまで人助けだ。日本政府も大目に見るってさ。お前、今からでも勉強し直してエンジニアにならないか?ハッカー続けるよりもずっと人様の役に立てる。まぁ、凄腕過ぎればお前の父上みたいな事態にだってなるけどな。あ、言い忘れてた。北海道から仕入れた設計図を基に改良した空気清浄機あるだろう?試運転の準備終わってるんだ。後はお前の魔法待ちだ。だから、早く福井に帰って来い!みんな待ってるからな!」

「分かりました。なるべく早く合流します。福井で再会。楽しみにしています。」


 そう言って、僕は通話を切ったんだ。その間ね、姉上様が少々呆れ気味に。


「やっと元の鞘に戻るのか。本当に、此処まで長かったな。後は、私たちに任せて日本でのボランティア。再開するが良い。今回、そなた達のお陰で日本の旧皇族との繋がりを再び持つ事が出来、ルーちゃんを失わずに済んで安堵さえしている。ただな、蘇生。激しく嫌がってただろう。きっとな、誰一人としてルーちゃんを助けなかったが故に好奇の目で見られ、娼婦に貶められ、ネットにまで自分の裸体が氾濫してて削除不能に陥ってる今の現状を嘆いて生きたくないとまで言わしめたんだろう。アルベルトさんも、アーニャさんもイギリス王室になど行かせるべきでは無かったと後悔しながら逝った位だ。其れ位、酷く傷つきながらも子供達を守る為に敢えて屈辱に耐え続けなければならなかった。そんな今の現状をエドがどの様にするつもりなのか。恐らくだが、エドが最終的に国民よりも家族を取って、きっとハイエナ達のいない場所まで逃げてまでも大事な宝物を死守するだろう。その時になって初めてイギリスの国民は偉大なる王を失った事に気がつくのだ。最早、彼女の心の傷はガラス以上に砕け易い。それに気がついたイギリス政府も慌てて名誉回復に乗り出すだろうが、時既に遅すぎた。エルフと言う異世界から来たと言う特異性故に起きた悲劇だ。その好奇の目の最たる被害者がルシール王妃様と言う存在に他ならぬ。我々も心しておかねばならぬ。これ以降、エルフ達は私を除いてみんな隠れて生きるであろう。人族が、その好奇心故にエルフ達を凌辱するのを辞めないからだ。何故、人は種族が違うと言うだけで人の心が砕ける程の酷い事をのうのうとやってのけるのだろうな。ピールのパートナーは我々以上に希少価値が高い故にエルフ以上に狙われるだろう。ピールよ。心してモハメドを守るのだ。そして、必ず何か問題が起きれば即座に頼って欲しい。ルシールの様に一人で抱え込まずに。私達は血は繋がらずとも姉と弟。家族なのだ。だから、我と約束して欲しい。何か有れば必ず姉を頼ると。」

「分かりました。必ずや、約束守ります。そして、僕はこの件を教訓にして生きたいと思います。」


 確かに、イギリスの本物の王者はこの後凱旋するだろう。だけど、王者の帰還を喜ぶ声の中でエドがどんな決断を下す気なのか。気になって仕方なかった。

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