表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

#3.3『亜生命家電』

 売り物の、家電の様子がどうもおかしい。

 ハチスンは首をかしげた。

 一見では、変哲もない普通ではある。だが長年、これらを見てきた、ハチスンの“勘”までは誤魔化せなかった。仕入れた冷蔵庫も、電子レンジも、オーブンも、液体PCも、立体カメラも、全てが亜生命化していたのだ。ハチスンの目は、命を吹き込まれながらも、沈黙を貫き続ける。不気味な家電だけが写っていた。家電に命が宿るなど、それは寄生体も同じだ。


 洗濯機を軽くたたく。


──ゴン!


──ゴン!


──ゴン!


 叩かれた洗濯機に変化はなかった。体をよじったり、放電で攻撃したり、蓋が噛みついたり、はなかった。ただの、普通の家電。


「う~ん」


 命を感じるのだが、命としては振舞わない。

 無機物の亜生命化は、珍しいことではあるが、よくあることだ。

 前に亜生命化したのと会ったときには、放送局の機材が好き勝手に、ラジオ番組を作って電波に載せ続けていた。

 亜生命化した際には主張があるのだ。

 亜生命化しておきながら、家電そのものとしてしか振舞わないのは、ハチスンも初めて会った。


 丸椅子を引っ張ってきて、座り込む。

 ハチスンは、まっすぐ、視線の先に亜生命化した家電群を捕まえ続けた。

 そのうち、ボロをだすだろうという考えだ。

 ハチスンの意地だ。

 すっとぼけるのであれば、それが剥がれた瞬間に笑ってやろうというものだ。

 

 老眼鏡をかけ、足を組む。


 ポケットから取り出したのは、『凪のソラにて』という小説だ。紙は、昔と比べて随分と変わり、数枚の記憶結晶だけで本を構成している。かつての数百分の一の分厚さだ。本は、頭の中で読む。見るもの聞くものの楽しみ方は、『知っている過去』と比べれば、まるで変わったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ