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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第二章 忠義神ピールと慈愛神シェリル
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モハメド、天空を知る。

 全くもう、困った人だよね。ピールってば。確かに嬉しいよ。天にも登る気持ちだよ。勿論、その場で承諾する程に嬉しかったよ。長い尻尾は嬉しさの余りに左右に揺れたし、とっても気分も良いもんだったけどね。


 嬉しさの余りに僕の過去までばらさなくても良いと思うんだ。


 だけど、話さないと僕が何者かが分からないから仕方が無い部分あるんだ。10年前だったらごまかせた事も大人になったらごまかせなくなったんだ。頭部に生える立派な角も、体を覆う鱗も、民族衣装の中に仕舞い込めてた尻尾も。その全てが分かってないと困るのは確かなのでそこは流石に諦めてるんだ。ああ、しゃがめば幼少期なら辛うじて見えてたんだ。尻尾はね。ただ、先端がちょこっとだけ先端が出る程度だったから、まだ隠し通せた部分あったんだ。今みたいに手も足も背中も鱗が生えてなかったからね。



 僕が陛下と一緒に農場主さんの所に行ったんだ。農場主さんはエルフでシュゼットさんって言うんだ。昨日、手持ち無沙汰にしてた僕にね。


「良かったらそこの君。収穫手伝ってくれないかい?手伝ってくれたら僕が丹精込めて作った野菜幾つか持って帰って良いから。」

「…喜んで!」


 僕も父さんの信徒だから教えに従って沢山働いたんだ。父さんの教えに間違いは無かったよ。シュゼットさんに君は働き者だねって褒めて頂いた上にね。


「君、竜族だよね。ひょっとして、見た目は大人になったのに空飛んだ事無いのか?うちの女王陛下と一緒だ。空飛べないとこの先苦労するから畑手伝ってくれたお礼も兼ねて翼の出し方からレクチャーするよ!」


 って言ってもらえたんだ。竜族はまだいるらしいけど僅か数人程度しかいないらしいんだ。彼等は魔王ナスターシャさんの所属している不死族と同様死なないらしいんだけど、今思っても母さんが何故、自分よりも明らかに弱い人族に身を任せる様な事をしたのか。今をもってしても大きな謎が残るんだ。幸いなのは僕の生きてる時間がピール同様限られてるって所だろうね。ピールがいない世界を長く生きる必要がないのが僕としても有難い位なんだ。


 それもね、ここだけの話なんだけどね。シュゼットさんに聞いたら僕、成竜じゃなくて幼竜なんだって。見る人が見たら分かるらしくてね。勿論、陛下もご存知だったよ。僕がまだ成人にすら達してない事。陛下の庇護なくても歳を取らなかったのに陛下が庇護を与えたのはピールの為だった訳で。僕の場合は大幅に寿命が短くなってね。しかもこの状態のまま神様になるんだって。竜族が成竜になるには最低でも1000年以上かかるんだって。だから、今のままの状態で神になり竜族が繁栄するのならそれもありかな。なんて思ってるよ。不死族よりも数少ないのにね。何言ってるんだって感じだけどね。



 行ってみると、早速、これに着替えてって言うんだ。何でもエルフの成人の服なんだけど、羽の生えている種族だからさ。開いてるんだ。背中。まぁ、手伝ってる時から何となく察したけどね。部屋でカンドゥーラ脱いでね。腰巻きだけになるんだ。シャツの類も背中が開いてる類じゃないと多分破けるだろうなって思ってね。脱いだんだよね。長い髪の毛から緑の鱗が見えるのがね。ピール以外に見せた事無いから恥ずかしい事この上ないのがね。仕方がないから出るんだけど。


「良く似合ってるわね!」

「ありがとうございます。陛下。でも、僕、背中見せた事無くて…………」


 とまぁ、会話も尻すぼみでねぇ。陛下も美しいアゲハチョウの翼を出してね。


「それでは、シュゼットさん。宜しくお願いしますね。」

「宜しくお願いします。」

「いやぁ、まさか陛下の御前での授業になるとは思ってもみなかったんですが、よろしくお願いします。まずね、翼を出すには魔力操作が必要になるんだ。翼に魔力を供給して数時間維持出来るようにならないと飛べないからね。まずは、陛下の両手を取って陛下のお力を感じた場所に魔力を集中してみてくれるかい?」

「分かりました。やってみます。」


 僕は陛下の両手を取ってから静かに目を閉じたんだ。僕の肩甲骨辺りが熱くなるのを感じたんだ。何かが出て来てる感触するんだ。背中にね。バサッって音がしたら、僕の背中に大きな竜の翼が広がってたんだ。竜の翼はまだ出てきたばかりで透明だったんだけど。陛下が誘導する魔力を追ってたら段々と透明から緑色に変わって来たんだ。


「流石にコツ掴むの上手いね。羽化も上手だ。集中する位置はそのままで少しずつ上下に翼を動かしてご覧。」

「はいっ!」


 どうするんだろうと思って僕は、目を開けて陛下を観察したんだ。僕の意図に気がついたのか、陛下は僕がイメージしやすい様に少しずつ、ゆっくり羽を動かしてくれたんだ。その姿は本当に優雅なんだ。まるで、妖精が天空へと招待しているみたいでさ。見惚れる位なんだ。ウインディアも出てきたんだ。やっと成長を始めたみたいで、しばらく見ない内に3歳児位の大きさになってたんだ。何故、ウインディアが今になって成長を始めたのかは分からないけれど、フラウディアの成長を待ってる気がしないでもないんだ。冬の精霊王は眠れる王。その冬眠を起こせる王がいるのならきっと春の精霊王フラウディアにしか起こせない。フラウディアが僕を急かすんだ。目の前でさ、可憐に飛んで見せながら。


「はやく〜!はやく〜!」

「あらあら。フラウディアが待ちきれない様ですね。一度、大きく羽ばたいてみましょうか。」

「はいっ!」


 僕の大きな翼を風を下に押し込むイメージ起こしただけで、僕はふわっと浮き上がったんだ。びっくりして思わず着地しちゃったんだけど。シュゼットさんが。


「今の感じ凄く良かったよ。僕たちが空を飛ぶ状態は此処からは変わって来るから今のイメージで天空に舞い上がってご覧!」


 僕は、さっきよりも強いイメージで大きく下に風を送り込んだら、陛下の御手を掴んだまま上空に一気に飛び上がってしまったんだ。僕は慌てたんだけど。


「心を鎮めて。飛行状態を維持する時は沢山魔力を翼に纏わせないとなりません。高度が少し落ちたなと感じたら軽く翼を動かすのです!」


 僕は雲海の上から太陽を見たんだ。綺麗だったよ。その後、陛下が精霊王達を遊ばせようって事になってね。春の精霊王が花びらを纏わせながら。冬の精霊王は雪の結晶を纏わせながら嬉しそうに飛び回るんだ。二柱の精霊王達が楽しそうに遊んでいたんだけど、そこに、現れたのは夏の精霊王ネイサンだ。剣聖アークが擁する精霊王なんだけどね。空気が薄い遥か天空のセレネティア大陸に人が住めるのは、このネイサンが大陸ごと暖めてるからなんだ。常時常春の地で、農産物に恵まれて自給自足で独立を保てる数少ない場所なんだ。そのネイサンが呼びに来たと言う事は。


「みんな、直ぐに戻って。ショーンのご主人様に陛下の場所がバレたんだ!アークが隠蔽工作するから呼びに来たんだ。」

「ありがとう、夏の精霊王ネイサン。あなたも辛いでしょうに。」

「大丈夫だよ。ただ、心配してる。此処10年で、ルーベルトが完全に洗脳されてしまってて、秋の精霊王ショーンは軟禁状況化のまま力だけ行使させられてる。取り敢えず、積もる話は後。大急ぎで戻って。」

「分かったわ、ネイサン。みんなも戻りましょう。」

「はいっ!」


 こうして、僕たちは地上に戻った途端。土地ごと転移魔法で移ったんだ。僕たちはどの辺に移ったのか気になったが、剣聖アークが僕たちの無事を確認する為に走ってやって来たからそれも有耶無耶になってしまったんだ。それにしても、導師様とあろう者が支配下に陥っているとはどう言う事だろうか。その日の晩、設計書で煮詰まってるピールと父さんを誘って事情を聞きたいと申し出る事にしたんだ。



「ルーベルトが支配下に落ちてるのはな、『隷属の腕輪』の効果によるものだ。最初はな、純粋に愛し合ってたんだ。あの二人。ルーベルトが誓約の腕輪の効果付きの隷属の腕輪を自らの意思で嵌めたのもアルジャジーラに向かう時にとある事件がきっかけだ。」

「もしかして、低体温症になったあの一件でしょうか?父さん。」

「…良く覚えてたな。ピール。正にあれなんだ。きっかけはな、俺がウインディア得て預言を見る事が出来る様になって間がなかったってのがあるんだ。当時の俺は、自殺願望強くてな。みんながみんな俺を警戒してたんだ。何かの拍子に死に急がないかってな。俺が考えてたのは、どうにかして俺が月で一人ぼっちになる環境下になりたいって思ってたからみんなに預言を言い回って振り回したら手痛いしっぺ返しを食らったんだ。ルーベルトに。魔法を使った尋問に遭う羽目になったんだ。あの時はなぁ、みんながみんな夜叉に見えたもんだ。まぁ、自業自得なんだがな。んで、頭と心臓に強烈な魔法を書き込まれた俺は耐えきれずに失神してその後の事はさっぱり。」

「その後からの話なら俺だな。最初はな、心配してるんだと思って俺は静観してたんだが、失神したにも関わらず誰一人としてイヴァンを介抱しないのに腹を立てた俺は、首謀者であるルーベルトを平手打ちで殴っちまったんだ。当時はルーベルトの本当の性別は女性って知ってたからグーじゃなくてパーで殴ったんだが、俺は空手の有段者だったから殴った右頬腫れ上がってしまってだなぁ。で、あろう事か。俺がイヴァンの為に用意しようとミサトちゃん呼んで作って貰った氷の中にルーベルトの奴。泣き腫らした顔と腫れた頬を冷やすのに丁度良いと考えて氷の一粒に入り込んだのを俺は全く知らなくてな。氷嚢に氷と水入れてさ。気持ち悪いって訴えるイヴァンの枕元に入れてたんだ。そしたらさ、4時間経った頃か。エドが血相変えてルーベルトが何処にもいないって探しててさ。ダウンしてたイヴァンも流石に何かあるって思ってウインディアに聞いたらいたんだよ。ルーベルトの奴が。エドはルーベルトが自然物を巧みに操ると知ってたが、誰も人工物に入ってるって考えてなかった。それ故に、後はピール達も知ってるだろう?あの騒ぎが元で、自らの意思で隷属の腕輪を嵌めてしまったんだ。」


 そう言えば、途中から見た事もない腕輪はめだしたな。って思い出したんだ。あれが元で今のルシール様になっているなら悲しいなぁと僕は思ったんだ。

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