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魔法学園へようこそ!  作者: cymbal
第3章 殲滅魔術師
21/42

王女のお茶会

 蚤の市を見に出かけた翌日。

 朝は雨が降っていましたが、次第に晴れ間ものぞき始める。

 今日の授業が終わり、空を見上げてほっとします。わたしみたいに箒で通う生徒は、天気の良し悪しは死活問題です。雨の日は雨合羽を着こんで箒を飛ばさないといけないので、暑くて蒸れますし、魔力の地場も乱れます。体力的にも魔力的にも辛い。電車通学にするという選択肢もありますが、天気悪いと電車は混んでいますし。


 雨が上がってまだそう間はあいていないようで、校舎の庭を彩る立木の幹は黒く濡れ、葉に残った滴が陽光に輝いています。

 放課後はどうしようかと思案する。部室に顔を出そうか、ユウさんを迎えに行こうかなどと考えていると、後ろから声を掛けられる。


「ユイリっ」

「あ、レイシア」


 最近わりと仲良くなった同級生のレイシアが後ろからやってくる。この時間、取っている授業は別だったはずですが、同じタイミングで彼女の授業も終わったのでしょう。


「ねえ、今の授業で今日終わりでしょ? 何か予定ある?」

「ううん、ないけど」

「それならさ、ちょっと一緒に行ってほしいところがあるんだよね」


 にっこりと邪気のない笑顔を浮かべる。


「ヘンな用じゃなければ、いいよ」


 レイシアは新聞部です。

 錬金術士としての本分は完全に無視して、部活動の方に熱をあげています(いくつか同じ授業がありますが、大体寝てるか内職をしています。どうしてこの学園に入れたのでしょうか)。

 しかも。時々わたしも巻き込まれることがあります。

 先日、とある研究室で開発された謎の新薬があるということで、その正体を追おうとした張り込みにわたしまで連れ出されたことがありました。しかも、張り込んでいる間が暇になってしまうから話し相手として、というどうでもいい理由での連れ出しです。

 結局その時は新薬を大事そうに持って研究室から出てきた生徒を突撃取材して、勢い余って新薬の入った試験管を壊してしまいました。哀れその時に新薬をかぶってしまった研究生のひとりは、一瞬にして全身の毛が抜けてしまいました。その薬は強力な脱毛剤だったのです。

 わたしたちは慌てて逃げてました。結局その時の顛末は『ムムル研究室無毛事件』と銘打って記事になって好評を博したそうです。レイシアには感謝されましたが、そんな騒動とは距離を置いておきたい。


 ごく最近の辛い出来事を思い出して、つい疑いの目でレイシアを見てしまう。


「大丈夫だよ、ユイリ。今回は危険とかないから。全然ないから」


 力強い言葉が嘘っぽい。彼女は楽天的な性格ですので、本気でそう思っているのでしょうが。

 レイシアはわたしの手を取るとさっさと歩き出す。


「わ、わっ」

「ユイリも箒だよね? ちょっと離れた場所だから、とりあえずそっちに向かって……」

「ま、待ってよっ。いったい、どんな用事なの?」


 わたしは握られた手を振りほどくと、まずは用件を聞きます。さすがに、いつもいつも流されてしまうと自分の寿命が縮まります。ただでさえ、最近の身辺は慌ただしいというのに。


「わかったわかった」


 レイシアはわたしの意志の強さを感じ取ったのか、苦笑して説明を始める。


「ヴェネト王国の王女様、ユイリも知ってるでしょ?」

「うん」


 知っています。というか、この学園に暮らす生徒ならば誰でも彼女の存在は知っているでしょう。

 イリヤ=エミール帝国との戦争の渦中、この学園に入学した回復魔法の天与の才を持つ王女。

 わたしは先日の結界破りの中で王女様とほんの少しだけ言葉を交わし、少しだけ縁がある方です。それに、王女様の護衛役はかつて一緒に魔物退治の冒険をしたことのある元第三守備隊長、ウサコさんです。そちらの繋がりの方が深いと言えるでしょう。


「その王女様が、今日ヴェネト王国の出身者とか縁がある生徒を集めてお茶会をやるんだって」

「へえ、そうなんだ」


 たしかに、上流階級の方々にはそういった会合が付きものです。

 わたしの身近にいる貴族様というとルドミーラくらいのものですが、「貴族の集まりとか面倒くさいんだよね」などと言っているあの子でさえも時々着飾って出かけていくことがあります。避けられないお付き合いというものがあるのでしょう。


「そこに潜入する。そのために、ユイリの力を借りたいの」

「ええー……」


 ぐっと拳を握るレイシア。がくっと肩を落とすわたし。

 案の定、どうしようもないような用事でした。


「無理だよ。わたし、関係者じゃないから」

「またまた。ユイリ、結界破りで王女様と面識あるでしょ?」


 たしかに言葉は交わしましたが……。


「いや、多分顔も覚えられてないけど」

「仮にそうだとしても、ウサコ隊長は知り合いじゃない?」

「えっ」


 わたしとウサコさんの関係は公のものでもありません。いえ、もちろん、隠しているわけでもないのですが、そもそも入学してからはほとんど顔を合わせることもないような間柄です。


「なんで、そんなの知ってるの?」

「知ってるっていうか、ユイリの入学を推薦したのがウサコ隊長だったからさ。あ、元隊長か。そういう、守備隊士が戦闘能力以外で拾い上げることって珍しいからね。無関係なわけないでしょ」

「えーと、なんでわたしの推薦者を知ってるんですか?」

「新聞部だから」

「……」


 新聞部怖い。


「それは冗談だけどね。推薦入学の場合推薦者って公開されてるから。まあ、大々的に公開はされてないけどさ」

「あ、そうなんだ」


 それにしたって、嗅覚鋭すぎですねえ。


「その関係から、王女のお茶会に潜り込めたりしないかなって」

「パワフルですねえ」


 わたしは息をつきます。

 主催者にわずかでも繋がりのあるわたしをダシにしてもぐりこめないか、という計画のようです。巻き込みやすい空気でも出しているんでしょうか、わたしは。


「これで説明完了。行こう、ユイリ!」


 ぐっと再び手を握るレイシア。

 わたしははあっと息をつき、引っ張られていきます。


 うーん。まあ護衛を突破してお茶会に入り込むという方針ではないでしょうし、傷害沙汰にはならないでしょう。レイシアはあんまり戦える子ではないですし。

 それに、わたしとしては、王女様やウサコさんの動向には確かにちょっと、興味があります。

 そう思い、なんとなく、引っ張られてわたしはレイシアの後に付いていきました。











 箒に乗って、お茶会の場所を目指す。

 わたしは場所を知らないので、前を行くレイシアの背中を追うのみです。


 今日は雨上りの爽快さといいますか、周囲の箒乗りたちの表情もどことなく晴れやかな感じがします。ここイヴォケードはわりと乾燥した土地ですので、雨が降っても湿度が高いというほどまでにはいきません。

 空飛ぶ生徒たちは箒の先から飛行の許可証と一緒に雨で濡れたブーツや靴下をぶら下げている人も多くて、なかなかワイルドです。


 水気を含んだ空気をさっさっ、と切り裂きながらわたしたちがたどり着いたのは学園の中央部にある飲食店です。

 飛行が許されている大きな通りからは少し入ったところにある静かな界隈。ただのお店というわけでもなく、受付を通らなければ入れないようなちょっと特殊な佇まい。

 縁に反りのある瓦屋根、赤や緑を多用した鮮やかな壁面装飾、ちりばめられた紐飾りがエキゾチックな雰囲気を漂わせています。ヴェネト風では全然なく、感じとしてはもっと南のつくりに見えます。

 わたしたちは少し離れた所からその店構えを見守ります。


 別に見張りの人がいるというわけでもないのですが、なんとなく小声で言葉を交わす。


「さすがに『王女のお茶会』なんて看板が出ているとかってわけじゃないわね」

「告示しているお茶会じゃないんだよね?」

「うん。関係者だけに伝聞で伝えられているようなイベントね」

「……なんで、そんなの知ってるの?」

「新聞部だから」

「……」


 新聞部、怖いです。

 しばらく様子をうかがっていると、招待客なのでしょう、男子生徒が少し緊張したような面持ちでやってきて、お店の門構えをしげしげと観察する。そして、恐る恐るといった様子で中に入っていきました。

 ここからでは、紐のれんにさえぎられて中の様子はわかりません。照明を多用しない古い造りの建物ですので、中は薄暗いようです。


「私たちも行ってみるしかないわね」


 わたしの肩にポンと手を置き、ぐっぐっとわたしを押し出すレイシア。ふたり連れだってお店の中に入る。抵抗しても無駄ですし、取って食われるわけでもありません。わたしは小さく息をつき、押されるままに歩きます。


「こんにちはー……?」


 中に入ると、誰もいません。入ってすぐはロビーになっていて、お店の奥へと細い道が続いています。

 どうやら、個室が連なっているような飲食店のようです。高級店ですね。王女様がお茶会に選ぶようなお店ですので、当然ですが。

 外の通りは人通りもあり、喧騒がありましたが、中に入ると位相が変わったようにしんとする。薄暗くて、ひんやりとした空気。


「誰もいないね」

「うん。大丈夫かな?」


 わたしたちは小声で言葉を交わす。

 お店の奥の方に、多少、人の気配を感じます。ですが、それがかえってこの場の静けさを強めているような気もします。

 周辺を見渡してみても、特に案内札があるわけでもない。

 入った正面に受付机がありますが、誰もいません。


 王女様主催のお茶会なのですから、人とかお金とかをふんだんに盛り込んでやっているものかと思っていましたが、そういうわけでもないようです。

 どちらかというと、秘密の会合的な雰囲気すらあります。


「まあ、待ってようか」

「うーん、いいのかなあ」


 ともかく、呆然と立ち尽くしているのもなんだかヘンですし、わたしたちは入ってすぐのところにある応接セットのソファーに腰掛ける。これもそんじょそこらの安物でもなく、掛けるとふわっと身が沈む。高級品です。


「わわっ?」

「あ、ユイリ、パンツ見えそう」


 予期せぬソファの柔らかさに目を白黒させていると、レイシアからどうでもいいコメントが飛んでくる。

 わたしはささっと態勢を整えます。柔らかいソファ自体は寮の談話室にもありますけれど、あんまり座ったことがないから慣れないんですよね。自室や実家にもソファはありますが、大層なものではありません。


「このお店、ヴェネト王国の有力者はよく使う、有名な場所なのよね。私も入ってみたいって思ってたのよね」


 きょろきょろと周りを見回しつつ、レイシアは緊張した様子もなくそんなことを言う。うーん、豪気な子です。まあ、この学内で新聞部なんてやっていると肝っ玉もの太くなるのでしょう。


「いいのかな、こうして勝手に座って」

「案内人がいないのに奥まで勝手に入るのは失礼にあたるわよ。待つのが一番。そもそも、私たち案内されてないけどね。さっき入って行った生徒がいたじゃない。その案内に出ているんでしょ」


 案内が終わるまで待つのが一番、ということでしょうか。

 部屋の内装を見回す。木と漆喰で作られた古い建物です。この学園は百年ほど前に焼け野原から再建されたものですので、最古の建物でも百年前。受付用のこの部屋は広く、贅沢な空間の使い方は先の大戦のすぐ後に建てられた建物だろうと見当がつきます。壁にヴェネト王国の地図や国旗が掛けられているのに気が付く。かの国御用達、という様子が見て取れます。


 そうして少しぼうっとしていると、やがて通路の奥からぱたぱたと足音がする。

 やってきたのは見知った人物。とはいえ、そう親しい人でもありませんが。先日の結界破りのさなかで、軽く言葉を交わした相手。

 セレスティン王女の侍女をしているニームさんでした。

 彼女はロビーでくつろぐわたしたちを見て、ええー、というような困った顔になりました。

 まあ、でしょうねえ。どう見ても招かれざる客です。苦笑しながら立ち上がり、小柄な相手に相対します。


「お久しぶりです、ユイリ・アマリアス先輩」

「こんにちは。……あれ?」


 挨拶を返して、首をかしげる。先日言葉は交わしましたが、自己紹介などはしていません。名前は言っていないのだけど……などと思っていると、こちらの顔がおかしかったのかニームさんはくすくすと笑います。

 多分、先日の結界破りの後でわたしのことを調べたりはしたのでしょう。怪しい人間なつもりはありませんが、警戒するのは当然かもしれません。だから、あまり気にしないことにする。


「おふたりは招待状はお持ちでしょうか?」


 ニームさんがやや硬い口調になってそう尋ねた。一応聞くけれど、招待状持っていませんよね? という確認めいた口調でした。


「ええと、はは」


 わたしは笑ってごまかすしかありません。レイシアにバトンタッチする。


「私、新聞部の者です」


 レイシアはスカートのポケットから名刺を取り出し、ニームさんに渡す。


「もしよろしければ、今回の会合を取材させていただけませんか? 進行のお邪魔にならないように配慮します」

「ええと、いえ、私に了承する権限はありませんので」

「そうしましたら、権限をお持ちの方に取り次いでいただけませんか?」

「そもそも取材をするような集まりではありませんので」


 お互い表情はにこやかですが、アポ取りを一気に押し切ってやるという雰囲気のレイシア、部外者をわざわざ入れるなんてことをしたくないのはわかっていますよね? というニームさん。

 なんだか、攻防戦を繰り広げる二人です。


「セレスティン王女が中心となって執り行う集まりでしたら、公的な意味合いのある会合だと思いますけれど」

「いえ、知り合いを集めたごく私的なお茶会ですよ」


 メディア関係者お断り感をかなりひしひしと出しています。レイシアの新聞部権限での正攻法は難しそうな気配です。


「ならば!」

「えっ」


 いきなり猛るレイシアがぐっとわたしの腕を取ります。ニームさんの前にどどんと押し出す。


「ほら、公的に取材はダメなら、ユイリは私的な知り合いでしょ! 迷惑かけないからお願いっ!」

「えぇ……?」

「レイシア、必死だね」


 どうやら、わたしをダシにする作戦に変更したようです。最初からそのつもりでしょうけれど。


「こ、困ります……」


 本当に困った感じのニームさん。もしかしたらわたしとウサコさんが結構親しいことは知っているんでしょうか。

 勝手にわたしを帰して問題になるかもしれない、と悩んでいるのでしょう。実際は、追い返しても大丈夫ですけれど。

 なんだか、だまし討ちみたいな交渉ですねえ。彼女をいじめているような気分になってきて落ちつかない。


「あ、あの、無理だったらしょうがないですから。ほら、レイシアも、あんまり無理言っちゃだめだよ。外で張ってて、帰ってく参加者にインタビューでもすればいいじゃない」

「あ、それいいかも」

「その場合、わたしは先に帰るけど」

「ええーっ」

「あの、ええと、お待ちいただいてよろしいですか? 少し、確認してきますから、もう」


 呆れた、というよりは軽くふくれた様子で言うニームさん。王女付きの侍女というと貴族様でしょうし、住む世界の違うような印象もありますがこうして話していると単に可愛い後輩、という印象しかありません。


「え、あの、いいんですか?」

「お店の外で待ちかまえられるのも困りますから。セレスティン王女とウサコさんに、聞いてみます」

「やった。よろしくね」


 喜んで小さく跳ねるレイシア。ゴリ押ししといて無邪気な人です。


「あの、すみません。本当にすみません」

「いえ。お掛けになって、少々お待ちください」


 少し慌てた調子でぱたぱたと、通路の先に消えていくニームさん。


「やったね、ユイリ!」

「押しかけて迷惑かけてるなあ……」


 嬉しそうな様子のレイシアに、わたしはついつい苦笑します。


「今度お詫びにお菓子でも買ってあげようか」

「レイシア。相手、貴族様って忘れてるでしょ」


 庶民的な解決方法にため息をつく。

 ニームさんの去って行った先を眺めながらとりとめない話をしていると背後から人の気配がします。どうやら、また誰かがこのお店の中に入ってきたようです。

 わたしたちみたいな闖入者ではなく、正式に招待されたお客様でしょうが。


「先輩? なんでこんなところにいるんだ」

「えっ」


 聞き覚えのある声に慌てて振り向く。

 すると、そこにいたのはユウさんの同級生にて先日決闘もしたこともある因縁の人、ディラックさんでした。


「いえ、ディラックさんこそ、どうしたんですか?」

「どうもこうもない。招待されたから来た。元々、うちの家系はヴェネト王国でも歴史は古い方だからな」

「あ、そうなんですか」


 ディラックさんはヴェネト王国の出身の方のようです。貴族様ですし、それならこの場に呼ばれるのも当然かもしれません。


「まあ、うちの家系の話はいい。先輩も呼ばれているのか?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど。まあその、色々ありまして」

「ユウ・フタバでもいるのか?」


 曖昧に濁したわたしの様子に、ディラックさんは警戒するようにあたりを見回す。ユウさんに無理やり連れてこられたとでも勘違いしているのでしょうか。

 ユウさんはイベントごとに首を突っ込むタイプじゃないですよ。


「いえ、ユウさんは別行動です。ちょっとわけあって」

「そうか」


 言いながら、受付机にある鈴を鳴らす。慣れた様子でした。なるほど、人がいない場合はこうして呼び出しをすればいいんですね。

 ディラックさんは手持無沙汰に案内を待つ様子でしたので、初対面のレイシアとディラックさんを紹介し合います。

 レイシアはディラックさんの家について知識はあるらしく、応対は節度をもったものです。慣れ親しんだ級友のそつのない応対にちょっとだけびっくりしますが、この学園で暮らしているとそういうものは自然と身に付くものなのかもしれません。


「最近は、ユウさん、学校でどうですか?」

「普通だな。というか、相変わらずというか」

「そうですか……」


 あまり周囲に馴染めていないのは変わらずのようです。うーん、なにかいいきっかけでもあればいいんですけれど。


「先輩は、よくあいつに付き合ってられるな」

「ユウさん、結構いいところありますよ。一応ひと月以上は一緒にいるので、なんだか色々慣れましたし」

「ま、時間も経てばもう少しは落ち着くだろうがな」


 ディラックさんはさして興味も内容にそう言うと、軽く目線で通路の方を示す。見てみると、ニームさんが戻ってくるのが見えます。


「ディラック・ジェリド・イル・オーレリア様。お待たせいたして申し訳ございませんでした。ご案内させていただきます」


 ニームさんの言葉に頷くディラックさん。


「先輩方も、了承をいただきましたのでご案内をいたします」


 こちらへどうぞ、と先導してくれる。


「やったね、ユイリ」


 小声で言ってくるレイシア。


「いいのかな……」


 わたしの方は、なんだか無理矢理ねじ込んじゃったなあ、という感じでむしろ気まずいんですが。


「了承って、どういうことだ?」

「えっと、まあその、色々ありまして」

「まあ、なんでもいいが」


 ディラックさんはちょっと不思議そうにしていました。











 王女様の主催するお茶会ですので、格式ばったパーティで、わたしたちは端の方に立って趨勢を見守るだけ……などと思っていたのですが、案内された大部屋を見回してもっと気安い会食だとわかりました。

 部屋の中にはいくつものテーブルが並び、立食パーティという体になっているようで、何十人もの生徒やその従者がひしめいている。一面の窓はすべて開放されてその先のテラス、そして中庭へと続いていて、外に出て歓談している生徒もいるようです。

 総じて彼らの表情は明るく、戦時下の国の方とは思えない溌剌さがありました。

 この学園に暮らしているととかく宴会というものにはよく出ることになりますが、総じて大騒ぎになるそんな集まりと比べてみると、圧倒的に落ち着いた場です。流れている音楽も物静かな印象です。


 お知り合いの方でもいたのでしょうか、ディラックさんはわたしたちに声をかけると、来席している生徒たちの輪の中に入って行ってしまいました。

 ニームさんもすぐにどこかに行ってしまい、わたしとレイシアが残されます。


「レイシア、こういう時わたしたちはどうすればいいのかな?」

「隅っこでご飯食べてればいいでしょ。貴族の会食ってそんなもんよ。ほら、そういう人たちいるでしょ」


 たしかに言われて見てみれば、壁のあたりに何人か背筋を伸ばして棒立ちしている人がいます。多分、招待された貴族の方の使用人とか傍仕えなのでしょう。主人の呼び出しがあるまで隅で待機、という感じです。

 でもご飯食べている人もいますね。けっこう自由なんでしょうか。


「私たちは挨拶する人がいるわけでもないし、食事でもしてましょ。余裕があればお姫様にお近づきになりたいけど、今は無理そうね」


 会場の中央付近、お姫様のいるあたりは混み合っています。来席した生徒たちがまず挨拶に向かっていて、順番待ちになっているという感じです。

 それにしても、王族の方をまたもこんな至近距離で見ることができるなんて、今度実家に手紙を書く時はなんだか自慢ができそうです。


 セレスティン王女は遠目に見ていても楚々とした雰囲気の可愛い女の子です。か弱い印象のある方ですが、さすがにこういう場での立ち居振る舞いは慣れたものなのでしょう、挨拶に来る生徒たちとにこやかに言葉を交わしています。挨拶とはいっても、一言二言で終わるというほどのものでもなく、あれこれとお喋りをしています。

 ああやって囲まれていると、ご飯を食べる時間もなさそうです。


 王女様を遠巻きに眺めながら、わたしたちは手近なテーブルから食事を取る。当然ながらお金をかけているのでしょう、高級品の味がします。

 王女様をぼおおっと眺めているのも暇なのでしょう、隣のレイシアが出席者について解説をしてくれる。さすが新聞部、隣国の上流階級の名前にも通じているようで、誰がどんな人なのかよく知っているようです。


「あのちょっとたれ目の男子がバーミリオン公爵家の次男ね。一時期は『アサシンダガー』の副部長まで上り詰めたけれど、実家に勘当されそうになってそっちからは手を引いたらしいわ」

「へえ」


 ちなみにアサシンダガーというのは、去年まで存在していた女子更衣室の覗きを専門に活動していた地下クラブです。守備隊に滅ぼされました。部長は退学、祖国へ返送になったと聞いていましたが。


「その横の青いドレスの女の子はライン一門って呼ばれている敬教の一派の子ね。半裸のアイリス。去年の結界破りを半裸で成功させたことで一躍有名になったわ」

「ふぅん」

「あっちにいる眼鏡の男。一昨年に地下賭博で家を一軒賭けて盛大に負けて爆死卿イズルードと呼ばれた……」

「まともな人いないの!?」


 和やかに進んでいる会食の場が、どうしようもない人たちの集まりに見えてきたんですけど!


「いや、私の知識はどうしてもゴシップ寄りだから」

「ああそう……」


 なんだか、脱力してくる。でもまあ、彼らもお偉いさまといってもやっぱりこの学園の生徒なんだなあ、という気になってちょっと安心してしまう。もちろん魔法の才能に目を向ければ人並み外れた人たちでしょう。


 ふたりもぐもぐしていると、遠目にウサコさんの姿が見えました。

 赤髪だから、目立ちます。顔立ちも派手めな美人ですし、守備隊の隊長をしていたという威光も相まって注目もされているようです。

 彼女は今は王女様の護衛。守備隊長から引き抜きみたいな感じで今のお仕事に移ったのですが、周囲からは先日の結界破りの責任を取って左遷させられたと見られているんですよねえ。

 とはいえ、ウサコさんは超然としたところがあり、周囲の反応は特に気にする人でもないですけど。

 ウサコさんは制服姿でひとり、巡回するようにすたすたと歩いている。最近はいつ見ても守備隊の白銀の鎧を着ていたので、それ以外の格好をしているのは珍しい。というよりは、制服姿を見るのは初めてなんじゃないでしょうか。


 ついつい凝視していたわたしの視線に気付いてか、ウサコさんがこちらを向く。視線が交わり、ウサコさんはふっと表情を緩めると真っ直ぐこちらにやってくる。


「久しぶりね、ユイリ」

「あ、はい。お疲れ様です」

「こんにちは、先輩」


 レイシアが外向きの笑顔で笑う。ウサコさんはそれに対して、うさんくさげな視線を返す。


「新聞部の取材とは聞いているけれど、取材は受けないわ。お好きなように、勝手に記事でもかいてちょうだい」

「はい。ご厚意でお招きいただきましたので、誠意を持って記事にさせていただきます」


 折り目正しく挨拶をするレイシア。名刺を渡すと、ウサコさんは道でチラシでも貰ったかのようにぞんざいにポケットに突っ込み、肩をすくめる。


「記事にするほどのこともないわ。本当にただのお茶会よ。顔合わせの会というだけ」


 レイシアの方を見もしません。


「あの、ウサコさんは王女様に付いていなくていいんですか? 護衛なんですよね?」

「心配いらないわ。他の人間が付いているから」


 たしかに言われて見てみると、王女様のわきには護衛と思しき女子生徒がふたりほど付いています。なるほど、ウサコさんが護衛とはいっても、ひとりで付きっきりになっているというわけではないんですね。


「特に危険もないでしょうけど、まあ、あの子たちにとっても練習みたいなものね」

「先輩は、同じ守備隊の中で異動してまったく別の仕事に変わりましたけれど、もうお仕事には慣れましたか?」

「普通」

「ウサコさん、ちゃんとお休みとかあるんですか?」

「週に一日授業がある日があるのだけれど、その日がお休みみたいなものかしら。でも、それ以外の日もあの子が校舎にいる間は私の管轄ではないから、空いている時間は結構あるわね。送り迎えまでが私の仕事なのよ。隊長だった頃に比べれば、随分時間もできたわね」

「先輩、お時間ある時は、何をされているんですか?」

「特別なことはしていないわ」

「ウサコさんは前は空いた時修業とかしていましたけど、今もそうなんですか?」

「そうね、たしかにあの頃と変わっていないわね。サボると取り返すのが大変とも言うけれど、私の場合は体を動かしていないと落ち着かないのよ。最近はあのユウ・フタバという一年生を仮想敵にしているわね」

「ウサコさん、負けず嫌いですね」


 わたしがくすくすと笑うと、ウサコさんはいじけるように鼻を鳴らした。


「単純に実力で負けているというより、あの時は戦術を誤った……というか、どう戦うかとっさに案がなかった感じね。でも次戦う時は負けないわ」


 また戦うつもりなんですかねえ。少し前の結界破りの死闘を思い出して苦笑いを浮かべてしまう。

 ウサコさんはあの時、同世代の人に負けるのは初めてと言っていましたから、このままでは自分が許せないとかそういうのがあるんでしょうか。


「ああ、言っておくけど」


 わたしが内心いずれ来るかもしれないふたりの激突に思いを馳せていると、ウサコさんは睨むような視線をレイシアに向ける。


「私は別にあの子を恨んでいるというわけじゃないわ。つまらない記事は書かないでちょうだい」

「も、もちろん、心得ています」


 結界破りの直後はユウさんとウサコさんの対立をことさらに煽るような新聞記事が乱れ飛びました。新入生が守備隊長を破ったのだから当然なのでしょうけど。そろそろ沈静化してきたその話題を掘り起こすようなことがないように釘を刺しておいたのでしょう。

 ……その割には、今にも射殺さんばかりの視線でさすがのレイシアも顔色が青白くなっていますが。


 そうしてしばらくウサコさんとおしゃべりをしていると、だんだんと周囲の生徒から視線が集まってくることに気が付きます。人嫌いの毛のあるウサコさんが長話をしている姿は珍しいものでしょうから、当然かもしれません。


「……それじゃ、私は仕事に戻るわ。大した会ではないけれど、ふたりとも、楽しんでいってちょうだい。ご飯はいくら食べても、ただよ」


 ウサコさんも目立ってきたのを気にしてか、そう言うとさっさと周囲の警戒の仕事に戻っていきました。

 頭を下げて見送るわたしの横で、レイシアは疲れたように肩を落とす。


「レイシア? どうしたの?」


 レイシアは苦笑しながら汗をぬぐう。


「いや、ウサコ先輩、プレッシャーすごいね」

「そう?」


 たしかに存在感のある人だとは思いますが、結構やさしい人です。


「そうよ。まあ、私に対して当たりが強かったのもあるけどね」


 そう言ってから、まあ仕方がないか、とつぶやく。

 新聞部。好かれる理由はないでしょう。


「それにしても、ユイリはやっぱり先輩に好かれてるね。一緒に来てもらってよかったよ」

「そうなのかな」

「私の質問ほとんど切って捨てられてたのに、ユイリの話はきちんと聞いてくれてたでしょ。扱いの差にびびるわ」

「人見知りなのかも」

「どうだかねえ……。でも、いい経験だったわ」


 満足そうに笑って、なにやらメモを書き始めるレイシア。ウサコさんとの会話を書き留めているのでしょう。

 手持無沙汰になったわたしは、ぼおおっと会場の中を眺めます。さすがにわたしの交友関係はそう広くもないので、見知った顔などはほとんどありません。


 ウサコさん、ディラックさん、ニームさん、王女様。そんなものでしょう。


 そんなことを考えていると不意にちらりとこちらに顔を向けた王女様と目が合う。ぼおおっと彼女を眺めていて、視線を感じたのでしょうか。

 どぎまぎしているとにこりと笑顔を向けられる。その表情の感じで、どうやらわたしが恐れ多くも王女様に認知されているようだとわかります。結界破りの日、顔を合わせた時間はわずかでしたが、顔くらいは覚えてくれたようです。

 あの日は散々な大騒ぎに終わったものでしたが、この反応を見るに無礼者と思われているというわけでもなさそうで、ちょっとほっとします。

 わたしはぺこりと一礼する。


「どうしたの?」


 メモを取り終わったのか、横のレイシアが尋ねる。その時には既に、王女様は彼女を囲む生徒たちの対応に戻っていました。


「ううん、別に」


 このお茶会の場で末席も末席なわたしに対して王女様はその一瞥をくれたのみですが、ありがたいと思うべきでしょう。残りの時間は隅の方で呼ばれるのを待つ付き人たちと同じように目立つこともなく時間を過ごしました。

 レイシアは途中から黙っているのももったいないと思ったのか、ちょっと行ってくる、と言い残して貴族様の輪の中に入って行ってしまいました。一人になって手持無沙汰になってみるとレイシアに付いて行った方がよかったのかもしれないとも思いましたが、さすがに今さら遅すぎです。


「先輩。随分、暇そうだな」


 不意に声を掛けられる。誰かと思って見てみると、それはディラックさんでした。共連れもなくひとりで、隣の壁にもたれかかる。どことなく疲れたような印象です。


「わたし、部外者ですから。そちらこそいいんですか? せっかくの会食なのに、逃げてきちゃって」

「必要な挨拶は済ませた。あとは帰るだけだ」


 そう言って息をつく。なんだか貴族社会の大変さを垣間見た気がします。

 とはいっても、飲み会で挨拶回りに行かないといけない面倒さはわたしにもちょっとわかりますが。学園に来る前、わたしの家はふるさとでは名家という扱いでしたから、父の存命中お祭りの時などは色々な人とお酌しながら言葉を交わしたものです。

 貴族様も同じようなもので、でもきっと挨拶の内容は装飾過多なのでしょうが。


「うちは武家だからな。あまり貴族の派閥にも関わっていない。ほら、連中を見てみると集団になってるだろ」

「なってますね」


 会食ですから、どうしたっていくつもの輪に分かれるものです。


「あれが大体、王国の勢力図だな」

「へえ、そうなんですね」


 改めて会場を見てみると、王女様の周囲が一番人が多い。やっぱり王族が最大派閥、ということなんでしょうか。政治のあれこれはよくわからないので、彼の言葉に相槌をうつのみです。


「でも、わたしなんかと話してていいんですか? わたし、けっこう部外者ですよ?」

「部外者の先輩のところにいれば、余計な奴は寄ってこないだろ。その方が楽だからな」


 どうやら、こういう集まりはあんまり得意ではないようです。まあ、気の知れた仲間との集まりというタイプの会でもないでしょうし、半分お仕事みたいな感じなのかもしれません。


「それに、先輩は結構有名人だろ。俺としても、繋がりはあるに越したことはない」


 有名人というのは、わたしの特待生という立場からなのか、ユウさんと近しい人間だからなのか。そのあたりの含みがわからないので、わたしは曖昧に笑って頷いておく。含みなどはなく、言ってみただけなのかもしれませんが。


「貴族の方って、こういう場ではどんなお話をされるんですか?」

「大体、お互いの家族や共通の知り合いの噂話だな。まあ、ここにいるのは生徒だけだから、あとは学園のことだな」

「へええ」


 こう言ってはなんですが、ふるさととかとそう変わらない話題のようです。偉い人たちなので政治とか経済とかの専門的な話をしているのかなとも思っていましたが、社交の場ではそこまででもないようです。

 実際、見てみると歓談している様子はあっても論争している人もないので、簡単な情報交換というくらいの話題に落ち着くのでしょう。


「家族の話ですか。ディラックさんは、ご兄妹とかいらっしゃるんですか?」


 早速教えを生かしてみると、家族についてぽつぽつと話してくれる。ご両親は健在で、兄妹は兄と妹がいるそうです。お兄さんは一軍を率いるほどに出世しているようで、兄のことを話す時、ディラックさんの声はいつもより弾みます。


「先輩は、兄妹とかいるのか?」

「はい。下にいますね。妹が二人と、弟が二人。わたしを入れて五人兄弟ですね」

「多いな、兄妹」

「わたしの実家は田舎ですので、子だくさんな傾向はあるかもしれません」


 わたしとしては、貴族の家の方がお妾さんとかを多く抱えて血縁関係色々血みどろ、というような印象がありますけれど。小説の読みすぎでしょうか。


 ……そんな話をしている内に、お食事会も終わりに近づいたようです。最後に王女様が一堂に簡単に挨拶をして、お開きとなりました。


 王女様の挨拶も現在進行形の戦争についてはさらりと触れる程度で、最低限です。明るい雰囲気で社交を楽しむ場なんですよ、というくらいの軽みのある話し口です。

 うーん、愛憎渦巻く上流階級の集まりなどという印象で乗り込んだものでしたが、中に入ってみると見た目は普通のお食事会で、そこまで身分の違いというものを感じさせるものではありませんでした。

 もちろんこの会場は日常で足を踏み入れるにはちょっと高級すぎるようなお店ですが。参加者たちも学園の指定の制服ですので、服装で贅を凝らすというほどの感じでもないですし。


 まあそもそも、いわゆる貴族、というようなタイプの方はわざわざイヴォケード魔法学園に入学するという道は選びませんし、そういう意味ではここにいるのはみんなけっこう異端児なのでしょう。


「ユイリ、お疲れ」


 華やかなざわめきが徐々にほぐれていき、なんとなく夢から覚めたような気分になってボーっとしていると、気安い調子でレイシアがぽんぽん、と肩をたたく。


「あ、うん。取材はできたの?」


 わたしの問いに、彼女はぐっと指を立てる。


「いい感じ。まあ、あんまりスキャンダルはなかったけど、仮にあっても今回は書けないからね」

「そんな記事が出たら、あんたから漏れたってまるわかりだからな」


 新聞部のレイシアをうさんくさそうに眺めるディラックさん。まあ、この学園の新聞部、などという肩書きだけ見るとその表情は当然かもしれません。面白おかしい事件が好きな人種であるのは間違いないですから。


「もちろん、そんなことはしませんわ。この学園に報道関連のクラブはたくさんありますが、我が報道部は清廉潔白、真に事実を追及する集団ですから」


 言いながらディラックさんに名刺を押し付けるレイシア。ディラックさんは押し込まれて、反射的にその名刺を受け取っています。


「なにか面白い話や相談事があったら、そのアドレスに連絡してね。一日十回はチェックしてるから、レスポンスは早いわよ」


 押しが強くて、あんまり貴族を敬う様子でも無いレイシアの様子に苦笑するディラックさん。

 さっき受付室で言葉を交わした時に比べると、ずいぶん口もざっくばらんになっています。


「機会があれば、連絡させてもらおう」


 気のない言い方で名刺を懐にしまう。

 彼は彼で用事でもあるのでしょう。手短に辞去の言葉を口にすると、去っていきます。彼の場合は護衛とか従者とかを引き連れていないので、ずいぶんと身軽そうです。本人の戦闘能力が高いから護衛が必要ないのかもしれませんが、それにしたって特殊な方じゃないでしょうか。


「私たちも帰ろっか」

「うん」


 慣れない場所に身を置いて、なんだか少し疲れました。部屋に帰って、ごろごろしたいです。

 わたしたちも帰途につく生徒に混じり、会場を後にします。最後にちらりと振り返ると、中では未だに王女様の周囲に人だかりが途切れずありました。王女様っていうと優雅そうな印象がありますが、気が休まる暇もなくて大変そうだなあ、という気もします。

 王女様の脇にいたウサコさんが目ざとくわたしの視線に気付いて、ちらりと視線を返してくる。目礼をすると、ウサコさんも小さくひとつ、頷いてみせます。

 ウサコさんが王女様の護衛になったのはごく最近のことのはずなのですが、もうずいぶん様になったような感じです。何をやってもできる人ですので、王族の護衛くらいはへっちゃらなのかもしれません。


 ともあれ、そうしてわたしたちは王女様のお茶会から辞する。雨上りの空に、帰途につきました。

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