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47.アルテミスの別名はシンシアです。

先週中に更新したかった・・・・・・・・・・。


お待たせいたしました(╥ω╥`)





僕が集合場所に選んだのは噴水のある広場である。到着すると、既に皆集まってくれていた。

……若干約一名離れた位置にいる女嫌い(アッシュ)もいるが。

まあそれはおいておこう。

ちなみにお姉ちゃんは学園長への報告を早々に済ませて僕を待とうとしていたのだが、どうも話が長引きそうだったので先にこちらへ向かってもらった。


だからこうなるのも仕方ないんだ。

まさか無言で抱きつかれるとは思わなかったが。

というわけで改めて、お姉ちゃんに抱きつかれながら僕は挨拶をした。

格好つかないなぁ。


「遅くなってごめん皆。ちょっと報告が長引いてしまってね」


するとミリアが答えた。


「構わないわよ。お疲れ、レイ。お姉さんから事情は聞いてるわ。大変だったわね」

「あ、そうだったんだ」


お姉ちゃんを見るとウィンクされた。

正直説明の手間が省けたのでとても嬉しかった。

なのでありがとうの意味を込めた微笑みを返しておく。


「ん~~!」


するとお姉ちゃんはより一層強く抱きしめてきた。

やはりこの世界にはレイシス(お姉ちゃん)よりお姉ちゃんに相応しいお姉ちゃんは存在しないだろうと改めて僕は確信した。

…………自分で言っておいてややこしいな。


僕が1人くだらない考え事をしていると、


「お前は俺達を姉とのラブラブ空間を見せるために呼び出したのか?だったら帰らせてもらうぞ」


そこで僕は周囲を見回した。

そこに居るみんなが白けた視線を僕らに送っていることに初めて気がついた。


「……ごめんなさい」


僕は赤面してそそくさと姉から離れるのであった。






満月が噴水を照らす幻想的な夜。

僕以外の皆が固唾をのんで見守る中、それは行われた。


「じゃあ…………始めるよ」


最後に皆へ確認をとる。

誰もが首を縦に振った。

それを確認した僕も一つ頷きを返し、左手の薬指に嵌っている指輪へ神力を通す。

すると指輪は淡く輝きを放ち、作動した。


「お願いね」


僕が静かに呟く。


『任せて』


返ってきたのはとても頼もしい答えだった。

その後指輪は輝きを無くし、いつもの状態へと戻った。


ガイがやや興奮気味に話しかけてくる。


「なあレイ!もう終わったのか?それとも実は既に目の前にいるのか!?」


ミュウがややまゆを吊り上げて窘める。


「ちょっとガイ!静かにしてて!」


そこでロゼリーナが不安げに聞いてくる。


「……でも指輪は光ったけど、何も起きないですわね。大丈夫ですの?」


僕はその問いに自信のある笑みで答え、数秒目を閉じた。

やがて目を開けた僕は静かに上空を指差した。

つられて天に目を向ける一行。


この時付き合いの浅いロゼリーナ、ミュウ、ガイは気づかなかったが、幼馴染みと姉は知っていた。

こういう笑みを僕が浮かべた後に起こる現象は、ド肝を抜くという言葉がいつもピッタリ当てはまるということに。


だからそのある種の覚悟が無かったロゼリーナ、ミュウ、ガイは思考を停止してしまった。


そこに金色の神力が渦巻いていたのだから。


それが何なのかは神になった僕とお姉ちゃんにしか分からない。

ただ、途轍もないエネルギーが集まっているのだという認識はあるのだ。


だが、ただ集まってるだけではない。

それは形を変え、徐々に姿を変えてゆき、やがて完全な人の形を成す。


そして、光が晴れた。


現れたのは一柱の美しく、清らかな女神であった。

彼女は空からゆっくりと降りてきて、静かに僕の横へと着地した。

その後流れるような動作で一礼すると、高く澄んだ美しい声で自己紹介をした。


「初めまして皆様。私はレイの妻、狩猟と貞潔の女神――――――――シンシアと申します」


そこに居たのはこの世界の主神、黒髪金瞳が特徴的な月の女神アルテミス…………ではなくアルテミスと全く同じ顔をした狩猟と貞潔の女神、白髪銀瞳のシンシアであった。





誰もがその美しさに目を奪われる中、一早く立ち直ったのはお姉ちゃんとミリアだった。


「どうしてレイ君と女神様が?普通神様と出会う機会なんて無いわよね?」

「うん。なんでレイを選んだのですか?」


お姉ちゃんはいつも通りでミリアは敬語だ。

神様相手に物怖じしない。さすがお姉ちゃん。

そんなことを考えていると、アル……シンシアは話し始めた。


「そのことについてですが、レイシス、ミリア。それからここにいるすべての方々を信頼してこれよりレイの……いえ、佐藤 黎という異世界人の人生についてお話しさせていただきます」

「ッ!?」


思わず僕はシンシアを見た。

おそらく僕の目には今、不安や恐怖などが表れていることだろう。

なぜならそれは生まれてから言おうとしても結局誰にも言えなかったことなのだから。

それを言っては何かが変わってしまうと思って。


だが、シンシアは僕の視線を受けて安心させるような笑みを浮かべながら『念話』で言った。


『この人達なら大丈夫よレイ。それにこのことについて話さないと私が罪悪感に押しつぶされそうだわ』


なんだろう。

罪悪感?

シンシアは何を言っているのだろうか。


『これから話すことはあなたの本当の死因について。それとあなたが知らない真実を話すわ』


それだけ言って、シンシアは語り出した。

真実の物語を。



「レイ・ヴァン・アイブリンガーは――――――――転生者です」






それからシンシアは前世の僕の波乱万丈なエピソードをみんなに話した。


「…………というわけで、黎は虐待を受けていたにも関わらず、真っ直ぐ育ち、やがて皆を笑顔にするような立派な人間になったのです」


つまりシンシアは僕を本当の意味で生まれた時から知っていたことになる。

謎は深まるばかりだ。


「ところが、黎には一つ、周りの人間とは大きく違ったところがあったの。それが彼の死因に直結するわ」


そこで一度言葉を区切るシンシア。

皆が固唾をのんで次の言葉を待った。

そして僕の真実の死因が明らかになる。


「潜在能力、よ」


みんなの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


「彼は生まれた時から潜在能力が極めて高かったの。そこで最高神様はなんとかその能力を封印して人間の枠に収めました。でもその封印も完璧ではなく、彼は魔力の無い世界に一人魔力を宿す人間になってしまったのです」


知らなかった。

前世の僕がいつのまにか魔力に目覚めてたなんて。


「魔力の器がない世界で魔力がうまれると、世界のバランスは崩れ、やがて終焉を迎えるのです。最高神様はそれを防ぐために自ら世界に降り立ち、彼を不自然でない形で殺しました」


僕は言葉を失った。

まさか僕の死因に最高神様とやらが直接関わっているとは思いもしなかった。


「ですが私は黎が大好きでした。愛していました。なので最高神様に許可を取り、彼を魔力のあるこの『ゼロ』へと転生させたのです。彼はその関係で生まれた時から知り合いでした。彼も私を愛してくれていると分かったのはつい最近で、そこで私とレイは結ばれたのです」


話し終えたシンシアは僕の方を向き、頭を下げた。


「レイ、謝って済む話ではないでしょうけど、神の事情で前世での生を道半ばで閉ざしてしまったこと、本当にごめんなさい」

「・・・・・・・・・」


僕は頭を下げたシンシアをしばらく見つめた。

やがて彼女の傍まで来ると、


「てい!」

「痛ッ!?」


地味に痛い神力チョップをかました。

若干涙目になっているシンシアは顔を上げ、僕を不思議そうに見つめていた。


「誰が殺したとか、そんな話は正直どうでもいいんだ!」


うん。だって過ぎたことだしね。

確かに前世で未練はあったけど、今のこの世界に生きる僕にとってはどうでもいい。


「僕が今一番怒っているのはそんなこと(・・・・・)で未だに悩んでいるシンシアだよ。さっきのチョップはそのことに対しての罰」

「そんなことって・・・・・・・・・・恨んでないの?」


シンシアが唖然としている。

おっと、少し口がとんがってしまったか。

まあいい。話を続けよう。


「恨むわけない!いいかい?僕は今、この世界で生きていることがとても楽しい。だってシンシア・・・・・ああ、もういいや!アルとも出会えたし、ここに居る皆とも出会えたんだ!それは紛れもなくアルのおかげでしょ!違う?」

「あ、え?レイ?アルって・・・・・?」

「・・・・・まさか」

「月の女神・・・・・アルテミス様?」


あれ?なんかバレんの早いな。ま、いっか。

つまり彼女は前世から僕のことを愛してくれていて、だからこの世界に僕を転生させてくれたということだ。

そのおかげで今僕はこうしてみんなと笑い合えるし、人を愛すことができるのだ。

生きてる。僕は。

生かしてくれたのはアル以外の誰でもない。

だから感謝こそすれ恨むなどお門違いもいいところだ。


「それに、感謝していることはまだまだたくさんある。僕は前世で子供に夢と希望を与えていたけれど、今のこの力を使えばこの世界のみんなに夢と希望を見せられるんだよ!その機会を君は僕にくれたんだ!だからアル、僕は君をまったく恨んでなんかない。佐藤 黎は死ぬべくして死んだ。でもレイ・ヴァン・アイブリンガーは君のおかげで生きている。だから…………!!」


「もうそんなことで思い悩む必要はない!君は胸を張ってこれから僕の妻として一緒に長生きして欲しい!」

「レイ…………ええ。分かったわ」


いつのまにかアルテミスの瞳からは涙が溢れていた。

ああ、泣かせてしまった。

けど、たぶんこれで良かったはずだ。

アルテミスは涙を拭うと、一言だけ呟くように、しかし万感の想いをこめて言った。


「ありがとう」


僕も微笑みながら同じく一言だけ返した。


「どういたしまして」


冷える夜。

しかしレイとアルテミス、そしてその場にいる皆のあいだには確かに暖かな空気が流れていた。



しばらくして完全に涙が止まったアルテミスはもう一度集まってくれた彼らに自己紹介をした。


「改めまして皆様。私はこの世界の主神にして月の女神、そしてレイの妻のアルテミスと申します。先ほどは失礼致しました」


そこには艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、月の光のような金色の瞳を持つ女神が、静かに一礼をした。


「彼との馴れ初めは先の通りです。他に何かご質問はございますか?」


そこで思いもよらぬ人物が手を挙げた。

アッシュだ。

アッシュはアルの目の前まで来ると、その瞳を真っ直ぐアルへと向けた。


「もしもだ。世界か、レイ(コイツ)か選べと言われたらあんたはどう答える?」


…………。

……なんつー質問しやがるんだこのツンデレ野郎は!

そんなの選べるわけ無「レイを選びます」……え?

アルさん、今なんと?


「あなたが言ったのは必ずどちらかを選ばなければいけない、取捨選択の時ですよね?でしたら私はどちらも救う方法についてたくさん考え、それでもだめなら最終的にはレイを選ぶと思います」

「…………」


アッシュとアルテミスはしばらくの間見つめ合うと、やがてアッシュが先に視線を逸らした。


「ふっ……そうか」


……今、アッシュが笑った?

その後アッシュは背を向けて去っていった。

なんなんだアイツ?


「…………いい友達ね。レイ」

「え~?そうかな」

「ええ。そうよ」


まあいい奴だとはたまに、ほんのたまに思うが。

すると今度はお姉ちゃんがつかつかとアルの前まで来た。

そしてお姉ちゃんは亜空間よりさっき僕が創った魔剣を取り出し……ってなにしてんの!?

お姉ちゃんはそれをアルの前に翳すと、


「もしもレイ君を泣かせたらこの剣であなたを斬るわ」


あれ?なんかおかしい。

それ普通男の子に言うセリフだよね?

違和感がすごい。


「スレイ副隊長。この件はファンクラブ内でもあなたと私だけの秘密よ?いい?」

「イエス、マム!」


お姉ちゃんは亜空間に魔剣を仕舞うと僕に「おやすみ」と言って去っていった。

何なの?イエス、マムって。

ファンクラブって実は軍隊なのかな。

お姉ちゃんだったらありそうだ。


視線をアルに戻す。

アルは残ったメンバーを見回して言った。


「さて。私もそろそろ神界に戻るわ。でもその前にロゼリーナ。それとミリアとミュウ、スレイ」

「「「「は、はい!なんでしょうか!?」」」」


やっぱりアルテミスには皆まだ緊張しているようだ。


ん?それにしてもどうしたんだろう。

何か他に言うことでもあるのかなと思っていると、アルテミスから思いもよらない言葉が発せられた。



「私、妻は何人でも構わないと考えているから、どうか諦めないで」

「「「「…………はい?」」」」


…………ん!?

おかしいな。

なんか変なことが聞こえた気が…………。


「こんなにイイ男は世界中探しても絶対居ないわよ?うふふ。それじゃあ、失礼するわ」


アルは最後に爆弾を落として、金色の光とともに去っていった。

…………。



「アルぅーーーーーーー!!」


僕の絶叫が夜の学園に響いた。


満月が笑っているように見えたのは僕だけだろうか?







春休みなのに更新速度が上がらないッッ!!


なるべく早くなるよう努力致します(´×ω×`)

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