34.破滅の運命
昨日のPVが20万超えてました。
そして日間2位です。めっちゃ嬉しい!
明日俺、死ぬんじゃないかな……。
読者の皆様、本当にありがとうございます!
未熟者ですがこれからもどうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m
教室に着くと真っ先にミュウとガイが反応し、声をかけてきた。
「おはようレイ」
「おーっすレイ」
「二人共おはよう」
そこでガイはニヤニヤと笑みを浮かべながら訊ねてきた。
「んで、朝からなんでお前は呼び出されたんだ?学園長直々なんて余程のことがあったんだろう?」
なるほど。それが気になってニヤニヤしていたのか。
ミュウも一見興味なさげにしているが、その目はチラチラとこちらをうかがっている。
しかし大したことじゃないんだがなぁ。
「んーとね。昨日の模擬戦のことでバッカスがゴネちゃってね」
「あー、あのいけすかねぇ貴族か。なーんだ、期待して損したぜ」
「ガイ、失礼だよ!ごめんねレイ」
「別に気にしてないよ」
「さっすがレイ!分かってるねぇ」
「もうガイ!」
「あははは」
すると、教室の扉が開き、ニーナ先生が入ってきた。
こちらを一瞥すると、
「貴様等、とっくに鐘はなっているぞ。さっさと席につけ」
「はーい」
「すみません、次からは気をつけます」
「わかりました」
そうして全員が席についたことを確認し、口を開いた。
「今日は貴様等に重大な知らせがある。このクラスのバッカス・ヴァン・ポンコッツが無期限の自宅謹慎処分を言い渡された。バッカスの場合は少々特殊な理由だが、皆もこういうことが無いように注意して欲しい。以上だ。何か連絡事項は有るか?」
手は一つも上がらなかった。
「無ければこれで終わりにする。1時限目の初授業は歴史だ。集中して取り組むように」
そう言ってニーナ先生は教室を出ていった。
すると入れ替わるようにして普段の3倍増で仏頂面なロゼリーナが入ってきた。
どうやら事情聴取が終わったらしい。
ロゼリーナが僕の隣の席にきたのでとりあえず挨拶しておく。
「おはよう」
「おはようございます」
「今日は朝から済まなかったね。あのバカのせいで朝食も食べれなかったでしょ?」
「ええ、朝から散々ですわ」
「後でクッキーでもあげるよ」
「あ、有り難く頂戴しておきますわ」
照れた姿可愛いなぁ。
おっと、授業の準備をせねば。
「ふわぁあ。眠かった」
一時限目、歴史の授業が終わり目尻に涙を溜めながら僕は大きな欠伸をする。
すると隣のロゼリーナは、
「眠かったって……貴方ずっと寝ていらしたじゃない。初日からそれで大丈夫ですの?」
「むぅ~だってさぁ、ほとんどが小さい頃に読んだ本で知ってるんだもん。そりゃ退屈にもなるよ」
「この内容を小さい頃に学ぶなんて、貴方の家庭はどうなってますの……」
なかば呆れながら言ってくる。
「でも実際簡単だったじゃん。ロゼリーナだって途中から空見てたの知ってるんだからね」
「なっ、どうしてそれを!?貴方寝ていらしたじゃない」
「ふふふ。実は僕、後頭部に第三の目があるんだ!」
「ほ、本当ですの!?」
「嘘だけど?」
「貴方なんなんですの!?」
「あはは、ロゼリーナは素直だからからかうとつい調子に乗ってしまうんだ。反省はしている。が、後悔はしていない!」
「してください!」
そろそろ次の数学が始まるな。
準備しよう。
「次の時間は数学か。またどうせ簡単なんだろうなぁ」
あっちでちゃんと数学を学んだ僕からしたら四則演算なんて苦にはならない。
扉が開き、先生が入ってきた。
あ、そうだ。いいこと思いついた。
「あとでロゼリーナに良いもの見せてあげるよ」
「授業中に何かするつもりですの?」
「うん。楽しみに待っててね」
「はあ、期待しないで待っておきますわ」
そして授業が始まった。
開始早々僕はノートの一枚一枚端っこにひたすら絵を描いていく。
そう、作るのはパラパラ漫画である。
娯楽が少ないこの世界では漫画など無いだろう。
中学時代に鍛え抜いた僕のパラパラ漫画スキルを試す時がきたのだ。
ふふふ、驚く顔が目に浮かぶわ。
「ではアイブリンガー、この数式を解いてみなさい」
お、どうやら僕が当たったみたいだ。
でもちゃんと授業は聞きながらやってるから問題無し。
ロゼリーナが心配そうにしているが、このくらいなら簡単すぎる。
「1~10を全て足した数ですか」
教師が嫌らしくニヤニヤとこちらを見ている。
確かに足し算を習いたてでこの問題を解くのは難しいかもしれない。
でも、数列を使えば簡単なんだなこれが。
「55です」
「なっ!?適当に言ってるんじゃないだろうな?」
「なんなら計算してもらっても構いませんよ」
あんた答えわかってたんじゃないのかよ!
教師は黒板にひたすら足し算をして答えを求めた。
「……正解だ。座ってよし」
「ありがとうございます」
そして僕はパラパラ漫画を書き続けるのであった。
「貴方すごいわね。あの問題をあんな早く解けるなんて」
授業が終わり、ロゼリーナが僕を褒めてくる。
ちょっと複雑な気持ちだ。
「やり方を覚えればあんなの誰でも出来るけどね。それより見て見て完成したんだ!」
ロゼリーナの目の前にノートを広げる。
「なにかノートの端一枚一枚に書いてらしたわね。それが何になるんですの?」
「まぁ見てなって。いくよ?」
「はあ」
気の抜けた返事をするロゼリーナに構わず続ける。
ノートの最後のページから指で持ち上げ、一枚一枚パラパラとめくっていった。
「!?」
ロゼリーナは驚いて固まってしまった。
物語は白馬の王子様がお姫様のもとに来て手を取って踊り、最後にキスをするという少女チックなものだった。
ロゼリーナが見るならこれかなと思って作った作品だ。
どうやら間違っていなかったようだ。
「す、素晴らしいですわ!」
今やロゼリーナは仏頂面を完全に消し去り、年相応の無邪気な笑顔を浮かべている。
パラパラ漫画でここまで喜んでくれるなんて嬉しい限りだ。
その後ミュウとガイにもパラパラ漫画を見せ、授業が始まるまで四人でクッキーを食べながら、雑談を楽しんだのだった。
三時間目、本日最後の授業は……。
「戦闘実技か」
「楽しみだな!」
「私、剣は苦手なんだけどなぁ」
「そうですの。私剣は得意ですわよ」
僕、ガイ、ミュウ、ロゼリーナの順である。
ちなみに戦闘実技の先生は我らが担任ニーナ先生が担当する。
「これより、戦闘実技の授業を始める。しかしいきなり剣を学べといわれても戸惑うものがほとんどだろう。そこで―――」
ニーナ先生は一度言葉を区切り、
「貴様等には目指すべき目標を与えてやることにした。レイ、ロゼリーナ!前に出ろ」
「何でしょう?」
「何ですの?」
呼ばれたので前に出る僕とロゼリーナ。
ニーナ先生は再び口を開け、驚くべき言葉を発した。
「この二人は私から見ても剣術の腕は相当だ。そこで今日はこの二人の模擬戦を見てもらうことにする!」
「へ?」
「は?」
「「はぁぁあああ!?」」
グラウンドに僕とロゼリーナの声が響きわたった。
グラウンドに対峙する二つの影。
もちろん僕とロゼリーナだ。
ロゼリーナは自前のレイピアを、僕は【水氷魔術】で創り出した氷の剣を持っている。
何で普通の剣じゃないかって?
だって魔剣と銅の剣しか持ってないんだもん、しょうがないじゃん。
「ではルールを説明する。勝敗は寸止めで判断する。致命傷になるほどの過剰な攻撃は禁止。殺害するような攻撃も禁止だ。また、魔法や魔術、魔力を行使することも禁ずる。純粋に剣術のみで存分に競い合ってくれ。何か質問はあるか?」
「そんな剣で大丈夫ですの?」
「問題無いよ。これでも鉄以上の強度はあるから」
「そうですの。なら質問はありませんわ」
「僕も特に無いかな。遠慮はしないでいいよロゼリーナ」
「もちろんやるからには全力でお相手させていただきますわ!」
「そうこなくっちゃね」
緊張の糸が張り詰める。
場を呼吸すら躊躇われるくらいの静寂が支配した。
ニーナ先生が手をあげる。
「両者構え!」
そしてその手は勢い良く振り下ろされた。
「始め!」
王女対魔剣聖の戦いが始まった。
開始早々にロゼリーナは駆け出し、かなりの速度で鋭い突きを連続で放ってくる。
僕はそれを全て紙一重で躱し、牽制のためやや大振りに剣を振るう。
ロゼリーナはそれをバックステップで危なげなく避けてみせた。
どうやらなかなか動けるようだ。
剣に自信があるのも頷ける。
「なかなかやるねロゼリーナ」
「貴方こそ。今のを全て見切るとは思いませんでしたわ」
「まぁこれでも剣聖の息子で弟子やってたからね。今度はこっちからいくよ!」
「来いですの!」
僕はそれなりの速度で駆け出し、ロゼリーナとの距離を詰める。
いや、だって流石に元のステータスが違いすぎるから全力はだせないよね。
それでも速さに驚いたのか、僅かに目を見開くロゼリーナ。
しかしその口もとは楽しさからか笑みを浮かべている。
走った勢いのまま氷剣を真っ直ぐに振りおろすと、ロゼリーナはレイピアを使い、氷剣を受け流す。
僕は構わず一回転して横凪に剣を振るう。
ロゼリーナはそれをしゃがんで避け、そのままレイピアを僕の首元目掛けて突き出す。
取った!、と思ったのだろう。目が爛々と輝いている。
しかし僕はニヤリと笑みを浮かべ、剣を順手から逆手に持ち替え、やはりそれなりの速度でレイピアを受け流す。
ロゼリーナは驚愕するが、僕の剣にしっかりと反応し、すぐに距離を取る。
僕は久々に前世を思い出し、その場で軽くジャンプを繰り返す。
「いや~、楽しくなってきたねぇ!」
速度は変わらず、だが雰囲気が変わる。
駆け出した勢いを殺さず、ロゼリーナの数メートル手前で大きく飛ぶ。
空中で体を横に一回転させ、上から叩きつけるような斬撃を放つ。
つまり側宙斬りだ。
これにはロゼリーナも驚いて大きく距離を取る。
僕は重みを感じさせず軽やかに着地を決めると、またロゼリーナに向かっていく。
「まだまだいくよ!」
「こっちも行きますわよ!」
ロゼリーナが突きを放ってくるが、僕はそれを体を伸ばした状態のまま空中で横一回転、つまりバタフライツイストでギリギリ躱す。
「は?」
その予期せぬ避け方に一瞬呆けるロゼリーナだったが素早く腕を戻し、もう一度今度は胴を狙って突きを放ってくる。
僕はそれを逆手持ちの剣で斬り上げる。
だがそこに隙が生まれ、ロゼリーナはそれを見逃さず渾身の突きを出す……が、
「あまいあまい」
「え?」
僕は振り上げた剣を背中に滑らせ、左手に持ち替えた氷剣でレイピアを弾き飛ばし、そのまま一閃した。
氷剣はピタリとロゼリーナの首筋で止められていた。
「そこまで!勝者レイ・ヴァン・アイブリンガー!」
「「「ウォオオオオオ!」」」
生徒達から歓声が上がった。
僕は氷剣を消し去り、ロゼリーナに左手を差し出した。
「お疲れ!良い剣技だったよ」
ロゼリーナは僕の握手に応じ、悔しそうだが満足そうな笑みを浮かべた。
「貴方には完敗しましたわ。それにしてもあの最後の剣技は何ですの?」
「あーあれね。あれは背斜刀って言ってね、自分で考えたんだ」
正確には前世で読んだ漫画に出てきた技だが。
「あれには不意を突かれましたわ。剣聖もあんな複雑な戦い方を?」
「ないない、父上は正統な剣術さ。僕のはちょっと自己流でね。正統な剣術も出来るんだけど、こっちの方が性に合ってるのさ」
「そうなのですか……今度またお相手をお願いしても構いませんか?」
「その時は喜んで受けるさ」
「ありがとうですわ」
と、ここで笑顔のニーナ先生が歩み寄ってきた。
「お前達いい戦いだったぞ。だが、レイ・ヴァン・アイブリンガー、私は生徒の手本になるよう模擬戦をして欲しかったのだがな。あれがこいつらに真似できると思うか?」
その笑顔が少し引き攣っているのを見て僕は、
「すみませんでしたぁぁああ!」
速攻で土下座を決めたのだった。
「それでは今日の授業はここまでとする。何か連絡のある者はいるか?」
あの後剣の基礎訓練をして授業が終わり、今は帰りのHRの時間だ。
明日は魔法の基礎訓練だ。楽しみだなぁ。
「無ければこれで解散とする。では解散」
そんなことを考えている間にHRは終わった。
するとミュウとガイ、それに出席番号1番のアルド君がやって来て、
「レイ!俺ら今日に解きやるから直ぐに帰るわ。レイはどうする?」
「あ、僕はもう荷解き終わってるから今日はクラブ活動でも見学しようかなと」
「そっか。じゃあ今日はここでお別れだな。あ、こいつ実は俺のルームメイトだったんだ」
そう言ってガイは隣にいるアルド君をヘッドロックする。
「痛たたた。初めましてレイ君。知ってると思うけど俺はアルド。よろしくね」
「ああ、僕はレイ。よろしくねアルド君。それと呼び捨てで構わないよ」
「わかったよレイ。俺も呼び捨てでいいよ」
「オーケーアルド。ガイの相手は苦労するだろうけど頑張ってね!」
「うん、ありがとうレイ」
「おいそれどう言う意味だよレイ!」
「そのままの意味でしょガイ!いい加減ヘッドロックを外しなさい!」
「ちぇ、分かったよ姉ちゃん」
ミュウの一言に素直に従うガイ。
どうやら姉の言葉には逆らえないようだ。
まぁ僕も人のことは言えないがね。
ガイに親近感が湧いた気がする。
「それじゃあなレイ。また明日。ロゼリーナ様もな」
「バイバイレイ。ロゼリーナ様もまたね」
「うぅ首が痛い。失礼します」
そして騒がしいトリオが去っていった。
「賑やかな方達ですわね」
「うん。面白い友人達さ。それでロゼリーナはどうする?一緒に見て回る?」
「ごめんなさい、この後予定がありますの」
「そっかじゃあまたね」
第四王女ともなると忙しいのだろう。
ロゼリーナは王城通いだからたいへんだなぁ。
それにしてもどんなクラブ活動があるか楽しみだなぁ。
僕は教室を出て、クラブ活動に思いを馳せるのだった。
「う~んあんまりピンとくるものがないなぁ」
一通り見て回ったが僕の琴線に触れるクラブは特に無かった。
良いの無かったら自分で作ろうかなぁ。
ん?
「それだ!アクション部を作ろう!」
そうだ。良いのが無ければ自分で作ればいいんだ。
よし、決めた。
僕はアクション部を作るぞ!
決意を新たに寮に戻ると、寮長さんがいた。
「ただ今戻りました」
「おかえりなさい。ああ、レイ君。君に手紙があるよ」
手紙?お姉ちゃんだろうか?
そう言えば昨日手紙書くのすっかり忘れてた。ヤバイなこれは。
「お姉ちゃんですか?」
「お姉ちゃん?たぶん違うと思うよ。やたら身なりのいい少年が置いていったから」
あれれ?何か嫌な予感がしてきたぞ。
「そいつってもしかして出っ歯でしたか?」
「そうだね。あまり大きな声では言えないけど、少し出てたね」
「ちょっと見せてもらってもいいですか?」
寮長さんから手紙を受け取り、よく見てみる。
すると裏には案の定ポンコッツ家の家紋が入っていた。
「ありがとうございます寮長さん。誰が送ってきたか分かりました」
「ああそうかい。それじゃ、またね」
寮長さんが去るのを見送ってから手紙を開封する。
中を見てみると、そこにはやたら綺麗な字で内容が書かれていた。
従者が書いたようだが、そんなことはどうでもいい。
読み終えた僕はすぐに手紙を握り閉めると、亜空間に放り込んだ。
本当はビリビリに破いてやりたかったが、あんなのでも証拠だ。
「……馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがここまで愚かだったとはね」
そこで深い溜息を1つした。
「はぁ~。いいだろう。そっちがその気ならこっちだって全力で潰してやるよ」
レイはその場で翼をはやすと、寮から出てそのまま王都に向けて飛び立った。
手紙には地図とともにこう書かれていた。
『我が憎きレイ・ヴァン・アイブリンガーへ。
第四王女の身柄は預かった。返して欲しくば王都外れにある我が別荘へ来るがいい。そこで盛大なる宴を執り行おうぞ。』
よりにもよって王女を誘拐するとは思わなかった。
まぁいい。これで心置きなく潰せるというものだ。
「始めようか!」
二度と反抗など出来ないように徹底的に潰してやる。
「殺陣を!」
この日、ポンコッツ家の運命が決まった。
それは決してさけられない破滅の運命へと。




