シャルと夏の日その1!入浴!
そして夕食が終わり、お風呂の掃除や食器の片付けが終わったあとは、私はシャルと一緒にテレビを見て時間を費やしていた。
シャルはどんな内容のテレビでも真剣に見ては、バラエティ番組だと声を出して笑って鑑賞している。
そして何か面白そうなことをテレビに出演している芸人が口にすれば、すぐに小さなノートにメモをしていた。
こうやってネタを集めている姿を見かけると、勉強より熱心なんだなと思ってしまう。
「シャルー、そろそろお風呂入りなさい」
「お風呂ですか?私は今はこの番組を見ているので、ご主人様が先に入浴して良いですよ。私は後から入ります」
「そう。じゃあ先に行かせて貰うわ」
テレビに熱中しているシャルの後ろ姿を尻目に、私は風呂場の方へと足を運んだ。
そして簡単に入浴の準備を済ましてから脱衣し、風呂場へと入る。
「微妙に甘い匂いがするわ…。シャルの匂いかしら」
私は自分の体臭とは別の匂いに気づき、腕の部分を嗅いだ。
きっとシャルが舐めて来たり、べたべたとよく抱きついてくるからだ。
それにシャルは基本的に甘い物や臭いの強い肉類を口にしているため、その匂いが私の体に染みつきかけている。
「嫌いな臭いではないけれど、好きな臭いでもないわね。シャルの体臭ならともかく…、食べ物の臭いはちょっとね……」
私は頭を洗い流してから、次に体を洗おうとした。
すると脱衣所から、荒々しく駆け込んでくる足音が聞こえてきた。
家の中で駆け回るのはシャルしかいない。
お父さんが駆け回るときは相当忙しい時だけだ。
そして脱衣所で慌ただしく脱衣するシャルの影が、扉のガラス越しに見えてはすぐに扉が開けられた。
「ご主人様、体を洗ってあげますよ!」
シャルは華奢で麗しい肌を晒しては、笑顔で風呂場に姿を現した。
それに対して、私はタオルで体を隠しながら答える。
「急にどうしたのよ。ずいぶんと唐突ね」
「昔はいつもご主人様に洗って貰っていましたからね!たまには洗ってさしあげますよ!洗い方が上達したので、その腕前を披露します!」
「昔って…一年前くらいのこと?それとも犬の姿のとき?それに別に洗って貰わなくても…」
「任せて下さい!シャルは介護もできる補助犬ですから!」
シャルは自信満々に言っては、私に近づいて背中に触れてきた。
何だか、洗ってもシャルの匂いが体に染みつきそうだ。
そしてシャルは私が何か言う前に、タオルにボディシャンプーを染み込ませて私の体を洗おうとしてくる。
「もう、してもいいけれど丁寧にね?」
「もちろん優しく丁寧に全身を洗います!足のつま先から髪の先まで!」
「切実にボディシャンプーで髪まで洗うのはやめて。髪が痛むから」
「毛は大事ですからねー。私も尻尾の毛には、いつもリンス使っていますよ!」
シャルはそう言いながら、心なしか毛に艶のある尻尾を振ってみせる。
最近、妙に尻尾の毛がしなやかだなと思っていたのだけど、そういう理由があったのか。
今度、シャルの尻尾を握って確かめてみたい。
「じゃあ、洗わせて貰いますね。まずは首からです。その次に肩、腕、背中、胸、お腹。そして脚……うへへへ」
「ちょっと、待って。何でにやけるのよ!急に不安になったのだけど!」
「すみません、想像しただけで涎と興奮が止まらなくなってしまいました」
そのシャルの言葉は偽りではなく、犬の尻尾と耳が激しく反応を示していた。
これはいつもの発情……。
私は戦慄を覚える。
おかしい、風呂場で体を温めているはずなのに寒気が出てくる。
しかも身の危険による寒気。
なぜ体を洗って貰うだけなのに、こんな思いをしなくてはいけない。
「ごめんなさい、シャル。やっぱり遠慮……」
「いきますよ、ご主人様!覚悟っ!」
「覚悟ってなによ!遠慮……って危な…!」
シャルはタオルを手にしているにも関わらず、私に抱き付いては顔を近づけてきた。
舐められそうで怖い。
というより、すでにもう洗う流れには思えない。
「さぁ、綺麗にしますよ。汚れ一つ残しませんから」
「不思議ね。体の汚れは落ちても、汚されている気がするわ」
シャルは密着に近い状態ではあるものの、私の体を洗い出す。
意外にも洗い方は普通ではあるのだけど、時折シャルの息がかかってくるのが気になる。
何だろう、いかがわしいプレイみたいだ。
シャルは普通のつもりなんだろうけど、一概に普通とは言い難い。
「腕~、お胸~、お腹~、脇腹~、脚~、足のつま先………わふぅ。へっ、えへっえへっえへへ…はぁはぁ…」
「ちょっと大丈夫、シャル?」
この時のシャルの眼は正常とは言い難く、変に見開いていては息が荒くなっていた。
身の危険を感じる。
しかしシャルはその様子に反した言葉を上辺だけ口にした。
「大丈夫ですよ……、別に興奮なんかしていませんから。えぇ、していません。していませんとも。ただ、ちょっとだけ匂いを嗅いだり、舐めたりしてもいいですか?」
「発情してるじゃない!もう一日どれだけ私を舐めるつもりよ!私は飴じゃないわよ!?」
「ご主人様のことがちょっと好きなだけです。だから一日中、ご主人様を堪能していたいくらいですよ!」
言葉の繋がりが意味不明すぎる。
一体どのような過程が加われば、好きだから堪能したいという思いが湧き出てくるのか疑問だ。
シャルは桶で私にお湯を被せて、シャンプーを洗い流した。
「わっ…!」
急に一気にかけてくるものだから、私は目を瞑って怯む。
そしてすかさず怯んでいる私にシャルが抱き付いてきた。
シャルの早くなった鼓動が伝わってくる。
それにお湯のせいか体が火照っているせいで、妙な気分だ。
「ご主人様、いいですか?」
「駄目よ」
「それは今は駄目ということでしょうか?」
「今も後も駄目。明日も駄目、絶対にダメ!ノータッチ!」
「うーん、残念です。それなら代わりに私の体を洗って下さい!髪の先から尻尾の先まで!」
シャルは私から離れては目の前に立って、なぜか胸を張ってくる。
年相応…とは言っても、私の年代と同じくらいの体つきで堂々と構えている。
なんだろう、洗ってあげたいけれど洗いづらい。
そもそもついさっきの発情のこともあるから、気を付けて洗わなければいつ襲われるのか分からない。
「分かったから、落ち着いてくれる?洗ってあげるから」
「はい、お願いしますなのですよ!へっへっへっへっ…!」
「すでに息が怖いのだけど」
私は手にシャンプーを垂らしては、恐る恐るシャルの髪の毛を洗い出す。
すると意外にもシャルの黙り込んでは、しおらしい反応を示した。
尻尾は激しく動いているが、耳は垂れて体を縮みこませている。
「わふぅ……髪は自分で洗うより、人に洗って貰う方が気持ちいいですね。とっても幸せな気分になりますよ。どんなあり溢れた日常でも、こういう小さくて幸せなひと時はかけがえないものです」
「なに、また何か良いこといったつもり?ほら、目を瞑りなさい」
「わわっ、泡が…。あぁ、あと耳がくすぐったいです」
「ん~、耳がいいのか~。このメス犬め~」
私はいたずらっぽく言っては、わざとシャルの犬耳を重点的に揉んで洗う。
とても柔らかい。
それにシャルは本当にくすぐったいらしく、押し殺した笑い声を漏らしていた。
「ご、ご主人様。本当に勘弁してください…!気持ちはいいんですけれど、ご主人様の手つきが凄くいやらしいですよ!」
「いやらしいって何よ。いつもいやらしい事をしているのはシャルでしょ。それと、私は普通に洗っているつもりだけど。ほら、洗い流すわよ」
私は声をかけてから、シャルにお湯をかけてシャンプーを流した。
そしてシャンプーが洗い流れれば、同時にシャルは頭を振ってお湯を飛ばした。
「わわっ、だからそれやめなさいって…」
「うぅ~、ごめんなさいです。じゃあ、ご主人様。今度はその手で私の体を洗って下さい!耳の時と同じように、揉んで揉んで揉みまくっていいですよ!」
「揉み洗いなんてしないわよ。普通に専用のタオル使うから」
「ふっふっふ~、本当はあずみさんみたく、私の胸を触りたくて仕方ないくせに~」
「そんな気持ち、一切ないよ。ほら、お座り!そして待て!さぁいくわよ、シャル!いい?絶対に発情しないでね!絶対によ!」
「はい、私は絶対に興奮しません!そんな興奮なんてするわけないじゃないですか!………あぁ、でも駄目です。ご主人様の手つきには勝てません……」
「えぇ……?」
このあと、私はシャルの体を洗っていくけれど、案の定シャルは興奮してはさっきのような出来事を繰り返すのだった。




