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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第二章 忠義神ピールと慈愛神シェリル
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ちょっとした結婚狂想曲。1

 恐怖の一端の目撃者になってから数日経ったんだ。世界は何事も無く普通に動いてるんだ。ただ、神に関わってはならぬと書かれてしまった男の元には誰一人として寄り付かなくなってたんだ。神様の呪いは本当に恐ろしいって思ったんだ。

 姉上様が再びルーベルトさんに導師の任に就く様に今、説得中なんだ。ルーベルトさん。元に戻ってるの丸分かりなんだ。口調がね。全然ルシール時代じゃ無いんだ。


「無理っ!無理っ!絶対無理っ‼︎‼︎」


 って、恐縮しちゃっててね。見てて僕ですら可愛いと思ってしまう程でね。そう言えば、10年前もこんな感じで、エドの隣で人格が無くなってる様なお人形さんじゃ無かったよなぁって今更ながら思い出したんだ。このやり取りに子供達もホッとしてたんだ。エリーがね。


「やっと本当の優しいお母様に会えたんだ…………」


 って感慨深げに言うんだ。僕もモハメドもこの子達が心配で付きっきりで世話してたんだ。まるで嘗ての僕たちみたいだよね。って大笑いしながらね。モハメドがね。


「そうなのかい?ジーク様。」

「僕たちの事は呼び捨てで良いよ。モハメド。君たちは僕たちよりも遥かに偉い神として立つんだから。僕はきっと神の器じゃないんだ。皇帝陛下が神になってしまったら誰かが束ねないときっと地上の世界は困るから。でもね、母上様が神にならない限り、神の座に上がるのはエリーでね。僕は今まで必死になって守って来たけど、複雑なんだ。あの慎ましやかな性格封じられて四六時中、父上の玩具にされて、命令聞かなかったら殴られてさえいたよ。そんな姿を千里眼で見続けてたんだ。ホッとしてるけど、こんな力。いらなかったんだ。お母様の魂の叫びに気がついていたのに、見ない振りしないと危害が僕たちに及ぶのが分かっていたから母上様は敢えて人形になってくれてたんだ。」


 もうね、心が痛すぎる。まぁ。10歳って言っても生まれて間がないエルフ達だから幼稚園児程度の大きさしかないんだ。でもね、事実を知ってて何も出来ない悔しさ。怒りたるや。本当にこの子達を抱きしめる事でしか慰める事が出来ない自分が恨めしい位だったんだ。それはモハメドも同様だった様でね。


「もう、苦しまなくて良いんだよ。僕たちがずっと見守ってるからね。」

「……………本当に?」


 って、エリーがね。モハメドに聞いて来たんだ。モハメドってね、まるで女性の様なんだ。バイソンさんからまだ幼竜って言われてるのもあるんだけど、背は僕より少し小さい位でね。声変わりさえしてないからさ。まるで小鳥が囀る様な優しい声なんだ。


「ああ、本当だよ。約束だよ。」

「「約束〜っ!」」


 って感じであっと言う間に懐いちゃったんだ。これにはお母様であるルーベルトさんも苦笑いだ。


「もう、この子達ったら。僕は久々に子供らしい笑顔を見た気がするよ。」


 そう言ってホッとした様な顔をなさるんだ。陛下がつかさず。


「じゃあ、導師の件は、引き受けて…………」

「それとこれとは話が別ですから!」

「……………往生際が悪いな。いい加減、引き受けてくれれば良いものを。私だけじゃ無く、他のエルフ達もそなたをとうに赦しておると言うのに。」

「みんなが許しても、僕が僕自身を許してませんから!」


 って言い張ってさ。ただ、秋の精霊王ショーンは潤沢な魔力ですっかり元気を取り戻しててね。それもこれもルーベルトさんが過保護な位に構い続けてるからなんだ。実の子供でさえ、呆れる程にね。其れ位、弱ってる姿が衝撃的だったって事なんだよ。だけどね、余りにもイチャイチャするもんで。


「きっとエドの人と形が変わったのって、絶対ショーンのせいよ。間違いないわぁ。あそこまで純粋に愛し合ってるんだもの。旦那としても妬いたのよ。きっとね。だって見てご覧なさいよ。あれ。精霊王でさえ惚れる美貌してるのよ。ルーちゃん。絶対取られるって、思っちゃったのよ。」

「…………」


 まぁ、世界の五本の指に入る程にお美しいのは認める。エルフは元々美形揃いで有名だしね。でも、僕はモハメドを抱いてね。必死に抵抗するんだ。僕はこの腕の中にいるこの人だけは絶対泣かしちゃいけないって思ってるから。モハメドが前で照れてるのは知ってるんだけどね。


「あのさぁ、ピール。僕、凄く照れくさいんだけど。」

「だってさ、決まってるじゃん。僕はこの腕の中の人だけは絶対に泣かさないって決めてるから。」

「素敵ね。ちょっとあんた達、こっち来なさい。」


 そう言って、リンちゃんは僕たちを連れてみんなが聞いてない場所まで連れて行ったんだ。筋骨隆々の乙女時代からそうだったけどさ。恋愛に飢えてらっしゃるのは相変わらずの様で。アメリアさんの美貌もルーベルトさんに負けてないと僕は思うんだけど、種族的なものでやはり差別は残ってるんだ。


「でね、あんた達。結婚するんでしょう?」

「うん。モハメドにはもう求婚したんだ。承諾も頂いたんだ。父さんの喪が空ける4月頃に簡単な式挙げられると良いなって思ってるんだ。」

「そうなると準備したの?結婚指輪とか。」

「それ、考えなかった訳じゃ無いんだけどね。モハメド竜化するじゃん?竜になる度に服が脱げるのは大きさ的に仕方ないと諦めついてるけど、結婚指輪にしちゃったら鬱血しそうで怖くてね。どうしたものかと悩んでるところなんだ。」

「ああ、それがあるのね。イヤーカフみたいなのはどうなの?」

「大きくなって貰った事無いから見当すらつかないんだ。」

「ああ、なるほど。こう言う時にはバイソンさんからアドバイス貰った方が良いわね。じゃあ、行きましょう。」


 って言って僕たち二人を引っ張って行くんだよ。でさ。お子様二人共非常に良い笑顔で見送ってくれたけどさ。みんなの視線がああ、またかぁ。みたいな感じでさ。

 バイソンさんは村の外れに工房出して絶賛新婚生活中なんで、お邪魔したらちょっと悪いかなぁって思ってたんだけどね。ノックしてからお邪魔すると、バイソンさんは剣作った後で軽く一服なさってたんだ。


「よぉ〜。冷やかしならお帰りは彼方だ。」


 って言って入って来た扉を指すんだ。ミレニアさんも可愛い顔して苦笑いしてる。本当に微笑ましいんだ。


「違うよ!僕たち結婚するから相談しに来たんだ。モハメドに指輪用意してあげたいけどさ。竜化するから何が良いか分からないんだ。」

「ああ、そう言う事か。まぁ、座ってくれ。立ち話もなんだしな!ミレニア、お茶出してくれ。全員分な!」

「はい!」

「そうかそうか。お前達も遂にゴールインするんだな。お前たちの関係。続いてたんだろう?」

「そうですね、続いてました。大人たちは忙しくしてましたし。父さんも知ってました。ただ、僕たち。父さんに引き離されるとばかり思ってたんですが父さんは違ってて。ただ一言だけしか僕、言われた事無いんです。『ピール、お前な。本当にモハメドの事を大事に思うんなら今のルシール王妃様みたいな扱いだけはしてやるなよ。それだけは俺は絶対に看過出来ねぇから。本来のルシール王妃様ってのはな、控えめで慎み深く、非常に騙されやすいんだ。エドの言いなりになってな、多くの衆目の前で股開く様な淫乱な女じゃないんだ。あれは人間の尊厳を壊してるんだ。それだけは俺は絶対許さないからな。』って、本当にそれっきりだったんです。僕もモハメドが大事なんで、側に抱き寄せる事はしても人前ではこれ以上する気無いですね。背中見せるの恥ずかしがってるの知ってるから。僕。」

「えええっ、僕、一言も言ってないよね。何で分かるの?」

「さぁ、何でだろうね。」


 そう言って、僕はモハメドにキスしたんだよ。軽くだけどね。咳払いが聞こえたから流石にそれ以上は。って思って辞めたけどさ。咳払いしたのリンちゃんみたいでさ。バイソンさんは大笑いなんだ。


「まぁ、良いじゃ無いか。イヴァンだって、此処までは通常運転だったぞ。」

「確かにそうなんだけどね。あーあ、羨ましいなぁ。何処かにイケメン落ちてないかなぁ。」

「リンちゃん、今のお前さんはナイトメアだし。気長に待てば良かろう。それ以上は老けないんだし。所でな。ピール。お前さんに一つだけ問いたい。『隷属の腕輪』付けたりはせんじゃろうな?」

「冗談じゃありません。あれ、魔力を込めれば込める程モハメドの自我が無くなるって事指してるんです。ルーベルトさんの一件だってそうじゃないですか。自我が消えるってよっぽどなんだ。僕はそう言うの無くてもモハメドに惚れ込んでいるから大丈夫。ただ、誓約の腕輪だけはモハメドに付けて貰おうと思ってます。モハメドに何があった時に守るのは僕で。未来永劫僕であり続けたいんです。」

「そうか。そう言う事ならワシも喜んで協力するぞい!ただな、竜族を約束付ける物に必要なのは普通の宝石では効力が足らないんじゃ。それ位、竜族を娶るのは難しい筈じゃったんじゃ。竜族の婚姻に必要なのは『賢者の石』でな。」

「賢者の石?ミラさんの額に七色に輝くあれですか?」

「そうなんじゃ。だから、竜族は普通婚姻など結ばないんじゃ。賢者の石など滅多に見つからないからな。ただ、奇跡が起きた。ミラさんと言うな。だからこそミラさん一家は狙われるんだ。賢者の石は色々な用途に使えるんだ。錬金術師には垂涎の品なのは言うに及ばず。竜族にも、他に悪意を持つ物達にも。それ故に国家が守らないとって話だったが、セレネティアで剣聖の力で守られているとあっては竜すらも倒せる剣聖には手を出さぬぞ。」

「えええっ、師匠。まさかのドラゴンスレイヤーなんですか?」

「そうとも。お前さん方知らないのも無理は無い。まだイヴァンが御存命中の話だしな。一度だけ、エヴァが連れ拐われそうになったんだ。剣聖が留守中にな。エヴァも赤子だった故、ミラも一瞬の出来事ですぐ様剣聖呼んだんだ。緑竜だったから見つけやすいのが仇になったんじゃ。地上から翼を撃ち落としてな。エヴァを救い上げた後にシルフィードの餌と化したのよ。それで無理と判断したんじゃろう。それから竜族が飛来した事は無いんじゃ。ピールのパートナーであるお前さん以外はな。どれ、剣聖と交渉せねばの。ワシもちょっと出かける。お茶美味かったぞ。何かあれば何時でも店閉めた状態でワシの所に来るんじゃ。良いな。」

「はい、承知しました。いってらっしゃいませ。旦那様。」


 こうして、僕たち再び街中に入って今度は剣聖を探す事にしたんだ。剣聖は街中じゃすっかり長だったから一番立派な自宅にお住まいでね。小高い丘の上にお屋敷あったからそこに向かう事にしたんだよ。

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