10年後。2
流石にね、国の大統領ともなるとね、葬儀は国葬となる訳で、その間、父さんの遺体は皇帝陛下がお作りになったアイスコフィンに入れられたんだ。その間に、新しい大統領が選挙によって選出されて国の運営始める事になったんだ。父さんはこの日が来るのを分かってたから、誰が引き継いでも大丈夫な様に手配してくれてたんだ。日本の先例ってのもあるから国の予算に関しては父さんがAIを新たに組み上げて不正が行なわれない様に幾重にも手が付けられない様にしたし、能力に応じて査定するのもAIだったりするけど、父さんが組み上げたAIには感情はない。純粋な能力主義で運営してて年1回必ず査定があって、それに応じてって感じでね。
病院にかかる費用も介護にかかる費用も国が持つけれど、その代わり税金は少し高めだろうか。教育に関しても無償だけど、初代大統領が博士号持つ人だったからね。外国からも沢山研究者を招聘して大学で沢山研究者を育成してるんだ。治安も良好で、民間の武器の所持は禁止されてたんだ。国の運営で食料とかを輸出してたからどちらかと言うと父さんの母国に良く似た社会主義的な仕組みなんだけど、上院と下院があって、大統領の権限、非常に強いんだ。議会が上奏しても、大統領が拒否権行使したら問題ある案は通らない仕組みだったんでアメリカ的な要素もあったのかも知れない。父さんが命をかけて作った国は順調だ。
だけど、僕はここの大統領公邸から出て行かなければならなかったんだ。僕以外の方が大統領になったからね。なんで、僕が真っ先にしたのは身辺整理だったんだ。国から何名か世界政府に派遣してるんだけど、今までは父さんの看病って理由があったから出頭する必要は無かったけど、父さんの国葬が終了する日程が決まると同時に僕の休職期間は終わりを迎える事になったんだ。父さんの国葬は1か月後の3月18日。その2日後の3月20日。世界政府が置かれている東京に出頭命令出されてるんだ。
だから、身辺整理急ぐ必要あったんだ。遺品は既に整理されてて、父さんが使った二振りの刀あるだろう?あれとかも含めて全部の品は真っ先に作られた自宅を記念館に作り替えた後に全て納められたんだ。レシピノートもね。晩年過ごした病室も再現されてたんだ。使った機械もそのままね。この国にとって、父さんはきっとかけがえのない宝物だったんだ。月で写した当時の記念写真なんかにはまだ幼かった僕やモハメドが最善列で写ってる写真も有れば、敗戦を迎えた時に納めたタキシード姿の父さんもあってね。
あの日々の事は忘れられないものになったし、自分の幸せを犠牲にしてまで僕を育ててくれた父さん。本当に大好きで、父としても人間としても尊敬してたんだ。だから、僕の名前にも父さんの名前入れたんだ。
ピール・ムハンマド・イヴァン・スワロスキー。ちょっと長いけどね。
そして、僕が幼少の頃より仕えてくれてるモハメドもこれからはずっと一緒にいてくれるんだ。高校卒業して直ぐに僕が召し抱えたんだ。母親の幸せを見届けてから、僕を頼ってオーストラリアから単身で来てくれたんだ。
そして、次に何をしたか。改宗したんだ。二人一緒に。父さん、神様になっちゃったからね。父さんが神になったのはローグフェルグの皇帝陛下の定例会見で発表されたんだ。
「イヴァンは賢神として神のみ座に登り、信仰によってこの地での力は強くなり、新たなる神の誕生により回復魔法を会得する事が出来る様になりましょう。そして、我の傍でそなた達を常に見守っているのだ。我はこの新たなる神と婚姻を結んでいる事を発表する。なので、我を囲もうと思うのは辞めて頂きたく思っている。」
そう言って、父さんをマスコミに公表しちゃったんだよね。車椅子の賢君が神様になっちゃったと大騒ぎでね。それでこの国。国策で新たな大統領が真っ先に発布したのは神殿の建設だった訳で。
その前に、皇帝陛下はお造りになられたんだ。大統領府内の中庭に父さんの彫刻が施された神像が祀られてる祠をね。それに手を触れて祈ると帰依出来る様になっててね。連日、みんなが改宗の為に訪れたから大統領公邸がお陰様で大盛況で観光名所にまでなってる有様でね。
帰依したから魔法覚えると思ったんだけど、どうも簡単じゃない様でね。その辺のレクチャーしてくれたのは引っ越しの手伝いに来た導師様で。エルフって歳取らないからさ、神々しいまでの美しさは誰の目にも止まるんだ。丁度、帰依したばかりの僕たちに魔法を教えてくれたんだ。流石に導師様だけあって凄く分かりやすくて。魔法の適性、見てもらったんだ。珍しいそうなんだが、僕には真語魔法と回復魔法の二つ適性があって、モハメドは帰依したけど適性は妖精魔法だったんだ。人々が来なくなった夜にこっそり迎えに来て、僕の荷物をあっと言う間に回収してくれてさ。マジックバックに入れてくれたんだ。このマジックバックはその場で導師様が作ってくれたんだけど、僕にはもう一つ。父さんが生前から使ってるアイテムバック。これだけは遺品として残す事にしたんだ。中に入ってるのは壊れて使い物にすらならない車とかガラクタしか入ってないけど父さん、こんな物を再利用して色んな物作ってたからね。遺産も受け継いだんだ。手続きも早く終わって税金を納めても金銭的には余裕があったんだ。僕も個人的に投資家としての仕事も順調だったってのもある。最初に住んでた大きな邸宅がそのまま記念館になってるのもあって僕にはもう自宅が無くてね。国から出るのは2度目になるけどまぁ、なんとかなるかと思って国を出たんだ。ただ、国葬の時まではまだ日にちがあったんで折角だから魔法を覚えてから戦線復帰した方が良いとアドバイスを受けてね。僕たちイギリスに渡ったんだ。
勿論、父さんの遺体もアイテムバックに入れて来た。信用してない訳でもないけどね、僕も元王族だから用心位はするんだよ。第一夫人なんて見習いたくない先例あるからね。
イギリスはね、導師様と言う存在があったから世界随一の魔法大国になってたんだ。父さんが作った戦艦は今も現役で活躍してるんだ。ただ、10年も経つと技術はかなり進歩してて、前回の戦争での戦死者もイギリス軍が多かった反省を踏まえて人数が少なくて済む様に改良進めてるんだ。艦長席で魔力を込めれば動くらしくてね。搭乗人数が劇的に減ったそうだ。嘗ての日本軍と搭乗人数が同じ規模で済む様に出来たそうなんだ。
翌朝になってから導師様と一緒に空軍基地に案内されたらその中に魔法学校併設されてたんだ。その日は子供達も一緒だった。エドワード国王陛下との間に生まれた双子のお子さんだ。双子だけど二卵性双生児だった様でね。ただ、二人ともアルビノで千里眼持ちなのが判明してるんだ。エドワード国王陛下がまだ皇太子だった頃に今度生まれてくる子供達がみんな千里眼を持ってます様にって。願った事があるんだって。その願いが叶ったと分かった時の国王の喜びは半端ではなかったんだ。まぁ、そんな感じなんで、お子様と言えど、気が抜けない。長子は男の子でジークフリード王子、次子は女の子でエカテリーナ王女。男の子は導師様のコピーで女の子は国王陛下のコピー。ただもうすぐ10歳迎える彼らだが、二人ともエルフなんで大きさ的には5歳児平均って感じだったんだ。ジークとエリーと呼ばれてる彼ら。まぁ目立つんで僕たちが霞むんだ。
「ほら、ピールお兄様も手を振りなよ。王族なんだから。」
「いや、でも僕はもう王子でも何でもない一般市民ですし…………」
「でも、みんなピールお兄様の事を一般市民なんて思ってない。王族で、工学博士号を持つエンジニアで、天才ハッカーって思っているよ?その目を見て分からない人なんていないよ?」
全然言ってないにも関わらずこれである。工学博士号を修得してるのは本当だ。専門は父さんの後を追う形で宇宙工学志したけどね。授業は本当に楽しかったんだ。宇宙の神秘に触れるのが楽しくてならなかったんだ。大学はオーストラリアにしたんだ。卒業しようと思えば3年で卒業出来たからね。ただ、未成年が一人暮らしは正直どうかと思うのでって事で、アーリアさんの家に一時期居候してたんだ。僕の為だけにわざわざオーストラリアに移住してくれたんだ。だけど、そのせいで父さんがドクターストップかかる以上の無茶してた事に気がついてすらいなかった。毎日電話かけたけど、大丈夫、ちゃんと寝てるから。って、目に隈作って言ってるんだ。休みになる度に一時帰国して父さんが無茶してないが監視してたよ。
ダメだな。父さんの事を思い出すとつい脱線するね。
目のAIは定期的に入れ替える必要あったんだ。なんで、父さんが公務で日本の来日する際に僕も一緒に行くからその時に定期的にメンテナンスして貰ってて、大きさが固定されてからは再手術する必要なくなったけど、度数調整、大分厳しくなっててね。失明の危機に瀕してるんだ。空軍基地の慰問から帰ってきた僕に待ってたのはエドワード国王陛下から僕の視点がおかしいと言う指摘で急遽来英された樹先生でね。でも、樹先生。この後、仰天する様な話を始めたんだ。




