月へと至る道を往く。2
作戦会議が終了して翌朝0800時に全軍に出撃命令が下されたんだ。それまでみんな思い思いに時間を過ごす事になったんだ。私達は子供達を連れて屋久島に山登りに出かけたんだ。だけど、最後に山登ってから1週間程しか経ってないのに、屋久島の自然。完全に死滅してしまってたんだ。水は枯れて草も少々赤茶けていて。屋久杉もただの木屑に変わってしまってたんだ。
日本という国を魔法で強制的に持ち上げたから魔法で自然の保全してたんだ。その魔法が消えれば全ての自然は死に至るのだ。流石にね、山登る気失せちゃってね。
なんで、屋久島の自宅に戻ってみんなで晩餐囲んだんだ。幸太郎さんにも短い間だったけどもう、不毛の地に住みたくないんだって正直に話して屋久島の実情を話せば、終戦後にまとめて引き払うから。掃除だけはしとけよってお達しで。予め、必要じゃない物は魔法で撤去してからイヴァンが子供達と一緒に掃除してくれたんだ。インターネット開けば屋久島の自然が死滅したニュースで溢れかえってたんだ。今度は自分達って分かってるからか、今後は配給制に戻すかもしれないんだそうだ。来年から水も食料も全てにおいて輸入って手段に頼らざるを得ないが、イギリスもオーストラリアも難色を示してるんだそうだ。
理由はね、日本からの移民がどの位の規模になるのか。読めないからなんだって。そりゃあ、そうだよなぁ。世界の人口の半分が住んでる人類の方舟からの移民になるんだ。その殆どがカプセルの中に収納されてゲームの中で人生を謳歌してるんだけどね。地上で生きる道を選択した人の中で。と簡単に言うが、大都市圏の人口なんて超過密状態で億単位の人口にもなれば人力での管理は最早不可能だ。元のAI導入の経緯はそんな感じだ。今は、人がやりたがらない仕事全てAI達の仕事だ。出生から墓場に至るまで。人間を支配するのも、取り締まるのも、裁くのも、子育てから教育。介護に至るまで。ちょっと話が脱線したがそんな中でも機械任せにせず、普通に育ててくれた父には感謝してる位なんだ。母の介護ですら自らの手で。本当に凄い人だったんだなぁって思い返すんだ。
そして、その引っ越し連鎖のせいでお人好しのルーちゃんは幸太郎さん家とアーリアさん家、宮様が住まう御所とまぁ、散々こき使われたんだ。ルーちゃん自体はなんて事無い。魔法で引っ越しを5分で完璧に済ませてしまうから。収納袋が無ければ鞄を予め何個か購入していたのを魔法でアイテムバック化して左手鳴らせばハイ、終わり。みたいな感じなんだ。ただ、最初の2件と違って御所は持って行って良いものとそうじゃないものがある上に、広いから掃除も大変で。職員達は宮様が戻って来たら慰留を求める気満々だったから宮様戦力どころかお邪魔虫で。結局、ご自分の私物のみを持って出る事になさった様で。仕込んだお酒と種籾も持ち出したんだ。当然だが、引っ越し組全員での移動になったんだがこれにエドまで駆り出される羽目になったんだ。宮様、在ろう事か。イギリス皇太子殿下こき使う気満々だったんだよね。当然ながら大慌てで職員が取り成して、茶菓子で接待しようとしたんだが。
「…そなた達が御せる様なお相手じゃないのはそなた達が一番良く知ってるであろう?幸いなのは、宮様が移住先をオーストラリアにしてくれた事だ。宮様がイギリスに来た日には国王になってもこき使われそうだったからどうしようかと思っていたよ。この戦い終わったら退役されるみたいだし、そうなれば流石に一般人を顔パスで通す人なんていないから、僕の今後を思ってくれるなら宮様の望み。叶えて差し上げて欲しいんだ。」
そう言って職員さんに言い含めてから引っ越し。手伝ったそうなんだ。結局、これが決定打になって宮様は晴れて自由を勝ち取られたんだ。
日本のエルフ大使館。私の指示を受けて昨日をもって閉館になったんだ。連日、日本政府の遣いの方が皇帝陛下にエルフ達住まわしてるんだから恩恵復活させろって迫って来てて筆頭大使だったアルベルトさん。一体何様だと頭に来てて、地獄の黙示録を悪意を持って公表されたのを機に日本全国に散らばっていたエルフ達に命令を下して大挙して移り住む事にしたんだ。移動先は2箇所。学校がある子供達を持つ家庭はローグフェルグへ。それ以外はアーニャさんが管理しているセレネティア大陸へ。ルーちゃんと私で手分けして移って頂いたんだ。昨日、時間のある内にね。アルベルトさんは喜んでいた。年老いた妻の事。気にしていたから。今後、セレネティアの事は彼に一任してた。秘匿されてる地故にセレネティアの事は明かせないので、みんなローグフェルグに移住してますって事で報告したんだ。世界政府に。結果、日本にはエルフが一人もいなくなったんだ。説得という名の強要が不発に終わったんだ。次は世界政府に提訴してでも自分達の都合に良い事を要求するんだろうな。そう思うと非常に頭が痛かったが、日本の滅びの序曲はまだ始まったばかりだ。長い時を生きる私はただ、見守るしかない。自然が死ぬという事は、神が死ぬと同義だ。日本には嘗て沢山の神がいた。だが、時代と共に人々は神々の事を忘れていったのだ。信仰がなくなれば淘汰されるのは必然で。だからこそ、日本の神々は人徳のある幸太郎さんに白羽の矢を立てたのかもしれない。
ちょっと話が脱線したが、他に何かあったかな。ああ、そうだ。イヴァン、相変わらず無職のままなんだけど移民申請と同時にピールの保護者になる為に養子縁組したんだ。モハメドはアーリア空軍大尉が同様の手続きしてくれたんだ。本当なら入籍したかったけど、年齢足らなかったんだ。幸太郎さんも定職って言ってた位だ。その辺は守る事にしたんだ。その代わり、私は彼らに祝福を与えたんだ。成人するまでは成長するけど、その後は私と寿命が変わらず。年取らないんだ。眷属にしたのには理由があった。今後、世界政府がAIに乗っ取られた時に色々準備しないといけないからだ。預言を紐解けば300年も経てば世界政府は機能しなくなるからだ。そうなると、恭順しながら軍備を整える必要に迫られるんだ。そして、彼らが別々の家庭に引き取られたのも。
「全てはピール様の為に。花嫁を選ぶのも僕の役目ですから。」
ってモハメドが言い出したからだったんだよね。籍こそ別々にしたけど離れる気は一切無い様で。
なんで、二人とも実質私が育てる様な形になりそうなんだよね。アーリア空軍大尉もざっくばらんな人で大笑いしてね。
「でも、私も任務に駆り出されたら正直言って子育てどころではない。養育費は毎月払うから宜しく!」
って感じだったんだ。アーリア空軍大尉は独身なんだけどね、ルーちゃんに告白する前にエドに掻っ攫われたそうで、諦めるしか無かったんだよね。でもね、立ち直るのも物凄く早くてね。旦那エルフが良いから若いままにしておいてくれると嬉しいなって事だったんでミラさんとセットで眷属に招き入れたんだ。エルフと合コンセッティングは知り合い居ないからと断ったけども、イヴァンに出会いあるか聞いたら。
「ああ、あるぞ。出会いなら。ルーの血族だなぁ。出会いの席は葬式だなぁ。アーニャさんの介護にアルベルトさん奮起するんだが責任感強いから無理がたたってアーニャさんより先にアルベルトさんの方がお亡くなりになってしまうんだ。まぁ、そのまま置いておいてもルーは既にイギリスの姫君だ。見れないのが分かっているからアルベルトさんはアーニャさんも一緒に連れて行くんだが、ルーの後を追ってエルフで軍籍を取ったものがいてそいつ、任務の都合で葬式に遅れてくるんだよ。ルーから見たら従兄弟に当たるその男が運命の相手だな。葬式はローグフェルグで執り行うから葬式中に喧嘩しだしたらアーリアに出会いが訪れたって事だ。」
まぁ、葬式で出会いがあるって言われても嬉しくないと思うからその内あるんじゃないかなぁって濁しておいた。
夜になって、子供達が寝付いたら大人の時間が待っていたよ。明日、別々に出陣するからね。イヴァン、名残が尽きなかった様なんだ。執拗に、拙速に蹂躙するそれはまるでイヴァンの本心が現れたかの様だったんだ。離れたくない。離したくない。そんな言葉を口にしながら沢山抱いてくれたんだ。そして。
「何かあったら必ず呼ぶんだ。俺は、お前に危機が迫れば何を置いてでも必ず駆けつけるから。この事は誰にも言うな。言えば全員総出で止められる事請け合いだからな!」
そして、約束するまで追い立てるんだよ。彼。私も彼が戦場に立てるだけの体力無いって知ってるから粘ったんだけどね。彼の本気を前にして、降参せざるを得なかったんだ。
朝になって。早起きしてね。ご飯食べてから全て片付けたんだ。本当に滞在期間が短かったけど、自然豊かだった筈の屋久島に別れ告げたんだ。学校には退学届出して来た。戦闘機の弁償も支払いを済ませた。後顧の憂い。無くなったんだ。学校。大好きになってたからこの先足を運ぶ事も無くなるのかと思うと残念でならなかったんだ。種子島宇宙センターに行けば直ぐに乗船の指示が飛んで別れを惜しむ間も無くイヴァンに見送られてフェニックスに乗り込んだんだ。竹田宮改め竹田艦長の
「抜錨っ!」
の合図で私達を先頭に戦艦達は続々と飛び立って行くんだ。私達の運命の戦いは幕開けしようとしてたんだ。




