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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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怒濤の様な後始末。

 夕方、月臨時政府と名乗ったイヴァンが無条件降伏を受諾したと声明を発表した事で戦争、終わったんだ。

 調印式には修理が済んだみかさに乗った真田将軍が代表として立ち会った。イヴァンは以前、着た事があるお古のタキシード着て調印式に臨んだんだ。うっかり血糊ついたままだったの思い出して、魔法で時間逆行させて対応して事無きを得た。真田将軍も臨席したエド達も私も軍服だったけど、その辺は。


「俺もエドに倣う事にしたんだ。イギリスの先例。本当にエドって凄いんだな。誰の手も借りずにこれしたんだもんなぁ。」

「例なら実はあるんだ。昭和天皇って名君に倣ったんだ。」

「昭和天皇?」


 日本の皇室にあって有名な天皇陛下がこのお方だ。私も歴史の教科書で見たタキシードを着て軍服着たマッカーサー元帥と写ってる写真が有名な方だ。天皇家は此処から令和まで名君が続いたんだ。全てが変わったのは天変地異以後って事なんだ。業火の中で歴史も文化も知恵も全て失った。ただ、一人の女性だけしか生き残らなかった。直系の誰だったかまでは正直言って覚えていない。天変地異のドタバタもあるだろうが生き残った唯一の人間が赤子だった。それがたまたま女性だった。それじゃまずいってんで運良く生き残ってた外戚を集めて復権させた上で摂政宮を臨時で置くしかなかった。宮様が復権したのもそんな渦中での出来事で、歴史の教科書にも誰か書いてた記憶があるが真面目に勉強する気が無かったのでそれも誰だかさっぱりだ。


 ああ、今更ながらちゃんと勉強しとくんだった。学校行って勉強するよりも鍛練や魔法の勉強してた方が楽しかったんだよなぁ。


「あれ、陛下。ご存知無いですか?」

「…すいません、日本の歴史よりも魔法の勉強の方が楽しかったし、引きこもりだったものでつい。」

「学校、やり直しするの苦労しそうだな。イヴァン博士にでも教えて貰うが良いであろうな。」

「…貴殿達、私語は慎むが良い。これから写真撮影だそうだ。もうちょっとの辛抱だから式典終わってから心ゆくまで話すが良い。エドワード中将はこれを持つが良い。今回の功労者の遺影だ。」

「…お預かり致します。」


 そう言ってエドに託されたのは急遽作った竹田大将の遺影だ。既にエドの手には指揮棒、返してあったんだ。威風堂々とした少し若めの白馬に乗った王子様だ。髭を蓄えてるのは相変わらずで愛嬌たっぷりの顔して笑われていたんだ。既に竹田宮様の戦死の報は世界政府から発表されていたんだ。日本政府も1年間、喪に服すと発表なされてた。エドも感慨深げでポツリと漏らしたんだ。


「…最後の最後で、宮様から軍人のあるべき姿を学ばせて貰ったよ。流れの先の先を読んで最善の策を為せ。宮様の教えは国を運営する立場の僕にも通じるものがあるんだ。僕は、決戦の場に残念ながら立ち会えなかったが、ルーから事の顛末は聞く事が出来たんだ。原因、月の為に開発された筈のAIだったんだって聞いて僕は決めたんだ。人間らしく助け合って生きる社会を目指す事を。僕が生きてる限りAIの支配は受け入れない。そして、生まれて来る子供達にも遺命として残すんだ。まぁ、医療用AIに限ってはこの限りでは無いが、僕はあくまで機械が感情を持つ事の危険性をずっと訴え続けるつもりだ。僕の生きてる間は大丈夫だが、子供達の世代になった時が危ないであろうな。もし、子供達が迷いだしたら僕のこの言葉。伝えて欲しい。」

「…頭の作り、ルーちゃん程恵まれてないけど、ちゃんと覚えておくよ。エドの遺言として。でもまぁ、紙に書いて奥さんに残しておいた方が良くない?」

「それならば、ルー自身が見て聞いた事を子供達にちゃんと教えてくれると僕は考えてるから問題はない。僕も子供達の教育には興味あるんだ。妃に任せず、公務にしっかり向き合いつつイヴァン博士の子育て。見習う事にするよ。」

「…………」


 そしてね、月に急遽呼ばれた多くの報道陣が私達を取り囲んだんだ。フラッシュが眩しい。

 写真撮影が終わってそのままインタビューに移行したんだ。降伏した側のイヴァンに笑顔なんて物体無かったけど、私がもうすぐ16歳になるから、結婚の話になった時にね。


「ミサトな、学業の関係で養子縁組していてな。俺、無職なんでそこでストップかけられてるんだ。まぁ、親御さんなら誰でも心当たりあると思うんだが、収入がない奴に娘はやれないそうだ。なんで、俺、一連の後始末終わったら就職活動せなならん。俺はこいつと一緒になるの諦める気はさらさら無いので何処か職。転がってないですかね?」


 って言って周囲を爆笑の渦に誘っていたよ。私にも同様の質問されたので私は人族より寿命が5倍あるから気長に待つと言ったんだ。で、エドは宮様に関する質問多かったよ。事前情報でエドの上司ってみんな知ってるからね。だからどんなお方でしたかって聞かれて。


「そうですね、僕の人生を形成するに当たって最も影響力のあった人であったのは言うまでも無い。皆も承知してると思うが、あのお方は枠に収まってる様な方では無く随分と破天荒なお方だったから僕は最期の一時まで振り回され続けたが、僕があのお方の部下であった事は僕にとっては誇りにすら思うんだ。惜しむらくは、僕がやり返す機会が今後永久に失われた事であろう。あのお方位だったよ。僕を顎でこき使いまくった御仁は。でも、僕はあのお方の事は心からご尊敬申し上げていた。皇族の方々、及び日本国民に心から哀悼の意を申し上げる。願わくば、葬儀には是非お伺いしたいので部下に指示して日程調整を急がせよう。また、さくように指示して御遺体の捜索を急がせてはいるが、唯一発見されたのは今の所肩についてる階級章が1つのみである事も併せて報告をしておく。日本国民に御遺体すらお返し出来ない事を誠に申し訳なく思っている。」


 そう言って、沈痛な表情で言えばマスコミと言えど、黙り込んだ。



 この日からしばらく月に滞在する事になった。イヴァンの軟禁されてた自宅。豪邸だったよ。

 しばらくは此処が私達の拠点になるんだ。

 ペンタゴンの捜索は世界政府のエージェント達が取り仕切るので多くの残務整理。する事になってたんだ。そしてね、気になるのがアレスタの具合だ。手術、凄く精密な手術してるから時間がかかってるんだ。断絶した神経繋ぎ直してるんだ。式典とか出る予定が無かった幸太郎さん達。ずっと見守っているんだ。子供達も預かって頂いてたんだ。一旦、引き取ってイヴァンの自宅に行けば子供達も目を丸くしてたんだ。日本の首相官邸並みの広さを誇ってたんだけど。でもね。


「この邸宅も多くの民達の犠牲の元に出来てると思うとな、此処にいる事すら重荷にしかなり得なかったんだ。今の民達見ただろう?圧政と洗脳でさ、生気が無い民達見るの本当に辛かったんだ。今は久々のご馳走で嬉しそうな顔してるけどさ。その姿をよく見てご覧。姿は汚れてみすぼらしいし、誰一人として血色良くないだろう?慢性的な栄養失調なんだ。ずっと食料が配給制でさ、食うや食わずの状態でさ。ご飯を食べたかったらな、隣人を貶める事して成り上がっていかないといけないんだ。これの何処に幸せがあると言うんだろうな。」

「…………」

「この大人数を養うには月は余りに不毛の地過ぎたんだ。農業も完全に機械化しないとまともに作れない状態なのにさ。やっていたのは助け合いじゃなくて殺し合いだ。内戦後、確かにこれは拙いって話しで沢山農業プラント建てられたんだ。でもな、潤ったのは一部の特権階級の人間だけだったんだ。月に入植後、民はずっと苦しんでいたんだ。50年間って長きに渡って苦汁を味わって来た無辜の民達は何処までまともな判断出来たと言うんだろうな。だから、俺はみんなで地球に帰る事を提唱したんだ。天変地異で確かに状況は変わったかもしれんが、肥沃な大地と命が育まれるには十分な環境が地球にはちゃんと備わってるんだ。俺は最後までこの民達が安心して過ごせる様に導いていかないといけないだろうなぁ。言い出しっぺの責任って所だろうが、こんな俺にみんな付いて来てくれるか?」

「勿論だよ!イヴァンお父さん。僕たちにも出来る事あるよね!」

「あるぞ。AIに頼らなくてもちゃんと農業出来るし、お前がその気になればどんな事にも挑戦してみれば良いんだ。最初から成功させようと思わなくて良いんだ。試行錯誤しながら折れずにやり続けてご覧。そうすれば必ず、道は開ける。俺もローグフェルグの旗の元に集まって来た同志の一人なんだ。だから、困った事があったらいつでも呼んでくれよ?」

「はいっ!」


 イヴァンは目に慈愛を讃えて、子供達を抱きしめながら目を細めてたんだ。二人の子持ちになっちゃったけど後悔なんて無くて、寧ろ、楽しそうなんだ。今は幸せを噛みしめる邪魔したくなくてそっとしておく事にしたよ。でも、正直言って私は寂しかったんだ。何故なのかよく分からないけれど、イヴァンが完全に私の元を離れてしまった様な。心配かけたくなくて笑ってるフリしてたけど、きっとね、まだお母さんになる自信も覚悟も私には無かったんだ。イヴァンもこの子達も私と言う人間は受け入れてくれているんだ。だけど、こう思ってしまったんだ。もう、イヴァンとは一緒に居られない。そう、思ってしまったんだ。

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