表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

ぐががちゃん

 最近幽霊に出会った。それを言うと陽毬ちゃんには「幻覚が見えるなんて、早く病院行きなさいよ」とドン引きされたのだけれど、一応健全な生活をしていると自負しているので、やはりあれは本当の幽霊なのだと思う。手足が透けてる事以外にあまり判断基準は無いのだけど、逆にそれだけでも、CGだとしたら凄いお金がかかるわけで、私をドッキリさせるためにそこまでのお金をかけるいたずらっ子がいるなんて事は、頭のよくない私でも分かる、流石にありえない。だからあれ=幽霊できゅーいーでぃーなんだと思っている。

 あ、そうそう、正確には幽霊ちゃんだ。可愛らしい女の子で、服装もやたらと煌びやか、まるで昔の外国のお姫様のような感じだ。年齢は多分私と同い年くらいで、ただ目だけが、死んだ魚のような目、ならぬ、死んだ人間のような目、ならぬ、死んだ人間の目をきちんとしている。19世紀のヨーロッパで行われていた文化で、亡くなった家族をまるで生きているかのように写真に収めるというものがあったけれども、そしてその写真の何枚かをネットで見たことがあるのだけれど、その中の人にそっくりな、どろりとして輝きを失った目をしていた。


「幽霊ちゃん……って呼ぶのは失礼だから、お名前教えてくれる?」

「ぐが…っ、ぐががっ!」

「ぐががちゃん? 変わったお名前だね」

 ぐががちゃんは、私に対してやたらと名前を連呼してくる変わった女の子だった。とりあえずお話を聞こうとするのだけど、その度に「ぐがが!」って叫ぶので、もしかしてこの子は生前よっぽど名前を覚えてもらえなかったのかなって、ちょっと悲しくなった。自分のアイデンティティを認めてもらえないことほど、きつい事は無い。

「ぐががちゃん、大丈夫、私は忘れないよ」

「ぐ……ががっ!」

「うんうん、覚えてほしいから、そうやって何度も叫ぶんだよね。未練っていうやつかな、いくらでも吐き出していいよ、ほら、ぐががー」

「ぐががっ!」

 それ以降、ぐががちゃんと私はよく出会うようになった。そもそも最初は私の部屋に突如現れて名前連呼娘と化していたのが、最近は私についてきて、というか憑いてきて、学校でみんなに自己紹介している。その内私は周りに人が近寄らなくなったけれど、これはきっと、ぐががちゃんが可愛すぎて、親密にしている私に嫉妬しているんだと思う。のほほーんとしているように見えるけど、案外そういう空気には敏感なんだ。

 ぐががちゃんは本当に可愛い。みんなが私に嫉妬するのも分かる位に、特に黒蜜を流したような髪の毛が、陽毬ちゃんといい勝負というくらい綺麗で、すぐ乱れるくせっ毛の私にとっては本当に羨ましい。どうして死んじゃったのかは分からない、というかもしかしたら自分で命を絶ったのかもしれないけれど、本当に幽霊として現世に残ってくれてよかった。この子の可愛さはもっともっと世に広まるべきだ。

「ぐがが! ぐがが!」

 ぐががちゃんは時に、私の首を絞め、可愛らしい顔を近づけて口をぱくぱくさせる。きっとぐががちゃんなりのスキンシップの取り方なんだと思う。だから私もちょっと苦しいけど為すがままになっている。たまーに度が過ぎて意識がふわーりとしてきたら、流石に戯れはお終いという事で振り払う。でも本当、見た目はクールなのに甘えん坊さんで、可愛い子だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ