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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第二章 忠義神ピールと慈愛神シェリル
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真偽。2

 僕たちは姉上様の転移魔法で無事、宇宙空母。旗艦フローレンスのブリッジに着いたんだけどね。エドの様子が側から見ても異常だったんだ。食欲無い時点で既に普通じゃ無かったんだけどね。地球に飛んで来たんだ途端に倒れてしまったんだ。意識が飛んでしまったというか。流石にこれには大慌てでね。再会した時から随分痩せ細ってるなって思ってた。血色も悪いってものじゃ無い。よくよく考えると、よくまぁ、この体調でメンテナンスやら操縦やらしてたもんだと感心すらしたんだ。多分、姉上様もこうなるんじゃ無いかと予測付いてたみたいなんだ。日本から樹先生と泉先生呼び出してて戦艦に乗ってもらってね。速攻で医療カプセルの中にお入り頂いたんだ。二人のお医者様も。


「これ、いつ死んでもおかしく無いよ。エド。胃袋の中身は間違いなく空っぽでね。DNA検査もしたけど、間違いないよ。本物のエドだ。」

「多分ね、急激な気圧の変化に耐えられなかったと推測されるの。嘗ての月からの帰還だから余計ね。先ずは、精密検査してみるけど問題しか無いとだけ。陛下。ローグフェルグ本国のファルメリア宮殿まで運ぶおつもりですか?出来れば日本で静養させたい所ですが…………」

「我らのいざこざに日本は巻き込めない。お気持ちだけ頂こうと思う。だが、我らの調停には必ず必要になるのは日本の旧皇族に当たる人物だ。竹田宮様の御子息はどの様になさっておいでだ?」

「ああ、それでしたら現在福井県にいらっしゃってますよ。ピール大司教が行なっているボランティアに参加なさってますよ。教授のお一人として。竹田憲仁さん。世界政府も既に把握済みですが、ピール大司教様はご存知だと思ったんですが。」

「ええ、存じ上げてますよ。その風変わりな教授。髭なんて蓄えてらっしゃらないけどね。風貌は竹田宮様そのものです。ですけど、『竹田って姓結構多いんだよ。人違いじゃないかな?』って実に清々しいお顔で返答されるから全然気にして無かったんだ。ああああ、もうね、穴があったら入りたいよ。僕。僕は側でお見かけした事ある位なのにどうしてはぐらかされたかなぁ…………」


 そう言うと、みんな大爆笑でさ。その笑い声で寝てる筈のエド。叩き起こしちゃったんだ。


「何事であろうか?」

「ああ、済まないね。エド。起こす気は無かったんだ。気分はどう?」

「そうだな、余り気分は良くないな。僕の事を笑ってるとばかり思ってたんだけど、違うのか?」

「エド。精神的に参ってるのはその様子からしても明らかだね。エドの事で笑ってるんじゃ無いから安心して。宮様の御子息にピール大司教が会ってたそうなんだけど、盛大にはぐらかされたって言って笑ってただけなんだ。」

「……………そうであったか。済まない。僕は…………」

「気にしないでくれ。エド。今、君に必要なのは適度な運動と食事だ。家族の愛情もね。人が変わったみたいになってるからちょっと元に戻るのに時間はかかりそうなんだけどね。栄養失調だけだったら数日で治せるよ。だけど、他に異常があっても困るからね。不死族の生態に関しては僕よりも陛下の方が存じ上げてる。何かしらの呪いでそうなってる場合、医療には限度がある。暫くそこから出せないけど、何もエドの事嫌ってとかそう言うのではないから安心して休んでて欲しい。」

「ありがとう。樹先生、泉先生。」


 そう言って、僕たち。ちょっと病室で騒ぎすぎたと反省してみんな一斉に部屋を出たんだ。だけど、姉上様はその場に残ったんだ。何か用事があったみたいで。僕はその辺は関わらない事にしたんだ。



 僕とミサト様を残してみんな部屋の外に出たんだ。僕は水の中でプカプカ漂ってるんだ。まるで、水牢の中で眠ってる間外の世界の事をずっと見せつけられてる様な状態だったのを思い出して、吐き気さえ覚えてね。家族と言っても正直どうすれば良いのか。分からなかったんだ。どんな顔をして良いものか。長い髪を振り乱して僕は見えない壁を作ったんだ。髪は知らない間に伸びてて随分と重たくてね。水の中だから良い具合に絡まって僕の表情を隠すのに役に立ったんだ。僕の金髪の髪が全ての世界から僕を隔絶したのを知って安心したんだ。食欲なんて起きるはずもなく。僕はただただ途方に暮れるばかりだ。


 僕が意識を失ったのはミサト様の叱責を受けてトイレに顔を洗いに行った時に何者かに襲われたんだ。首筋に噛まれて。噛まれた部分を手で覆い隠した後に見たのは僕に瓜二つに化けた不死族の青年で。僕はその後気を失って。気がついた時には水牢の中でナスターシャの手に落ちてて、僕の腕輪を嵌めているその男にルーが抱かれてる一部始終を見せつけられて心が折れてしまったんだ。誰一人として偽者とは気がついてない。そして、不幸の連鎖が始まったんだ。あれだけ愛し合った人が僕の偽者の甘言に惑わされて引き離された挙げ句、イヴァン博士はこの世を去ってる。ミサト様は難を逃れたが、僕の子供を産んだルーは子供達を守りたい一心でその男に従わざるを得ず、所構わず慰め者にされた。ナスターシャが一番に恨んでいるのはルーだったからルーは徹底的に尊厳を傷つけられたんだ。神になったイヴァン博士がルーの魔法を跳ね返して腕輪を取り外さない限り、今も子供を守る為にしたくも無い事を無理矢理させられていたのかと思うと怒りさえ湧き上がるんだ。でも、僕だってナスターシャの慰み者になっていた訳で、正直、どんな顔をして会えば良いのか。子供達を散々傷つけた僕はもう一生許して貰えないだろうな。そんな思いを抱えてさえいた。


「エド…………」

「……………すみません、ミサト様。僕は…僕は…今は誰とも会いたくはありません。どうか…………」

「分かっている。そなたにも、ルーちゃん達にも時間は必要だ。ただ、これだけは言っておく。そなたが解放されたと知って一番に安心していたのはルーちゃんと子供達だ。しかも、災厄の種はピールが全て刈り取ったのだ。残るはあのイギリス王に成り済ましている不死族の男だが、我が精力を堰き止めている故にボロが出始めている状況だ。そなたの姿の維持ができぬ様にしてやったわ。まぁ、その関係で私はここを留まらないといけないが、必要であれば幾つか呪詛を書き足して席を外した方が良いか?」

「ミサト様のご随意のままに。ただ、席を外したい事もあるかと存じますので呪詛を書き足しておいて下さると有り難く思います。」

「あい分かった。本当に今まで済まなかった。到底、謝りきれぬ。今は重い存分悩むが良かろう。後、望みはあるか?」

「はい。出来ればで構いません。この水牢から出して下さい。僕は、この水の中で見たくも無い光景を散々見て来たから吐き気さえ出てる様な状態でして…………」

「何故、先生のいる場所で訴えぬ。我ではどうにもならないでは無いか。直ぐに呼ぶから。呪詛の詠唱中だが、この詠唱が終わり次第、召喚しよう。その後、そなたが寝るベットに付加をかけよう。それで良いか?」

「はい…………」


 この後、検査途中だったにも関わらず、樹先生が水だけ抜いてくれて早々に検査終わらせてくれたんだ。結果、重度の栄養失調だけって分かったけど、同時に首筋の噛み跡も見つかってね。ここから精力抜き取られて本人にすり替わる直前で、後数日放置しただけで僕は誰にも知られること無く息を引き取ってたとミサト様に聞いて僕は寒気すら覚えたんだ。噛み跡には幾重にも呪詛が書き込まれてこれ以上、精力が吸われなくて済む様にミサト様が処置してくれたんだ。噛んだ張本人が死ねばもう大丈夫になるんだけどね。だけど、そうなると僕が結界内に入らない限り、守りきれない。そう言う話しになってね。最後の不死族となってしまった哀れな男に罠を張り巡らす事になったんだ。何でも、


「あの者は、遠隔で精力が吸えないと分かっているであろう?それ故に、再びエドを襲いに来るであろう。浅はかな哀れな男は、のこのこローグフェルグに進軍する。必死にエドに化けながらな。我はそれを迎え撃つつもりだ。勿論、このファルメリア宮殿にはアリの子1匹通さぬ。エド夫婦を散々不幸にしたツケはイギリス軍の大敗と己自身の死に依って贖って貰うとしよう。そして、我は終戦の後にこれまでの経緯と策謀は全て魔王ナスターシャによってもたらされたものだと全世界に公表しよう。その時に生き証人としてそなたが出れば、世界はたちまちそなたに同情しよう。そなたはただ、何も言わずに被害者でいるだけで良い。元を正せば先王の呪詛をルーちゃんが引き継いだ事で起きているのだ。同情などせずに我のこの手で握り潰すべきだったのだ。巻き添えになったそなたは被害者以外の何者でも無い。だから全力でそなたを守り通そう。」


 僕に陛下はそう仰って下さったが、僕は不安を拭い去る事が出来なかったんだ。再び、手に取ろうとした者が手が届く寸前に永久に失ってしまうんじゃ無いかと。僕はそんな後ろ暗い未来さえ想像してしまったんだ。

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