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30.入学式の無差別宣言

27話に追加しました!

カーンカーン。

朝6時の鐘が鳴った。


「ふわぁ~あ」


僕は欠伸をしながら大きく伸びをすると、かけ布団を跳ね除けベッドから降りた。

鏡の前に立つと、寝癖を軽く手で梳いて直す。


(今日は念願の入学式だ!)


そのことを考えると、朝からテンションが上がってきた。

昨日はなかなか寝付けなかったほど楽しみなのだ。

気分は遠足前日の小学生である。

そんなくだらないことを考えながら部屋を出て、宿の食堂に向かう。


宿屋の女将さんがいたので声をかける。


「お早うございます!」


我ながら元気の良い挨拶だ。

恰幅のいい女将さんは、


「おはようさん!朝から元気だねぇ!」


女将さんも負けてませんけどね。


「もう食堂は開いてますか?」

「開いてるよ。旦那がいるから声かけな!」

「ありがとうございます!」

「はいよ、どういたしまして」


女将さんの言った通り、厳つい旦那さんがいた。


「朝食をいただけますか?」

「了解した!座って待ってな!」


そう言って旦那さんは厨房へ入っていった。

僕は言われた通り席に座って待つこと暫し。


「待たせたなぁ!」


旦那さんが僕の前に料理を並べていく。

献立はパンにサラダにスクランブルエッグとベーコン、飲み物はミルクだ。

普通だと思うよね?けど違うんだなぁこれが。


実はここの宿。たまたま入ったけど運のいいことに食事にこだわった宿らしい。

そのため料金は少々高めだが、食事のレベルはかなり高い。

母上レベルだ。

母上に料理を教えてもらった僕でさえ勝てないクオリティーだ。

・・・・・・いや、別に勝つ必要は無いんだけどさ。

そ、そんなことより今は目の前の朝食だ。


まずはパンに齧り付く。

カリッといい音がならせ、咀嚼する。

外はカリッとで中はふわふわの手作りパンだ。

噛んだ瞬間に広がるバターの芳醇な香りがやみつきになりそうだ。


続いてサラダにフォークを近づける。

フォークで刺すとパリッといい音がした。

そのまま口へ運ぶと、予想通りシャキシャキとした食感がした。

瑞々しくて新鮮なサラダだ。

香辛料がきいたドレッシングもイイ感じにマッチしている。


一度ミルクを飲むと、ただのミルクじゃないことに気づきとても驚いた。

僕の予想が確かならこれは一角牛という魔物の乳のはずだ。

一角牛とはその名の通り頭に一本の立派な角がはえた牛の魔物である。

体長が2メートルほどあり非常に凶暴なため普通のミルクより少し高めのミルクだ。

その分味は美味しいので貴族の間では定番の飲み物だ。

ただ、その希少価値から普通の宿には置いてない代物だ。

一口ふくめば途端にミルクの優しい味が広がり、さらにハチミツの甘味が鼻を突き抜ける。

つまりめちゃめちゃ美味い。


スクランブルエッグもふわとろで、ベーコンはカリカリのちょうどいい焼き加減だったのですぐに平らげてしまった。

「いやぁ~素晴らしかったなぁ」


食べ終わって席を立ち、旦那さんに感想をいう。


「ご馳走さまでした!とっても美味しかったです!」


旦那さんが厨房から出てきて、


「あんがとよ!また来いよ!」

「ええ、是非よろしくお願いします!」


そのあと僕は部屋に戻り、学園指定の制服に着替えて宿を出た。

機会があればまたご馳走になりだいものだ。

そう考えながら僕は学園へと急いだ。





学園にたどり着いた。

歩いて二十分かかった。

早めに出といてよかったなぁ。

というわけで、


「来たぜ学園!」


とりあえず叫んだ。

ちなみに周りに生徒はいない。

僕は新入生代表挨拶のため、早く来たのだ。

なので叫んでも目立たないのだ!

そんなことより学園だった。

まぁ予想通り学園は半端なくでかかった。

そして広い。

とにかく広い。

学園の敷地内に入ってから10分歩くくらいに広い。

これ城より広いんじゃない?

まぁいいか、とりあえず中に入ろう。




門から校舎まで一直線にレンガみたいな道があり、中間点には巨大な円形の噴水が天へと水を噴き上げている。


「綺麗だなぁ・・・・・・」


僕が見とれていると、後方に気配を感じた。

どうやらこちらに向かって来ているようだ。

気配で分かったがどうやらなかなかの実力者らしく、身のこなしに隙があまりない。

僕に何か用かな?

しばらくすると、僕の背後に立ち止まったのが分かった。


「見事だろうその噴水。学園長がデザインしたらしい。」


振り返ると凛とした雰囲気の美女が立っていた。

輝くような腰まで届く金髪をポニーテールにまとめ、知的さを感じさせる瞳は琥珀色。

その豊満な肢体は異性を意識させずにはいられないだろう。

街を歩けば10人中10人が振り返るであろう美しさである。

そして僕が一番驚いたのは、片眼にある魔法陣である。


(魔眼持ち、か・・・・・・。)


『魔眼』とは先天的に極めて低い確率で持って生まれてくる能力である。

魔眼には様々なものがあり、一番多いのは魔力が大幅にアップするというものや、次に多いのは鑑定眼なんかもそうである。

多いと言っても、魔眼持ち自体が極めて少ないので数は決して多くない。

ただ、魔眼持ちの人は大抵その貴重な能力から大物になるので、過去に魔眼を持った人達は偉人となって歴史に名を残すのだ。

ちなみに僕も後天的にではあるが魔眼持ちだ。

『超解析』を使うと瞳に魔法陣が浮かぶんだって!厨二心がくすぐられる。


閑話休題そんなことより


返事を返さなければ。


「ええ、思わず見とれてしまいました」


とりあえず正直に話した。

すると彼女は、


「ふふ。君は正直者のようだね。」

「???」


なんか納得してるような雰囲気だけど、どうしたんだろうか。

僕が頭に疑問符を浮かべていると、


「ああすまない。考え事をするとどうも一人で突っ走ってしまうのが私の悪い癖なんだ。」


と言って彼女はチロっと舌を出す。

凛としているが案外お茶目な部分もあるようだ。

というか仕草が可愛い。


「失礼だが君はレイ・ヴァン・アイブリンガー君で間違いないかな?」

「え、ええそうですけど?」

「私はこの学園の生徒会長であるオリヴィア・ヴァン・ベルヴァルトという者だ。君の案内役を任されている。付いて来てほしい」

「あっ、そうだったんですか。ありがとうございます。ご存知かと思いますが僕はレイ・ヴァン・アイブリンガーです!新入生ですが宜しくお願いします!」

「ああ!こちらこそよろしく頼む!」


そう言って僕らは握手をした。

にしてもベルヴァルト家ね。

まさか公爵家の方が僕の案内をしてくれるとは思わなかった。

様付けした方が良かったかな?まぁ今更だしいっか!


そうこうしているうちにオリヴィア生徒会長はある部屋の前に立ち止まった。

札には学園長室と書いてある。


「まずは学園長に挨拶をする。寛容な方だがくれぐれも失礼のないようにな」

「はい!分かりました!」

「よし!では入るぞ」


オリヴィア生徒会長が学園長室の扉をノックする。


コンコン


「誰だ?」

「生徒会長のオリヴィア・ヴァン・ベルヴァルトです!新入生代表のレイ・ヴァン・アイブリンガーを連れてまいりました!」

「入れ」

「はっ!失礼します!」

「失礼します!」


とりあえず僕も空気を読んで告げておく。

でも気のせいかな?なんかやたら声が高かったような?

まぁ学園長だから若い筈ないし気のせいだろう!

そう思って中へ入ると、


「よく来たのぅ、問題児達レンとレイシスの弟よ。妾がこの学園の学園長をしているジュリア・ビーガーじゃ!以後見知りおけ」

「はい!僕はレイ・ヴァン・アイブリンガーです。宜しくお願いします!」


なんか早速不安になってきたんだが。

兄と姉は一体何をやらかしたのか。

気になるが聞かないでおこう。

きっと後悔するに違いない。

ちなみに学園長はめっさ小さかった。

どうやら気のせいではなかったようだ。

しかしその容姿は純粋人間ではなかった。

銀髪の頭には二つの狐耳と腰のところから銀色の尻尾がはえているのだ。

ケモミミktkr!

思わず叫びそうになったのは秘密である。


「くくく。よく似ておるのぉ。しかし……」


そこで一旦学園長は言葉を区切り、ニヤリと笑みを浮かべた。

僕は次の言葉に背筋を冷やされたかのような感覚にとらわれた。



「お主のその異常な魔力はなんだ?」



何故だ?と僕は驚愕に包まれる。

僕は普段、自分の魔力を体から洩らさないようにしている。

なぜなら、一流の魔法使いなどは相手の余剰魔力により大体の魔力量がはかれてしまうからだ。

そういったやからに見つかると絶対に厄介なので魔力だけは気をつけるようにしていたのだ。

それなのに、目の前の学園長は見破ったのだ。

だから僕が警戒してしまうのは仕方ないと言える。

すると突然脳内に、


『スキル魔力捜索を受けています。魔力を薄く纏えば対処可能です。』


と言う声が響いた。

なるほど、魔力捜索ね。魔力感知の派生スキルだろうか?

システムに言われた通りの対処をする。


「……ほう?」


学園長はすぐに気づいたらしい。

その目を細めてこちらを伺ってくる。

僕はちょっとその態度にイラッときたので少しやり返すことにした。

鑑定で相手の種族を調べる。

『超解析』でなければ瞳は光らないので、魔力を使わない鑑定ならバレることはない。

本来ならマナー違反だが、やられたらやり返さないとね!


「『魔力捜索』ですか?そういうのを初対面の人にやるのは感心しませんね『白面九尾』さん?」

「っ!?」


あはは。驚いてる驚いてる。

やり返し作戦成功。


「……くはははは!どうやら今まで以上の問題児が来たようじゃのう!まんまと一本とられたわい!」

「いえいえ、それほどでもありませんよ?」

「くくく。あのレイシスが気に入るわけじゃ。恐ろしい小僧がいたもんじゃのぅ。先程は失礼した!改めてよろしく頼むぞ!」

「ええ、こちらこそ宜しくお願いします」

「よし!下がって良いぞ!」

「それでは失礼しました」

「し、失礼しました。」


途中からハラハラ見守ってくれていた(もとい置いてかれた)オリヴィア生徒会長も少し慌てながら退出する。

学園長、なかなかの曲者のようだ。

これは一筋縄では行きそうにないな。

と、オリヴィア生徒会長がこめかみをおさえながら、


「君もなかなか無茶をする男だな。あの学園長から一本とってしまうとは……次からはわたしのいないところでやって欲しいものだな。」

「ほんっとすいませんでした!!」


僕は速攻で頭を下げた。

うん、少しやり過ぎたわ。



そんなこんなで体育館みたいなところについた。

既に新入生がちらほら見受けられた。

まだ少し早いようだ。


「少し早かったようだな。ちょうどいい、段取りを説明しよう。」


と言ってオリヴィア生徒会長は段取りをわかり易く説明してくれた。


「色々ありがとうございました!オリヴィア生徒会長!」


お礼をいう僕。


「生徒会長は役職だからオリヴィアで構わんぞ?」

「分かりました!オリヴィア先輩!」

「まぁそれでもいいが……なにはともあれ何か分からないことや困ったことがあれば相談に乗るぞ?」

「はい!その時は是非頼らせていただきます!」

「ああ、さてもうじき始まる。健闘を祈る。それではな!」

「精一杯頑張ります!ありがとうございました!」


僕は自分の席についた。

そして入学式は始まった。

司会は2年生の生徒会役員さん。

男の子だった。

……いや、別に残念なんか思ってないよ?

プログラムが着々と進んでいく中、


「続きまして学園長より一言頂きたいと思います。それでは学園長お願いいたします。」


お、どうやら学園長の出番らしい。


「皆の者、妾が学園長のジュリア・ビーガーじゃ!長いのは面倒だから一言で済ます!心して聞くがよい。

この学園での3年間を思う存分楽しみ、肉体的にも精神的にも様々なことを学び強くなって欲しい!以上だ!励めよ諸君!」


万雷の拍手が起きる。

いや、このあとだよな確か僕の出番って。

すると振り返った学園長が僕に意味深な笑みを送ってきた。


(謀ったな!あのロリババァめ!)


くそ!めちゃめちゃやりにくいじゃないか!

こうなったら腹くくってやってやるさちくしょう!

もはやヤケクソである。


「続きまして、新入生代表挨拶。レイ・ヴァン・アイブリンガー君、お願いします。」


よしきた。もう何も怖くない。

僕は椅子から立ち上がり、壇上に向かった。

この日まで僕は何を話そうか悩んだ。

けど、結局素直な気持ちを話すことにした。

たぶん下手に捻るより素直な気持ちの方が相手の心に伝わりやすいだろうから。

うん、緊張はMAXだけど原稿は忘れてない。

後は失敗しないように気をつけよう。

壇上の前で母上に習った貴族の完璧な礼をする。

感嘆のため息が聞こえた。

掴みは上々。

さて、始めよう。


「みなさんおはようございます!僭越ながらこの僕、レイ・ヴァン・アイブリンガーが新入生代表挨拶をさせて頂きます。どうかご静聴ください。」






Side~ミュウ~


私はミュウ。

ごく普通の平民の家に生まれ、ごく普通に育ってきた13歳だ。

だけど私はどういうわけか平民なのに魔力量が人より多くて魔法の才能があるらしい。

だからこの王都にある学園に魔法を習いにきたのだ。

私は小さい頃から魔法に憧れを持っていたの。

原因は私の家に唯一あった本が偉大な魔法使いだったから。

安直だけど、すっごい惹かれた。

だから私に魔法の才能があると言われたときはとっても嬉しかった。

馬車に乗ってこれから自分は学園に通うんだと思うとワクワクした。

だけど、馬車は盗賊に襲われた。

それも子供の私でも知ってるくらいの大きい盗賊団に。

馬車の外から悲鳴が上がる度にもうダメだと思った。

けれど、そうはならなかった。

何故か平民が多く利用する馬車に一人で乗っていた女の子みたいな男の子。

その子に突然頭を撫でられた時はびっくりした。

でも不思議と安心した。

そしてその綺麗な微笑みを見てつい真っ赤になってしまった。

剣を習いに学園に行く双子の弟のガイも顔を真っ赤にしていた。

それでその子が馬車から降りると、外が急に静かになった。

あの貴族の子が心配になって外を見ると、綺麗な氷の世界が広がっていた。

心配も忘れてしまうくらい中央に佇むあの貴族の子に見とれてしまった。

そのあと話してみたらすごくいい人だった。

貴族とは思えない。

身分も気にせず友人になってくれた。

すごく嬉しかった。

しかしなぜか苗字は教えてくれなかった。

「明日わかるよ!」

とレイは言っていた。

そして今日いつ教えてくるのかな?と考えながら入学式に出た。


「続きまして、新入生代表挨拶。レイ・ヴァン・アイブリンガー君、お願いします。」


ん?

あれ?気のせいかな?

今レイの名前が呼ばれたよね?

え?アイブリンガー?

アイブリンガーってあのアイブリンガー?

そして出てきたのは間違いなく昨日助けてくれたレイだった。

それも惚れ惚れするほど綺麗な礼をして。

隣の弟も口をあんぐりと開けて驚いている。

かくいう私もなので人のことは言えないけど……。

でもアイブリンガーって、ええ!?

私そんな大貴族様とお友達になれたの!?

すると、レイと一瞬目が合った。

ニヤリとレイは笑った。

それは間違いなく私達双子に向けられた笑だった。

ずばり、「計画成功!」みたいなニヤリだった。

むぅ。ちょっと悔しい。

そしてレイの挨拶が始まった。


「みなさんおはようございます!僭越ながらこの僕、レイ・ヴァン・アイブリンガーが新入生代表挨拶をさせて頂きます。どうかご静聴ください。」


澄んだ水のように透き通った綺麗な声が響く。

会場が静寂に包まれる。


「始めに、僕達の入学を祝って下さった上級生や生徒会役員の皆さん、学園長にこの場を借りまして御礼申し上げます。さて、突然ですが僕はこの学園に来てやりたいことがたくさんあります。ですが今日は時間も限られているため、1つだけにさせていただきます。

僕は理不尽な事が大嫌いです。その中で最も嫌いなことが差別です。

しかし、一口に差別といっても様々なものがあります。人種差別や身分差別など、僕はその全てを嫌っています。なぜなら、新たな出会いというのは自分を成長させるチャンスとなるからです。」


レイはそこで一呼吸入れた。

たぶん私達に考えさせるためだろう。


「得てして、自分の知らない答えというのは他人が持っているものです。それを差別するだけで答えを得ることが出来なくなってしまうのです。差別は僕らにデメリットしかもたらしません。ですから、僕がこの学園でやりたいことは、」


そこでレイは息を吸って宣言した。


「人種、身分などの壁を乗り越えて、新しい友を作っていきたいと考えています!」

「獣人だとかエルフだとか貴族だとか平民だとか関係の無い、そんな生まれの違いなんてどうでもいいんです。この学園はたくさんの種族や身分の人が等しく学んでいます。そんな絶好の機会はもしかしたら一生に一度しか巡ってこないかもしれません。もし僕の話を聞いて少しでも共感していただけたのならその時は是非……」


そしてレイは周りに花が咲き乱れているような錯覚を覚えるほど綺麗な笑顔で、


「僕と友達になってください」


会場中の人が今やレイの言葉に聞き入っていた。


「以上です。ご静聴ありがとうございました。」


そしてまたレイは美しい礼をして自分の席に戻っていった。

どうやらみんなレイにみとれて拍手するのを忘れているようだ。

ここは私が最初に拍手してあげよう。

そして私は手を打ち鳴らした。

次第にそれは大きくなり、最後には万雷の拍手が巻き起こった。

レイは席で目を見開いて驚いていた。

私も沢山の人に話しかけてみよう。

決意を新たに、私はまた壇上へと視線を戻した。





Side~レイ~




僕の挨拶が終了した時に拍手は起きなかった。

内心すごい不安にさいなまれたけど席に戻った時に万雷の拍手が起きたのでびっくりしてしまった。

なんか席を立って拍手してる人も居る。

まあうまく行って良かったぁ。

これで失敗したらこの学園で肩身の狭い思いをしなければいけなかった。

本当にめでたしめでたし。

そのあと、生徒会長のオリヴィア先輩も挨拶し、残すは在校生代表挨拶のみとなった。


「続きまして、在校生代表挨拶を2学年ミリアさんお願いします。」


ん?ミリア?

すると紫の髪をたなびかせて出てきたのはやはり我が幼なじみのミリアその人であった。

成長してより美しさが増した気がする。

なんかね、幼さに混じる妖艶さがでてきた感じ。

そしてミリアは壇上に立つ時こちらに微笑みかけてきた。

僕もニッコリと微笑みを返す。

ミリアの挨拶が始まった。


「新入生の皆さんおはようございます。在校生代表、2学年のミリアと申します。これから先、分からないことや困ったことがあればいつでも近くの先輩に聞いてください。分からないことを分からないままにするのが一番いけないことだと私は思います。

不慣れな学園生活で大変だとは思いますが、私達先輩も困った時には相談に乗りますので頑張ってください。以上です。ありがとうございました。」


うん。男の殆どがミリアの話を聞かずに見とれてたな。

まあミリアは可愛いし見とれるのも分かるが、ちゃんと話は聞いた方が良いぞ。


「ミリアさんありがとうございました。これにて入学式を終了します。皆様ご起立してください。」


あ、終わるみたいだ。

僕も席を立つ。

学園長が号令をかける。


「一同月の女神アルテミス様に礼!」


アルテミス様か。

そういえばここでは主神なんだよねアルって。

なんだか不思議な気分だがとりあえず礼をする。


「新入生は事前に配られた生徒カードに記載されているクラスに向かってください。」


生徒カード?そんなのもらってないんだが?


「ああすまない、君に生徒カードを渡すのを失念していたよ。」


するとオリヴィア先輩が僕に銀色のカードを渡してくれた。

どうやらこれが生徒カードなるものらしい。


「ありがとうございます。使い方ってどうすればいいんですか?」

「中央のボタンに触れてみたまえ」


言われた通りに中央のボタンを押すと、半透明のウィンドウがでてきた。

触ってみると、どうやら操作できるようだ。


「使い方は君が今やった通りだ。そこには様々な情報が乗るから逐一確認しておくといいぞ。」

「ありがとうございます!ん?武闘大会予選のお知らせ?」


僕はあるお知らせに注目した。


「ああ、王都で毎年恒例の大規模な武闘大会が開催されるんだが、その予選だな。この日はあらゆる地域で我こそはと思う猛者共も集まるのだ。普通一年生は出ないものだが少なくとも私以上の実力者である君ならば特に問題はないだろう。興味があるなら行ってくるといい。 」

「そうですか?生徒会長さんも結構な実力者だと思うのですが……」

「ふふふ。ありがとう。しかし私以上という部分は否定しないのだな」

「それなりに自信がありますので」

「頼もしい限りだ」


半竜神になってから彼我の実力差が前よりも鮮明に分かるようになった。


「それよりいいのか?」

「?」


何がだろうか?


「さすがに初日から遅刻はまずいんじゃないか?」


周囲を見回せばあんなにいた新入生が一人も居なくなっていた。

おーっと、これはまずくない?


「し、失礼します!生徒カードありがとうございました!」


僕は猛ダッシュで自分の教室に向かったのだった。


テストが終われば模試があり、模試が終われば修学旅行。

ハードすぎるね我が学校。



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