王者の帰還。1
エリザベスから1機の見た事ない戦闘機が出てきたんだけど、随分とまぁ、僕をコケにした様なそんな戦闘機だったよ。普通なら攻撃をAIに任せて操縦を自分が担当する人間が多いのに、彼は何が悲しいか。操縦と姿勢制御をAIに任せていたんだ。勇猛な僕の評判。地に落ちててね。でも、
「運転AI任せの方が撃墜しにくいのは確かだよ。撃墜予告を出してたけど、大丈夫?エド?」
「まぁ、念の為にシールドとリフレクト2を出しておいてくれるか?あの者に首筋噛まれて僕は精力吸われ続けてた影響で今までだったら問題なく出来てたかも知れぬが、陛下が僕に直接精力吸われない様に呪詛を書き込んでくれているから付け焼き刃程度の技術で如何にかなる代物じゃないと思い知らせるとしよう。」
「運転中悪いけど、患部見せて。近くに来ても吸えない様に呪詛を書き足すから。」
「お願いしよう。これで大丈夫であろうか?」
そう言って僕は軍服の内ボタンを何個か外してワイシャツのボタンも外して患部を露わにしたんだ。禍々しい死神の鎌が僕の命を刈り取る期限が書き込まれてて、そこの数字は「2」と刻み込まれてた。確か、命の期限が2桁になった時点でこの数字が表示される様になったと記憶してるんだ。だから、僕の命の期限。残り2日って事なんだ。死ぬ前に多分、責めてもの情けをかけられたんだろうなと今だったらそう思うんだ。ピール君に取引持ち込む前に退屈凌ぎで命を弄んだナスターシャに怒ったピール君がシステムを止めると言う暴挙に出た事で図らずも僕は一矢報いる事が出来て清々しかったんだ。本人達の前では顔には出さなかったけどね。
でも、あの男さえ倒せば僕のこの命の刻限。消えるんだ。ルーは数字を見て事の深刻さを理解した様で、Gがかかってる状態にも関わらず長い詠唱を施したんだ。そして、数字が消えて未だに残る噛み跡さえも消して、禍々しい死神の鎌まで消してくれたんだ。
「ルー、まさかとは思うが、そなた。僕の呪詛を肩代わりしたのではあるまいな?」
「まさか。僕の寿命を削って時間逆行魔法を唱えてあの男に噛まれる前まで戻しただけだよ。」
「10年以上あったのだ。そんな事をしたらそなたは…………」
「大丈夫だよ。心配しないで。シールドとリフレクト2かけたから、後は任せるよ。エド。」
「……………これでもしそなたに万が一があったら何があっても連れ戻すから覚悟しているが良い!そして覚悟するんだな、最後の不死族!最後に勝利するのはこの僕だ!」
そしてわずか数センチのところを交差してすれ違い、僕は戦闘開始を宣言したんだ。僕はさっと反転して後部を陣取って機銃掃射を仕掛けたんだ。流石にAIは学習するから体制を立て直される前に僕が後部を取ってミサイル撃ち込んでエンジン部分を破壊したんだ。操縦してた男はコックピットを放棄して翼を広げて脱出したのが見えたから機銃掃射浴びせたんだ。それでもその男。まだ死んでなんかいなかった。行き先が気になったが何も返答しなくなったルーの事が気がかりで旗艦フローレンスに緊急で通信を入れて帰投の許可を得て緊急着陸したんだ。コックピットを開けて後部座席を開けたらルーは既に事切れてた。僕は緊急に医務室に運ぶ様に指示したが、僕はルーが何故この様な事になってるのか。意味がさっぱり分からなかった。
いやはや、僕たち通信傍受してたんだ。パソコン開いて回線合わせてね。撃墜予告なんて出しているからさ。どうしたものかと思ったんだけどね。でも、蓋を開けてみればエドが圧勝しててさ。10年前世界随一のトップガンの実力は伊達では無かったんだ。11年前の機種が最新鋭機種を撃ち落とすと言う快挙でさ。しかも30秒とかかってさえいないんだ。しかも、それを見たエリザベス以下イギリス艦隊が沈黙してしまったんだ。余りにも呆気なく終わったドックファイトにエドの本物がどちらだったか。思い出した様な印象を受けたんだ。
だけど、僕たちの眼前には不死族のあの男が迫ってたんだ。機銃掃射受けてぼろぼろになりながらな。不死族は頭と心臓二つとも潰さないと再生しちゃうから気をつけないといけないんだ。
「魔王様の仇っ!」
って突っ込んできたんだ。だけどね、それが到達する前に剣聖である師匠がシルフィード抜いて心臓挿し貫いてたんだ。
「なっ…………」
「ピールがお前たちに恨まれる筋合いなんて何一つねぇ!お前たちが好き勝手して人心弄んだツケをピールが支払わせただけに過ぎねぇ!」
「僕たちにも手伝わせて。ショーン、もう出てきて大丈夫だよ。」
僕たちの目の前に秋の精霊王ショーンが顕現したんだ。ショーンは悲痛な顔をしてたから、既に何かとんでもない事が起きている。そんな嫌な予感をひしひし感じたんだ。
「僕たちに課せられた試練。今こそ果たさせて貰う!邪悪なる者を討ち滅ぼして、その力をショーンに示せって母上様に言われたんだ。行くよ、エリー。」
「はいっ、兄上様。」
「「裁きの雷、ライトニング ボルテックスっ!」」
二人の力で発現した二色の雷。ジークの発する黒い雷とエリーの発する白い雷が不死族の目から上を完膚無きまでに粉々に打ち砕いたんだ。ショーンがね、無機質な声でさ。
「お前たちの力。俺は認める。この短期間で良く頑張ったって普通なら褒めるところなんだ。普通ならな。だけど、お前たち、千里眼で見えたんじゃないのか?この男と母上様がダメージをリンクさせてこの男が負ったダメージをこっそり自分に与える様に仕向けていたのをさ。」
「…………」
子供達は無言だったが、首が肯定を示す様に縦に振られたんだ。僕たちも驚いたんだ。何て事を子供にやらせたんだって。やがて、ジークが重たい口を開いたんだ。
「母上様が望まれたんだ。『僕はイギリス王室の権威を失墜させ、エルフ達の尊厳を著しく失墜させ、あの男の指示するがままに天皇陛下を暗殺して今の悪政を敷く手助けをしてしまったんだよ。本物のエドがもしも戻って来るのならイギリス王室はたちまち名声を取り戻すだろう。だから、エドが帰還してから先の事は僕は一切心配してないんだ。でもね、人間はね。自分で犯した罪をちゃんと自分で責任取らないといけないんだ。だから僕はエドの前できっちり責任を取ってから逝きたいって思ってるんだ。だから、もしその日が来たら二人とも協力してほしい。こんな事を頼めるのはもう僕には君たち二人しかいないんだ。どうか、この愚かな母の最期の望み。叶えて欲しい。もう、僕はこの世界で生きたくない。魔剣シルフィードに貫かれれば輪廻転生する事も無くなる。だから、お願い。』って…………」
「ちょっと待って。それは本当か?自分達が何を為したか分かってて言ってるのか?」
「…うん。でもね、母上様は私たちは何一つ悪くないから責めなくて良いよって言ってたよ。私たちたちだってお母様にも本当のお父様にも生きて欲しいと願ってたのに!どうしよう。どうしたら良いの?」
そう言ってさ、子供達も泣き出したんだ。それでさ、非常に間が悪い事にシルフィードの奴。不死族の男の魂食い切った後にさ。
「さて、どうしたものか。ボクにもその遺体から呪詛が書き込まれてるのが分かるんだ。間違いなくボクが魂食べて良いって書いてるんだよ。ルーベルトの奴。本当に逝く気なんだ。ボクに食べられるって苦痛以外の何者でも無い筈だけどなぁ。」
「おい、まさかとは思うが、本気でルーを食べるんじゃ無いだろうな?」
「ちょっと待ってくれ。ボクが食べるのは穢れた魂だけ。だけどな、あいつの魂、淀み一つ無いまっさらな魂なんだ。天皇陛下殺したって本人言ってるけど、本当はそう言った殺人行為一切してないんじゃないか?ボクは食べても良いと言われたけど僕は神にもなれる様な清い魂には手を出せない。ルーベルトを説得するのは恐らくこれが最初で最後だ。罪の意識で雁字搦めになってるルーベルトを解放するにはピール。お前のハッカーとしての力が必要だ。その辺の情報を閲覧する事が出来ればきっと納得するんじゃないか?」
「天皇陛下の検死結果なんて秘匿中の秘匿事案だよね。日本のAIが簡単に侵入を許すかどうか。微妙な所ではあるけど、取り敢えず、時間稼ぎだけはお願いして良いだろうか?」
「「はいっ!僕たちもショーンも力を合わせて母上様止めるから真相。お願いね。」」
「分かったよ。モハメド、旗艦フローレンスまで大至急お願いするよ。」
「直ぐに向かうね。」
そうして僕たちはモハメドの転移魔法で戦闘空母フローレンスまで飛んだんだ。エドの機体が仕舞われる事なく放置されてる所を見ると差し迫った事態なのは確定したんだ。僕が、モハメドをシーツで包むとモハメドは手早く腰巻き巻いて。僕が服を上から被せたんだ。取り敢えず、それでモハメドには我慢して貰って、僕たちは中に案内されたんだけどね。大会議室に通されたら既に中はカオスと化してたんだ。
失神者の救護に右往左往してるから作業してる人に聞いたら。
「いきなりルーベルト中将の頭が吹っ飛んでさ。それ目撃した人みんなやられたんだ。」
「…………」
僕たちはそれを誰がやったのか知ってるから口に出しては言えないけれど、子供達のショックは計り知れず。パーフェクトヒールをかけたが反応すら無い。リザレクションも弾かれた。
「だめだ。ルーベルトさんはもう…………」
「ピール、早く日本のシステムジャックして事の真相調べるのが先だ!」
「! すいません、師匠!直ぐにハッキングかけます。」
僕は、パソコン3台同時に開いて日本にアクセス仕掛けたんだ。AIが全てのシステム管理する日本で情報を盗むのは至難の業と言っても過言では無い。僕は開示ルートを精査しつつ情報を探したんだ。嘗ての宮内庁の情報が残ってる事を祈って作業している所に突然電話がかかってきたんだ。見ると、「竹田教授」って表示されてて僕は電話に出る事にしたんだ。
「もしもし、僕…………」
「おい!お前、どう言うつもりで日本にハッキングかけてるんだ。説明しろ!ピールっ!」
あああ、案の定僕って特定されたんですね。分かります。天才ハッカーって言われて久しいけど、敗北感満載で僕は事情を話す事にしたんだ。




