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44.あいらぶしすたー

戦闘回!戦闘回が書きたい!


なのでぶっこんでみました(^^)



「…………ということがあって僕は爵位と領地を得るとともに第四王女ロゼリーナと婚約したというわけです」

「ふぅ~ん」


僕は食堂にてバッカスとの一件を事細かに話し、そのうえでロゼリーナのこともありのままをお姉ちゃんに話した。

お姉ちゃんは飲み物を飲みながら静かに僕の話を聞いていた。

僕はお姉ちゃんがどういう反応をするか、終始ビクビクしながらお姉ちゃんが次の言葉を発するのを待っていた。

お姉ちゃんはジュースを口にし、やがて意外にも落ち着いた声音で話し始めた。


「お姉ちゃんはね。なにも婚約したことに怒っているわけじゃないのよ」

「え?」

「そりゃレイ君は可愛いし、レイ君以上の男がいるとは考えられないけど、でも私はレイ君のお姉ちゃんだから。弟の幸せを願ってこそ良いお姉ちゃんでしょう?」

「お姉ちゃん……」

「お姉ちゃんが怒ってるのはレイ君がそういう『大事なこと』を私に隠したことよ。そういうことされるとお姉ちゃん悲しくなっちゃうな」

「……ごめんなさい」

「そう思うならお姉ちゃんに全部話しちゃいなさい。とくに、その左手の薬指に嵌めてる指輪のこととかね」


バッチリウィンクを決めるお姉ちゃん。

なんで分かったんだろう?

僕のことはなんでもお見通しってことかな。


「実はね」

「うんうん」


そこでお姉ちゃんはまた一口ジュースを口に入れた。

僕は思い切って真実を話してみることにした。


「僕、結婚したんだ」

「ブホォオオオ!!」

「え?お姉ちゃん!大丈夫?」


席を立ち、思わず対面に座る姉の背中をさする。

盛大にむせたせいか、お姉ちゃんの咳はなかなか止まらなかった。

やっと落ち着いてきたところでお姉ちゃんは何やら呟いた。


「聞いてないわよ…………スレイ副隊長!」


ん?スレイ?スレイってうちのクラスのスレイさん?


「はは。隊長、お呼びでしょうか?」


するとどこからともなくスレイさんが現れ、何故かお姉ちゃんに跪いた。

どっからでてきたの!?

周りの人すっげぇびっくりしてるからね!?


ていうか隊長って何?

まさかうちのお姉ちゃんが隊長だったの!?

僕の知らないところで何か様々なことが起きていたようです。

とりあえず席に戻ろう。


ん?なんか二人で内緒話し始めたんだが、せめて僕の目の前以外でやって欲しいな。

会話全部筒抜けなんですが。


「スレイ。レイ君が左手の薬指に指輪を嵌めたとは聞いたけど、結婚していたとは聞いてないわよ?」

「申し訳ありません隊長。まさかレイ様がどなたかとご結婚されているとは…………スレイ、一生の不覚です」


一生の不覚って……そこまでなんだ……。


「そんなことは今はいいのよ。お相手の予測は?」

「私の考えではミリア様かミュウさん。あるいは裏をかいてミュウさんの双子の弟、ガイさん。ルームメイトのアッシュさん。以上が候補ですが、入学から今日まで目立った動きはございませんでした」


うん。後半不吉すぎるよね。

寒気がしてくるんだけど。


「レイ君はノーマルよ。……つまり私達の知らない誰か。もしくは学園外部の者ということね」

「そうですか……ノーマルですか……残念です……。レイシス隊長の予測は正しいかと思われます」


そこでなぜ残念がる!?

まさかスレイさんって頭に腐のつく女子さんだったのか?

個人の趣味は否定しないけど僕を巻き込まないでくださいお願いですから!


「そうよね。……ニーナはどうなの?」

「好感は持っているようなのですが、発展するのはだいぶ先かと思われます。となると外部の者……」

「いいえ。まだ居たわ。学園内部の者で私達が今日まで知らず、なおかつレイ君に好感を持っている者……」

「……はっ!まさか!」

「ええ!」


「「キリカ(先生)よ!(ですね!)」」


「いや違うよ!!?」


思わずツッコミを入れてしまった。

僕だって今日知り合ったばかりだよ?

そんなにプレイボーイじゃないから僕。


「じゃあ誰なのよレイ君?」

「そうですね。これは『レイ様を嫁にし隊』の今後を大きく左右しますから正確な情報を要求します」

「うぅ~……はぁ、仕方ないか」


僕は観念した。

どのみちいつか話さなければならないのだ。

だが、やはりありのままを話すわけにはいかない。

しかし下手な嘘をつくと後で後悔するのは自分だ。

たがらここは…………。


「ただし、言うのは明日ね。皆が集まったら説明するよ。それでいい?」

「構わないわよ」

「分かりました」


我に策あり。






その後、お姉ちゃん達から開放された僕は寮へと戻った。

雑談しているうちにいつの間にか夕食の時間になっていたようで、そのままご飯を食べて今に至るというわけである。


「にしてもお姉ちゃん説得するのは大変だったなぁ」


なんとお姉ちゃん。

男子寮に泊まると言い始めたのだ。

さすがにそれはまずいと思い、必死に説得したのだ。

最終的に今度の休日は一緒に王都をまわるということで納得してくれた。


たぶんお姉ちゃんが部屋に来たら大惨事になっていたことだろう。

主にアッシュの精神が。

僕でさえああなのだからお姉ちゃんだったら発狂するのではないだろうか。


「アッシュ。君の危機は僕が救ったよ」

「お前は頭に(うじ)でも湧いてるんじゃないか?」

「うっさいバーカ。僕がどれだけ大変な思いをしたか!」

「なぜいきなりガキみたいになる?おい、枕を投げるのはやめろ。埃がたつだろう」

「あ、そうだアッシュ。明日の放課後空いてる?ちょっと話すべきことがあるんだけど」

「……面倒だな。今ここじゃ駄目なのか?」

「ん~皆にも知らせたいからなぁ」

「皆とは女もいるのか?だったら行かんぞ。女は嫌いだ」


女って聞くと目の色変わるな。

アッシュの場合は嫌悪的な意味で。


「その女嫌いなおした方がいいよ?」

「余計なお世話だ。で、今じゃ駄目なのか?」

「明日がいいな。今夜は曇ってるから月が見えないし」

「そうか……ならば行ってやる」

「ありがとうアッシュ!」

「ふん。俺はもう寝る」

「うん、おやすみ」

「……ああ」


やはりアッシュはいい奴だ。

僕もお風呂入って闇魔法の復習したら寝ようかな。

と、その前に……。


「おやすみアル」

『おやすみなさいレイ』


最愛の妻への言葉も忘れない。

ああ、幸せだ。







ここは王都の外れにある地下牢。

皆が寝静まった頃、一人の罪人が膝を抱えてカビの生えた冷たい床の上に座っていた。

その者の名はバッカス・ヴァン・ポンコッツ。

第四王女を誘拐した本人であった。


「レイ・ヴァン・アイブリンガー。殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル!!」


既に刑を言い渡された死刑囚バッカスは恨み言を呪文の如く呟きながらただ自分が殺されるその時を待ち続ける。


否、待ち続けるはずだった。


罪人の既に聞き慣れてしまった不吉な呪詛を牢番の兵は辟易しながら聞き流す。

今日も変わらない苦痛な仕事を早く終わらないかと思いながら兵士は牢番を続けた。


コツ。


すると不意に前方から足音が聞こえた。

まだ交代の時間には早いと感じながらも、同僚の兵士を待つ。

どうせここに来るのは自分と同じ兵士しかいないと予想しながら。


しかし、その予想は外れた。

現れたのはボロボロのローブを纏った大男だった。

牢番の兵士は予想の斜め上をいく事態にまったくついていけなかった。

それが兵士の運命を決めた。

避けられぬ死の運命に。


『む?見張りの兵士か。ということはコイツで最後か』


兵士からしたらまったくわからない言語で大男が喋り出した。

そこでようやく兵士は我に返り、急いで敵の襲来を同僚に伝えるべく、大声で叫んだ。

……叫ぼうとした。


「て、敵しゅっ!?」


ゴトリ。

床に落ちたのは先程まで牢番をしていた兵士の生首だった。

兵士の首から下は立ったまま血を噴き、やがて地面に崩れ落ちた。


『脆いな。人間は』


右腕を振りきった状態の大男が言った。

否、それは右腕などとは到底言えないような形状をしていた。

絶えず脈動し、赤黒い肉が硬質化したような物体が剣のような形を成して右腕と同化しているのだから。


男はそのままバッカスの入っている檻まで近づくと右腕の何かでそのまま鉄格子を切り裂いた。

バッカスがそれに気づき喜色の笑みを浮かべ、大男に縋りついた。


「ああ。来てくださったんですね。さあ、俺様を助けてください。黒騎士殿」

『本来なら見捨てるつもりだったが……』


黒騎士、と呼ばれた大男は足に縋りつくバッカスを蹴り飛ばした。

2、3回バッカスは地面を転がり、やがてなぜとでも言いたげに黒騎士を見上げた。

黒騎士は剣の形をした右腕を元の形状に戻し、バッカスに歩み寄る。


『お前には利用価値ができた』


バッカスの頭を左手で鷲掴みにし、持ち上げる。

その状態で懐から血を凝縮させたかのような禍々しい結晶を取り出した。


「黒騎士殿、何を……?」

『馬鹿な奴だ。我らに利用されているとも気づかずに。せいぜい最後まで役に立ってくれ』

「黒騎士殿?」

「オマエニチカラヲヤロウ。レイ・ヴァン・アイブリンガーヲコロスタメノチカラヲナ」


酷く片言な喋り方で黒騎士が話し始める。

しかしバッカスは不信に思うどころか嬉しそうに望みを言った。


「黒騎士殿お願いします!アイツを殺す力を俺様にください!」

「ヨカロウ」


それだけ言うと黒騎士は結晶を持った右手をそのままバッカスの心臓部に突き入れた。


「ぐぇっ!ぐ、ぐ、グォオオオオ!!」


途端にバッカスの肉体に変化が起きた。

目が異常に充血し、大きく裂けた口には牙が生え揃っていた。

体躯は3倍ほど膨れ上がり、全身を筋肉の鎧が覆う。

そして頭からは2本の捻れた角が左右非対称に生え、背中からはコウモリのような翼が広げられていた。

この姿を見たら誰もがこう表現するだろう。


悪魔、と。


『擬似悪魔化結晶。人間の被験者はお前が初めてだが、一日経てば体に馴染む。それまでどこかに身を潜めていろ。なに、時間はたっぷりある』

「グルゥ」

『確実に殺せ。いいな?』

「グルッ!」

『よし。行け!』

「グルルッ!」


バッカス……いや、かつてバッカスだった者は翼をはためかせ、天井を突き破り、そのまま飛び去っていった。



『全ては皇帝陛下の御心のままに』



黒騎士は闇に溶け込むようにその場を後にした。





この日牢に勤める兵士数十名が何者かの手によって命を奪われた。


お読みいただきありがとうございます(^O^)

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