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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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総力戦。4

 滑走路に侵入してすぐに、敵兵達が待ち構えてたんだ。初手、ルーちゃんが滑走路全域を範囲内にして。


「ライトニング!!」


 って詠唱した途端、一斉に敵兵黒焦げにしてさ。パニックにしたんだ。モニターからは逃げ惑う兵士達が見え始めたんだ。ナスターシャさんがペンタゴンを範囲に指定して世界の理を地球に合わせてくれた。


 エドを初めとした守備隊にスペースシャトルの警護。任せたんだ。その頃にはアーリアさんの一言が利いたのか、エドも気持ち切り替えてたよ。ただ、指揮は流石に任せられない。その時に立候補したのは私同様、転移魔法を覚えているルーちゃんが名乗りを挙げてくれたんだ。いつもはエドの側に寄り添って、常に後ろを歩く様な。そんな控え目な人なんだが。


「此処は僕に任せて、気を付けて行ってらっしゃいませ。僕の皇帝陛下はこの様な所で挫けるお方でない事は僕が一番存じております。」


 そう言って、頬に接吻して来たんだ。本当に大事に。慈しみを込めて。抱き寄せられてなお、それぞれの旦那衆に挑戦するかの様な目をしてさ。今のルーちゃん、従軍中だから男性に化けてる訳で。


 もうさ、余りにも威風堂々としてるものだから、ときめきそうになったよ。危ないったらありゃしない。20cmの身長差も、抜きん出た美貌もあってさ。んで、耳許でサラッと。


「陛下。エルフの王にのみですが、認められてるんですよ。側室置く事。僕は以前からお慕い申し上げておりましたのでいつでもお召しになっても大丈夫ですからね。」


 って、爆弾をしれっと落としてくれた訳で。まぁ、エドがそんな事を許す筈が無いので、私をネタにして発破をかけたかったのかも知れない。後がどうなっても知らんぞ。ルーちゃん。



 お陰様で、目的地のペンタゴンの最奥地。マザーコンピュータルームまで順調に敵を倒しながら順調に進んでるんだ。だけどまぁ、気はそぞろなんだ。特にイヴァンが。ルーちゃんの爆弾。効きすぎたんだよ。イヴァンは父の記憶受け継いじゃってるからとうの昔に側室置けるの知ってたし、子供達の前の環境では第三夫人まで娶れていたってのもあって。非常に微妙な空気なんだよね。ミサトどうするんだろうって顔に書いてあるからさ。


「じゃあさ、全て終わってから相談しようね。みんな。それまでは目の前の事に集中してくれないと困る。」

「…分かった!柄にない事考えると碌な事無いからな。」

「変われば変わるもんだよなぁ。昔はさ、死ぬ事しか頭になかったのにさ!って、人の会話の邪魔すんな!」


 ってアークさんが魔剣シルフィードで前の敵を一掃すれば。


「そこなんですよね。本当に死んだからこそ自分の考えが間違っていた事に気がつけたのかもしれませんねって!」


 って言いながら最後尾を護衛する陸軍強襲部隊の司令塔、佐藤大尉が気配を敏感に察知して機銃掃射をかけていくんだ。さっきから戦闘行為は何一つしていない。この二人が全部倒してしまうから。ただ、イヴァンは最初からレーザーライフル銃持ってるから死角に気配を感じれば速かに狙撃してたし、強襲部隊の面々はどうも強者揃いだった様で、退路を確保する為に数名ずつ置きながら行っても問題なく進めたんだ。途中でさ。


「ちょっとあんたら。ピクニックに行く感覚で敵陣攻略するっておかしく無いか?」


 って声がかかって、影からぬっとアレクサが現れたんだよね。イヴァンがこれに応じるんだ。


「悪いな、これが俺たちの通常運転なんだよ!」

「…本当に前々から思ってた事だけど、危機感なさすぎなんだよ。」

「…それは私も具申したいぐらいだわ。初めまして、アレクサ。私はアーリア。宜しくね。」

「ぼくはアレクサ。ナイトメアなんだ。大将に報告するよ。月側の戦い。ぼくたち勝利したよ。後は此処を落とせば全て終わるんだ。酷いものだったよ。月の人々見たらぼくでさえ恵まれていた事を痛感したよ。」

「ご苦労様でした。アレクサ。じゃあ、此処からは…………」

「ああ、ぼくもご一緒させて貰うよ。ぼくもこの結末を見る権利出来たからね。」


 そう言って、機関銃を構えたんだ。しばらく離れていたけれど、すっかり見違える様に逞しくなったなって思ったけど、見た目アメリアさんの美貌を持つ男の娘なもんで、初対面のアーリアさん、女性と間違えてるかもしれない。スーツ着こなしてるし、こう見えて元マフィアなんだけどね。


 奥に進めば進む程、敵の数増えて来たんだ。そうなると、軽微な傷を私がヒールで直ぐに治すんだけど、ヒールで治せない人はスペースシャトルに送り返して。アメリアさんの回復魔法で治してからルーちゃんが送り返して来たんだ。流石にそこまでいくと会話する余裕なんて無くなったよ。アレクサが地元で調達した手榴弾をピンを抜いてから投げれば複数の敵が巻き込みを食らって吹き飛んだ。銃撃戦になれば前衛の私は後方に隠れてるしか無い。子供達も小さくなってた。それぞれの親の仇討ちたいから着いて来てるんだ。それでも、現実に起きてる殺し合いは子供達には衝撃的だったに違いない。


 銃撃戦は1時間位かかってた。伏兵。沢山いたんだ。本丸のコンピュータルームのすぐ手前まで辿り着いてたんだ。そして、飛び出した私達に機関銃が襲いかかったんだ。倒れた兵士が今際の際に引き金弾いて。その男はイヴァンが止め刺したけど、私たちの影から私の盾になってくれたのは影を操って大きめになったアレクサだったんだ。アレクサは腹部から腰を機銃掃射を受けて倒れてしまったんだ。


「アレクサ!しっかりして!」

「ぼくは良いからみんなは先に行って、ぼくの代わり……………お願い…………」


 そう言って目を閉じてしまったんだ。私は大慌てでスペースシャトルまで彼を送ったんだ。これが下半身不随になる呪いの正体だったんだ。そう思い起こすのにそう時間はかからなかったんだ。



「アレクサっ!!」


 スペースシャトルに転送されたのは腹部から腰にかけて機銃掃射を受けて、陛下の魔法で転送されたアレクサって青年。見た目は完全にアメリアさんに瓜二つで、背が小さいのもあって女性かって程の美貌を持つ。アメリアさんの実の兄さんだったんだ。下半身不随の呪いの正体。これだったんだ。アメリアさん。目に涙をいっぱい溜めて。


「兄さん!そんな…逝ってはなりません!今すぐ…………」


 アメリアさんの魔法を血にまみれた人差し指をアメリアさんの口に当てて、アレクサ君は詠唱を止めたんだ。アレクサ君は。


「ぼくの為にアメリアの崇高な魔法を使わせる訳にはいかないんだ。このまま、死なせて…………」

「馬鹿野郎!誰が許すか、そんな事っ!」


 幸太郎さんがアレクサ君を血塗れになるのも構わず抱きしめたんだ。僕も準備を始めようとしたんだけど。


「ぼくは、ヤク中なんだ。ぼくが生きてても幸太郎の足枷にしかなり得ない。……………ぼくの最期のお願い…聞いてくれよっ、みんな…………」

「…………」


 報告書でアレクサ君の壮絶な生き様は知ってたよ。生きる為に壊れないといけなかった子だ。僕は黙々と作業を再開したんだ。どんな経歴があったって、僕は医者なんだ。目の前の消えそうな命を見殺しにするなんて、医者の名折れなんだよ!僕が助ける気満々だったの知ってるんだろうな。幸太郎さんが、僕が用意した生命維持装置に問答無用で入れてくれたんだ。そしてね。こう言ってくれたんだ。


「アレクサ、お前が俺の事を思ってくれてるのは良くわかった。でもな、これだけは言っておくぜ。子供ってのはな、親より先に死ぬもんじゃあねぇ!同じ生きるなら精一杯生きて、幸せ掴んでから死ね!そうしてくれたら俺だって納得するからさ。んじゃ、先生。宜しくお願いします。」

「分かりました。最善を尽くします。初めまして、アレクサ君。僕は勅使河原 樹。医者なんだ。君の希望を聞いておいてなんだけどね、医者が目の前で倒れてる人を見殺しにするなんてまず有り得ないからね。ただ、下半身不随の預言の正体。これだったみたいでね。今から手術してみるけど、神経やられてたら二度と立てない。でも、僕はこれでも日本じゃ救命救急医だからさ。何が何でも助けて見せるから!」

「…………」


 僕はさっとカプセル閉めてやったよ。どうも抗議してるみたいだけど、親御さんである幸太郎さんがそう言ってるんだ。治療しないって選択肢無いからね。何時間で終わるか分からないけれど、損傷具合を確認する為にちょっと黙って頂こうと思って脊髄に麻酔かけて眠って頂いたよ。酸素マスクしてからヒールウォーターの水でカプセル内部を水で埋めて両腕に点滴の処置を施したんだ。僕の医者としての戦いは始まったばかりだ。医療用AIを起動して、患者のデータを起こして、精密検査して、損傷具合を特定した。パソコンを開いてデーターを受信して医療用AIに風穴が開いた臓器の修復作業をさせる傍ら、僕はズタズタに寸断された神経を接続する手術をする事にしたんだ。幸いなのは、カプセルが完全に顔以外見えない様にしてるから此処にいても普通に手術出来るし休憩も挟めたんだ。だけど、地球に着く前に終わらせたいから作業急ぐ事にしたんだ。

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