プロローグ2
文字数はキリの良さで変わるので激しく上下します
目が覚めるとそこは、またも見覚えのない場所であった。
天井と壁の無い神殿、という表現が最も適しているだろうか。
明るい黄白色の地面に、同じ色の巨大な柱が立っている。かなり広く、ぱっと見た感じでは直径100mはあるだろう。そして、その中心には巨大な鏡が置いてあり、かなり神聖な雰囲気が出ている。
私はその鏡の正面に立っていて、鏡に向かって歩き出そうとし、思う通りに体が動かないことに気がついた。
鏡に映った自分の姿を見ると、体高が2mほどの巨大な白い鹿であった。脚の先から角の先端まで真っ白で、瞳は赤く、その姿はアルビノのようであった。体の周りには常にダイヤモンドダストのような煌めきを纏っていて、その姿はまさに神獣と呼ぶに相応しい姿であった。
鏡を見ながら体を動かそうと四苦八苦していると、唐突にとある事を思い出した。それは自らが全知であるということ。
だが私は今は何も知らない。全知ではなかったのか、と考えた瞬間、その問いの答えが頭に流れ込んできた。どうやら知りたい事を知れるという意味での全知らしい。
私は、自分の今の姿の詳細、この世界について、この場所について念じた。
......
巨大な四つの大陸と一つの島、そして大量の小島で構成された世界であり、それぞれの大陸で文化や言語が違う。
大陸は菱形のように存在しており、中心に島が存在している。
大陸に正式名称は存在せず、東大陸や西大陸など、方角で呼ばれる。島には唯一名称が存在するが、島を中央大陸と呼ぶ地域も存在する。正式名称はアリシア。
基本的には中央に近づく程に魔物が強力になっていくため、アリシアに近づける者はほぼ存在しないので、人跡未踏となっている。
文化レベルは中世程度。
現在地はアリシアの中央に存在する山の頂上。
神獣の中でも最高位の存在で、『最強』の概念をその身に孕んでおり、敗北することが不可能。
神話にて言い伝えられた神獣であり、認められればあらゆる願いが叶うといわれている。
本気を出せば世界を滅ぼすことも可能。
物理法則に囚われることなく、光以上の速さで動くこともできる。
全ての属性を司っており、属性や魔法を手足のように操ることができる。
神獣の性質上自分から戦闘を仕掛けることはできない。相手から仕掛けてきたり、元々発生している戦闘に乱入する場合は可能。
寿命は世界が滅ぶと同時に尽きる。
......
余りにも強大な力に、思わず絶句してしまった。まさに最強。無敵。故に、私は基本的に不干渉であろうと誓った。
だがしかし、折角生まれ変わったのに何もしないまま寿命を終えるのも味気ない。私が干渉しないなら、向こうから干渉してもらおう。
私は、感覚が導くままに魔法を構築し、吼えた。
『────────────────』
私の産声とも呼べる咆哮は、風の魔法により増幅、共鳴し、世界中に響く。
強大な聖なる魔力を帯びた咆哮は、世界中を震撼させた。ある者は神話の復古だと歓喜し、ある者は願いを叶えるために力を磨き始めた。
この日は『神話再来』として毎年祭が行われる日となった。
そして、この日から、中央の島『アリシア』に足を踏み入れんとする人間が跡を絶たなくなったという。