42.最強臨時講師見参!
おはようございます(^O^)
今日から学校か……眠い……(╥ω╥`)
「♪~~」
上機嫌でスキップしながら教室に向かう。
なんでこんなに機嫌がいいのかって?
それはね~、
・朝のアッシュとの出来事
・朝からアルテミスが可愛かったこと
・食堂でミリアと会ったこと
・これからロゼリーナに会うから
・これから久しぶりにクラスの皆と会うから
・今日の授業はついに属性ごとの魔法についてだから
以上の理由から今日の僕はこれ以上ないくらいに上機嫌なのだ!
よし、教室とうちゃ~く。
そして僕は中に入った……。
パンッ!
パンッパンッ!
教室に入ると一斉にクルッカーの小気味良い破裂音が鳴った。
「っ!?え、え?」
あまりにも突然のことだったので思わず狼狽えて教室内を見る僕。
そこには一列にバッカスを除いたクラスの皆とニーナ先生が並んでいた。
そして声を揃えて、
『『『レイ様!公爵就任と婚約おめでとう!』』』
え?なんで様付け?
あ、ロゼリーナ発見。
恥ずかしそうに赤面して俯いている。
とりあえず……、
「……ありがとう皆!」
僕は笑顔でそう言った。
「え~と。どうして様付けだったの?」
少し落ち着いた頃に僕は皆に尋ねた。
代表してニーナ先生が答えてくれる。
「このささやかな祝会で一番悩んだのは貴様をどう呼ぶかだったぞ、アイブリンガー」
「え?どうしてです?」
普通にレイで良くない?
するとニーナ先生が呆れ気味に言った。
「私もそう言ったんだがな……貴様を呼び捨てで呼ぶのは恐れ多いとか言う奴が出始めてな」
「は?」
「所謂ふぁんくらぶというやつだ」
「…………」
間の抜けた声を出してしまった。
いつから僕はスターになったんだ?
すると三つ編みお下げの眼鏡をかけた童顔の女の子が前に出てきた。
彼女の名前は……確かスレイさんだったかな。
彼女は少し古臭い眼鏡を押し上げながらキリッとした声で喋り出した。
「わたしはこの学園の『レイ様を嫁にし隊』を仕切っております、副隊長のスレイと申します。レイ様、今日はお話出来て光栄に思います。僭越ながらわたしが呼び方の案を出させていただきました。いかがでしょうか?(キリッ)」
お前が元凶かッ!!
いかがだったでしょうか?(キリッ)じゃないよ!?
いい迷惑だからそれ!
僕は自分でも顔が引き攣るのが分かった。
「よ、良かったと思う……よ?ちなみに何人くらい所属してるの?」
「現在隊員は65人です。このクラス全員を強制入隊させれば100人は越すと思われますが、いかが致しましょう?(キリッ)」
いかが致しましょう?(キリッ)じゃねぇええええ!!
それタチの悪い宗教団体と同じたからね!?
でも予想外の多さで何も言えない。
何人規模じゃなくて何十人規模だったよ!?
どんだけいるんだよ……、ちょっと嬉しいとか思って無いよ?
「ちなみに隊員の男女比は4:6とやや女性が多く、最近では3年生にまで入隊する者が出始めております」
その男女比は聞きたくなかったなぁ。
なんで女性がやや多いの?
僕は男なんだけど?
すると、スレイさんは急に赤くなってモジモジし始めた。
「し、しかし、レイ様は入学当時よりも男らしさが増しておられるので、この先女性入隊者も増えることかと……(ポッ)」
「……そっか」
赤くなってるのは可愛い。
素直に可愛いんだが……、
「レ~イ~?」
後ろのロゼリーナが怖いので是非やめていただきたい。
そんなこんなであの後ロゼリーナに一通りお仕置き?調教?をされ、何事も無く授業が始まった。
一時限目は初めての化学……ではなく本当の名前は魔法実験だ。
ヨレヨレの白衣とぐるぐる眼鏡をかけた怪しい男が教えに来た。
この授業ははっきり言って魔法を使った化学だった。
要約すると、まず原子について説明され、それを魔力でくっつけると色々なことができますよとのことだ。
最初は水を作り出すというものだったが、すいへーりーべーを覚えていた僕にとっては簡単だった。
ちなみにこれは生活魔法でもある。
だからなのか、貴族よりも平民の皆の方が感覚で出来ていた。
まあ最終的にみんな出来るようになったので良かった。
にしても原子の概念がこの世界にあったなんてな。
てっきり全部魔力で構成されてるとか思われてても不思議じゃないなと少々失礼なことを考えていた。
世界さんごめんなさい。
まあたぶん勇者の誰かが伝えたんだろうが……。
そういえばサトル王は何代目の勇者なんだろうか?
今度聞いてみよう。
そんなこんなで休み時間。
僕はロゼリーナと一緒に朝から元気なさそうなミュウの席へ向かった。
「やあミュウ」
「っ、レイ!」
僕が話しかけるとアホ毛が天を突かんばかりの勢いで伸びた。
そしてすぐに顔を逸らした。
どうしたんだろうか。
「どうしたの?体調でも悪いのかい?」
僕はなんとなく彼女が居心地無さそうな気配を感じた。
先程から隣にいるロゼリーナをチラチラと窺っている。
本当にどうしたのだろうか?
すると彼女は焦ったような早口で、
「こ、婚約おめでとう!わ、私ちょっとトイレ行ってくるから!」
と言って教室を出ていった。
「う~ん?何となく避けられてる感じ?」
ちょっとショックだなぁ、とか思っていると隣のロゼリーナが呆れたようにこちらを見ていることに気がついた。
「……何かな?」
「もしかして本当に気づいてないんですの?」
「え?何が?」
ロゼリーナはやれやれといった具合に肩をすくめるが、僕にはなんのことだかさっぱりだった。
もしかしてあれかな。女性の悩み的なあれなのかな。
うちのお姉ちゃんもあれの時だけはちょっと機嫌が悪かったし。
それに気付かなかった兄が大変なことに……やめよう。あの時のお姉ちゃんは思い出しただけで震えてくるから。
「……そっとしておこう」
「何を想像してるかは大体予想できますけど、絶対にそれではありませんわよ」
え~。それじゃ分かんないな。
するとロゼリーナが大きく溜め息をつき、
「もういいですわ。私が話をつけてまいります」
「え、あ!ロゼリーナ!」
スタスタと教室を出ていってしまったロゼリーナ。
追いかけた方がいいかな?
でもミュウのところへ行ったみたいだし追いかけたら女子トイレに突入することになってしまう。
「はあ~。女心はいくつになっても分からないなぁ~」
前世を合わせて33歳。
僕は改めて女心の難しさを実感した。
「うぅ~やっちゃったよぉ~」
そう言って噴水広場のベンチに座り、顔を覆ってヘコんでいるのはさっき教室を飛び出したミュウだった。
一通り自己嫌悪をしたところで空を見上げる。
そこには清々しいほどの青空が広がっていた。
(そう。まるであの人の髪のような……)
「って何考えてるの私!?」
ブンブンと考えを霧散させようと頭を振り、最終的に頭を抱え込んで唸りだすミュウ。
(だめだめ!あの人は……レイは王女様の婚約者になったんだから!早くこの想いを忘れないと!)
そこでレイと初めて会った時のことをミュウは思い出した。
可愛くて綺麗で、同性としか思えないような顔つきに、守ってあげたくなるような儚げで華奢な体。
しかしその外見に似合わず実力は別次元のもの。
一度その細腕が剣を振るえば首が落ち、魔法を使えば氷の花が咲き乱れる。
カッコイイと素直に思った。
けれどももうこの恋は叶わない。
だって相手はお姫様なのだから。
しかしミュウの頭には忘れよう忘れようと思う度にレイの笑顔と優しいルビーのような赤い瞳がチラついた。
自然と涙がこぼれ落ちた。
「忘れらない……忘れられるわけ無いよ……レイぃ……」
俯いていると、不意に影が差した。
「やはり貴女もレイが好きだったのですね」
ミュウが顔を上げると、そこには件のお姫様、ロゼリーナがいた。
「ロゼリー、ナ?」
「ええ。お隣、座ってもよろしくて?」
「え、あ、うん……どうぞ」
「ありがとう」
ロゼリーナはそう言って優雅にミュウの隣へ腰掛けた。
(やっぱ私なんかとは全然違うなぁ。まったく勝てる気がしないや)
ミュウは内心、劣等感を感じずにはいられなかった。
するとロゼリーナが話し始めた。
「私まずは貴女に言わなければならないことがありますの」
「え、なに?」
「ごめんなさい!」
ロゼリーナはこちらを向き、頭を下げた。
ミュウは突然のことで頭が回らなくなった。
「な、なにやってるのロゼリーナ!」
「貴女、レイのことが好きだったのでしょう?」
「ふぇっ!?そ、そんなことは……」
「誤魔化さなくても分かりますわ。ですから、結果的に私がレイを横取りしたようなものですもの。私が謝るのは当然ですわ」
「…………。」
思わず黙ってしまうミュウ。
ロゼリーナは頭を上げ今度は少し気落ちしながら言った。
「ですが貴女は1つ勘違いをしています」
「勘違い?」
「ええ。レイはまだ私のものではないということです」
「それってどういう……」
そこでロゼリーナは切なげに表情を歪めた。
「愛してる人が……居るそうですわ」
「え?だってロゼリーナを愛してるんじゃないの?」
「確かに私のことを好きだと、守ってくれるとおっしゃいましたわ。けれどそれは貴女が頼んでも同じこと。二番目だそうです。私は正妻にはなれないそうよ」
「え?え!?ちょっと待って!っていうことは……」
「そう。私は婚約しても未だに片想いですの」
そう言ってやはりまたロゼリーナは切なげに微笑んだ。
しかしミュウは自分がロゼリーナと対等とは思えなかった。
「だ、だとしても!私とロゼリーナが同じ?それは……」
「いいえ、今日改めて知りました。私と貴女、それから前に会った時のミリアさんを見る時のレイの目は全て同じでしたわ。しかし、レイがよく知らない……そうですね、例えばスレイさんを見る目は他人を見る目でしたわ。つまり私と貴女は対等ということですわ!」
「……たとえ婚約していても?」
「ええ。だから諦めなくていいのよ。忘れなくていいの」
「本当?」
「ええ。ですからミュウ……」
そこでロゼリーナは立ち上がり、不敵な笑みを浮かべた。
「勝負ですわ!どちらが先にレイを振り向かせられるか」
そういってロゼリーナは右手を差し伸べてきた。
ミュウは流れていた涙を拭き、迷わずその手を取った。
「うん!」
「急ぎますわよ!次の授業に遅れてしまいます!」
「あ、待ってよロゼリーナぁ~」
この日を境に、ミュウとロゼリーナはライバルと言う名の親友になったのだった。
2次限目が始まる直前にミュウとロゼリーナは教室に戻ってきた。
あれ?ミュウ泣いてたのか?
少し目が赤い。
大丈夫だろうか。
しかし僕の心配は必要無かった。
2次限目の歴史の授業ではいつも以上に気合いが入っており、元気良く発言していた。
なにはともあれ元気になって良かったと素直に思う僕だった。
そして迎えた3時限目。
僕達はこの学園の訓練場に来ていた。
「ついにきたぜ属性魔法の授業!!」
「お前そんなに楽しみにしてたのか?」
「うん!」
隣にいるガイに元気良く返事をする僕。
その隣にいるアルドがやや僕に気圧されていた。
そこでニーナ先生が後ろに人を引き連れてやってきた。
その数5人。
ニーナ先生の後ろの5人は何故か皆ローブを着ていて顔が分からなかった。
「あの人達誰だ?」
隣のガイが話しかけてくる。
「さあ?でも只者じゃないってことは確かだね」
全員が漏れでる魔力を完全に押さえ込んでいた。
そこで僕はあることに気がついた。
あれ?この気配なんかよく知ってる気がするな、と。
そしてそこはかとなく嫌な予感がした。
ニーナ先生が口を開く。
「これより属性魔法の授業を始める。が、残念ながら私だけでは6属性全てを教えることは出来ん。よってこれよりそれぞれの属性の臨時講師を紹介する。では光属性から順に前へ出て自己紹介をしてくれ」
するとローブ姿の一人が前に出て、その顔を晒した。
ローブの下から現れたのは金髪に緋色の目をしたエルフの美女であった。
彼女は一度その長い金髪を振り払うと自己紹介をした。
「光属性を担当するAランク冒険者のフローラよ。『天光のフローラ』とも呼ばれているの。これでも王都ではちょっと名の売れた冒険者なのよ?フローラ先生って気軽に呼んで頂戴。短い間だけどよろしくね」
生徒たちが大きくどよめく。
しかし僕は別のことに驚いていた。
二つ名って自分で名乗るんだ、と。
僕だったら絶対できないな。
次に出てきたのはやや小柄な女性だった。
ローブを取ると、その顔はかなり整っていた。
髪はやや青みがかった黒色で可憐な顔立ち。
しかしその目には隈ができていて見る者に眠たげな印象をあたえた。
「闇の担当……キリカ……ふわぁ」
……それだけ!?
そのままキリカ先生は欠伸をしながら元の位置に戻っていった。
マジか……キャラ濃すぎだろ臨時講師連中。
次に出てきたのはローブ越しでも分かる鍛えられた筋肉を持つめっちゃちっちゃい男だった。
うん。僕だいたい予想できた。
「土の担当、ドワーフのビルドだ!よろしくな小僧共!」
大変元気のいい挨拶でした。
次に出てきたのはローブ越しでは男か女か分からない長身の人だった。
しかし、ローブを取ると女子共がきゃあきゃあと黄色い声をあげはじめた。
どうやら男性だったようだ。
長身で線の細い緑髪のイケメンだった。
「風属性の担当をさせていただきます、ライナと申します。以後お見知りおきを」
やばい。イケメンオーラが半端ない。
次、行ってみようか。
最後に出てきたのは間違いなく女性と判断できた。
なぜかって?
ローブを押し上げて自己主張する女性の証がそれを証明してるからさ。
しかしなんだろう。
さっきから逃げろと本能が告げている。
そしてゆっくりとローブが捲られた。
一瞬誰もがその美貌に見とれた。
そこにいたのは艶やかな赤髪に自分と同じ赤い瞳を持つ美女。
今僕が出来れば会いたくない人No.1。
「あ、レイくぅ~ん!」
「え!?ちょ!」
お姉ちゃんは僕を発見すると目を輝かせて場をわきまえずに飛びかかって来た。
そして何がそうさせるのか、ひたすらスリスリと僕の胸に顔を擦りつけてくる。
隣のガイはその光景を見て唖然としている。
いや、ガイだけではなくクラス内の全員が僕を見て顎が落ちんばかりに口を開けている。
う~ん、ヤバイよねこれ?
するとロゼリーナとミュウがお姉ちゃんに引っ付かれている僕の前に仁王立ちした。
あ、ヤバイヤバイ。二人とも本気で怒ってる。
「レイ?少しお話しよろしいかしら?」
「レイ、私もちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「あはは、何でしょうかお二方」
冷や汗を大量に流しながら僕は返した。
すると二人は僕の胸に顔を押し当て、くんかくんかし始めたレイシスを指差し声を揃えて、
「「その女は誰 (ですの)!!」」
べつにやましいことがあるわけでも無いのでどもりながらも僕は正直に答えた。
「え~と、その、お姉ちゃんです」
・・・・・・・・。
「「「「「姉!?」」」」」
今度はクラス全員が声を揃えて叫んだ。
そこでようやく満足したのか、お姉ちゃんは僕から体を放して立ち上がり、
「初めまして~、ここの卒業生でレイの姉のレイシスでぇ~す。火属性の担当だからよろしくね~」
と呑気に自己紹介をしたのだった
そこでニーナ先生が喋り始めた。
「そして私が水属性の担当だ。この6人で属性魔法の指導を行う。それでは授業を始めるぞ」
ついに属性魔法の授業が始まった。




