46.姉神、降臨なされました
色々、色々ありまして、本当に申し訳ありませんでした!!
まさか1か月も放置するなんて…………すみません。
そしてなろうコン一次審査通過いたしましたッッ!!!!!
まさか420作品に残れるとは……嬉死しそうですw
忘れてる方もいらっしゃるかと思いますので短くあらすじを。
臨時講師としてお姉ちゃんが学園へ来る
→魔剣作って
→模擬戦しようとしたらバッカス乱入
「グルァア"ア"ア"ア"ア"!!」
突っ込んできたバッカスみたいな悪魔を僕は手に持つ刀でヒラリと受け流し、避けた勢いを利用し、渾身の力で悪魔を叩き切った。
「ってあれ!?」
しかし刀は触れる直前になって刃ではなく峰の方を悪魔に向けた。
「グルッ!?」
悪魔が悲鳴を上げるが、
「……そうだった。これ不殺じゃん……」
受けた攻撃が峰打ちだったため、すぐに体制を立て直し反撃をしてきた。
「グルッ!!」
図体がでかい割に意外と速い。
仕方なく僕はまた刀で受け流そうとしたが、その必要はなかった。
僕の目の前に一瞬で移動した者が、バッカスの腕を切り飛ばしたのだ。
もちろん、『憤怒の大剣』を携えたお姉ちゃんだ。
「グルァッ!?」
これにはたまらず悪魔も悲鳴を上げ後退。
しかし斬り飛ばされたはずの腕は傷口からボコボコと不快な音を立てるとたちまち再生してしまった。
一連の流れを見て僕は呆然とし、思わずお姉ちゃんを見上げる。
「ありがとう…………ってお姉ちゃん!危ないから下がって!そいつから魔力以外の危険な力を感じる。大体、その悪魔の狙いは僕で「レイ君」……え?なに?」
バッカスから流れ出す危険なオーラを感じ、お姉ちゃんに注意を促すが、途中で遮られた。
お姉ちゃんの声が若干震えているが、怖いのだろうか?
しかし僕は次のお姉ちゃんの言葉に、まだまだ自分はお姉ちゃんというものを理解できていなかったと痛感させられる。
「あいつがレイ君を殺そうとした奴だよね?」
先ほどよりももっと声を震わせ、問うてくるお姉ちゃん。
僕は即答する。
否、即答してしまった。
「そうだけど?お姉ちゃん、大丈……夫…………?」
背後からでは顔が見にくいと思い、僕はお姉ちゃんと並び、顔をのぞき込むように見上げた。
しかし心配は瞬時に霧散した。
そこには般若がいたのだから。
「そう。あいつがレイ君を傷つけようとした奴なのね。だったら…………」
お姉ちゃんの震えが止まった。
これこそまさに嵐の前の静けさだった。
「赦せないわね!!」
言葉とともに放たれたのは暴れ狂う魔力の奔流であった。
いや、言い変えよう。
放たれたのは怒気だ。
お姉ちゃんの怒りが爆発し、感情のままに魔力が暴れ回っているのだ。
つまりお姉ちゃん、マジギレである。
未だかつて、軽く怒ることはあっても、僕は姉の”我を忘れるくらいの怒り”を見たことが無かった。
だからこそ今日途轍もなく重要なことに今更ながら気がついたのだ。
お姉ちゃんは怒るとガチで怖い、ということに。
閑話休題。
お姉ちゃんの暴れ狂う魔力はやがて一ヶ所に集約されていく。
『憤怒の大剣』へと。
変化はすぐに起きた。
お姉ちゃんの髪と瞳が赤から黄へ。黄から白へと一瞬で変化し、憤怒の大剣には白炎が渦巻いていた。
しかし、憤怒の大剣はなおもお姉ちゃんの魔力を吸収する。
そう、まるで…………限界を超えるかのように。
ここで炎について僕が現代知識を取り入れて説明しておこう。
まず、炎とは、火の中でも、気体が燃焼するときに見られる穂のような、光と熱を発している部分を指す。語源は火の穂から由来していると言われている。
気体以外が燃焼する場合にも炎が見られることがあるが、まあこれらも一旦可燃性の気体が生成されてそれが燃焼している。
これが地球での炎についての見解だ。
しかしここは異世界。
この世界の人々は魔法で炎を作り出すことができる。
その過程は魔力で熱と光を発生させ、炎を作り出すのだ。
だが、炎の本質がこの世界で損なわれているわけではない。
炎は何かを燃料に燃えている。
ではその何かとは?
無論魔力だ。
魔力によって炎を作り出し、持ち主の魔力を燃料にそれを維持する。
これによって初めて炎の魔法ができるのだ。
炎に酸素を送り込むと色が変わるように炎の魔法へ魔力を込めれば込めるほど火力が上がり、炎の色も変わる。
そして炎の色は虹の色と同じくエネルギーが高いほど波長が短くなるのだ。
このことから、白炎はとても強力だということが分かる。
だが、物体の発火現象として白よりもさらにエネルギーの高い炎がある。
青だ。
青こそが最も強力な炎と言える。
つまり何が言いたいかって?
お姉ちゃんの炎、青白くなってるんだ…………。
髪と瞳も青白く、とても綺麗な輝きを放っている。
いつの間にか憤怒の大剣は輪郭だけの存在と化し、まるで大剣の形をした渦巻く青白い炎を片手に持っているようにも見える。
いや、ホント。あんな機能つけた覚えないんだけどなぁ。
そして何より驚いたのが、
お姉ちゃん、神になってます。
……。
…………。
………………。
なんでぇええええ!!?
確かに創成するとき神力使ったよ?でも持ち主を神格化させるようなものは作った覚えがないんだけどッ!?
お姉ちゃんはおもむろに青白い炎でできた大剣をバッカスに突きつけると、
「いくわよ」
と一言言って飛び出していった。
その速度は先ほど僕に突っ込んできた時とは段違いの速さだった。
バッカスは次の瞬間には四肢を切り落とされ、地面と熱いキスをするハメになっていた。
い、一応《超解析》で見てみよう……。
僕の右目が金色に輝きお姉ちゃんのステータスを映し出す。
レイシス・ヴァン・アイブリンガー 半竜神
Lv.526 女 20歳
称号: 天才 |兄のプライドをへし折る者弟を愛する変態淑女 姉の目姉の耳姉の鼻 第六感《レイ君レーダー》 炎竜王 灼熱の炎竜姫 理想の姉 美女 第三王子に求婚された者 第三王子を振った者 第三王子を泣かした者 レイ君は私の全て 弟の幸せを願う姉 弟の敵は私の敵 炎の司者 限界突破 炎竜神 憤怒の化身
職業: 理想の姉
うん、うん。
よく分からん!
天才なのはわかる。プライドクラッシャーも分からなくはない。でもそっから先が色々おかしいよね!!
まず大体僕に関することだし!
職業とかなんで理想の姉!?絶対戦闘系かと思ってたよ!!
そして顔も知らない第三王子さん、なんか姉がすみません!
どうかお姉ちゃんから受けた傷が癒えて新しい相手が見つかることを祈ってます…………。
ホント何やってんだろう我が姉は。
王子泣かしたらあかんで。
……うん、もういいや。
今関係あるのだけ見よう。
フレイムマイスター、限界突破、炎竜神に憤怒の化身。
そして種族が半竜神。
完璧に神力覚醒していらっしゃいますね。
覚醒したのはどうしようもないし、まあいっか。
結論を出したところで改めて前方を見ると、四肢を切り落とされたはずのバッカスが瞬く間に再生をし、お姉ちゃんを脅威とみなしたのか、再びお姉ちゃんへ襲いかかった。
しかしお姉ちゃんの右手がぶれたと思うとまたもやバッカスは四肢を切り落とされ、今度はさらに首や頭までも細切れになっていた。
だがそれでもバッカスは再生する。
やはりあのよく分からない力の恩恵だろう。
そもそも悪魔とは何かよく分かってないのだ。
悪魔は魔力や気とは異なる力を持つ、この世の生物全てに敵対する種族である。
肌は真っ黒く、禍々しい角、蝙蝠のような羽、細長い尻尾が外見の特徴だ。
そして謎の再生力。
分かっているのはそれだけ。
普通だったら対処のしようがないが、ここにいるのは生憎普通の姉弟ではない。
「グルルッ!!」
再生が終わるとまたもや愚直に突っ込んでいくバッカス。
お姉ちゃんはそれに対し、今度は左手を前に向け、青き炎を収束。
射程範囲に入ると同時に発射した。
だが、バッカスもそこまで愚かではないようだ。
素早く射線上から退き、そのまま炎をやり過ごそうとする。
「甘いわ」
お姉ちゃんは冷酷な声を発すると、青き炎球は高速で移動し、バッカスへとぶつかった。
否、呑み込んだ。
バッカスはそのまま火達磨と化し、その場でもがき苦しむ。
皮膚が炭化し、ボロボロと崩れゆく中、青き炎に包まれたバッカスの胸元に鈍い輝きを放つ黒い石がはまっているのが見えた。
「そこね」
お姉ちゃんはそれを見逃さず瞬時にバッカスとの距離を詰め、
「死んでレイ君に詫びなさい」
槍のごとく渦巻く青炎の大剣をバッカスの胸元へと突き立てた。
パリン、と黒い石が砕けた。
「グルァアアアアアア!!!」
肉体の再生が止まったバッカスは悲鳴をあげながら灰となっていった。
この勝負、お姉ちゃんの完全勝利だった。
バッカスが消えたことで怒りが収まったのか渦巻いていた炎はすっかり消え、髪や瞳も元通りに戻ったお姉ちゃんは戦闘後疲れたのか地面に突き立てた憤怒の大剣に背を預けその場で休み始めた。
「つ、疲れたぁ~」
「お姉ちゃん、お疲れ様。そして神化おめでとう」
「へ?何のことレイ君?」
「まさかの無自覚でしたか…………」
驚きを通り越して呆れてしまった。
無自覚で神力を扱っていたのだこの姉は。
流石天才である。
その後、自分が何をしたのか分かっていないお姉ちゃんに神になったことや戦闘中に神力を扱っていたことを伝えた。
「ふぅ~ん。で、それを知ってるってことはレイ君も神になってたわけ?それも随分前から」
「うん。そうだけど……」
「隠してたんだよね?お姉ちゃんに」
「え!?いや、だって信じないでしょ?僕は神だって言っても」
「レイ君の言うことなら信じるわ!!」
「そうだったこういう人だったんだ…………」
隠していた自分がアホらしくなる。
もうお姉ちゃんにならアルと結婚したと言ってもいいかもしれない。
そんな気さえしてきた。
「とにかく、隠し事はダメよ。レイ君?」
「…………はい」
抱きしめられたらいうこと聞いちゃうよね、うん。
その後、事後処理に来た学園長に「また貴様か」とお小言をもらい、簡単な報告をして解散となった。
お小言には断固抗議したかったが、僕もやることがあるので素直にいうことを聞いて報告をした。
報告を聞いた学園長は難しそうな表情を浮かべた。
「どうかしましたか?」
「いや、な。通常の悪魔にその黒い石など存在しないのだ。そもそも悪魔に心臓は無い。核はあるが人間の心臓部と同一の部分には確認されていないのだ」
「つまり?」
「人間が悪魔化した。いや、外部の者にさせられたというのが有力か」
「となると一番怪しいのは帝国ですか」
「かもしれん。バッカスはどうやら帝国と繋がりがあったらしいからな。それに奴らならそんな研究をやっていても不思議はない。悪魔に近くされどもなりきれない。さしすざめこれは擬似悪魔結晶とでも言ったところかの」
「擬似悪魔結晶…………」
「あくまで予想だがの」
「いえ、ありがとうございました」
僕は擬似悪魔結晶と言う名を頭に刻みその場を後にした。
まったく……面倒事の臭いがぷんぷんするね。
少し気落ちしつつも、僕はみんなと約束した場所へ向かうのであった。




