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二人美術部

二人美術部

作者:

連日の猛暑で練習で茹る運動部以外に文化部でも同じ思いをしている部活はある。美術部だ。特別教室で部員も2人しかいないという事でエアコンを設置する計画は無くなり、今でも旧式の扇風機2つで暑さをしのいでいる。

「なんでこの部屋はエアコンが無いんだよ。お前の財力でどうにかしろ」

また恐ろしい事を言う。友人三条清一郎はいつもこんな感じだ。

「はいはい、宝クジ当たったら考えるよ」

「ちぇっ、それにしても暑すぎないか?時雨時」

黒板近くの温度計を見ると室温は30度に達していた。

「驚いたな30度だってよ」

「まじかよ!道理で作業が進まない訳だ」

三条は足を投げ出し、椅子の背もたれに寄りかかった。まぁなんともだらしない姿だ。これでもイケメンで通っているから腹立たしい。この姿を女子に見せたらどうなるのだろうか?どうせギャップ萌えとかいうやつに騙されるんだろうな。

「暑い暑いと言ってないで髪切ったらどうなんだ?いくらなんでも長すぎるだろ」

彼は去年の秋頃から髪を伸ばしっぱなしにしている。教師は何度か注意していたが遂に諦めたようだった。普段は後ろで赤いリボンを使って束ねられている。

「めんどくせぇや」

「海軍将校の息子が女みたいに髪伸ばしてたらよかないね。親父さんはなんて言ってんの?」

「大いに結構、好きにしろだってさ」

三条は苦笑いを浮かべている。おそらく壮絶な親子喧嘩をしたのだろう。昨日親父さんは会った時顔に大きなガーゼをしていたし、三条は腕に包帯、口元に絆創膏が貼られている。

「そんなにあの娘が好きか」

「いや愛してる」

三条はニヤッと笑う。どうしようもねぇなこいつ

「そりゃロングが好みだと言われたら伸ばすしかないだろ?」

「お前はどうしようもない男だな」

「うるせぇ」

髪を束ねている赤いリボンは彼女から貰ったものだ。

どこからかは知らないが彼女はロングが好きという信憑性の薄い情報を聞きつけて伸ばし始めたようだ。素直なんだか素直じゃないんだかよくわからないやつだ、本当に。

「その情報多分嘘だぞ。どっかの誰かさんを嵌めるためのな」

「はぁっ⁉︎そんなの知らんぞ!」

「彼女は基本的に爽やかな髪型が好きなんだってさ」

「まじかよ…」

あーあ落ち込んじまったよ。実際自分もこの噂を信じていた。しかしよく考えてみたら何かおかしい。情報元が不明なのだ。女子たちに尋ねても噂で聞いただけだとしか返ってこない。本人に尋ねればさほど髪型に好みはない、強いて言うなら爽やかな髪型だと返答があった。誰かに自分の好みを訊かれたか尋ねたところ案の定、やっぱりかという人物だった。彼女は強かなもので「坊主が好きって言ったわ。実際嫌いだけど」

と笑っていた。遖と言うべきか。

「大丈夫だよ、お前ロングがよく似合ってるってさ」

「…」

駄目だ死んでる。

「お前の性格だから諦めているが敵を無闇に作るべきではないぜ」

机に突っ伏していた三条が顔を上げる。

「お前は身内には甘すぎるほど優しい。だけどなその性格は敵を作る。排他的過ぎるんだよ、お前。特に前から色々やってきてる奴らに対して。水に流せとは言わないが…」

「俺は絶対に許さん。俺やお前、親父が嫌いなら関わらなければよかっただけだろう?喧嘩を売ってきたから買ってやっただけだ。何が悪い?」

まるで犬のようだ。久しぶりに三条のことを本気で怖いと思った。

「あの娘に迷惑掛けてるぞ。それを自覚しろ」

苦々しい表情だ。そんなに好きか。

「わかったわかった、気をつけるよ」

三条はそう言って笑う。しかし目が笑っていない。むしろ殺気を帯びて一種の狂気を感じる。

「お前の事だから腹の中で仕返す算段考えてるんだろ?付き合ってやるよ、どうせ暇だし」

「そうこなくっちゃな」

三条は油絵の具がついたエプロンを抜き自分のロッカーに突っ込む。こいつに何を言っても聞きやしないだろう。自分も使っていた道具を片付け始める。噂を広めた人間の目星は付いている。そういえばそいつは野球部でもないのに髪を剃ったな。今更その理由がわかり笑ってしまった。

「何笑ってんだよ時雨時」

「なんでもないさ」

「さて、行きますか」

三条はここ最近では一番嫌な笑みを浮かべている。

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[良い点] しっかり文章つくってる [気になる点] 読みにくい [一言] 改行を沢山つかって区切りをつくるといいかも
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