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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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手術成功の陰で。

 子供達を寝かしつけて。疲れからかイヴァンも一緒に寝ついてしまっていたよ。幸せそうに寝てるんだ。私もほっと一安心だ。寝てる人を起こしてしまっては拙い。そう思ってそっと扉を閉めたけど、リビングに戻ってから私、どうしようもなく寂しくなって泣いてしまったんだ。この感情。何て言うんだろうな。嫉妬?うーん、違うかぁ。だとしたら諦めないとって考えているって感じなのか。

 イヴァンにはなんて事ない壁でも私には余りに大きすぎる壁だったのかもって思った。だけど、ピール達も落ち着いてくれて良かったと喜んでいた筈なのに、これは一体、何なんだろうな。


 そんな中、アレスタの容態が急変したって知らせを受けたんで大慌てでスペースシャトルに戻ったんだ。中に入ったらみんなにびっくりされちゃったんだ。顔洗って出て来た筈だったんだけどね。見る人見たら(特にルーちゃん)分かってしまう様なんだよね。で、話ししたんだ。私、母親にはなれないと思ってしまったんだって。するとね。


「そりゃ、そう思ってしまうのは当たり前なんじゃないか?イヴァンは見るに見かねて引き取っちゃいるが、イヴァン位の歳食ってりゃどうって事なくてもミサトちゃんはまだ日本の常識では未成年で、あの子供達とは5歳しか離れちゃいねぇんだ。だから、無理して母親になる事はねぇ。今まで通り姉として接しつつ少しずつ距離取った方が良いかもな。どうせ、ミサトちゃん学業に戻ったらそれどころじゃ無くなる。」

「…そうですね、確かにそうかもしれませんね。日本の高校退学して来てる位ですし、この旅で、単位もまともに取れてないとなると厳しい。ついでに言うと、英語。怪しいって前々から思ってたんですよね。」

「……………どうして分かったの?」

「此処の面々、みんな日本語普通に話すからピンと来てないと思うけど、イギリス滞在中に儀式しましたよね。転生の儀。あの時、僕に助け求めてましたよね?英語圏の人に分かる様に『転生の儀を執り行う』ってどう言えば良いの?教えて、ルーベルトってね。最早、忘れたとは言わせませんよ。陛下。これからあなたは英語圏の高校に通われるんですからね!」

「うう、完全に忘れていたよ。その事実。イギリス国籍に変更した以上は行く学校も英語圏だったか。」

「じゃあ、今からまた日本国籍取り直すか?」

「辞めてください。あんなAIが蔓延る場所になど御免被ります!」

「んじゃあ、リンちゃんは世界政府の仕事忙しいから除外するとしてだな。ああ、エドもルーもか。結婚式とかのイベント目白押しだもんなぁ。」

「流石にそれは地球に帰ってからであろうな。真っ先にあるのは即位式になろう。僕も王様になどなるつもり無かったのに、皇太子受けたのが運の尽きであった。まぁ、軍務もこれと言った事もない。」

「ああ、幸太郎さん、ちょっと良いですか?」


 私達は手術中だったのでパイロットルームで話し込んでいたんだが、樹先生がひょっこり出て来たんだ。で、


「ああ、どうしたんだ?樹先生。」

「先程ね、無事手術成功したんです。訓練次第じゃ歩ける様になりますよ、彼。だけど、目が覚めた途端、動く上半身でちょっと暴れてましてね、アメリアさんの説得に応じようとしないんで。」

「…それで俺か。分かった。ちょっくら黙らせてくる。悪いな、みんな。ミサトちゃんの事、頼む。」

「分かった。善処しよう。」


 そうして、幸太郎さん。もといお父さんは樹先生に呼ばれちゃったんだ。んで、リンちゃんが無言でキーボードを叩いて書類作成してる中、エド達夫婦との将来に関する話し合いは続く事になってしまったんだ。まぁ、リンちゃんも心配してるのか耳を傾けてくれているよ。リンちゃんも聞けば東京大学卒業らしい。世界政府に就職しようと思ったら高学歴じゃないと無理なんだって。特例があるのは嘗てのジーク様位だって。まぁ、それもそうだ。異世界に地球の様な大学無いか。ああ、なんで異世界時代に生まれ落ちなかったんだろうなぁ。興味無い事は基本的に頭に入らない人なのになぁ。なんて思ってると。


「僕もオーストラリア国立大学の心理学専攻して卒業後軍に入ったんですよね。」

「…オーストラリアで最高水準の大学出てたの?ルーちゃん。」

「はい。まぁ、それが諜報部のお眼鏡に叶うとはこれっぽっちも考えて無かったですけどね。エド、そういえば何処の大学出たんだ?」

「知ってるとばかり思っていたぞ。僕はケンブリッジ大学の法律学科を卒業してるんだ。まぁ僕は王族だったから法律学んでも全く関係ない場所に飛ばされたけどね。」


 もう、つくづく嫌になってくるよ。高学歴集団の中に自分だけ中卒(しかも全然登校していない)と言う事実。んで、少々落ち込んでると。


「まぁ習うより慣れた方が英会話覚えると思うんだよね。最初は聞くだけで良いよ。僕たちもゆっくり話すから。」


 そう言うとね、3人共流暢な英語で話し始めたんだよ。正直言って、こんな状態で日々生活しないといけなくなるのかと思うと頭が痛かったが、そう言う選択をしたのは紛れも無く私な訳で。確かに遊んでる場合では無い。そう思うには十分だったんだ。




 翌日から早速エド夫婦から英語教えて貰う事になったんだ。イヴァンは月の民の戸籍調査する為に終日家から離れられない。その横で手伝ったり遊んだりして子供達は時間を過ごしてた。側にはミラさんがいてくれてたんだ。アークさんが地球に帰る前に反乱軍達の遺族がいるかどうか。調査の為に終日出かける事になったからだ。ご飯の心配もしなくて大丈夫とあって、私はこっそり荷物持って出てたんだ。一応、伝言は残してた。英語苦手だから暫く仲間の所で勉強してくる。とだけ。スペースシャトルに着けばエドがイヴァンからの電話を受けていた所で、すいませんがミサトの事宜しく御願いしますって連絡入ってたみたいだ。調査対象は生き残った20万人少々。こんなん、イヴァン一人ではどうにかなる規模では無い。調査だけでもどれだけかかるか分からない。下手をすれば、軍撤退時に置いて帰る事も検討されるレベルの話だ。当然だが、イヴァンだけではどうにもならずリンちゃん始めとする月に派遣された世界政府のエージェント総出での作業となったのだ。

 スペースシャトルでは病人さんが大人しくしてるとあって、エド達は月の軌道圏内を周回してるエリザベスまで転移魔法で連れて行ってくれたのだ。エドは宮様の葬儀に参列する意向を示していたから状況次第では私も一緒に連れて帰るつもりだとはエドの談。何分にもね。


「イヴァン博士、ピール君引き取る時に陛下に無断で養子縁組してしまったであろう?預言阻むのにも使えそうなんで連れて帰って城の奥深くに匿ってしまうが良かろう。世界政府の最重要人物ってカテゴリーから一度外れて仕舞えばイヴァン博士と言えど、容易には近づけなくなる。王族が住まう城に無断で侵入したとあればイギリスの法律が適用されよう。ルーが最も執着しているそなたを万全な体制で守れると言うものだ。」


 そうか、そう言う事かと思ったよ。ルーちゃんがやりかねないってのは分かってたよ。常日頃から毎度『僕が敬愛してならない』って言い続けていたからね。でも、そこに共犯としてエドを据えるとは思ってもみなかったよ。きっと心配してたのは間違いない。月攻略時を思い起こせば、私が思い悩む事ぐらいこの二人にはお見通しだったのかもしれない。ルーちゃんが挑戦的な目で見てた事も気になってた。エドが何で黙ってたか不思議だったけど、ただ、口裏合わせてるとは思えない。エド、宮様のご逝去に打ちひしがれていたからね。だけど二人の間ではピールをイヴァンが引き取った時からこの事を予見してたのかもしれないんだ。

 二人にはお願いしたんだ。イヴァンを裏切りたくないから男女間の関係は無しだと。だけど。


「陛下、王であるあなたが何も遠慮する事はありません。僕は言いましたよね?エルフの王族に限っては側室は置けますよって。僕はね、イヴァン博士が陛下の事を幸せにしてくれるって思ったから身を引く事にしたんだ。だけどね、今のイヴァン博士には到底、陛下を幸せにしてくれるなんて到底思えないんだ。陛下の事は僕が守ります。誰が何と言おうとも、手出しはさせない!」

「ルーちゃん、でも…………」

「陛下、恐れながら僕も今回ばかりはルーと同意見なんだ。なんで、側室云々以前に一度別れた方が良いと思ってるんだ。幸いなのはイヴァン博士にはやる事が山積してしまっててあなたに構ってる時間すら無い点にある。宇宙の上にいるとあっては、容易には近づけまい。肝心のスペースシャトルも今は完全に病室と化しているから軍部の方で出航停止命令。事前に出してあるんだ。イヴァン博士が軍の階級持ち出したとしてもブリッジよりも上にあるこの階層には基本的には入れない。イヴァン博士が陛下を迎えに行く事自体が事実上、不可能なんだよ。ピール君達に救いを求める可能性も全くない訳ではないが、イヴァン博士がピール君達を巻き込めば一度やらかした件もあるから今度は許して貰うなんて事はない。イヴァン博士は引き下がるしか選択肢が無くなっているんだ。勿論、月のみんなと地球に還って生活が落ち着いてピール君達が自立すればこの限りではないと僕も思うんだ。でも、現時点では陛下を娶る資格はない。僕も幸太郎さんと同意見なんだ。」


 何だか大変な事になってきたって思ったよ。まぁ、幸い軟禁されてる訳では無いので外出は自由だけれど、イヴァンは絶対に来れない環境下で、思い悩んでいる環境下で気持ちが揺らぎ続けていたんだ。

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