第5話:精霊
ー夜ー
私は小屋にいた。すっごいボロボロだけど、牢屋よりはましだろう。どうやら気絶した後、運び込まれたようだ。目が覚めて、早速魔法の練習をすることにした。
『ファイアーボール』
野球ボール位の火の玉が出た。うん、ちゃんと手加減できてる。
〈『炎魔法Lv1』を習得しました〉
頭の中に無機質な音声が鳴り響く。
(今ので習得できたか~。Lv10もそんなに遠くないように感じるな)
ちなみに、スキルLvは1~3が初心者・アマチュア。4~7が熟練者。8~9が達人。10は極意となっている。Lv10は、人間がその道に半生をつぎ込んでようやく習得できるものだというが……
火の玉を鳥やネズミにしたり色々試したら……
〈『炎魔法Lv3』を習得しました〉
この調子だと本当にそう遠くないうちにLv10になりそうである。
〈『雷魔法Lv3』を習得しました。『氷魔法Lv3』を習得しました。〉
(さて、闇魔法はどんな魔法かわかんないし、このくらいで終わりにするか。けどやっぱり『魔法の才能』ってすごいな。あっという間にLv3だ)
※(普通は『魔法の才能』を持っていてもLv3までは半月ほどかかります)
「へえ、こんな夜中に魔法の気配がすると思ったら、まだ子供じゃない」
「!」
声がすると思ったら、目の前にトンボの羽が生えた黄色髪のショートヘアーの女の子が現れた。
この姿、私の脳内データベースにインプットされていた。確か……
「中級精霊!」
「あ、もしかしてあたしのこと見えてる?ここのみんなは存在を感じるくらいしかできないのに」
「私には『精霊眼』がある」
「珍しいわね。魔法の扱いもその年齢にしてはえらく上手だし、あなた何者?」
「答えたくない。それより、どうしてこんな所に?」
精霊は少し考え込んだ後……
「あなたが教えないんだったらあたしも教えな~い」
「なっ!」
精霊がどんな目的があるかわからないし、ここで話を打ち切るという選択肢はない。かといって、私が異世界から転生したことを話すのもまずい気がする。そうそう言いふらしていい話とは思えない。
……と、どうすればいいか考えているとその精霊は……
「冗談よ。からかっただけ」
……つかみどころのない精霊だ。
これが、私がこの精霊に対して抱いた第一印象だった。
「気になったから来ただけよ。それにしても本当に変わった子供ね~。魔力だって多いし、将来性抜群よ。まだたくさん魔法を使っていないからLvは低いでしょうけど、経験を積めばすぐLv10になれるわ」
ちなみに、魔法のLvは、威力ではなくその扱い方がどれだけ上手かを指す。確かに経験不足のせいでたまにミスするけど、そう遠くないうちに解決できそうだ。
「けど、中級精霊のわりに知能が高い」
「えっ!あっ、そう?まああたしはこれでも長く生きてるからね。もっと褒めてもいいのよ」
(うわぁ、すごいって思ったのに台無しだ~)
そんな内心に気付かず、精霊は胸を張っている。
「あなた、見どころあるわね。あたしと友達にならない?」
「え!いいの?」
精霊ってなんか高貴なイメージだったけど、そんな簡単に友達になっていいものだろうか?
「ええ、精霊以外にはあたしのことは見えないから、ぜひ友達になってほしいわ」
「精霊と友達なんて、こっちからお願いしたいくらいだよ。ありがとう」
「本当!じゃあこれからよろしくね」
「うん」
〈称号:精霊の友を手に入れました〉
(なんか気になる単語でできた。まあいいや。後で確認しよう)
「あ、もうこんな時間。じゃあもう寝るね。そういえば名前は?ああ、私のことは紅音って呼んで」
「精霊に名前はないわ。なんならあなたがつけて。」
「じゃあ・・・黄響。私の名前は紅い音ってゆう意味だけど、あなたは髪黄色いし、でも黄音は変だから、音が響くって意味で黄響」
「キキョウ、キキョウ……うん、いい名前。ありがとう」
〈希少スキル『精人一体』を習得しました〉
(また変なの手に入った!)
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。じゃあもう寝るね。おやすみ」
「おやすみなさい」
(スキルや称号は後で確認しよう)
こうして紅音は眠りについた。
ーエルフの村ー
「それは本当か!」
「はい、あの魔法の威力、3歳児離れした魔力量、間違いなくあいつはこの村の脅威になりましょう」
「うむ、では、これからどうするかは追って連絡する。それまで今まで通り行動せよ」
「わかりました。長老」
紅音の知らないところで、事態は刻一刻と加速するのあった。