総力戦。3
「…報告します。本日1027時。イギリス型強襲戦艦フェニックス。友軍を救出すべく超弩級空母アスロンに特攻を敢行。玉砕を確認しました。竹田艦長はこれにより生命反応無く、戦死なさいました事をご報告します。」
「…ご苦労であった。あの憎まれ口がもう聞けぬのは寂しい限りだが、今はまだ戦闘中である。全軍に竹田大将の死亡を通告。みかさもこれより特攻し、竹田の本懐遂げて見せようぞ!全艦に告ぐ!竹田大将が作ったこの好機。無駄にする事は許さぬ!完膚無きまでに月残存艦隊を駆逐する!竹田の遺志を継ぎ、勇者達を月へと送り出す!勇気有る者は我に続け!」
「了解!通告書全軍に発布します。」
エドが流石に応えていたのか竹田大将の死を悼んで涙を流してた。竹田艦長。エドが新兵の頃からの付き合いって言ってたからね。多分、こうなるって分かってたんだ。無駄話と称して気をつける様に注意を促したんだな。ルーちゃんにも沈痛な顔が浮かんでいたんだ。私は耳元でエドをブリッジから連れ出して少し様子を見るように伝えると、敬礼の後にエドを引き連れてブリッジを離れたんだ。みかさのAIが敵艦を認識して砲撃を加えている様子を見つめてたんだ。悪い大人の見本みたいな人だったが、愛嬌のあるお方だった。一緒にいた時期が短かったが、エドが振り回されると言う稀有なお方だったからか。楽しい人だったなぁ。って思った。もっと一杯話したかった。後悔ばかりが先に立つが今は泣いちゃダメだと自分自身に喝を入れ直したんだ。
「陛下は実に落ち着いた行動をなさる。これで日本の常識で成人前って言うのが信じられない程だよ。」
「お褒めに預かり光栄の至り。なれど、今はこの戦いが終息する事を願っているのです。竹田大将は先の先までお読みになられ、危地にあった友軍を救われました。ですが、我々の戦いはまだまだ続きます。竹田大将に恥じない様に自分を律し、イヴァンが願った月の民の救出が終わるその日まで私には泣く事は許されていないのです。」
「……………流石にジーク殿の御息女と言った所だ。貴殿もエドワードの事が気になるであろう。行って様子を見て来るが良い。戦闘なら時期に終息しよう。AIが相手の行動を思考するから沈む事はないからな。」
「……………失礼します。」
そう言って、一礼してからブリッジを退出させていただいた。通りがかった人に聞けば何だか倉庫に連れ込んでるって言ってるからさ。頭抱えたよ。まさかのつまみ食いに走ったのかと思って言われた場所に行けば本当につまみ食いの一歩手前だったんで、流石に二人とも竹田大将が遺品として持たせてくれた指揮棒でぶっ叩かせて頂いたよ。思いっきりね。流石に割れると思ったが、随分と硬い素材で出来てる様でビクともしなかったよ。二人して余りの痛さに蹲ってね。私は説教を始める事にしたんだ。
「エドワード、ルーベルト。竹田大将に説教されたばかりだったでしょう?今、こんな事をしてる場合ですか!」
「……………申し訳ありませんでした。陛下。僕がエドを癒して差し上げたくて。」
「…そんな事だろうとは思いました。そなたは優しすぎるから。ですが、今は空気読んで下さいますか?ルーベルト中将。エドワード中将。竹田大将の遺命を伝えます。今後の指揮はエドワード中将に任せる。との仰せです。これは退艦前に竹田大将から預けられた品々です。お受け取りを。そして、今は何を為さねばならないのか。思い出して下さい。こんな事をしてても竹田大将。喜ばれないですよ。」
「……………二人とも済まない。今は、僕がしっかりしなきゃいけなかったんだな。ちょっと顔を洗ってくるよ。二人とも先にスペースシャトルに戻っていてくれないであろうか。それと、フェニックスが爆散した地域に竹田大将の遺留品残ってないかイヴァン博士に連絡を入れておいて貰えないであろうか?ご遺体は絶望的だが、何かしら残っていれば母国日本に届けて差し上げたい。」
「了解しました。さくように入電入れますね。」
「宜しく頼む。」
「…………」
私は、携帯で持たされている連絡ツールを出して、船舶番号を入力してさくようにエドの指示を入電したんだ。返答はバイソンさんからで。
「指示の件、了解した。なれど、現在も戦闘が続いている空域の為に回収は困難。戦闘終息次第、最優先で捜索に当たる。」
との事だった。それから戦闘終了に至るまでに時間がかかった。作戦終了が流れたのはそこから1時間以上過ぎてからだった。1246時を持って作戦が終了した。被害状態が明らかになった。世界政府側の被害は戦死者13名、負傷者269名。AIがあるから撃沈しないと豪語してた日本軍からも被害出てしまってたんだ。幾らメテオストライクで削ったとしても、元々、1隻のノルマが25隻って非常識な量なのを魔法で削ったが、残ったのは2割で、しかもそれでも相手の方が多かったんだ。戦艦も被害激しかったよ。みんな壊れてない箇所なんてどこも無い位の激戦を制したんだ。旗艦であるみかさも例外ではなくこのまま大気圏突っ込んだら間違いなく燃え尽きるってレベルの損傷だったんで、さくように横付けして現在も修理中なんだ。
さくようからイヴァンとバイソンさんも合流して来たんだ。月に突入する為には元住民のイヴァンの情報が必要だったからだ。先程、怒ったのも効いたのか表面上は落ち着いてる風には思えるんだ。だけど、自分の家族が亡くなった時以上に悲しかったんだろう。目は少々泣き腫らしてた。
「1400時に基地突入を敢行する。それまでに準備をお願いしたい。樹先生は医療道具全て回収出来たのであろうか?」
「それに関しては問題無いよ。偵察任務来た時に、ひょっとしたら万が一って事もあるから解体しておけって艦長から指示が来たからお陰様で持ち出せたんだ。まさか、宮様が壮絶な最期を遂げられるなんて思いもよらなかったんだ。」
「…………」
みんなの表情は暗いんだ。だけど、此処で立ち止まってはいけないからさ。
「月に……………行くよ。みんな。竹田艦長が作った好機。逃しちゃいけないんだ。月の民の命を守って地球に帰還させる。私達の目的をちゃんと果たして。竹田艦長安心させてあげたいんだ。」
「ミサト。」
「…………」
するとね、エドが受け取った筈の指揮棒を私に差し出して来たんだ。この指揮棒。取手の所に「竹田宮」って書かれてあったんだ。エドが消え入りそうな声で。
「今の僕に現場の指揮は無理です。皇帝陛下。本当に…申し訳ありません。」
「無理もありません。随分と大事にして頂いたんでしょう。ですが、今は預かるだけです。竹田艦長がエドにって言付けた物を私は何時迄も持ち続けるつもりはありませんよ。」
「ありがとう…ございます…………」
そう言って、目頭を抑えたんだ。きっと、今日のエド。失意のどん底にあって冷静な判断出来ないんだ。ルーちゃんがエドを抱き寄せて頭撫でてたよ。既に月艦隊が撃破された事は月の民衆達に伝わってるんだ。なので民衆も蜂起をしてるから余り悠長に構えている訳にはいかなかったんだ。
「みんな、出発するよ。アーリアさん。スペースシャトルの運転任せるよ。急遽で申し訳ないけど、大丈夫?」
「ええ、マニュアル一通り読んできてるから大丈夫よ。」
「イヴァンはサブパイロットで。モハメドはコントロールパネルの操作、ピールは遠隔から月のシステムを奪取出来る?」
「了解した。」
「任せて。姉上様。」
「陛下、僕頑張る。」
3人とも良い返事だ。手順は前々からエド達と練っていたから。ただ、今回エドとルーちゃん。外さないと。ルーちゃんは大丈夫だと思うが、エドが戦闘開始する迄に復帰しそうにはない。こんな事は想定外だったが致し方なかった。
「月に到着後、強襲部隊はスペースシャトルの護衛と攻略班に分けて貰えますか?班分けは事前に通達した通りで。そこに今回エド、ルーちゃん、リンちゃん。申し訳ないけど加わって貰うね。」
エドは無言だが、リンちゃんもルーちゃんもは首を縦に振ったんだ。この二人も分かってたんだ。今のエドが一番危険なのが。まぁ、攻略班の方が多めの布陣にはしてる。このメンバーでイレギュラー起きるのが想定出来ていたからなんだ。
「残りのメンバーでペンタゴン最奥地、マザーコンピュータルームまで目指す。ナスターシャさんはペンタゴンにザ・ワールドを詠唱して地球と同じ重力に変換してください。」
「分かったわ。この時の為にあたしは呼ばれたけど。詠唱後は眠らざるを得ない。護衛の方々の奮起をお願いするわね。」
「バイソンさんはパイロットルームでいつでも離陸出来る様にしておいて。幸太郎さん、ミラさん、アメリアさん、樹先生は此処でナスターシャさん見てて。後、道中での負傷者は私が責任もって此処に転送するから状態によって判断して欲しい。アークさんには先陣で突入して貰うけど大丈夫よね。」
「ああ、任せておけ。部隊長の佐藤さんとは打ち合わせを済ませてる。本当だったら一緒に戦うはずだったエド達の代わりに誰を回すつもりかは知らんが。」
「それだったら、イヴァンとアーリアさんにお願いするつもりよ。イヴァンが激しい動きを禁じられてるのは勿論、承知しているわ。だけどね、軍人である彼はペンタゴンの内部の事を良く知ってる立場にあるの。道案内にこれ程適した人いないの。イヴァンを連れて行く理由がもう一つあってね。私、一緒に旅して来たから良く知ってるんだ。イヴァンの戦闘で群を抜いて凄いのは銃器類の扱いにあるの。狙撃させても普通に拳銃使わせても、彼が獲物を外した事はこれまで一度も無いの。剣を使わせるつもりは毛頭無いの。そして、アーリアさんはパイロットである前に軍人だから急遽差し替えても問題無い。異論は無いわね?」
「僕の意見としては正直言って致し方無いって所か。でもね、イヴァン博士には後がないって言うのだけは言っておくよ。何で、シールドの魔法袋。大量に用意してあげてくれないか?」
「ルーちゃん、お願いして大丈夫?イヴァンだけじゃなくて、アーリアさんの分も。」
「…陛下の仰せのままに。」
「私に関しても問題無いわね。ただね、一言だけ言わせて頂いても良い?エドワード中将。あなた、何の覚悟も無く戦場に立ってたって訳じゃ無いでしょう?悲しいのはみんな一緒なの。戦いはまだ終わってさえもいないの。しっかりしなさいよ!」
そうしたらね、エド。何かを悟った様でね。涙を袖で拭いてから。ただ一言だけ。
「そなたに感謝を。」
って、ぼそっと呟いたんだ。この後、みんな私の指示で動いてくれて時間通りに発進した。何の不具合も起こる事無くペンタゴンの滑走路内に侵入する事に成功したんだ。




