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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第二章 忠義神ピールと慈愛神シェリル
121/595

10年後。4

 僕は、ピールの会話を聞いてしまったんだ。ピールはやはり憎しみの余り、目が見える様になっても心は盲目のままだったんだ。

 イヴァンお父さんが言う通り、自業自得だ。でもね、当初の混乱を知る僕としては本当の所は公務が次から次に舞い込んで来て病院に行く時間すら取れる様な状態ではなかったんだ。それは確かなんだ。幼少の時から英雄だったイヴァンお父さんは、大統領になっても英雄である事を望まれたんだ。だから、病気が明らかになっても、余命宣告受けても弱音一つ吐かずに国をちゃんとした物にしてから英雄として死んでいっただけなんだ。

 僕は、高卒でピールの所に行った事を後悔したんだ。世界政府のエージェントになるのは有名大学卒業。しかも、ストレートかスキップで卒業出来るだけの学力が伴っていないとまず、エージェント試験にすら受けさせて貰えないんだ。どうしようかと僕は悩んだが、そんな時、ルーベルト中将から言われた事を思い出したんだ。


「ただ盲目的に従うだけが愛情じゃない筈だよ。」


 その時、僕には光明が見えた様な気がしたんだ。今は育児中の為に軍籍を保持したまま休職しているあのお方に相談してみようって。僕は問い合わせたんだ。導師ルシールは王妃様でもあったから育児しつつも公務に明け暮れてたんだ。僕はルシール様の連絡先を知らないからどうしようかと思った。だけどね、そこは流石に導師様でね、何処で聞いたか分からないけれど、僕の心の叫びが聞こえて来た様でね。いつの間にか僕の手には魔法石が握られてたんだ。そして僕にはルシール様の声が聞こえたんだ。


「それを持って僕の所に行きたいって願ってご覧。そしたら僕の所に行けるから。ピール君の事だよね。僕たちにも協力させて欲しいんだ。」


 僕は、ピールをどうにかして憎しみから救い出したかったから導師様の所に導いて下さいと願ったんだ。そして、気がついたら見た事も無い様な場所に来てたんだ。少し、異臭が鼻についたんだ。そこで東京にいるのだけは分かったんだ。


「世界政府の最深部へようこそ。モハメド君。」


 僕はギョッとしたんだ。そこに居たのは他でも無いエドワード国王陛下だったんだ。今、この人が世界政府を統括してるんだ。この人がトップしてる間は世界政府は安泰とまで言われてるんだ。ローグフェルグの皇帝陛下の守り刀の役目を果たした彼はこの功績を認められて日本から世界政府のトップの座の奪取に成功してたんだ。ここの本部も近い内にイギリスに本部を移す事になってて多分、引っ越しの作業してたんだろうね。物は机すら無い様な状態だったんだ。傍らには勿論、最愛のお妃様もいらっしゃる訳だ。エドワード様はね、軍部でも将軍の地位にある。実質、世界は彼の支配下と言っても過言では無いんだ。だからだろうね。この人が本当に恐ろしく感じるんだ。

 ルシール様は、アイテムバックから応接セットだけ取り出したんだ。そして、座る様に促したんだ。そして、僕はピールの部屋の前でピールがイヴァンお父さんを殺した復讐をするんだと。僕はそれをどうしても止めたいから何か方法は無いかと聞いたんだ。


「ルーにお前達が父さんの首を締めて殺したと思って生きるつもりでいるんだ!って悲痛な心の叫びを聞いた時からきっとあの子は死ぬまで彼らを引き離した僕を憎み続けて生きるだろうなって覚悟はしていた。我々とて無茶をし続けるイヴァン大統領の事はずっと気にかかってたんだ。だけど、気がついた時にはもう既に手遅れで助からない状態にまでなってたんだ。しかも、イヴァン大統領はその事実を全て隠してたんだ。車椅子で公務始めた時からおかしいなと思ってた。僕だって馬鹿じゃ無い。再三に渡って樹先生派遣してどうにか診て貰う様にお願いしてやっと受け入れてもらえたのがピール君の要請があった時だ。ムーン側には確かに病院はあったが、医療技術が旧世紀と殆ど変わらない状態で、今の医療技術で受けていたなら。しかも、早い内なら完治してたんだ。だけどね、こうなってしまった以上、僕にはどうしようもない。恐らくね、本当に成し遂げてしまうだろうね。彼は聡いから、僕のいる間は何事も無く普通に過ごすだろうね。でもね、逝去した時。彼は間違いなく牙を向くであろう。今は、僕の命で粛々と悪意あるAIを排除しているけどね。提出されてる訳じゃ無いんだ。東京に出頭命令を出したのはそれでね。」

「じゃあ…………」

「ピール君から今まで使ってるパソコン及び、廃棄したAIの回収の為に出したんだ。今の所、ピール君を超える天才ハッカーはいないんだ。だから、技術と知識を確保せねばならないんだ。来るべき時に備えて。イヴァン大統領が預言者だった頃に、『信じるかどうかは分からんがな!』って言って出した預言があるんだ。たった一つの預言だが、それでも傾聴に値はしたんだ。内容はこれだよ。君たちに関する預言だ。」


 僕は、その預言を見て震えが止まらなかった。だって、ピールと僕は神に選ばれてた。それだけじゃ無い。ピールと僕は殺し合うんだ。人類の命運をかけて、敵同士になる未来。内容はこうだったんだ。


「俺は生きて結婚する事は無いが、子供を二人設ける事になるだろう。一人は復讐を誓って憎悪を燃やす神であり、もう一人はその憎しみを慈愛をもって阻止しようとする神である。二人は世界を巡って人々に幸福を授けるが同時に復讐の種を植えつけて行くだろう。長い時間をかけて。やがて、大いなる王が倒れた時、二人は決別の時を迎えるであろう。剣聖はそれを阻止しようとするが、互いの剣で胸を刺し貫いたのち二人揃って神となるであろう。そして機械を止める最後の鍵が剣聖の手に渡るであろう。俺の怒りに触れた子は神になった後改心するが、自分の罪深さの余りに誰一人として近寄らせない様にするであろう。それを見かねて慈愛の神は手を差し伸べる。この二人の歩みを止められる者は誰もいない。何故ならば、俺は既にこの世を去っており全治全能の神は鳥籠の中に閉じ込められ続けるからだ。鳥籠の鳥は常に二人を案じ続ける。その目を通して彼らの死までの道中を見続ける事になるのだから。」


「僕には、こんな未来しか残されてないんですか。僕には、もう、何も残されていないんですか?」

「モハメド君、そうじゃ無いんだ。良く考えるんだ。何故、こんな預言を残したのかを。きっとね、君に期待したんだ。預言を覆す鍵が君にしか無かったのを知ってたからこそこんな預言を残したんじゃ無いかと僕はそう思えてならないんだ。嘗ての預言を覆した人がいるんだ。過去に。他ならぬ剣聖殿でね。彼は浮名を残す預言が余程嫌だったんだろうな。アルジャジーラの一件で見染めた今の奥さんのミラさんをそのまま妻にして幸せな家庭を築いてるんだ。残念ながら、此処までの預言は成就してしまっているが、僕だってピール君が不幸になる未来を望んではいないんだ。」

「では、此処から逆転の発想があると。」

「そうだ。そなた、高校では情報処理学科に所属してたであろう?天才ハッカーの右腕になる為には必要って思って…………」

「ちょっと待ってください!もしかして、僕にピールが仕掛けて回る悪意あるAIを止めて回れって言うんじゃ無いでしょうね。しかも、大いなる王がって言う節。それは間違いなく貴方だ。エドワード様。」

「…やはりイヴァン大統領の子供達は揃いも揃って賢い子だった様だ。一度読むだけであっさり紐解いてしまうとはな。幼少の折よりそなたは彼に仕えてきたから彼の手腕を間近で見る事があった。そして、10年前にマザーを独自で止めたプログラム。今は教材にすらなってるそうだな。それもそなたの事だ。既に頭の中に入っているであろう。だが、ピール君は天才ハッカーだ。もう、プログラミングの穴を見つけていて。だからこそ教材として提供した可能性だってあるんだ。恐らく、彼から技術供与は無理だろう。だけど、君にならその抜け穴を教えるんじゃないかと僕はそう思うんだ。」

「…でも、それも通用するのは良くて2度までだと僕は思ってます。彼は僕の何倍もの知識を有してます。僕には余りにも荷が重すぎます。それに今日はたまたま呼んで頂けたのでお邪魔出来ましたが、僕はピールの一家来に過ぎず、僕、最終的に従わないといけない立場ですし…………」

「まぁ、確かにそうではあるのだが、立場が有れば何かあっても拒否出来ると言う事ならば方法が無い訳では無い。月の戦争時に最年少で参加してるから軍に志願すると良いかも知れない。普通、世界政府のエージェントをしてる人間に護衛がつく事は無いが、ピール君は元王族だ。なので、適当に理由をつけてモハメド君の所に何名か派遣しよう。必要で有れば、イギリスの諜報部からも派遣しよう。まぁ、人員を増やせば良いって訳では無いが、要は、嘗ての僕たちの様に恋愛に発展する様な事が有ればひょっとして考えが変わるんじゃ無いかなって気がするんだ。君たちにまだ若いしね。」

「…はぁ、恋愛ねぇ。果たして女性に興味示すかどうか。こんな事言っちゃなんですが、望みは薄いとだけ言っておきます。ピール様はご自分が信用した人以外、側にいるのさえ嫌がりますから。」

「…ええと、こんな事を聞くのも憚られるが。そなた達の関係はまだ続いているのか?」

「続いてますけど、何か?子供の時は止められても仕方ないとは思ってましたけど、僕たちはイヴァン大統領の息子達って立場だったから誰も止める人いないからやりたい放題だったんですが、何か問題でも?」

「「…………」」


 大の大人二人が凄く呆然としてるのが余りにも可笑しくてさ。思いっきり固まってるのな。この人達もさ、以前は男性同士だったのにね。そして、エドワード様がさ。


「……………僕は今、物凄く後悔してるんだ。この子供達に関わって来なかった事を。それもそうか。国のトップの息子達に意見を言える人などいないであろうな。病床にあったイヴァン大統領もひたすら公務に明け暮れててこの子達に関わる時間もない。僕たちはとんでもない間違いを犯したのかも知れぬ。この子達を最初から我々で引き取ってさえいれば、間違った価値観のまま生きる事も無かっただろうに。そして、イヴァン大統領も生きて幸せになったであろうに。」

「…………」


 たらればの話だが、本当にそうだよなぁって思ったんだ。だって、ピール様は寂しがり屋だから、僕が必要って言って毎日お抱きになるからね。まぁ、顔立ちが僕が女性的でピールは王族らしく精悍な顔になってるから普通に見たらカップルに間違えられるんだよ。背もピールの方が高くてね。僕たちは。まぁ、そう言うのもあってさ。当たり前になってたんだ。この状態が。感覚麻痺しちゃってるんだろうね。でもね、預言の事は正直言って頭が痛くなる思いだったんだ。幼い頃から一緒が当たり前も僕たちは、これから何処に向かえば良いかと思案に暮れたんだ。

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