5.かっこよく幕引き!
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拙いとこもありますけど、よろしくお願いします(^^)
「演技をする上で大切なことは3つの視点だ」
僕は新人時代の時、年は1つ上だが中卒と同時にこの業界に入ったという尊敬する先輩に尋ねた。アクションをするのに大切なことを。
「お客さんの視点、自分の視点、その物語のキャラクターの視点だ」
「殺陣も戦う演技だ。本質は変わらん。だが、殺陣に必要なのはそれだけじゃない」
「技術ですか?」
「確かにそれも必要だ。だが演技もそれは同じこと」
むぅ、言われてみれば。
「最も必要なのは、把握と理解だ」
「把握と・・・理解?」
「そうだ。自分や相手の立ち位置、一挙手一投足を把握していれば、お前のリスクは限りなく0に近づく。それが把握だ」
むむむ。難しいな意外と。
「次だ。あるがままを受け入れろ。これを見ろ」
先輩の手にはコップがあった。
「これに水が入っていたらお前はこれを何だと答える?」
「コップ・・ですよね?」
「正解だ。ならもしこの中身が水ではなく、鉛筆やペンだったら?」
僕は考えた。
「ペン差し・・ですか?」
「正解だ。そしてそれが理解だ。」
「???」
どういうことだろう?
「さっきお前はこれをコップと答えたが、今はペン差しと答えた。それはこの物体にからむ要素が変わったからだ。」
うん?
「コップがペン差しに変化したのではないだろう?要するに個々人の使い方で物の価値は決まると言っても過言じゃない。使用者が物を理解しているほどにその物の使い方は無限に広がる。面白い発想とはものを理解してからうまれるのだからな。それは物でなくとも人でも同じことが言える。もっとも、お前ならすぐに出来るさ。」
「ん?どうしてですか?」
「決まってるだろう」
先輩は当たり前の事のように僕に言ってくる。
「俺の勘だ!」
ええぇ~。
「そうさ。重要なのは把握と理解なんだ。」
目の前には盗賊四人組とダークエルフの女の子1人か。
「何言ってんだ!てめぇ!」
「舐めやがって!」
盗賊二人が剣を振り上げてレイに襲いかかった。
・・・歯向かっても勝ち目がない相手とも思わずに。
右が早くて左が遅れてくる!
僕は瞬時にそう判断し、まず右の盗賊へ向かって行く。
「死ねやァ!!!」
右の盗賊が剣を降り下ろした・・・否、
降り下ろそうとした。が、剣を持ってる手を既に掴まれていた。
僕の手によって。
「てめぇ!いつの間に!?」
盗賊はそのまま押し込もうとするが、いったい華奢な少年の手のどこにそんな力があるのかと、まったく動かせないことに疑念を抱いているようだ。
しかし僕は止まらない!
「・・・2・1・0っ!はぁっ!」
気合いと共に盗賊の腕を捻り上げ体をある方向に向けさせた。
今にも剣を降り下ろそうとしている左の盗賊に向けて。
「っ!くそっ!」
「ぐぅおおおお!」
右の盗賊は苦悶の声を上げた。
切り裂かれた胸からは夥しい量の血が吹き出した。
僕はそれを確認するとすぐに右の盗賊の足を払い、容赦なく背中から叩き落とした。
そして仲間を切ってしまい、放心している左の盗賊の顔面に向けて決め技であるファイブ・フォーティー(540度キック)を放ち、一撃で昏倒させた。
圧倒的であった。
全てが流れるように綺麗に決まった。まるで打ち合わせでもしていたかのように。
そう、まるで
舞台のように。
僕はゆっくりと上体を上げ、血の気が引いている残りの盗賊二人に向けて片手を上げた。
そして、
『氷王の剣』
紡がれた言葉とともに空中に氷塊が形成される。
現れたのは一振りの剣。
全高15メートルほどの巨剣が。
「これで、幕引きだ!」
『薙ぎ払え。氷王の剣!!』
瞬間、
氷の巨剣が地を薙いだ。
魔術使ってみました!