氷解。2
私はリンちゃんにタブレットで世界政府から直接入金されてる口座を閲覧させて貰ったよ。初めて見たよ。残金が京の位を示すのって。年に1回の入金額を見て驚いたよ。桁が恐ろしくて、両手で数える程だったんだよね。今年に限っては逝去に合わせて退職金なんてのもあったんだ。そこから各地域のエルフ大使館に年に1回予算に応じて支給されていて、それぞれ適正な運営をされていたんだ。勿論、私個人宛が振込先になってるのもあったので。
「要は、この振込額で賄える程度なら雇えるって事で間違いないのか。」
「そう。但し、この口座も含めて全てAIが管理してるの。ジーク様も生前、これが本来のAIの使い方であって、AIに支配を委ねるなんて馬鹿げている。って良く言われてたわ。結局、日本国民は政治家がしょっちゅう起こす汚職の数々に辟易してAIが支配する社会を構築してしまったけれど、後々の預言を知ってるワタシにしてみればそれはとんでもない間違いだったんじゃないか。そんな気がしてならないのよ。」
「…………」
「まぁ、話戻すけど、雇用契約に関しては100人以上常時雇ってても問題ない程度のお金の自由があるから大丈夫よ。まぁ、ミサトちゃんの堅実な性格なら無駄使いもないでしょう。イヴァン博士ってイレギュラーも確かにあるんだけどね。現在、無職なんだけど、大丈夫なのかしらね。博士。」
「んじゃ、アーリア空軍大尉の件は承諾するよ。ピールやモハメドも会いたがっていると思うから。んで、話変わるけど、イヴァン無職なの?」
「あら、そうじゃない。世界政府で最重要人物って言う理由で保護はされてるけどね。月の軍部を脱走している所謂お尋ね者を匿ってるってだけだから無職以外の何者でもないわね。宇宙工学の博士号を修得してるだけでどこぞの大学で教鞭を取ってる訳じゃあるまいし。」
「そう言う事なら結婚承諾する訳にゃあいかねぇな!」
「幸太郎さん。どうして?」
「どうしてって。当たり前だろうが。無職のプーさんに大事な娘やれる程、俺は奇特じゃねぇ!」
そう言って幸太郎さんは笑うんだ。そりゃあそうか。幸太郎さんと養子縁組した特典ってこれだったかって思ったよ。だけど、それならアークさんも該当しないかと思うんだけどと思い。
「アークさんもイヴァン同様お尋ね者なんじゃないの?」
「それに関しては手続きした僕が説明するのが手っ取り早い。アークさんは結婚に際して一番に心配したのが奥さんを専業主婦状態でいさせてあげられる程度の収入が得られるかって点だったんだよね。なんで、僕が雇用したんだ。ルーの専属SPとしてね。なんで、今はイギリスから臨時で給与。出てるんだ。でも、戦後になるとね。国が保護って観点からいくと爵位与えて城を構えて貰って僕の家同様の規模の護衛。必要になってくるんだよね。僕の家は幸いな事にイギリス国民が献身的に支えてくれてるから何とかなるけどね。ぽっと出のアークの家までイギリスは負担出来ないんだ。流石にね。なんで、出来れば陛下の方でアークの家の経費諸々受け持って頂けると非常に助かるんだ。土地等の買収とかはこちらで進めているからね。」
「まぁ、アーク夫妻を保護していただいてる以上はそれ相当の負担は当然こちらで受け持つべきだと考えますが、費用等は誰に持って行けば良いのかさっぱり。」
「それこそ、終戦後の話になるんだからピール君に相談すれば良いんではなくて?」
「それもそっかぁ。」
そう言って、笑いながら子供達の所に戻ったんだ。子供達二人は余程不安だったのか。泣きそうな顔をしてたんだ。空気の層を作ってご飯を広げられる様にしたんだ。水で濡れてた体は魔法でサッと乾かした。子供達が。
「姉上様っ!」
「陛下っ!」
って言ったと思ったら二人共泣き出しちゃったんだ。私の腕の中で。精一杯強がっちゃいたけどね。そこはやはり10歳の子供達なんだと思うとね。愛おしいとさえ思ってね。落ち着くまでずっと抱きしめてね。私はこの子達の心が癒されます様にとお願いしたんだ。それと同時に脅しもかけておいたのだ。本州を10数㎝下にこっそり落としておいたのだ。人にはちょっとだけふわっと感じる程度だ。だが、AIが本州だけが下に落ちた意味をどう読むか。見ものだ。
その日、ご飯を食べてから子供達が望んだ事は絵本を読む事だった。小さい頃から大人として生きる事を望まれた子供達は子供らしい事に飢えていた。流石にアイテムバックを預けていて手持ちも無く。幸太郎さんにお願いする事にしたんだ。一つは絵本を数冊。子供達のリクエストの本を探して欲しい。そしてもう一つは世界政府の手が一切入らない形でiPadを暫定で申し訳ないが20台手配して欲しい。理由を問われ。
「今回の件で、ひょっとしたら仲間同士で気軽に見える形で声をかける事が出来れば子供達の心の糸口掴めたかもしれないなって思ったんだ。イヴァンが私が友達を探すキッカケになればと願って用意してくれてたから、私もそれに倣ってみようって考えたんだ。台数多いのはみんなにも気軽に参加して貰おうって思ったからなんだ。」
「成る程な、でも、そんだけ台数多いと企業名か団体名かが必要になるがどうしようか?」
「それならば、こう名乗ると宜しいでしょう。『ローグフェルグ皇国』と。」
「ちょっと待て。アメリア。世界政府が統括してる1つの世界で国名乗ったらどうなるか…………」
「世界政府も流石にそこまで馬鹿じゃありませんから今のローグフェルグが陛下の事を指す事位察します。陛下のご意思さえあれば簡単に幻の大地であっても国と認められるでしょう。何せ、今日本は大荒れの筈です。先程、こっそり本州の位置落としたでしょう。30cm程。」
「それ、本当か?」
「はい、紛れも無い事実でございますが。何か。」
「…………」
「瞬間で人の体感感じるだけの高度が下がれば民衆が思い出すのは先日のイギリス事案。その様な事がお出来になる陛下に弓引く者はいないのです。今頃は、本州では暴動が起きて世界政府も陛下のお怒りが本気であると悟るでしょう。そんな中で購入するんですよ。国を名乗って。いよいよ日本が見放されるとなればAI達が折れるのも時間の問題ですね。世界政府も幻の大地を国として認めてでも陛下の怒りを鎮めようとするでしょうね。」
「…本当に恐ろしい事を考えるなぁ。」
「その辺の悪知恵は父譲りなんでしょう。きっとね。そんな訳で明日早朝までに手配を宜しくお願いしますね。明日、ピールとモハメド誘って外でゲームで遊ぼうと思ってますから。」
「だけど、そうなるとここwi-hi無いから携帯型のルーター。何台か必要になるぞ。ついでに充電する施設も。日本じゃ当たり前に出来てもここではそう言う訳にはいかないんだ。どうすんだ?」
「んなら、俺が作ろうか?簡易発電施設。簡単なもので良ければな。」
そこにいたのは紛れも無いイヴァンだったんだ。あれって思った。するとね。
「悪いな、心配になって休憩がてら見に来たつもりだったが、立ち聞きするつもりは無かったんだ。面白そうな話してたんでついつい話に加わりそびれたんだ。ここなら普段から風が強いから風力発電なら即席でいけると思うんだ。」
「ええと、心配して頂けるのは非常に嬉しいんですが、仕事は?」
「ああ、強制的に取らされるんだ。睡眠時間。なんで、寝る前にって断ってからこっちに飛んできてな。ルーお手製の転移魔法付き魔法袋。残り回数3回だけどさ。これ託されたんだ。でだ。暴動中の秋葉原行ってiPadと携帯型ルーターを買い叩いて来てな?まぁ、契約後日にはさせて貰うが、今話題のエルフの女王様が御所望とあれば盗まれるよりか良いと売買に応じるだろうな。なんで、通常より安値で良い品手に入れられるかもな。んで、オーストラリアのジャンク屋で壊れた電動自動車と使えそうなの購入してからこっちに戻れば大丈夫さ!でも、発電施設作るのは直ぐには出来んが、フル充電してきてる発電機なら手元に持って来てるんだ。嘗てのエドみたく無断拝借してみたんだ。案外、バレないもんだな。」
「…………」
もうね、呆れてものが言えないのはこの事なんだが。
「んでもな、俺もあいつらが無邪気な笑顔見せて遊ぶ姿。見たいんだよな。何だかんだ言って。仕事遅れるのは申し訳ないと思うが、集中しているつもりでもやはりな。手が止まってしまうんだ。色々後悔ばかり募ってな。何で無理矢理にでも扉こじ開けてさ。抱きしめてやらなかったんだとな。もうな、色んなものを失って泣く姿見たくもなければ体験なんてもっとごめんだ!ミサト、約束破ってごめん。だが、やっぱりピール達放っておくなんて出来ねぇ。」
やっぱりイヴァンはイヴァンだったな。多分ね、自分が味わった境遇が戦時下で悲惨だったって事もあったからあの子達の事。気になってしょうがなかったんだね。
結局、言付け終わったら私は水牢に戻ってタブレット端末購入の話したら喜んでくれたんだ。流石に、充電環境がまだこれからって言うのもあって直ぐに遊べる話にはならないと分かると残念そうにしてたが、あの後、イヴァンが買い物全部終わらせて帰って来てから水牢に入って来ると子供達は喜んで出迎えてくれたんだ。子供達にしてみれば頼りになるお父さんって感じなのかもしれないなぁって思ったんだ。
楽しそうにこれからの話をして。子供達が寝静まれば二人だけの時間だが流石に子供の隣でするのも憚られて。結婚の事話したんだ。一応、私の誕生日はクリスマスなんだけどね。今のままじゃ結婚無理だって言って、理由は幸太郎さんがイヴァン無職だからダメって話してる事を伝えたんだ。するとね。
「そっかぁ、幸太郎はいい加減な事を嫌うからなぁ。やっぱりダメ出し食らったか。」
って意外にも至極当然だろうって顔をしたんだ。だけど。
「戦争終結させて諸々ゴタゴタが終わって再就職先見つけたら迎えに行く。幸太郎にしてみりゃ、日本でも成人迎える18歳まで待てよって言われかねんが、俺はこの子達。養子に迎えたいと思ってるからなるべく早く職。見つけたいんだよな。お前の誕生日が来るクリスマス迄に終戦持って行きたかったなぁ。」
そんなボヤキが本人の口から漏れたんだ。でも、こんな急転直下の形でイヴァンの再就職。見つかるとは想定すらしてなかったんだ。




