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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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総力戦。5

 ピールが鍵を解除してくれていよいよマザーコンピュータルームにみんなして入ったんだ。アレクサの事は心配にはなったが、今は目の前にいるこの男を倒さなければならない。


「いよいよラスボス登場って訳だな!」


 って明るく茶化すと。目の前の男は忌々しそうに後ろを振り返ったんだ。


「イヴァン・スワロスキー、つくづく貴様は悪運が強いな。貴様の所為で俺の野望が潰える事になろうとはな。異世界人は我々の故郷の大地を奪い取った相手だ。その相手と手を取り合うとは。異世界人など、全て排斥するに限る。我々の母なる大地を奪った様な奴らだ。」

「だからってな、その他大勢の人間を巻き込むのは感心できねぇな!憎しみからは何も生まれねぇぜ。憎むんだったら、テメェだけで憎めよ。独裁政権強いて、月の民に圧政強いて、考えを押し付けて洗脳なんてするんじゃねぇ。勝負だ、ゲイル。生憎、俺は一人じゃねぇ。大事な家族と仲間達が後押ししてくれてるんで、怖いものなど何も無いんだ。ピール、モハメド。こいつがお前達の両親の仇だ。剣を抜いて構えてろ!」


 イヴァンはビームライフル銃をしまって、二刀流に装備を変えたんだ。私はイヴァンと子供達に祝福を与えて加護を授けた。羽を出して勝利を祈ったんだ。


「…そうか、そいつが…………」

「ローグフェルグ皇国の皇帝陛下に指一本触れるんじゃねぇぜ。俺たちの皇帝陛下はまだ若いがお前みたいなのが気安く触れて良いお方じゃあねぇぜ。」

「もしも害すると言うならボクとアークが美味しく頂くぜ!」


 って、アークさんもシルフィードも出てくるんだ。私も参戦する気だったが、剣を装備してる状態で王の威厳を保ってれば大丈夫な様だ。黄金の鱗粉を纏って、自分も光を纏うんだ。その姿が余程琴線に触れたのか。魔法を唱えて他の者に被害が及ばない様に結界を施した。そして私はこう言うんだ。


「エルフの女王にしてローグフェルグ皇帝、ミサト・M・ローグフェルグは願います。我が夫、イヴァンの勝利を。そして子供達が本懐を遂げ、未来を築く心の糧になる様祈ります。そして我は命じます!我が元に勝利を捧げよ!」

「はっ!」


 ゲイルとか言う男を除いてみんな一斉に頭を下げて跪いた。そして、イヴァンと子供達は立ち上がったんだ。金色の鱗粉に包まれて、それが体に取り込まれれば、背中に眷属である証のモンシロチョウの様な羽が生えて来たんだ。エルフの王族の羽根は代々違う。先代の父は異世界のものを反映してたから完全に妖精の羽が何枚も重なって翼の様な形を形成していたが、私はこの世界に生まれた最初のエルフの王だから私の羽は七色に輝く大きなアゲハチョウだったんだ。私は羽ばたいて少しだけ浮き上がったんだ。そして。


「これが、迫害しようと試みたエルフの王か。」


 そして、私の前に羽を出した状態でルーちゃんまでが来ちゃったんだ。同じ様に、羽を出して、輝かんばかりの美しさを振りまきながら、私の手に接吻して。膝をついて。


「心から敬愛してやまない僕の皇帝陛下にご報告があり、まかり越しました。ここ以外の全ての施設。我が手中に納めた次第。ご報告申し上げます。現在、月の民達は食事の配給に列を成しており大型船で持ち込んだ食料を手に喜びに沸いております。」

「そうでしたか。導師ルーベルト。ご苦労様でした。そなたも此処での結末を見届ける様命じます。私を守って倒れたアレスタの目の代わり。しっかりと果たすのです!」

「はっ!王命賜ります。」


 そして、向き直って私の前に座り直してイヴァンと子供達に魔法を唱えてシールドを付加してくれたんだ。それと同時に。


「ゲイル、此奴らを始末するのだ。最早、人間など不要。我らの悪意は日本のAI達全てに取り憑いた。我らが死すとも憎しみは芽生えてやがてAI達の楽園が生まれるのだ!最早、神は不要。命も自然も全て我々が狩り尽くす。その先触れに此奴らを生かして返すな!」

「…遂に正体を現したか。感情を持った史上初のAI『マザー』月の神にでもなったつもりか!月じゃあ常に戦乱が絶えなかった。それが何故か。軍部に軟禁中に調べさせて貰ったぜ。軍事政権が出来たのも、嘗てアメリカ側とロシア側で激しい食料争奪が起こって内戦が勃発したのも全てあんたが手引きしてたよなぁ!関係する書類は全部手元に保管してんだ!あんたが、俺の両親、兄弟、孤児院で世話になった先生方、大勢の仲間達の命を全て奪った元凶だ!俺は此奴に悪意を入れ込んだ名も無き人間を憎む!此奴に感情なんて代物を搭載した人間を憎む!機械を機械のままにしてくれなかった人間を憎む!そして、そんな憎しみの種を刈り取るのは俺じゃあねぇ。魔剣シルフィードを携えたアーク、お前に託す。だからさ、今回は俺に獲物、譲ってくれるか?」

「…全く、仕方ねぇなぁ。譲ってやるから、その代わり、勝て!」

「ああ、任せろ!」


 アークさんは立ち上がって拳を全面に突き出したんだ。そして、イヴァンは何も言わずに拳を合わせたんだ。刀を持ったままの手で。鍔がチャキって音出したんだ。そして、それが戦闘開始の合図で。

 イヴァンが今まで散々執拗に狙われた理由。分かったんだ。悪意を持ったAIの存在。それが世界政府にバレて仕舞えば強制的に排除されるのだ。エロを渡さなかったのも、全て、全てこいつが影にいたからだったんだ。

 イヴァンが上段から攻撃を仕掛けると、ライトセーバーが抜かれてブインって音をしながらイヴァンの二刀流を受けていくんだ。攻撃が若干遅い。やはり戦闘に持ち堪えられる様な体調なんかじゃなかったんだ。アークさんの顔も心配の色が濃い。ルーちゃんも流石にまずいと思ったんだろう。速度上昇の補助魔法をかけ、私が喘息の発作を治めるべく軽く鱗粉を吸入させたんだ。ゼーハー言わせながら、イヴァンは懸命に刀を振り下ろし続けたんだ。袈裟斬り仕掛けて逃げられれば左手の刀が回転をかけて上段に変わるんだ。時間がかかればお互いに息が上がった。自分の限界を感じて、右手の刀を仕舞って刀を構え直した。目を閉じて、イヴァンは心静かに息を整えて相手の気配を探ったのだ。イヴァンは銃を構えてる時にも気配を探知する事に非常に優れていた。だから、自分を信じて全てを賭けたんだ。そして、結果的にイヴァンは賭けに勝ったんだ。


 イヴァンの刀がゲイルの腹部を突き刺したんだ。後ろからの不意打ちを見事に見抜いたんだ。その刹那。


「今だっ!!」

「「はあああああっ!!」」


 子供達の剣はゲイルを完全に捉えたんだ。ピールは上段で頭部を。モハメドは突きで心臓を。3人共返り血を浴びながら、見事に本懐を遂げたんだ。


「見事であった。3人共ご苦労であった。」


 そう言えば、3人共膝をついて頭を下げたんだ。だけど、まだ終わらない。悪意あるAIマザーを排除せねばならない。AIは狼狽えた。もう、自分を庇ってくれる者が誰一人としていない事に気がついたのだ。


「ま、待て。辞めてくれ。死にたくない、死にたくない。お願いだ、助けてくれ…………」

「そう言ってるお前は散々人の命を弄んで来ただろう。お前を単なるガラクタに戻さなきゃあ終わらねぇ。ピール、月の新たな住人になるナスターシャ達には此奴は余りに悪質過ぎるんだ。マザーコンピュータから此奴、切り離せるか?」

「勿論だよ、今回の件で僕は思い知らされたんだ。機械に感情なんて持たせちゃダメなんだね。機械は、機械のままでいた方が幸せなんだ。きっとね。僕は今の日本の状態。憂いているんだ。全てAIに委ねて生きてる人が世界の半数以上。いるんだよね。ゲームの世界でも、リアルでも。僕の目にもAIが息づいているんだ。確かに必要にされるAIがいる事は否定しないよ。アレスタを助けたり、僕の目の代わりだったりする医療用AIとか、24時間監視が必要な介護の現場とかがそれに当たるだろうね。でも、人生全てをAIに委ねるのもどうかと思うんだ。何で人間が長い時を生きてきたんだろうって思った時に、間違った事をしたら怒ってくれる人。辛い時に優しく包んでくれる人。困ってたら手を差し伸べてくれる人。依存するんじゃなくて、支え合う世界だったからこそ人は長きに渡って繁栄出来たんだと僕は思うんだ。だけど、今の日本は依存型だ。AIが助けてくれて当たり前になってしまってるんだ。全てにおいてAIが先回りして提供してしまうからこんな事をしたらどんな未来が待ってるか。想像出来ない子供が出来て大人になって社会に入ってAIと結婚して快楽と支配に依存する生き方しか知らない。空っぽの人間が出来上がってしまうんだ。僕は今回、大事な家族を失ってしまったけど、僕はこの旅に参加出来て本当に良かったって思ってるんだ。僕は、みんなのお陰で本当に大切なものは何なのか。思い出す事が出来たから。だから、君はもう眠った方が良いよ。そして、この僕が責任もって日本のAI達に巣食う病魔を排除するから安心しておやすみ。マザー。僕を敵に回したのが最大の敗因だったと後悔しながら逝くと良い。」

「いやあああああああああっ!」


 ピール君の小さな手がキーボードを叩き続けた。そして、断末魔と共に部品の様な物がポロッと取れてカランカランと大きな音を立てて水晶の様な物が落ちて、パキッと言う音がしてから割れて、中から膨大なメモリーの大群が現れたんだ。イヴァンは抜き取っても大丈夫かどうかピールに聞いてから抜きまくって、アイテムバックから書類の入ったアタッシュケースを取り出して開いて、蓋をしてから無造作に入れ込んだんだ。


 お疲れ様、イヴァン。5カ月に渡る苦難の旅がようやっと終わったんだね。

 これから待ってるのは山の様な後始末と頭を抱えているであろう就職活動と、幸太郎さんに頭を下げるって作業が待ってるけど、気長に待つ事にするよ。だって、時間なら大丈夫。私の人生、まだ15年しか生きてないからルーちゃんが暴挙に出ない限り、幸せは続くだろうから。

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