表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣転生  作者: アスタ
5/7

魔導の覇者

初めてまともに戦闘描写を書きました。

おかしな点があるかもしれませんが、ご容赦ください。


あと、初めて感想をいただきました!ありがとうございます!

 あの女がここにたどり着いてから約3年が経過した。

 私がこの姿に生まれ変わってから、およそ10年が経過したが、未だにあの二人しかここに至っていない。

 そろそろ私からアクションを起こした方が良いだろうか。そんなことを考えながら島の内部を眺めていると、いつもの奴ら(常連)以外の人間が入ってきているのを見つけた。

 深くローブを被り、強い魔力反応を感じることから魔法使いであることがわかる。どうせやることもない、と私はその男を観察することにした。

 最初は唯の興味であったが、見ている内に私はその男に期待を寄せていた。

 強い。あの男(剣の王)のように一つを究極まで極めた訳でも、あの女(影の姫)のように特異な才や体質を持っている訳でも無い。だが、安定している。出来る限り敵の背後に回るような立ち回りをしているし、攻撃も回復も一人でこなしている。魔法使いでありながら、懐に潜り込まれた際の対処も完成している。

 これだけ聞けばあまり大した事に聞こえないかも知れないが、実際の戦闘で微塵の粗も無くこれをこなせる人間はそうそういない。似たような戦い方をする人間は他にも数多くいたが、どれも熟しきっていない

 彼の戦い方は、安定を究極まで求めた臆病者の戦いだ。それが彼を生き長らえさせている。

 そんなことを考えている間に、男は山の麓へとたどり着いた。どうやら山に入ると魔物の強さがかなり上がるらしく、常連の一人が「あの山は正直頭おかしい」とぼやいているのを聞いたことがある。確かに、双頭狼(オルトロス)慟哭(クライ)を相手取るのは人間には少々難しいかもしれない。

 だが男は、そんな魔物を屠っていく。どんな魔物でも安定し立ち回りを見せ、そして魔力が尽きる様子がない。


 ここ何年かで知ったのだが、どうやら百年に一人程度の確率で異常な程の能力を持つ人間が生まれるらしく、あの男(剣の王)もそうだったらしい。この男も魔力量が桁外れだが、そうなのだろうか。


 などと考えている間に、男はすぐそこまで来ていた。だが、このまま登ってこられては面白くない。少し試してみようか。

 私は、魔力を山の中心に飛ばす。そして、島に結界を張り、名を紡いだ。


 『いでよ────────』


 かつて大災害を起こし、三千年間眠り続けたとされる魔竜。


 『─────地竜ヴォルカン』


......


 三千年前、世界中の山を噴火させ、人々を混乱に追いやった災厄の魔竜。人間はそれを見てこう思ったと言う。大陸が歩いているようだ、と。それが今、神獣の監視の元、目を覚ました。


......


 地面が揺れる。空気が轟く。男は、世界が裂けるような錯覚を起こした。地面が割れ、中から巨大な何かが競り上がってくる。男は咄嗟に、風の魔法を使い空中へと避難した。

 災厄が、目覚めた。

 島がもう一つ増えたかと誤認するほどに巨大なそれは、男の姿を認めると、海をも割る尾の一撃を放った。男はそれを間一髪で回避し、反撃をする。柱のように太い氷の槍を生み出すと、竜に向かって発射する。だがそれは、竜の鱗に届く前に蒸発してしまった。それを見ると男は、地面に干渉し、大地を鋭く尖らせ竜の腹を貫いた。

 竜は叫びをあげる。それは痛み故であろうか、それとも別の理由かはわからない。だが竜は怒りを隠そうともせずに男を睨み付けた。竜は大きく息を吸い、そして紅蓮の炎を吐き出した。周辺の大地は融解し、竜の腹からは血が吹き出す。だがそれに構う素振りも見せずに、男を全力で仕留めにかかる。

 男はその炎を竜の背後に回ることで回避し、地面に降り立った。そして手で地面に触れると、そこから大量の魔力を大地に注ぎ込んだ。その量は竜の持つ魔力と比べても遜色無いものであった。そんな量の魔力を一度に一ヶ所に留めたら、当然魔力は暴走する。大地はぐにゃりと歪み、不定形となってゆく。男は苦痛に顔を歪ませながら、魔力を制御する。竜は男の方向を向き、再度炎を吐かんとする。男の鼻から血が流れる。

 大地の歪んだ部分が再度鋭く変質し、竜の腹の傷に突き刺さる。それの先端に魔力を集め、竜の体内に大地の槍を埋め込んだ。そして何を思ったか男は、竜に対して回復魔法を行使した。槍は体内に残ったままだが、傷が塞がった竜はこれを好機と思い、更に大きく息を吸う。そして、魔力を帯びた巨大な炎が男に襲いかかる。

 勝った。竜はそう確信した。その確信が油断を生んだ。いや、油断していなくとも、この結果は変わらなかっただろう。

 竜の炎が男を呑み込む瞬間、男はニヤリと獰猛に笑う。そして、紅蓮の焔が男を呑み込んだ。

 炎が治まったとき、男の姿はどこにもない。竜は、自らを叩き起こした者を探そうと踵を返す。その瞬間。


 ゴッ、と鈍い音を鳴らし、竜の巨体は地に伏した。正確には、倒れた。竜は全身の穴から血を吹き出し、そして意識を落とす。

 その数瞬後、地面がへこみ、穴が開く。そしてそこから、男が這い出てきた。男は自らが打倒した竜の骸を見て軽く笑みを浮かべると、溶けるように倒れた。



......



 まさかあれを倒してしまうとは。そう私は思っていた。

 本来の三割程度しか力を出せていなかったとはいえ、それでも人間が相手に出来るものではないはずだ。まあこれをけしかけたのは私なのだが。

 ヴォルカンはまだ死んでいないようだし、さっさと寝かせてしまおう。これでまた数千年は目覚めないと思われる。

 男は...気絶しているな。流石にこれ相手では仕方あるまい。私の元へ転送してやろう。



 「はっ!」


 男が目を覚ました。そして立ち上がろうとして、顔を歪めて頭を押さえる。かなり脳に負担をかけていたのだろうか。あれでは暫く魔法一つ使えないだろう。

 男はゆっくりと立ち上がって周囲を見渡し、そして私の姿を見つけた。


 「...貴方が、神獣様ですか」


 『いかにも。最強の神獣にして、其方の望みを叶えるものだ。』


 私はもう三回目となる台詞を口にする。すると男は、望みの前に疑問を私に問う。


 「神獣様が助けて下さったのですか」


 『私の領域で素晴らしい戦を見せてくれた礼だ。よくぞ災厄の魔竜を打倒した。さあ、望みを言え。』


 すると男は少し悩むような動作を見せた。いや、悩むと言うより躊躇うの方が近いだろうか。


 「......私の家は、代々強力な魔法使いを排出してきた家系なのですが、それ故に結婚相手も強力な魔法使いでなくてはならないのです。えーと、つまりですね...」


 男がかなり言いづらそうにしているのを見て、大体検討がついたが、あえて男が話すのを待つ。


 「...えーと、私の願いは......強くて好みの女性と出会いたいです......」


 やはり思った通りであった。だが、男があまりに言いづらそうにするため、思わず大笑いしてしまった。


 『くっははははは!そうかそうか、女か!ははは愉快愉快。その願い確かに叶えようぞ』


 「......ありがとうございます、でもそんなに笑うことないじゃないですか」


 『いやすまぬすまぬ。其方には女運に恵まれる魔法をかけてやろう、そら』


 私がまだ少し笑いを引きずりながら魔法をかける。そしてこれからどうするかを思考する。


 『これで其方は運命と呼べる相手を巡り会うであろう。......ふむ』


 そして、思い付く。今よりも神獣らしい生活の仕方を。


 『代わりと言っては何だが、其方に頼みたい事があるのだ。よいか?』


 「えっ?あっはい!なんなりと!」


 『今から言うことを人類に広めて欲しいのだ。』


 私は男が頷くのを見ると、話し始める。


 『私は今日、此処を去る。そして、誰も知らない場所で世界を視続ける。百年に一度、最も善い戦いが起こる直前にその場に現れ、その戦いを見届けるだろう。』


 そう、これこそが私の思い付いた生き方。これなら最強の神獣としての行動でもおかしくはないだろう。むしろこの十年間何故思い付かなかったのか。


 「今の言葉、命に代えても広めてみせます」


 『そこまで気負わなくてもよいが、頼んだぞ。さて、其方を元の大陸へと送り返そう』


 そう言うと私は、今までのように男の足元に光の円を発生させ、男を元の場所へと送る。

 男が大陸へと戻ったことを確認すると、私も転移を始めた。時空が歪む程の魔力を使い、空間に穴を開ける。そして、そこに歩いて入る。

 私は今日から、誰も知らない場所─────空間の狭間の主となる。

次回から新章...というか次回からが本編です。

ここまでは0章みたいな感じです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ