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41.クーデレ?ツンデレ?

今回ちょっと短いです(><)




明くる日。


「ふわぁ~」


寮のベットで目を覚まし、大きなあくびをする。


「起きたか。さっさと準備をしろ」


隣のベットを見るとアッシュが制服を既に着用した状態で腰掛けていた。

口調は冷たいが、僕が起きるのを待っていてくれたようだ。

相変わらず冷たいのか優しいのか分からないやつだ。


「おはよーアッシュ。一緒に行こうよ」

「却下だ。お前に合わせていると全ての行動に支障が出る」

「その言い方は酷いなぁ……。そういえばアッシュは闘技大会出るの?」


問いかけるとアッシュは立ち上がり、扉へ向かっていった。


「そんなものに興味はない……と言いたいところだが、師匠に出ろと言われてな。出ることになった」


師匠か。誰だろう?

また今度聞くか。

アッシュもかなり強いからその師匠は間違いなく手練だろうな。


「へぇ~、お互い頑張ろうね!」

「ああ」


アッシュが扉を開け、外に一歩踏み出すとそこで何故か止まった。


「忘れ物でもした?」

「婚約したそうだな」

「え?うん」


それがどうかしたのだろうか。


「そうか」


短く返事をすると、アッシュが突然何かを投げ渡してきた。

いきなりだったので両手でキャッチする。

それは小さな箱だった。


「手土産だ。気に入らなかったら捨ててもらって構わない」

「あ、おい!」


呼び止めようとしたが、既に扉は閉まっていた。

追いかけることは可能だが、パジャマ姿で飛び出す勇気は今の僕には無かった。


「なんなんだアイツ?」


一人になった部屋で僕は一度ため息をつき、アッシュが投げ渡してきた箱を眺めてみる。

うん、何の特徴もない箱だ。


というわけで早速開けてみた。

中に入っていたのは涙みたいな形をした青いイヤリングだった。


「魔道具?」


超解析を使い、よく調べてみた。



名称:ティアイヤリング 作成者:アッシュ


概要: アッシュが友への婚約祝いに製作した。

水の精霊ウンディーネの涙を結晶化させたものをイヤリングに加工した一品。

着用した者は水系統の魔法を使う際、威力または効力が約1.3倍上がる。



これはこれは。

アッシュが僕のことを友と思ってくれてたのは驚きだが、素直に嬉しいな。

もちろん僕だってアッシュのことを友達だと思ってるけどね。

でもなんでイヤリングにしたのかな?

こういうのって女の子に贈るもんじゃないの?

やっぱり僕のこと女の子って思ってるのかなぁ。

そこらへん少し問い詰めたい気もするが、時間がないので支度をすることにする。


でもさぁ……やっぱりアッシュはツンデレだな!

そしていい奴だ。


制服に着替え寝癖を適当に手ぐしで直す。

最後にイヤリングを耳につけ、準備万端だ。


おっと。登校する前にやっておかないと。

薬指にある指輪に神力を込め、愛する妻、月の女神アルテミスにモーニングコールをする。


「おはようアル!」

『おはようレイ』


ほぼノータイムで返事が返ってきたことに驚く。


「……もしかしてずっと待ってた?」

『そ、そんなことないわよ?』


どうやら待っていたようだ。

やっぱりアルは可愛い。

ここはあえて騙されておこう。


「じゃあ学園、行ってくるね」

『行ってらっしゃい』


……なんかこれだけじゃ味気ないな。

ここは新婚さんらしく愛を囁いておこうか。


「愛してるよアルテミス」

『ッ!?!?!?』

「じゃあね」

『え、あ!』


そこで神通念話を切る。

やっぱり動揺したアルは可愛いなぁ。


「やばい……癖になりそうだ」


とても愉快な気分で僕は学園に向かった。







食堂についた。

カウンターに向かって料理を受け取る。

この食堂の日替わり定食はとても美味い。

それは入学一日目にして思ったことだ。

だから僕は今日も日替わり定食を注文した。


今日も大変賑わっている食堂で空いている席を探す。

するとやはり窓際の一角がぽっかりと不自然に空いていた。

僕の幼馴染み兼妹弟子は今日も優雅に一人でご飯を食べているらしい。

たぶんいつものことなんだろうなぁと予想しながら席へと近づいて行った。


「おはようミリア。また一人で食べてるのかい?」

「あ、おはようレイ。別に好きで一人で食べてるわけじゃないよぉ」


案の定、そこには紫髪の美少女ミリアがもそもそと一人で食事をとっていた。


「相席いいかな?」

「そんなの今更聞く仲でもないじゃない。いいわよ別に」

「どうしたんだい?少し不機嫌だね。何か困ったことがあったらいつでも相談に乗るよ」


そう言って僕はパンに齧り付く。

うん。いい焼き加減だ。

たぶんこれ手作りなんじゃないかな。

やっぱりおいしい。


すると前方から視線を感じた。

もちろん前にはミリアしかいない。


「どうかした?」


尋ねるとミリアは目を逸らしながらボソボソと言った。


「……王女様と婚約したのよね?」

「そうだけど……それが?」

「どうして言ってくれなかったのよ?」


ああ、そういうことか。

信頼されて無いかと思ったのかな?

まあそれは誤解なんだけど。


「言うも何も、僕だって行くまで知らなかったからね」

「知らなかった?」

「うん。まさか娘を救ったお礼に娘を差し出されるとは僕も思わなかったよ」


僕は肩をすくめて言った。

正確にはそれだけではなかったのだが、別に言う必要は無いだろう。

いや、言った方がいいのか?

後々こんなことで喧嘩したくはないからなぁ。

言っておくか。


「他にも公爵位と領地を貰ったけど、まあ本格的な仕事は学園を卒業してからになるだろうね」

「え!?じゃあレイは今公爵なの?」

「うん!」


その言葉にミリアは呆れたように溜め息をついた。

なぜに?


「はぁ。つまり婚約はレイから申し出た事ではないってことね?」

「まあそうだね。でも了承したのは間違いなく僕の意志だよ」


ここ大事。

言っておかないとなんか僕が無理矢理婚約させられたみたいになっちゃうからね。


「そう……そうなのね」

「あ、でもロゼリーナは正妻にはならないよ」


食事の手を止めずに言う僕。


「え!?どうして?お姫様じゃない!」


それに対しミリアは驚愕し、身を乗り出して問い詰めてきた。

咀嚼し飲み込むと僕は告げた。


「僕にとっては関係無いよ。王女だろうが貴族だろうが村娘だろうが関係無い。問題は僕を愛してくれるかだからね。それに前から好きな人がいたからね。あ、別にロゼリーナを愛していないわけではないからそこんとこよろしく」

「好きな人って……誰?」

「ふふ~ん。内緒」

「ぶぅ~」


不満気なミリアからのジト目を微笑みながらスルーし、両手を合わせる。


「ご馳走様でした。それじゃあまたねミリア」


僕は席を立った。


「レイ!」

「ん?」


呼び止められたので振り返る。


「愛してくれる人なら……いいのよね?」

「誰でもってわけじゃないけどね。まあ僕が好感を持ってる人ならね。まあ僕なんかがモテるとは思えないけどね!ハハハ」


今度こそ僕は立ち去ったのだった。







レイが立ち去った後、残されたミリアはというと、


「……私にだってチャンスはある、はず!」


そう言って拳を握るミリア。

そこで彼女はふと疑問に思った。

先ほどのレイの言葉、もしかすると……、


「さすがにお姉ちゃんは入らないわよね?」


しばらく考えた後、彼女は結論を出した。


「レイならありうる」


さらに一つ疑問が浮かんだ。


「レイはお姉さんに報告したのかしら?」


もし報告してないのだとしたら大変な事になるのではないか、と彼女は考えていた。

なぜなら今日……、




「今日ここに来るのに」



…………。


「まあ大丈夫よね!」


果たして、レイは無事明日を迎えられるのだろうか。

少しだけ幼馴染み兼兄弟子を心配するミリアであった。







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