神々が消えた日本の大地を征く。1
僕たちは翌朝朝食を頂いてからシェアハウスを消して竜化したモハメドに乗って北海道に降り立ったんだ。上空から先に島々を綺麗にしていったんだ。
美味しいんだ。リンちゃんの料理。ミラさんでえ見習いたいと言う程なんだ。毎朝だけは幸太郎さんに届けてもらう為に父さん呼び出すんだけどね。父さん、ちょびっとだけつまみ食いしちゃ。
「美味いな。これ。生前に食べたかったなぁ。これは。」
とか言って残念がっちゃ、それ以上食べようとして。
「それは俺のだ‼︎」
って幸太郎さんの抗議に渋々渡すんだよ。自分よりも偉い神様に抗議する幸太郎さんも凄いんだけどね。父さんも神様なのに全然偉ぶらないんだ。生前そのままに悪戯っ子で茶目っ気あって。みんなに愛された英雄のそのまんまの素顔で接してくれるんだ。お陰で、僕たちも神様でなくて父さんと呼ぶのがデフォルトでね。いつか大勢の信徒の前でやらかさないか。気にしてもしょうがない事を気にする有様だ。
稚内からは道内の地図を拡大して集落ごとで区切って歩きながら回ったんだ。地図はアレスタが最新の地図を用意してくれたんだ。森の中だった場所にも分け入って山の上から浄化して回った。海中投棄よりも空中分解の方がまだ地球にも優しいかと思ってね。粉状の砂に変えてパラパラと腐った自然だった物を綺麗にしていったんだ。毒素は抜いた上でね。この旅始めたのは3月末頃だったのに全ての土地を回り切るのに実に3ヵ月以上の期間かかってたんだ。7月に差し掛かる前でね。点在してるお墓も一つ一つ丁寧に綺麗にしていったから最終目的地の札幌の地下都市に着いた時には地上にはお出迎えすらあったんだ。日本国軍陸軍部隊の駐屯地がそこにあるらしくてね。今、そこに北海道に住む人達全員が避難してたんだ。丁寧に御礼を言われたんだ。だけどこんな事も言われたんだ。
「今、此方では謎の粉を吸った民衆が喘息にかかっておりまして、治療をしてる最中なのですが。何分にも人が多く…………」
「…………」
当然と言えば当然だったんだ。大量の人間が地下に住むに当たって酸素を地上から取り込むんだ。フィルターもかかってた。だけど、粒子が細かかった関係でフィルターすら貫通してしまって地下が粉っぽくなってて軽く地下都市に雪のように積もってたんだ。大量の砂の粒子が。父さんが何故、海に捨てろと言ったのか。理解出来た瞬間にこうなる事が分かってたのかと頭を抱えたんだ。勿論、丁重にお詫びを申し上げた上で僕たちは父さんと相談して直ぐに対策に乗り出す事にしたんだ。僕たちは此処3ヵ月で喘息に初めて罹患した人々のリストを貰って、まず、無制限に入るアイテムバックを作って砂を丁寧に取り除く事から始めたんだ。勿論、その間民衆には外出を控えて貰ったから迷惑かけてしまったんだけどね。これには日本国軍も手伝ってくれたんだ。勿論、行く先々で困ってる人を見つけたら助けて回ったんだ。みんな総出でね。僕は申し訳ない事をしたと頭を下げて回ったんだけどね。此処の街のみんなは違っててね。怒るどころか。
「お前さん、北海道を綺麗にしてくれて。墓掃除してくれてありがとうよ。お陰様でな、私たちはもう二度と外に出られないと諦めていたが、もう、そこに草木は無くとも再びお爺さんの墓参りに出掛けられる様になったんじゃ。喘息もお前さんの故意じゃない事位よく分かっておる。自分の幸せを投げ打ってでも国と民と子供達の為に命を燃やしたイヴァン大統領が育てた息子さん達じゃ。何があっても、私たちはお前さん方を支持するからね。」
って感じだったんだ。本当に父さんの子供である事を僕は誇りに思ったんだ。そしてね、新興宗教だから怪しまれるかなって思ってたんだけど、行く先々で入信者増えてね。僕、何一つ説法してないんだけどね。祠が立って魔法が使える様になって信者達の中に適性を持った人にレベル3まで使える様に教えたんだ。そして賢神専用魔法のスルーまで教えると、マスクをしてなくても普通に生活出来るとあって喜ばれたんだ。時間は本当にあっという間に過ぎていくものでね。北海道に日本支部が立ち上がる頃には半年経過してたんだ。季節は1月で、地中は暖かいが北海道は雪に包まれてたんだ。雪が降ったお陰もあって砂の粒子が入らなくなると、次にやったのはフィルターの掃除だったんだ。定期的に自動清掃するプログラムを組んでても貫通するんだ。そう言う事で、細かい粒子のフィルターに変えて尚且つ掃除の頻度を上げる必要があったんだ。プログラム自体は僕は専門家だから簡単に組み替える事が出来たけど、問題はフィルターの部分にあったんだ。水も貴重品なのに掃除には大量の水が必要。しかも、大量の土砂の処理にも頭を抱える事になったんだ。此処は自然が消えた地だから剣聖もモハメドも妖精魔法。実質封じ込まれていたから、使うにしても攻撃魔法である筈のウォーターの詠唱がかかっている魔法石を大量に必要としたんだ。勿論、住民達が口にする飲み水の類いも。お風呂の水として使われた水はトイレで水洗として利用されていたし、天変地異以前からリサイクルに関しては国の考え方からして進んでいたから浄水施設も整ってて、綺麗に濾過されてから海に流されていたけれど、そこでも課題として上がったのはやはりフィルターだったんだ。そんな訳で、僕は父さんに相談したんだ。
「父さん、いる〜?」
「おう、いるぞ。どうしたんだ?」
「実はね、砂が細か過ぎてフィルター貫通しちゃうからどうしようかと思って。」
「今、使ってるフィルターのレプリカあるか?それと、砂の現物もだ。」
「うん、みんなあるからそこに出すね。父さん。」
僕は、父さんの指示でフィルターを2種類と今まで回収してきたアイテムバックの中から砂を一掬いコップに入れて差し出したんだ。父さんはフィルターのレプリカを持ち上げて、良く見た上で実際に砂を風で通した上で検証を初めて、通り具合を確認したんだ。まぁ、一度貫通して降り積もっていた代物だったってのもあって顔を顰めてた。でも、そこからが父さんの真骨頂と言うか。フィルターの層の前に水の層を作ると再実験して僕に実験結果を示してくれたんだ。それだけじゃないんだ。水に当たって泥になった物を確認してそこに新たに砂加えて練り込んでるんだ。何が閃いたみたいで嬉々として泥団子を作り出すんだ。僕は遊び出したのかと思ったけど、泥を捏ねて整形してさ。それを炎の中に入れて魔法でその部分だけ高速で時間進めてさ。出来上がった物を見て僕は驚いたんだ。そして、後ろから気配したから誰だろう?って思って振り返ったら他ならぬ北海道知事さんが一部始終をご覧になってたんだ。知事さんは側近の方と一緒に出来上がった物を見て感嘆してるんだ。側にいたモハメドが前に出て警戒してくれたんだ。
「初めまして、イヴァン様。わしは、此処の知事をしております堂本と申します。この度は、御子息であり大司教であらせるピール様に多大なるご支援を賜わりました事、感謝申し上げております。」
「此方こそ。愚息が迷惑をかけてしまった様で心からお詫び申し上げる。既に、我が力で全ての患者から災いの元は取り払わせて貰った。後は、このフィルターの層に直接水を送り込み、砂を泥と化すが良かろう。そして、その泥をある程度乾燥させてな。整形すれば焼き物になる。ピールが自然だった物で生み出した砂は産業として成り立つに十分な量の良質な粘土となり、焼き物が復興すれば日本に富をもたらすであろう。細々と技術を継承している者達には朗報となる。調べて連絡を入れて差し上げよ。先程作った物は其方に進呈しよう。まぁ、その者が信じるかどうかまでは俺は関知しないがな。そして、其方にはこれも進呈しよう。これでこの件に関しては俺としてもお許し願いたい。」
そう言って湯呑みと一緒に設計図を知事さんに渡したんだ。しかも、少し手を加えるだけで。その下に新たな部分を付け加えるだけで粘土が生成される様になってたんだ。勿論、それにはウォーターの魔法石、ファイアの魔法石、ウインドの魔法石が大量に必要と書かれてあったんだ。知事さんが御付きの者に設計図の説明を受けた事で僕もそれが何かを理解する事が出来たんだ。ああ、きっと父さんの介護してなければ僕もこの会話に参加出来たのかな?って思うと残念でならなかったが、僕は父さんにこんな提案してみたんだ。
「ねぇ、父さん。責めて魔法が無くてもこのシステムが運用できる様にならない?僕も信者達と話すから良く分かるけど、魔法適性持ってるのは非常にごく少数なんだ。しかも、攻撃魔法使える人は全員軍部に徴兵されてる。民間で魔法石を用意するのは実質不可能なんだ。」
「そう来たか。でもな、自然を元に戻す、戻さないの権限は俺には無い。そこは自然が無いから妖精魔法は使えない場所だったな。すぐ隣にミサトいるから聞いてみる。」
そしてね、父さんの隣に姉上様が並んだんだ。姉上様の登場に大慌てで知事さん達。土下座しててさ。おかしかったんだけどね。まぁ、父さんが全然偉ぶらないってのもあるんだけど、立ったままだった事に今更ながら気がついたみたい。姉上様が呪詛を唱えると、画面に北海道全ての島々に幾重にも魔法陣が描かれて古い魔法陣が上書きされたんだ。姉上様が話し始めた。
「ローグフェルグ皇帝である。イヴァンの信徒、ピールの願い。我は聞き届けたり。これ以降、北海道全ての地域は落下を免れ、我の祝福を得て自然が戻り、再び大地の恵みを得られる様になるだろう。全ての水は湧き出す様になったが、消失した自然は自分たちの手で1から育てなければならない事を申し伝えておこう。何故ならば、この地が再び恩恵を賜わった事を知れば、他の地域の者達も縋ってくると見受けられる。その時にはこう申し伝えると良い。『ローグフェルグ皇帝が心から愛してやまないピール大司教の慈悲を賜わった。』と。そなた達が此処に来たのは偶然ではあるまい?危急な案件があるとみたが。申してみると良い。」
「恐れながら申し上げます。ルシール王妃様が失踪された一件でピール様御一行を捕らえる様に命を受けましたが、大恩人を世界政府に差し出す事など出来ず、ご相談に参った次第。」
「左様であったか。そなたの良心に心からの感謝を。ルシール王妃様とこの子達とは関わりが無い部分であるが、今のエドワード王は盲目で猜疑心に溢れており我の言葉ですら信じぬであろう。エルフの神にイギリスにお出まし頂き、ルーベルトの口から説得に当たらせよう。ピールよ、一向を連れて我の元に戻るが良い。知事殿。次の派遣先が決まり次第、我を呼ぶが良い。」
「ありがとうございます。」
そんな訳で僕たちは一旦全員回収されて事の成り行きを見守る事になったんだ。




