ちょっとした結婚狂想曲。2
小高い丘の上にある一番大きな建物が剣聖アークが居を構えてる場所だったんだ。沢山のエルフの衛兵達が巡回してて物々しいんだ。勿論、エルフ達に剣術を仕込んだのも彼だ。既に皇帝陛下の眷属に招かれてる一族という事でエルフ達の尊敬を一身に受けてるんだ。剣聖は直ぐに分かったんだ。彼は一般的なエルフ以上に背が高いからね。僕たちも顔パスでお屋敷内にすんなり入れたんだ。
「アークさ〜ん!」
って呼んだら直ぐ気がついてくれたんだ。剣聖、既に多くのお弟子さん抱えて来たるべき時に備え始めてるんだ。
「おう!お前らか。リンちゃんにバイソンさんまでいるとなると、鍛錬に来た訳じゃなさそうだな。おい、ミラ。お客様だ。直ぐに応接間に通してお待ちいただいてくれ。悪いな。直ぐに手が離せなくてな。」
「大丈夫。僕たちも成り行きでのアポ無しだから。気にしないで。」
「まぁ、リンちゃんいる時点で想像ついてる。玄関はあっちな。子供達もいるからゆっくりして行ってくれ。」
「ありがとうございます。お邪魔します。」
こうして、大きな邸宅の中に入って応接間に通して頂いたんだ。丁度、ミラさん。子供達と一緒におやつ食べてる最中だったんだ。お腹が大きくてね。直ぐに妊婦だって分かったんだ。僕たちが来たのを受けてエルフのメイドさんが僕たちにも席を用意してくれて、お茶菓子を勧めてくれたんだ。
「うわぁ、お見かけしないと思ったらおめでただったんですね。おめでとうございます。」
「ありがとう。もう直ぐ4人目生まれそうなの。あの人ね、あなた達と旅してても気が気じゃなかったらしくてね。ちょくちょく様子を見に帰って来てたのよ。妊娠発覚したのも北海道清掃が終わった頃でね。本当に事情言わずに戻ったりするから迷惑かけてしまったわ。この子はね、来月出産予定なの。今から会うのが待ち遠しくてね。元気に動くのよ。触ってみる?」
「はい!」
そうしてね、お腹触らせて貰ったんだ。丁度、お腹の中でヒャックリが止まらないみたいでビクンビクンってしてるんだ。モハメドはね。流石に遠慮してたんだ。何でもね。
「僕がお腹触ったら中の子供に異変があったら申し訳ないから…………」
って感じでね。僕とミラさんもまさかって感じだったんだけど。いたって真剣にバイソンさんが。
「いや、それは真実じゃ。異世界じゃな、錬金術師の作るホムンクルスに竜族が干渉するとたちまち賢者の石が奪われる事案が多発しておるんじゃ。まだモハメドは幼竜だが、この子達の事を思うなら余りモハメドは近寄らない方が良いのじゃ。モハメドは自分の立場を充分過ぎるほどに理解しておる。だから、これで良いのじゃ。」
「…………」
「でも、それじゃモハメドが余りにも不憫過ぎやしねぇか?モハメドだって、一緒になって祝いたいだろうに。」
そう言いながら、剣聖はひとっ風呂浴びて来た程で入って来たんだ。父さんも大概自由人だったけど、剣聖も負けていないと僕はそう思ったんだ。
「いや、僕なら良いんです。幸い、ジーク達が懐いてくれてますし、僕のせいで屋敷に閉じこもってるこの子達には逆に申し訳ない位ですから。」
「本当に済まないな。でだ。そんなお前たちは一体、どんな御用件で我が家を訪ねて来たか。聞かせて貰おうか。」
此処で、事情が良く分かってるバイソンさんが事情を掻い摘んで話してくれたんだ。そしたらさ。剣聖殿も我事の様に喜んでくれたんだ。
「そうか。そいつぁめでたいな。イヴァンが生前だったらどれ程喜んだだろうな。」
「いや、そうは言われましても父さんもう、限界でしたし。死ぬ間際まで面会拒絶してる筈の姉上様にあの状態で会わせるのかって揉めたじゃないですか。掻っ攫ってでもと言う師匠に僕たちと幸太郎さんと3人がかりで止めるって異常事態で。罪人になるからそれだけはって辞めて頂きましたよね。」
「そう言えば、そうだったよなぁ。んでだ。賢者の石なら地下倉庫に眠ってるんだ。大量にな。案内するからついて来てくれるか?」
「はい。」
そうするとさ、地下倉庫に案内されたんだけどね。大きさ毎に大量にあるんだよ。僕たちも驚いちゃってさ。バイソンさんですら目が点になってるんだ。剣聖である師匠がボソボソと話すんだ。
「実はさ、俺たち夫婦が良い事した後に生まれて来た賢者の石の数々なんだよ。魔人族の種族特性みたいなんで黙ってて欲しいんだが。」
「つまりは、アークの一族は皆、賢者の石を生み出す力があると。男女関係なく。」
「今の所は分からない。他の面々みんな幼いからなぁ。だけど、女児は確定してる。ミラがその良い例だ。」
「ああ、それでエヴァちゃん拐われ案件が…………」
「そうなんだ。まぁ、モハメドの性格は俺も充分分かってるから問題無いんだがな。他の竜族にはご遠慮願いたいものだな。好きな大きさのやつを持って行ってくれ。」
「加工して割れるとかは無いのか?」
「ああ、無いんだ。どれもダイヤモンド並みに固いんだ。俺にも実はさ、結婚後に出来たんだ。賢者の石。まぁ、バンダナで隠せる程度の小ささだから俺も持ってる事はバレちゃいねぇが、竜族は俺たち賢者の石を持つ一族から見たら天敵みたいなものでな。俺たちの意思とは関係ない所で賢者の石に変えられたらな。」
「そこなんじゃ。異世界でな、地球の民を召喚しまくった人族の王国があったんじゃが、それを滅ぼすのにも賢者の石が使われたのじゃ。竜族の膨大な魔力を補う形でな。そんな物をポコポコ生み出す種族が偶発的に出来てしまった。この賢者の石1つあるだけで国が一つ滅ぶのじゃ。この量あれば楽勝で地球自体が滅ぶじゃろうな。竜族に渡ったら一巻の終わりじゃ。まぁ、死なない竜族がそんな無体するとは到底思わないが、気を付けておいた方が良いだろうな。」
「…………」
もうね、そんな物騒な代物じゃないと契約結べないってどうなんだって僕は思ったけど、モハメドはちゃっかり自分の欲しい賢者の石選んで終わってたんだ。
「綺麗…………」
「へえ、それ。エヴァが生まれた時に持ってた石だなぁ。その石が一番純度が高いんだ。それと同じ石で小さいのならこれになるな。これも一緒に持って行くと良い。」
それと一緒に大量の賢者の石を渡してくれたんだ。個性によって生み出す石も違う様で、エヴァの生み出す石は紫色と白色のグラデーションが映える美しい石だったんだ。僕たちは丁重にお礼を言ってから剣聖の住む邸宅を後にしたんだ。んで、どこに行くかと言う話しになって、バイソンさんに案内されたんだ。宝石を作ってくれるキルギスさんの所に案内されたんだ。街の人じゃないのに街の人の事を良くご存知のバイソンさんに案内任せっきりにしてるけど、今日一日で懸案。片付きそうで本当に安心してるんだ。モハメドも喜んでるのが良く分かる位なんだ。たまには流れに乗る事も悪くはないと僕はそう思ったんだ。
「よぉ〜、キルギス。いるかぁ?」
「これはこれは、バイソンさん。どうしたんですか?その大量の賢者の石。見た所、エヴァちゃんの石ですね。これはひょっとしなくても大仕事ですか?」
「ああ、実はな。この二人、結婚するんだって言うからさ。この二人に相応しい代物。作って欲しいんじゃが。」
「へえ。イヴァン様の御子息様方じゃないですか。こりゃ、大仕事だなぁ。しかも相手は竜族だから指輪じゃなくてネックレスになるな。二人とも。」
「ネックレス。ですか?」
「まぁ、天変地異前の人間じゃ無いとまず知らないんだけどね。竜族はね、一度竜化して貰ってからね。採寸するんだよ。指のね。で、人間形態だとネックレスに。竜化したら指輪になる様に伸縮出来る魔法を付け加えないといけないんだ。年齢とかで技術が失われてきてる中での大仕事だ。もし、後世に竜族のカップル出来ても熟練の技がない限り作る事は出来ないんだ。まぁ、幸い僕は後200年程寿命残ってるけど、それまでに後継者出来ない限り、廃れるのが確定してるんだ。採寸、悪いけど外でお願いしたいんだ。そこの竜族の君。」
「はぁ、良いんですけど。初の竜化が指の採寸って…………」
「まぁ、その辺は諦めて貰わないとな!」
「でも、竜化して父さん。びっくりしないですかね?」
「そりゃあ、自分のアイテムの中でいきなりエネルギーが膨張したら驚くだろうな。普通。風船がいきなりポケットの中で膨らむ様な感覚じゃしな。」
「ぇぇぇ。嫌だなぁ。それ。」
「とりあえず外だな。外。」
まぁ、初めての竜化するんで緊張してるんだ。モハメド。みんなワクワクしながら見てるしね。モハメドが呪詛唱えると、10m程の竜にしては小さい竜が顕現したんだ。まぁ、わずか20年しか生きてないにしてはこれでも大きめなんだそうで、成竜になると50m程の大きさだから五分の一程度の大きさって感じだ。それでも僕は大きく見上げるんだ。僕は心配になって届く範囲でモハメド撫でたら僕を背に載せてくれたんだ。そして、手を突き出してね。
「これで大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。ちょっとだけ動くの我慢しててくれ。」
そう言って採寸してもらったんだ。終わってもう変身解除して大丈夫って言われる前に僕とモハメドは父さんの大きい手で摘み出されて僕たちはフィギュア入れる様な箱に入れられたんだ。大きい姿の父さんに僕たち聞かれたんだ。
「急にポケットの中が熱くなるからどうしたのかと思って出してみたら何だ。お前達か。雰囲気的に楽しい一日になってるみたいだなぁ。何があったか教えてくれるか?」
そしてね、今日。リンちゃんやバイソンさん、剣聖アークや宝石職人キルギスさんの力を借りて僕たちの結婚に使う首飾り用意出来そうでねって話したら父さん我事の様に喜んでくれたんだ。だけど、父さん。気になる事も言ったんだ。凄く目を疑う様な内容だ。
「エドがな。錯乱してるみたいでな。エルフ狩りと称してイギリスにいるエルフ達の捕縛させようとしてるんだ。大急ぎで対処せねばならん。せっかくの楽しい時間なのに本当に済まない。今、エルフ達も結界張って抵抗してるが、人族の多い街で劣勢強いられてるんだ。エルフの神も嘆いておられる。仲間達にも俺から伝えるから中央広場に集まる様に伝えてくれるか?」
「うん、大至急伝えるよ。早速保護しないといけないけど、何処に飛ばすんですか?」
「戦争準備中のローグフェルグだ。世界政府が難癖付け始めてるからミサトには直ぐ戦える様に準備する様に伝えた。ローグフェルグは軍隊を保持してるから大丈夫。オーストラリア、ムーンフロンティアは流石に看過出来ないとローグフェルグへの参軍を希望してて、日本は静観決め込んでるって状態だ。俺、戦争だけはしたくないのになぁ。何でさ。人間は争う事を止めようとしないんだろうなぁ。」
父さんは悔しそうにそう呟いたんだ。だけど、僕たちが向かったのはイギリスじゃなくて日本だったんだ。何で?って思ったけどさ。静観決めてる日本を動かすのには力では無く真心だ。って事で清掃奉仕。引き続き頑張ってくれって言われたんだ。




