#8『8850231・901・1252』
*8850231号車は、ゼノ殲滅のためホンコン・シティに投入された、■■■■■第5中隊の1両。
出鼻からの嫌な感じを、第5中隊の全員が共有していた。原因は、ホンコン・シティを通過する中で晒された住民の視線だ。
ゼノ汚染が報告されたのは、ホンコン・シティの下水道であるが、その直上では住民が生活を続けている。道路にでている住民が生活しているのだ。山のように高い建築物の窓から、カーテン越しに見つめてくるのだ。それは百や千ではなく、何十万という目が、第5中隊の車両群を監視し続けていた。
監視だ。
住民と軍の不仲、引いては惑星自治政治と軍隊の乖離は、第5中隊にだけ警告されているわけではない。第5中隊のゼノ滅殺者らは、わずかな不安を抱きながらも、ホンコン・シティ、下水区画の闇の中へと進む。
第5中隊は、異常に乾燥した下水区画の中で未確認ゼノ種と交戦を始める。聖なる炎が下水区画の闇を振り払い、酸素と肉を喰い尽くす。スクワイアガンの裂線があらゆる障害を削り倒す。ゼノの悲鳴が下水区画を木霊する。
ゼノは体長170cm前後、毛はなく、剥き出しの長い骨が尻尾代はりに、四足で走る。頭部は極めて肥大。両腕は鋭利に骨質化。胸部に補助的な小腕の発達あり。極めて単純な戦闘理念を使い、物量による集団突撃のみをもちいる。その衝撃力は強くあるも、スクワイアガンはこれらの敵こそ得意とし、第二波までの五千体を何ら問題なく殲滅する。
ゼノの群れに対して、中隊は錐のように突き進む。五時間に渡る戦闘が続く。流石のゼノも、この一方的な虐殺的被害に耐えかねたからか、第64波をもってゼノの肉波は第5中隊のオートセンス範囲から消える。このゼノの突撃による被害は極めて軽微であった。しかし想定異常のゼノ個体数をうけ、第5中隊は一時、地上へとの撤退を決断する。
大門前、武装市民の襲撃をうける。
先頭車両に6発の対装甲誘導弾が集中し、同車は妨害回避モードの誘導飛翔弾4発をアクティブディフェンスに成功するも、2発が命中。うち1発が装甲を完全に貫通したと思われ、完全に沈黙する。武装市民の猛射激しく、残弾の欠乏から、即座に強行突破を決断。武装市民の肉壁を突破する。
武装市民は、下水区画以外にも大量に湧き出し、走行中のボア戦闘歩兵車は絶えず攻撃に晒され続ける。殲滅車らの火器は今や。屠るべき強靭なゼノではなく、守る誓いをたてた脆弱な市民へと向けられる。皮下装甲や強化処置さえもほどこされていない敵に、殲滅者の火器は過剰なまでの効果を発揮する。だが市民は、その数こそを肉の壁とする狂気は崩れない。
脱出までの長い道のりで、第5中隊の車両へ損害出始める。高層建築物倒壊により、次々と潰される。擱座したボアに対しては、無数の市民が群がり、手当たり次第に装甲を溶断され、中の肉が引きずり出される。最後の1両へと消耗したとき、すでに脱出成功の可能性はゼロになっていた。




