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37.僕が守る。持てる全ての力を使ってでも!

俺は気付きました。

戦闘回以外を書くのが遅いことに……(╥ω╥`)




「なるほど。すると親友の息子は前世で一度命を落とし、まるで小説の如く転生を果たしたわけか。ははは!珍獣でも見た気分だ」

「僕だって驚きましたよ……まさか自国の王様が日本人の元勇者だったなんて思いもしませんでした」


ここは王宮のとある一室。

「とある」なんて言ったが、実際には道が入り組みすぎててどんな区画に来たのか分からなくなっただけである。

まあサトル王がくつろいでいることから、おそらくサトル王のプライベートスペース的な部屋なのだろう。

僕を連れてきた従者さんは僕が部屋に入ったらどこかに行ってしまった。

なので僕は現在サトル王と二人きりという前世の話をするにはうってつけのシチュエーションなのだ。


僕が部屋に入り勧められるまま席に着くと、サトル王に「転生した経緯をなるべく詳しく教えてくれないか?」と尋ねられたので自分が転生した経緯などを説明して今に至るというわけである。


ちなみにアルのことは一応伏せておいた。

大丈夫だとは思うが、万が一アルに迷惑をかけるようなことになったら困るので伏せたのだ。

それに「僕には神の加護がついている」なんて言ったら間違いなく痛い子確定だろう。


サトル王はしばらく目を閉じて何か考え事をしていたが、やがて静かに目を開けた。

その目は真っ直ぐに僕の目を射抜いていた。

あれ?僕何か怒らせるようなこと言ったかな?

ちょっと不安になってきたがとりあえず目はそらさなかった。


やがてサトル王は一つ溜息をつくと、「嘘は言っていないようだな」と呟いた。

どうして分かるのだろうか、と僕が頭に疑問符を浮かべているとサトル王は苦笑しながら言った。


「人を見る目が無ければやっていけない職業だからな。嘘をついた奴の気配ぐらいは分かるつもりだ」

「大いに納得しました」


さすが一国を統治する王だけはある。

交渉事では勝てそうにない。

もっとも、そんな機会はないだろうが。


ん?そういえばたしかサトル王は娘を溺愛しているので有名だったはずだ。

それがどうしてこんなにあっさりと大切な娘を嫁に出すに等しい行いをしたのだろうか?

気になったので聞いてみることにした。


「サトル王。お聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

「む、なんだ?」

「どうして大切な娘さんをあんなにも簡単に僕の婚約者にしたのですか?いくら親友の息子であるからといっても所詮は今日が初対面の赤の他人。言ってしまえば何処の馬の骨とも知らない小僧ですよね?」


うん、間違ってない。

たぶん普通の父親なら娘が連れてきた恋人にこういうはずだ。

サトル王は僅かに目を見開くと、やがて愉快げに笑い始めた。

僕の目が点になる。


「くはははは!あぁ愉快愉快。それを言うのは普通俺の方だろうに」

「娘さんをとても愛していると聞き及びましたので少々意外だったのです」

「だからだ」

「?」


するとサトル王の表情が真剣味を帯びる。


「俺は何も考え無しにお前へ娘を差し出したわけじゃない。理由としては色々あるが……そうだな。お前がとても強いこと、転生者だから親近感が湧いたこと、懐事情や将来性、そして何より――――――」


その時サトル王の表情が慈愛に満ちていることがよみとれた。

その顔は正しく子を想う親の顔であった。


「娘が望んだからだ」


それを聞いて僕は固まってしまった。


「あの子、ロゼリーナは昔から滅多にわがままを言わなくてな。初めてだったよ、ロゼリーナからあんなにもお願いされたのは。しかもそれが男との婚約を認めてくれって話だとは。まったくいつの間にか大きくなって……うぅ……昔はパパと結婚するって言ってたのになぁ。ったく子供の成長は早いもんだなちくしょぉぉおおおお!!」


ついに大声をあげて泣き叫ぶサトル王。

なんか色々台無しになったがロゼリーナが僕をとても想ってくれてるってことは理解した。

嬉しくて体がふわふわしてくる。

というかサトル王、キャラがぶっ壊れてますよ?

親馬鹿って皆キャラ崩壊を起こすものなのかな。

うちの親もそうだったし。


などとくだら考えていると、ガバッと唐突にサトル王が顔を上げこちらを射殺すような目で睨んできた。


「もし娘を泣かせるようなことをしてみろ。その時は地獄に居るよりも更にきつい思いをさせてやる!」


僕は青い顔で震えながら首を縦に振ったのだった。






「すまない。取り乱したようだな」

「い、いえ。お気になさらず」

「そうか。感謝する」

「あ、そういえば僕は土地も頂けるのですよね。どのような土地なのですか?」

「あ~そのことなんだが。喜べ親友の息子!お前にはとてもイイ土地(・・・・・・)をやろう」


とてもイイ土地ねぇ。

なんか嫌な予感がする。


「……作物がとても良く育つ、とかですか?」

「それだけではない!気候も穏やかで魔物の被害も少なく、それでいて近くには鉱山が多数あるという優良物件だ!やはり公爵ならそれ相応の土地をやらなくてはな!」


それだけ聞くと超優良物件だけど……。

僕は軽くジト目を向けながら冷や汗を垂らし、半笑いをしているサトル王に尋ねた。

この時点で僕はこれから自分に与えられる領地をなかば察することができた。


「……それで、何処なのですか?」

「…………」


やがてサトル王は観念したかの様に告白した。


「……ゼイロンだ。」

「……はぁ~やっぱりゼイロンでしたか」


『ゼイロン』とは、ユルリア帝国に隣接する土地である。

未だ冷戦状態のこの国は僕の予想だとそろそろ限界を迎え、再び戦争を再開することだろう。

何かのきっかけがあれば、それこそすぐにでも。


そんな危険な土地を僕は押し付けられたのだ。

それにその危険な土地に娘を送るなんて何を考えているのだろうこの男は。


「まあどのみち僕に拒否権なんてありませんからその話はもうよしとしましょう」

「なんか段々俺の扱いが雑になってきてない?」

「気のせいです」


反省はしている。後悔はしていない。


「危険な土地に娘を送り届けるなんて不安じゃないんですか?」

「いいや不安だよ。しかし何処に送ろうが手の届く所にいなければ不安なのだよ。でもお前には戦闘面なら俺でも勝てる気がしない。こんな感覚は初めてだ。ならばお前に娘を任せる方が俺の不安は幾分か和らぐというものだ」

「そういうものですか」

「そういうもんだ」


仮にも最前線なのに。

まあサトル王がそう言うならそれでいいだろう。

可愛い嫁さんをもらえるのだから文句などあろうはずもない。


「あと一つお前さんに言っておく事がある」

「はい、なんでしょう?」


するとサトル王は驚くべきことを口にした。


「帝国で勇者を召喚しようとする動きがあるそうだ」

「……ヤバイじゃないですか」

「ああ。ヤバイな」


おいぃぃぃぃ!まさかこんな面倒なことになるなんてっ!

はぁ~、やっぱタダより高いものはないってことか。


「まあ最低でも準備にあと二年はかかるだろう。そして勇者を召喚して育てるまで約一年。少なくともお前が卒業してから宣戦布告が出されるだろうさ。それに土地の管理はお前が卒業するまで俺の信頼する部下に管理させておこう。良かったな平和に学園生活を送れるぞ!」


右手の親指を立てグッジョブをしてくるサトル王を僕は無性に殴りたくなった。

もちろんそんなことはしないが。


すると扉がノックされ、外から男の声が聞こえてきた。


「執事長のロエルでございます」

「入れ」

「はっ!失礼致します」


中に入ってきたのは執事服を着た壮年の男だった。

この人、只者じゃないな。


「陛下、そろそろお時間が……」

「分かったすぐに向かう」


サトル王はそう言って席を立つ。


「まあなんにせよ公爵としての仕事はお前が無事、学園を卒業してからとなるだろう。それまで大いに学園生活を満喫するといい」

「はい。ありがとうございます」


なんだかんだ優しい人だな。

そうして部屋を出る時になってサトル王はこちらを振り返った。


「言い忘れてたが、最後に娘の顔でも見ていってやってくれ。くれぐれも変な気は起こすなよ?執事長。こいつをロゼリーナのところまで案内してやってくれ。」

「承知いたしました」


そしてサトル王は再びこちらを向いた。

その顔はとても真剣な表情だった。


「この先お前にはたくさんの困難がふりかかると思う。だが、どうか娘を守ってやってくれ。これは国王としてではなく一人の親としての願いだ。娘を頼む」


もちろん僕の答えは決まっていた。


「全力で守ります。たとえどんな困難が立ちはだかっても、持てる全ての力を使ってロゼリーナを守ると誓います。」

「ありがとう」


こうして国王サトルとの面会は終った。






「ロゼリーナ様はこの時間ですと剣術の稽古をされていらっしゃいます」

「へぇ~そうなんですか!楽しみだなぁ」


サトル王との面会を終えて数分後。

僕は執事長のロエルさんにロゼリーナのところへ案内してもらっていた。


執事長曰く、剣術の稽古は庭を使ってやっているとのこと。

教えているのは現役の騎士で、どれもエリート揃いらしい。

剣聖の息子としてこれはとても楽しみである。

いったいこの国の騎士がどれだけの剣技を持っているのか、考えただけでワクワクする。


「こちらで御座います。」


そうこうしているうちにロゼリーナが稽古しているという庭にたどり着いた。

庭と言っても数ある庭のうちの一つだ。

やはりさすがは王宮。


「やぁぁあああ!」

「はっ!」


そんなことを考えていると、庭の中央で対峙している二人から威勢のいい声が聞こえてきた。

どうやら木剣で打ち合っているらしく、ガツンガツンという音が離れているにも関わらず聞こえてくる。

てかロゼリーナと打ち合ってるのは女騎士か。

女性で精鋭騎士っていうのはすごいな。


「では私は仕事に戻りますので」

「あ、はい!案内ありがとうございました」

「いえいえお気になさらず。それでは失礼します」


そう言ってロエルさんは去っていった。

執事ってかっこいいなぁ、と思いながら視線をロゼリーナ達に戻すと、そろそろ決着がつきそうであった。


さすがはロゼリーナ。見るものを虜にする綺麗な太刀筋である。

しかし、さすがに現役の精鋭騎士には敵わないようで、結局木剣を弾き飛ばされてロゼリーナは負けてしまった。


荒い呼吸を整えているロゼリーナに、メイドがタオルと飲み物を手渡している。

そこに僕も拍手をしながら近づいていく。


「お見事!すごく綺麗な太刀筋だねロゼリーナ」

「レイ!?」


僕が来たことに驚愕するロゼリーナ。

そんなに驚くことかな?

今日僕が来てることは知ってただろうに。


「そうだよ。あ、初めましてお二方。レイ・ヴァン・アイブリンガーと申します。以後お見知りおきを」


そう言って僕は微笑みを浮かべる。

見たか!これぞ母上直伝『優雅な微笑み(アルカイックスマイル)』だ!

なんか毎回名前が違ってるって?

気にすんな。


あ、お二方と言ったのは女騎士さんの他にメイドさんも居たからだよ。

やはり年上の方には敬意を持って接さねば。


一方、そのお二方は赤面して惚けたようにこちらを見つめたままだ。

いや、正確に言うならロゼリーナを含めたお三方だ。

さすが母上譲りの微笑み。

効果は抜群だ!


暫くしてハッと我に返ったように挨拶を返したのは女騎士さんだった。


「し、失礼しました!わたしは王国騎士団近衛隊所属、序列第5位のリベッタ・ヴァン・ランカスターであります!よろしくおねがいします!」


長い、そして硬いなぁ。

それにしても第5位か。すごいなぁ。

リベッタさんの声に反応し、続けて挨拶を返したのはメイドさんだった。


「わ、わたしは第四王女ロゼリーナ様の側付きメイドを務めさせていただいておりますヴィヴィアンと申しますぅ。よろしくおねがいしますです!」


と言ってヴィヴィアンさんは頭を下げてきた。

この人ドジっ子属性持ってそうだな。


「はい。こちらこそよろしくお願いしますね!」


もう一度微笑むと、やはり赤面して硬直する二人。

そこで立ち直ったのはロゼリーナだった。


「レ、レイ!それでどうしてここに来たのですか?」


少し慌ててロゼリーナが言う。

なんだか微笑ましいな。


「そりゃあ婚約者の顔を見に来るのは当然でしょ」

「っ!?それじゃあ!」

「受けたよ婚約の話。僕も君は好きだからね」

「ッッッ!?」


顔を真っ赤に染めながら身悶えるロゼリーナ。

でも僕は言わなきゃならない。

本当のことを。


「ただ……僕はね。ずっと、ずっと前から好きな人がいるんだ」

「っ!!」


ロゼリーナの表情が曇る。


「だからロゼリーナを正妻には出来ないかもしれない。それでも良いかな?」

「良い、ですわ!!」


ロゼリーナの瞳に涙が浮かぶ。

すみませんサトル王。

さっそく泣かせてしまいました。

けれどもこれは避けては通れない道だろう。

僕にはもう、心に決めた人が居るのだから。

この世に生を受ける……その前から。


「たとえ愛されなくても、振り向いてもらえなくとも構いません!ただ(わたくし)は貴方の傍に居たいだけですの!だから構いませんわ!」

「……ありがとう!」


なんて健気で純粋な娘なんだろう。

こんな娘をお嫁にもらえるなんて僕は幸せ者だなぁ。


「必ず振り向かせてみせますわ!」

「あははは、お手柔らかにね」


すると突然ロゼリーナは悪戯っ子ぽい笑みを浮かべて僕に聞いてきた。


「と・こ・ろ・で!誰ですの?レイの好きな人!もしかして2年のミリア先輩ですの?それともミュウ?」

「う~んそうだね~。強いていうなら―――――――――」


そう言って僕は天を仰いだ。

そこには雲一つない青空が広がり、白みがかった月が浮かんでいた。

視界に捉えた朧げな月に目を細め、


「――――――雲上の(ひと)、かな。」


僕は様々な感情を乗せながらそう言った。



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